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May 30, 2018

巨人ファンはどこへ行ったのか?

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「巨人ファンはどこへ行ったのか?」菊地高弘(イーストプレス)

 

いいテーマだと思う。
みんながうっすら気になりつつ、けど個人レベルで謎を解明しようというほどのモチベーションはない。
そういう問題をていねいに解き明かすのが書物の役割だ。
その意味でいい研究だと思う。

 

先にネタバレしてしまうと、オチはみなさんの想像通りである。
娯楽が多様化したから。
昔は巨人戦しか放送してなかったからみんなそれを見てたし、いいも悪いもそこから入るんだから巨人を好きになる人ばかりなのは当たり前。
J
リーグができ、サッカー日本代表が生まれ、プロ野球は各地に地元密着を図った結果、ファンは分散した。
だいたいそのとおりのことが書かれる。そりゃそうだ。

 

が、著者の菊池選手(「野球あるある」の著者)がこのテーマに従って

「元・巨人ファン」

「現・巨人ファン」

「かつての球団関係者」

「巨人から他球団に移った元選手(駒田)」

「キャンプを見に来る宮崎県の人」

「元・巨人応援団員」

などに丁寧に取材していくと、ひとつのテーマが浮かび上がってくる。

 

われわれはなぜ野球を見るのか。

 

われわれはなぜ野球を「あんなにも」見ていたのか。

 

大多数の人は毎日慎ましい生活をしている。
その毎日の中で、「家族」「仕事」「勉強」「恋愛」といった自分の半径30センチにある大きな問題からちょっとだけ目をそらせるものを、われわれは日々欲している。
昔の人はそれが「枕草子」や「徒然草」だったかもしれないし、今の子供たちはYoutubeやソーシャルゲームにそれを求めてるかもしれない。
SNS
に投稿して「いいね!」をもらうことがそれにあたる人もいるだろうし、ネットや街頭で隣国やそこの国民を罵倒することがそれにあたる残念な人もいる。

 

学生運動が終息し、消費社会のバブル経済を迎え、それが消え去り、多様化する価値観を根付かせるインターネットが登場するまでの間にあたる1970年代後半から2000年ごろにかけて、多くの人は「プロ野球」にそれを求めた。
その中心にあったのがテレビと新聞という当時最大のメディアを抱えて国民の意識を形成することができた読売グループだったんだろう。
だから、本質的には、もうあの頃のような巨人ファンは戻ってこない。

 

「現・巨人ファン」のくだりの中で、プロ野球ファンが連日訪れる神田のベースボール居酒屋「リリーズ」の店長さんが「来店されるお客様はいろんなチームのユニフォームを着てますが、巨人のユニフォームを着てこられる方は非常に少ないです」と語る。
また、現在の巨人ファンは「隠れキリシタンみたいなもので、言うと面倒に巻き込まれることが多いので自分から『巨人ファン』とは言わない」という話が出てくる。

「巨人」に対する視線はこの40年で大きく変わった。
それでも巨人は続くだろうし、巨人ファンはあいかわらずプロ野球ファンの中で多数派であり続けるだろう。

 

あの1994108日、ジャイアンツとドラゴンズが最終戦で並び、勝った方が優勝となった「10.8決戦」。
ジャイアンツの監督だった長嶋茂雄は試合前のミーティングで選手たちにこう語った。

 

「今日は国民的行事だ。
日本国民1億2千万人のうち、8000万人が我々を応援している」

 

たいがいにせえよ、と思う。そんなわけはない。

が。
長嶋茂雄は本当に、そう思っていたんではなかろうか。

 

長らくジャイアンツの球団運営に携わり、現在は退任された元球団マネージャーに著者は「ジャイアンツが一番人気あったのって、やっぱりV9時代だったんですか」と聞く。
彼は即答でこう答える。
「いや、そんなことはないです。V9のころは、後楽園球場が結構ガラガラでしたから。ジャイアンツが人気出たのって、1975年に一度最下位になってからのことなんです。
長嶋のファンだった世代が『俺たちが長嶋を応援しないと!』ってなったんです。
そこから巨人は人気が上がっていった。
その人気のピークを迎えるのは第二次長嶋政権の1994年なんです」

 

われわれは何も知らない。
ジャイアンツの本当のピークも知らないし、宮崎キャンプで雨の中傘を指して見ているファンに村田修一が練習の後にサインをしていたことも知らないし、某プロレス団体の会場で足を踏み鳴らしながら声を出している赤い服着た男の人が元ジャイアンツの応援団員、ということも。

(H)

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