« 今村夏子「むらさきのスカートの女」 | Main | 「掘り出し本屋大賞」開催中 »

May 25, 2019

胸を刺す強烈な物語 ~辻村深月「噛み合わない会話と、ある過去について」

Photo_33


〇「噛み合わない会話と、ある過去について」辻村深月(講談社)

2018年6月に出た小説。

この春に退職したスタッフが「とてもよかった」と言ってたので買ったものの、ずっと積ん読だったのをようやく読む。

4篇の短編集。

読み始めてすぐに沸き上がる感情。

やばい。

これはやばい。

読みながら「うわあああ!!」と声が出そうになった。

どうして昨年話題にならなかったんだろう。

心臓をナイフで刺されたかのようなショックがずっと胸に残ってる。

4つの短編集だがすべてあるテーマで共通している。

それは「他者の認識」である。

自分はあの人をどう見ていたのか。

そしてあの人は自分をどう見ていたのか。

大学時代を共に過ごした男友達が結婚することになり、その相手が「ちょっとヤバい人じゃ…」となる『ナベちゃんのヨメ』。

国民的スターになったかつての教え子(でも担任はしていない)がテレビの収録で学校にやってくる。それに立ち会うことになった女性教師の話『パッとしない子』。

引っ越し準備の際にたまたま見つけた成人式写真をきっかけに語られる、女友達の「厳しかった」母親の話『ママ×はは』。

事業で成功したかつての同級生に取材をすることになったタウン誌記者。その同級生は「痛い人」だったのに…『早穂とゆかり』。

人間の底の底まで見通している辻村深月の観察力が恐ろしい。

ホラーとはちょっと違うのだと思う。

ただ、人の心をのぞき込むとそこに映っているのはホラー同様、暗くおぞましいものなのかもしれない。

そしてこんな社会現象になってもおかしくない作品がほとんど触れられてないままスルーされていく今の出版界にも「大丈夫なのか」という不安の感情を持ってしまう。


(H)

« 今村夏子「むらさきのスカートの女」 | Main | 「掘り出し本屋大賞」開催中 »