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December 23, 2018

安くて美味い魚の向こう側 ~鈴木智彦「サカナとヤクザ」

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○「サカナとヤクザ  暴力団の巨大資金源『密漁ビジネス』を追う」鈴木智彦 (小学館)

ヤクザルポの名手による水産業の裏側を当たったルポルタージュ。

全体の構成に疑問を感じる部分もありつつ、著者が危ないところまで潜入して取ってきた証言はみんな面白い。...
特に築地潜入取材は面白い。
漁業や河岸といった世界は一般社会からはみ出した訳ありの人でも受け入れる土壌があるんだなと感じる。
流通するナマコの半分が密漁で、そのほとんどが中国に行くとか普通に生きてたら知り得ない話だった。

あと根室漁業裏歴史が面白かった。
「根室の漁師は北方領土まで乗り込んでカニ密漁してくる」とは西原理恵子がマンガでよく書いてたが、思ってたより組織化された話だった。
出てくる人物がみんな「オホーツクの帝王」とか「北海の大統領」とプロレスラーみたいな異名がついてるのがすごい。
そういえば佐山サトルさんが製圏道をロシア人とやってたのも根室ではなかったろうか。釧路だっけ。

「密漁」は犯罪行為として扱われるが、では誰が被害者なのかと考えると難しい。
海産物は「登録した漁師」だけのものなのか。
農業は自分で準備し、育てなければ収穫はできない。畜産も同様。
だが海産物は海で勝手に育つ。
海に出れば獲れる。
その海は国家が範囲を制定する。制定された海域は妥当なものなのか?そもそも海は誰のものでもないのでは?

私が好きでよく行く新宿の回転寿司屋は基本一皿160円だ。この本に取り上げられるウニも鮭もイクラもウナギも160円。仮にどこかで正規のルートでないものも混じっていてもわからない。
私は密漁でも何でも安くてうまければいいや、とそれを食べる。大半の人もそうだろう。

だから漁業は裏ルートがなくならない。今後もなくならない。

「○○水産」という海産物を安く食べられる居酒屋が全国チェーンで展開されるためには、海産物を安く安定供給するルートが求められる。
でもそれがどこでどういうルートになっているのか、正規流通品だけが入ってきているのか、私たちが知ることはない。

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