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December 2023

December 30, 2023

2023年伊野尾書店で売れた本

2023年の自店セールスランキングを調べました。 
一番右の数字は冊数、隣の日付は発行日です。

 

(2022/12/1~2023/11/30 伊野尾書店)

(総合)
1 街とその不確かな壁 村上春樹 新潮社  2023/4/13 47
2 永遠なるものたち 姫乃たま 著 晶文社  2022/12/16 34
2 マジキシュガーフレンズ   デアゴスティ-ニ・ジャパン 2023/2/28 34
4 ハンチバック 市川沙央 文藝春秋 2023/6/20 32
4 くじら&Co.ビッグ デアゴスティ-ニ・ジャパン 2022/11/29 32
6 AMONG USフィギュアキーチェ 追放 デアゴスティ-ニ・ジャパン 2022/10/26 31
7 汝、星のごとく 凪良 ゆう 著 講談社   2022/8/2 30
8 続 窓ぎわのトットちゃん 黒柳徹子 講談社   2023/9/30 29
8 大ピンチずかん 鈴木 のりたけ 著 小学館   2022/2/16 29
10 マジキユニコーン デアゴスティ-ニ・ジャパン 27
11 もっちりフレンズ デアゴスティ-ニ・ジャパン 25
11 スーパー恐竜!&co. デアゴスティ-ニ・ジャパン 25
13 ウクライナ戦争 小泉悠 著 筑摩書房   2022/12/6 21
14 ’23 プロ野球カラー名鑑 ベ-スボ-ルマガジン社 2023/2/14 20
14 言語の本質 今井むつみ 中央公論新社 2023/5/20 20
16 キレイはこれでつくれます MEGUMI ダイヤモンド社 2023/4/18 19
16 成熟スイッチ 林真理子 著 講談社   2022/11/15 19
16 検証ナチスは「良いこと」もしたのか? 小野寺拓也 岩波書店  2023/7/5 19
19 死は存在しない 田坂広志 著 光文社   2022/10/19 18
20 ’24 歩く地図 東京散歩 成美堂出版 2023/2/20 17
20 図鑑NEO 図解 はじめての絵画 小学館 2023/2/2 17
22 基本は、真っ直ぐ- 長谷川晶一 著 ベ-スボ-ルマガジン社 2022/11/30 16
22 ルポ 特殊詐欺 田崎基 著 筑摩書房  2022/11/8 16
22 木挽町のあだ討ち 永井紗耶子 著 新潮社   2023/1/18 16
25 19×19までかんぺきに暗算できる本 小杉拓也 著 ダイヤモンド社 2022/12/6 15
25 鵺(ぬえ)の碑 京極夏彦  講談社  2023/9/12 15
25 80歳の壁 和田 秀樹 著 幻冬舎   2022/3/24 15
28 JOJO magazine 2022冬 荒木飛呂彦 著 集英社 2022/12/19 14
28 変な家 雨穴 著  飛鳥新社 2021/7/20 14
28 あなたが誰かを殺した  東野圭吾 講談社  2023/9/21 14
28 成瀬は天下を取りにいく 宮島未奈 新潮社 2023/3/14 14


(コミック)

1 呪術廻戦 21 芥見下々 著 集英社 2022/12/2 103
1 ONE PIECE 106 尾田栄一郎 集英社 2023/7/4 103
3 呪術廻戦 22 芥見下々 集英社 2023/3/3 101
4 呪術廻戦 23 芥見下々 集英社 2023/7/4 96
5 ONE PIECE 105 尾田栄一郎 集英社 2023/3/3 93
6 SPY×FAMILY 11 遠藤達哉 集英社 2023/4/4 78
7 ONE PIECE 107 尾田栄一郎 集英社 2023/11/2 73
8 呪術廻戦 24 芥見下々 集英社 2023/10/4 70
9 SPY×FAMILY 12 遠藤達哉 集英社 2023/10/4 64
10 キングダム 68 原泰久 集英社 2023/4/18 58

 

(文庫)

1 傲慢と善良 辻村深月  朝日新聞出版  2022/9/3 43
2 クスノキの番人 東野圭吾  実業之日本社 2023/4/5 28
2 52ヘルツのクジラたち   町田そのこ   中央公論新社 2023/5/25 28
4 二木先生  夏木志朋 ポプラ社   2022/9/6 26
5 正欲 朝井リョウ  新潮社  2023/5/25 25
6 メモリ-クエスト 高野秀行  幻冬舎  2011/7/1 24
7 流人道中記 上 浅田次郎 著 中央公論新社 2023/2/21 22
8 流人道中記 下 浅田次郎 著 中央公論新社 2023/2/21 21
9 モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語 内田 洋子 著 文藝春秋 2021/11/9 19
9 新宿なぞとき不動産 内山純 東京創元社 2020/10/17 19
9 世界でいちばん透きとおった物語 杉井光 新潮社 2023/4/26 19

 

(文芸書・一般書)

1 街とその不確かな壁 村上春樹   新潮社   2023/4/13 47
2 永遠なるものたち 姫乃たま 著 晶文社 2022/12/16 34
3 ハンチバック 市川沙央 文藝春秋   2023/6/20 32
4 汝、星のごとく 凪良 ゆう 著 講談社 2022/8/2 30
5 続 窓ぎわのトットちゃん 黒柳徹子 講談社 2023/9/30 29
6 キレイはこれでつくれます   MEGUMI ダイヤモンド社 2023/4/18 19
6 検証ナチスは「良いこと」もしたのか? 小野寺拓也 岩波書店 2023/7/5 19
8 基本は、真っ直ぐ- 長谷川晶一 著 ベ-スボ-ルマガジン社 2022/11/30 16
8 木挽町のあだ討ち 永井紗耶子 著 新潮社 2023/1/18 16
10 鵺(ぬえ)の碑 京極夏彦 講談社 2023/9/12 15


(新書)

1 ウクライナ戦争 小泉悠 著 筑摩書房  2022/12/6 21
2 言語の本質 今井むつみ 中央公論新社 2023/5/20 20
3 成熟スイッチ 林真理子 著 講談社   2022/11/15 19
4 死は存在しない 田坂広志 著 光文社   2022/10/19 18
5 ルポ 特殊詐欺 田崎基 著 筑摩書房   2022/11/8 16
6 80歳の壁 和田 秀樹 著 幻冬舎   2022/3/24 15
7 ぼけの壁 和田秀樹 著 幻冬舎   2022/12/27 13
7 バカと無知  橘玲  新潮社  2022/10/13 13
9 堤未果のショック・ドクトリン 堤未果 幻冬舎   2023/5/27 12
9 スマホはどこまで脳を壊すか 榊浩平  朝日新聞出版 2023/2/9 12
9 日本史を暴く 磯田道史  中央公論新社 2022/11/17 12

 

・店頭でもっとも売れたのは村上春樹さんの新刊でした。
続いて姫乃たまさんのエッセイ。昨年末にはサイン会を行っていただき多数の方に買いに来ていただきました。

・デアゴスティ-ニの玩具がかなりランキングに入っています。それで助かっているところがかなりあります。

・「続 窓ぎわのトットちゃん」は今もまだ売れ続けているので、集計期間を変えればもっと上位なのかもしれません

・予想外によく売れたのが岩波ブックレット「検証ナチスは『良いこと』もしたのか?」です。
 これ内容よかったですね。
 SNSで語られがちな「イメージ」を一つ一つ当時の時代背景とともに解説する、「歴史」をとらえる視座をクリアにしてくれる本でした。
  「紀伊國屋じんぶん大賞2023」も受賞したとのことで、おめでとうございます。

 

一年間のまとめ的なものをあとで書こうと思います。
書いたころには年が明けるかもしれませんが。

December 23, 2023

「40歳がくる!」雨宮まみ

〇「40歳がくる!」雨宮まみ(大和書房)

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本の中心に四角い枠が空いていて、そこに著者の顔写真が入る。
遺影みたいだなと思ったけど、実際それを意識して作ったんだろう。

2016年11月に亡くなった雨宮まみさんの7年ぶりの新刊。そしておそらく最後の本。
未完で終わったWeb連載エッセイに未発表原稿を2本、それと元担当編集者や関わりのあった知人友人らによる10人の「特別寄稿」が収録されている。

本編の「40歳がくる!」、40歳を目前にした雨宮さんがいろんなところで心境を変化させていく様子がそのまま描かれていく。
東京でのアーバンライフを華やかに生きる日々と、すべてを投げ出してしまおうとする捨て鉢な思考が平行に描かれる。
自撮りに抵抗あったけど、外国へ旅行したときに年配の人も楽しそうに撮ってるのを見てから気にすることをやめた、という話は連載時に読んだのを覚えている。

未発表原稿は衝撃だった。
ただ、みんなそうなんだと思うけど、「もう死にたい」と思って文章を書く夜もあれば、「楽しすぎて天国!」みたいな気持ちで文章をつづる夜もある。
「死にたい」という気持ちのときの文章だけ切り取ってわかった風にまとめたくない。

「特別寄稿」の方は雨宮さんと縁の深かった人の文章もあれば、面識はなく一読者としての雨宮さんに対する思いを語る人の文章もあり、温度差もバラバラである。
その乱雑さが「追悼」という色合いを深めていた。
ただ、余計なことであるのは承知の上で書くが、雨宮さんと親交の深かった人はあまり書いていない気がする。
おそらく、本当に深く付き合ってた人の感情は、ここに書けるものではないかもしれない。


7年前、雨宮さんが亡くなったときに書いた自分の文章を読むと「書き過ぎたな」と思う。
http://inoo.cocolog-nifty.com/news/2016/11/post-48ed.html

出さなくてもいいことまで書いてるし、自分の感情が出過ぎている。
今だったらこう書かない気がする。
そしてこの時点で自分も書いてるとおり、やはり自分は「知人」でしかなかったんだと思う。

かつて雨宮さんがその座を担っていた、人の痛みを救い上げるような書き手が今だと誰になるのかよくわからない。
たぶん、いるのだと思う。けれどわからない。
自分のアンテナが以前より弱まっている気がする。

亡くなって7年、今も雨宮さんの本は棚の片隅に置いている。
売れることはほとんどない。
知っている人はもう読んでしまってて、知らない人は知る機会がないんだろう。

30代くらいの女性に本を選ぶ機会が訪れたとき、相手を思い描きながら雨宮さんの本を入れたことが何回かある。
感想を聞くことがないので、読んでどうだったかとかはわからない。
全員が共感することはないだろうけど、共感してくれた人が数人でもいたらいいいな、と思って選んでいる。
共感してくれた人は、きっとまた近くにいる人に薦めてくれるだろう。

一回の投稿がSNSでバズって本が一万部売れることもある時代に、迂遠なマーケティングをやってると思う。
でもこういう河原で小さな石を積んでいくようなやり方しかできない。
本屋をやれている限り、この石は積み続けていくつもりだ。

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(H)

 

 

 

December 19, 2023

日刊SPA![書店員の書評]で書評連載しています

 

日刊SPA![書店員の書評]で店長が書評連載しています。

今後も継続予定なので日刊SPA!見てください。


「どこまでがリアルで、どこからがフィクションかわからない」先が見えない登山小説/上出遼平・著『歩山録』書評
https://nikkan-spa.jp/1962317?cx_clicks_art_mdl=10_title


「人間の承認欲求」がテーマの小説に自分の「みっともない欲望」を打ち抜かれる/小川哲・著『君が手にするはずだった黄金について』書評
「どこまでがリアルで、どこからがフィクションかわからない」先が見えない登山小説/
https://nikkan-spa.jp/1952117?cx_clicks_art_mdl=2_title

ニュースで流れないイラクの現実。「理論」や「学術」でなく「体験」で世界を語る/高野秀行・著『イラク水滸伝』書評
https://nikkan-spa.jp/1941120?cx_clicks_art_mdl=3_title

「他者が持っているもの」に敏感な私たちは「自分が持っているもの」に鈍感だ/市川沙央・著『ハンチバック』書評
https://nikkan-spa.jp/1929007?cx_clicks_art_mdl=4_title

December 17, 2023

「モヤ対談」花田菜々子

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〇「モヤ対談」花田菜々子(小学館)

自身の体験を書いた「出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと」がベストセラーになり、現在は高円寺・蟹ブックス店主である花田菜々子さんが本を出したばかりの著者20名をゲストに招き話した対談集。
登場するゲスト著者は下記の20名。

ヨシタケシンスケ 
窪美澄
山崎ナオコーラ 
ブレイディみかこ 
荒井裕樹 
岸政彦 
ひらりさ 
東畑開人 
西加奈子 
ジェーン・スー 
ツレヅレハナコ 
永井玲衣 
宇多丸 
メレ山メレ子
田房永子
植本一子
大前粟生
吉田貴司
岩田徹
飯間浩明   

文芸誌『STORY BOX』で2年くらい行っていた連載で、話題はゲスト著者のその時点での新刊で書いたテーマが深掘りされていることが多い。
平行して連載最初のころは日比谷のHIBIYA COTTAGEという書店の雇われ店長だった花田さんが連載途中で店の閉店を知らされ、独立して自分の店・蟹ブックスを開業する変化も話されたりする。

この本のよいところは20人、20冊分の「発見」があるところで。
それぞれ小説だったり、エッセイだったり、自分の専門分野で何かしら書いてる人たちの話には「人生の本質」が散りばめられている。
読んですぐわかるとか、役に立つとかではない。
ただ、「あー、確かにそうかもしれないな…」と感じる話がそこかしこに出てくる。
しかもそれは名言や至言みたいに「ここが大事です!」とドーンと出てくるのではなく、雑談の中でふっと漏らした何気ないひとことの中にあったりする。

たとえば『水中の哲学者たち』の著者・哲学者の永井玲衣さんは自著のこととか、哲学のこととかをいろいろ話す中で

「自分について考えるというのは、他者がいないとできない。人と話すからこそ自分がわかる」

と言う。
ここに私はハッとした。

確かに「自分一人で考える」という行為は深く考えてるようで結局は同じところをグルグル回っていて、その問題が発生した時からまるで状況は変わってないのに「自分一人で考えた」時間だけを担保にして、最初からそうするしかなかった選択を熟成した結論のように使う、ということが私はこれまでの人生で何度もあった。
けどそれは当たり前のことで、一人で考えたところで新しい発見や選択肢は何も生まれない。
他人と話すことで今の自分の俯瞰的な立ち位置を把握したり、それまで考えもしなかった角度からの視点を得たりする。
そのことを永井さんは「哲学」の枠の中で語っているのだと思う。

似たようなものが山崎ナオコーラさんとの対談にもあって、テーマは「家事と生産性」であるけど唐突に山﨑さんが「雑談するのっていいよね」という話を始める。
収録がちょうどコロナ禍の2021年で、家族以外の人と気軽に会うことに制限があった時期ゆえ「雑談に飢えていた」山崎さんはこんな話をする。

「人としゃべらないと『社会が、AIが』とか考えが固くなる」

他人と雑談しないと、すぐ話を「社会は」「人間は」「男は」「女は」とか大枠で話を考えてしまって、頭が固くなっていく。
そんなことを山崎さんは言ってるのだけど、私はここでも「あああ!」となった。
確かにそうだ。
人と話さないと、すぐ頭は固くなる。
「理論」「正義」を神にしてしまって、「人間」をその下に見るようになる。
そういう振る舞いをしてる人を、私たちはつくづくSNSで散見している。
そうか、雑談が足らないとそうなるのか…!とわがことを振り返りながら、深く納得させられた。

この本にはそういう「言ってる方は特に意識せず発せられた至言」がそこかしこに登場する。

ジェーン・スーさんの

「『世界はあなたを傷つけないようにデザインされていない』が大前提で、そこを知ってるか知らないかで受けるショックは全然違う」

「『傷ついた』と『傷つけられた』はまったく別物」

とか、

ヨシタケシンスケさんの

「子供には7割軽蔑されて3割尊敬されるくらいがちょうどいい」

とか、

ひらりささんの

「恋愛も推し活も幸せなだけだと中毒にならない
バッドイベントがのめり込ませていく」

とか。

あらためて、至言は雑談の中に目立たないようにそっと秘められてるんだなーと発見した本だった。
『モヤ対談』という書名について、特に本文中に言及がないので「日々モヤモヤすることを対談する」なのか「モヤモヤしながら対談する」なのかわからないが、人生の真理というのはスパン!と出てきたり与えられたりするものではなく、「ひょっとしてこういうことなのでは…」的におそるおそる探るようにして触れられるもの、という感覚がこの本を読んで実感させられた。

ぜひ読んでみてください。
読む人によって、感ずる部分は違うと思います。

 

(H)

December 04, 2023

年末年始の営業につきまして


いつも当店を御利用頂き、誠にありがとうございます。
年末年始の営業時間は下記の通りとなります。

12/30(土) 11:00~18:00


12/31(日) ~ 1/3(水)  休業


1/4(木) 10:00~19:00 (時短営業) 

1/5(金)~  通常営業(10:00~20:00)

よろしくお願いいたします。

※新刊発売は年内12/28まで、年始は1/4からです。

 

伊野尾書店

 

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