「いまだ成らず 羽生善治の譜」鈴木 忠平
〇「いまだ成らず 羽生善治の譜」鈴木 忠平(文藝春秋)
羽生善治を中心に、将棋界のトップランナーである棋士たちの物語を書いたノンフィクション。
羽生善治がA級からB級1組に降級して、なおも戦い続けてることを知らなかった。
膨大な知見が必要とされる将棋というゲームにおいても棋士の強さのピークは20代から30代前半と言われており、そこから遠ざかるにしたがって少しずつ下がっていくことは「通常は」抗えない。
そこで52歳にしてなおカムバックして18歳の藤井聡太と戦う羽生善治という男のことを、複数のライバルや後輩棋士たちの視線で描く。
そしてどんな棋士であっても指し続けるうちにどこかで「間違える」ことがある将棋というゲームで、「間違えない」藤井聡太の驚異的な強さが伝わってきた。
AIがもたらした将棋界への大きな変動と、その変動の中でそれまで培ってきたものを捨てて現代の「強さ」にアジャストしていく30代以上の棋士たちの話はどの業種や会社にも起きてる出来事であって、身につまされる部分も少なからずあった。
あと本筋にはまるで関係ないが、羽生善治は普通に千駄ケ谷のコンビニで買い物するんだな、と思った。
イメージでしかないけど、昭和の将棋界の名人たちは自分で買い物とかしそうにないから。
負けたあとの態度とか、あらゆる部分で羽生の偉ぶらない、平熱な姿勢がすごいなと実感させられた。
(H)
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