プロ野球が明確に変わった時代の記録 ~「1988年のパ・リーグ」
〇「1988年のパ・リーグ」山室寛之(新潮社)
1988年、南海と阪急2球団で同時に起きた球団売却と、歴史に残る死闘「10.19」ロッテ×近鉄戦の裏側を追うノンフィクション。
後半の「10.19」パートもよく調べたと思うが(有藤の抗議が長引いた背景に仰木の心ない一言があったという伏線、それ以外にも阿波野登板以降異様に時間がかかっていたことがやがて四時間ルールに引っかかることなど、知らない話多かった)、特筆すべきは前者の球団売却の事実だろう。
80年代に水面下で進められた「ロッテ福岡移転計画」、当初ダイエーが狙っていたのは南海ではなくロッテだったこと、これまで語られることのなかった中内功のプロ野球への関わり、水面下の情報が特ダネを狙ったマスコミによって表に出された時のハレーション…。
すべてが興味深く、面白かった。
歴史のアヤで阪急はブレーブスをオリエントリースに売却することになったし、少しタイミングが違っていたらロッテは福岡の球団になっていた。
そうなっていたら、その後のパ・リーグの歴史もまったく別の物になっていただろう。
西宮球場を改修した「阪急ブレーブス」にイチローは入団したのか。ホークスはどうなっていたのか。
マリーンズは生まれなかったのか。
想像はつきない。
大雨で地盤が緩んだ山肌がちょっとした刺激で崩れるように、パ・リーグはこの年を境に大きく姿を変えていった。
あれから30年が経った今だから知る、貴重な時代の証言集である。
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