« September 2018 | Main

October 2018

October 01, 2018

『普通』を奪われた人生から『普通』を取り戻すために ~「人殺しの息子と呼ばれて」

Photo

○「人殺しの息子と呼ばれて」張江泰之(KADOKAWA)
表面化した事件の中ではおそらく戦後もっとも陰惨な殺人事件であったと思われる「北九州連続監禁殺人事件」。
その犯人の息子と接触したフジテレビディレクターによる取材記。
 
犯人の息子である『彼』がどのような人生を送ってきて、今はどうしていて、事件や両親、社会に対してどう思っているかが著者とのインタビューで明かされる。
読んでいて、お腹が苦しくなるようなほど重い。
本当に重い。
コメントが出てこない。
 
「大変だったね」がビルの2階から落ちた人にかける言葉としたら、この人は30階くらいから落ちている。
かける言葉はない。
「よく、生きてきたね」くらいしか。

7、8歳でよくわからないまま殺人の手伝いをさせられ、満足な食事も与えらず自由も奪われ、暴力から逃れられない世界で、電気を体中に通される……。
幼少からずっと「心安らげる世界」がないまま成育した人間が、通常の「人間の世界」に入るにはここまで苦しくなるような経験がないといけないのか。
とにかく読んでいて苦しい。
 
 
私は、自分がわりと悪趣味な人間で、悪趣味な本とかにも耐性がある気がしたが、この本の後半に出てくる収監中の母親が送ってきた手紙の文面を読んでるうちに本当に気分が悪くなった。
どんなホラー小説とかでも、比喩的表現ではない、文字通り「気分が悪くなる」ことはなかった。
しかしここに出てくる母親のこの手紙だけは読み出したら胸の奥から“不快の塊”みたいなのが逆流してきて、本当に気分悪くなった。
ここは読めなかったし、正直もう読みたくない。
恐ろしかった。人間が、恐ろしい。
 
事件当時9歳で保護された『彼』は現在20代後半になっている。
詳細は明かされないが正業に就いている。
本当に、普通の幸せを享受してほしい。
 
異常な生育環境で育ってしまった『彼』はその「普通の幸せ」を受け止められる心理体勢になるまでがまず大変なのだが、いいことがたくさんあってほしい。
無理なことかもしれないが、事件の残像から少しでも離れた忙しさと大変さにまみれてほしい。
それが一番事件から距離を置ける手段だろうから。

« September 2018 | Main

My Photo

他のアカウント

ご注文はこちらまで

October 2018
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31