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September 03, 2018

歪な友情と閉鎖環境のハレーション ~「送り火」高橋弘希

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○「送り火」高橋弘希(文藝春秋)

歩は中学三年生。
親の仕事の都合で東京から青森の山間部に引っ越すことになる。
12人しかいないクラス、うち男子6人の中に溶け込めるか懸念するがリーダー格の晃と最初に校外で親しくなったのが好転し、男子グループの中でうまく居場所を作る。
『僕は転校が多いから、こういうのは慣れている』と自認する歩だが、他の男子グループの5人には歪な力関係が働いていることに徐々に気づいていく…。

 

読んでいて藤子F不二雄『少年時代』を思い出した。
疎開と転校、昭和20年と現代、と差異はあれど「閉鎖環境で生まれる歪な友情」というテーマと、全体の雰囲気がよく似ていると思う。

高橋弘希は『日曜日の人々』もそうだったが「静かに迫りつつある不穏な気配」の書き方がすごく上手い。
文字で見ても正確な解読が難しい青森弁と里の情景がその不穏さに拍車をかける。

 

誰にでも読ませたいかというと「いやまったくそんなことありません」と即答するくらい黒い話だが、個人的には嫌いじゃない。
高橋弘希はこういうどす黒い人間の関係性をもとにした長編を書いたらすごいものが出てくるような気がする。

(H)

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