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July 2017

July 24, 2017

最近7月がいちばん暑くないですか

佐藤正午「月の満ち欠け」が直木賞受賞しました。
おめでとうございます。
「生まれ変わり」というスピリチュアルなテーマを個々の人生にうまく乗せた物語でした。
佐藤正午は「身の上話」(光文社文庫)が好きです。
あれは読み終わってしばらく「面白かった…」とぼーっとしました。
「人生の岐路」をリアルとファンタジーの合間ですごく上手に書かれる作家さんだなと思います。

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岩波書店が初めて直木賞を受賞したということで話題になってましたが、いいことではないでしょうか。
しかし今さらな話でしょうが、一般世間にまで話題になる賞って直木賞と本屋大賞ぐらいなんですよね…。
人文、ノンフィクション系の本にも一般メディアに取り上げられるような賞が欲しいです。

☆限定販売

新宿区が区成立70周年を記念して製作した区史『新宿彩(いろどり)物語 ~時と人の交差点~』(税込1620円)の取り扱いを始めました。

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http://www.city.shinjuku.lg.jp/soshiki/soumu01_kushi1001.html

オールカラーで新宿区の歩みやゆかりの深い文化人の紹介(ヤクルトスワローズ真中監督と新潮社佐藤社長など)、古地図などが掲載。
1500部限定発売だそうですのでお早めにどうぞ。
伊野尾書店も店頭在庫が残り10冊ほどとなりました。


☆中井

ラズウェル細木さんの『酒のほそ道』41巻には中井の知られざる名店を飲み歩く「中井名店飲み歩き(前編・後編)」という回が収録されています。
店名に「山」がつく、中井にある3軒のお店を指して『中井三山』と呼ぶそうです…知らなかった。

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☆カレーの本

NHKで放送している「趣味どきっ!」のカレーのテキストがよく売れているのですが、
http://www.nhk.or.jp/syumidoki/syumidoki-tue/

先日出たこの本がすばらしいです。

○『いちばんおいしい家カレーをつくる』(プレジデント社)

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最近カレーの本というと「東京カリ~番長」の水野仁輔さんがだいたい呼ばれてるのですが、その水野さんの本のなかでもこの本は特に力が入っています。
何しろ一冊の本の中にレシピが3つしかありません(笑)。
その3つこそが「家で作れるカレーの究極」、なかでも最後のレシピの名は「ファイナルカレー」です。
もうこれ以上はないカレー。

とりあえず自分で一番目のカレーを作ってみましたが、本当においしかったです。

(参照)
普通の材料でつくる"最高のカレー"5条件

http://president.jp/articles/-/22205

 

☆奥田民生になりたいボーイ

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9月に映画化される『奥田民生になりたいボーイ出会う男すべて狂わせるガール完全版』(扶桑社)をお買い上げのお客様に、作中でヒロインのあかりさんがプレスを務めているアパレルブランド『ゴフィン&キング』のロゴをあしらったミニタオルさしあげています。
これよく作ったな…!

「完全版」になってストーリーが加筆され、より凶悪さが増したというか…エッジの効いた漫画になってます。
特に最後のあの喧嘩の場面ね…あそこで編集長が口ずさむアレがもう…!

 

☆業界ノンフィクション

○「誰がアパレルを殺すのか」杉原淳一/著 染原睦美/著(日経BP社)

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よく売れてるので読んでみました。
「アパレルの総売上高が1991年には15兆円あったのが2013年には10兆円になった」というデータを見てると「どこの業界も大変だなあ…」という凡庸な感想が出て来てしまうのですが、面白かったです。

デパートの中核テナントはこれまでずっとアパレルで、各デパートは入居するアパレルにかなり自分たちにいい条件で契約をさせてきたのが近年崩れて来て、入居するアパレルの不振がそのままデパートの閉店につながっているそうです。
「週刊ダイヤモンド」とかの特集をガッツリまとめたような濃さがありました。

 

☆コンプレックス

○「コンプレックス文化論」武田砂鉄(文藝春秋)

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天然パーマ、背が低い、下戸、ハゲ、一重(ひとえ)、遅刻、実家暮らし、親が金持ち……世にあふれるコンプレックスの中から特に代表的な10個を取り上げ、研究する評論集。
各コンプレックスごとに「その道の代表者」にインタビューするのが面白い。

下戸の章に出てくる、「ファンタが飲めない人にファンタをすすめる人はいないし、『すみません僕ファンタ飲めないんです』と言えば何を言ってるんだという空気になるのに、酒が飲めないとゆるやかに謝罪しないといけない空気になるのは何なのだろう」とあって、なるほど確かにそうだなと納得してしまいました。

私自身は酒は飲めるけどちょっと弱いくらいなんでどちらの立場もわかるところがありますが、勧める立場で言えば「同じものを飲んで同じ状態になって仲良くしゃべりたい」というのがあってつい勧めてしまうわけで、けど飲めない側からすればそうされると「だから同じものを飲まそうとすんなよ」という風になってしまう。
なんで「自分以外は飲みたいものも飲みたいペースもみんな違う」という事実にゆるやかに慣れていくのが結果的にいいのかなー、とずっと思っております。

ここに出てくるコンプレックスって「人と違う」ことが根っこで、「人と違う」がゆえに「そんなの大丈夫だよ」「気にすんなよ」で済むことのない、根深い問題だなとあらためて思います。

私のコンプレックスは…酒を飲む時があったら話します。別にコーラでもいいです。

 

☆ランキング

この1か月でいちばん売れた本は「HUNTER×HUNTER(34)」 冨樫義博(集英社ジャンプコミックス)でした。すごいなあ

(総合)
1、「死ぬくらいなら会社辞めれば」  汐街 コナ  あさ出版 
2、「やれたかも委員会 1」吉田 貴司  双葉社
3、Pen+ムーミン完全    CCCメディアハウス  
3、モデルが秘密にしたがる体幹リセットダイエット  佐久間 健一  サンマ-ク出版  
5、Numberプロレス総選挙’17    文藝春秋
6、(どうしても読んでもらいたい本)
7、   つまんないつまんない  ヨシタケ シンスケ  白泉社 
8、劇場  又吉 直樹 著  新潮社
8、1日10分でちずをおぼえる絵本  秋山風三郎  白泉社 
8、がんで余命ゼロと言われた私の死  神尾 哲男  幻冬舎 

☆告知

今年も
9/1~からさまざまな人におすすめの本を選んでいただいた「中井文庫」を開催します。
今年もまた多様な方々に参加いただくことができました。
詳細は8月のお盆明けくらいにまた発表したいと思います。

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July 05, 2017

とある新人漫画家に本当に起こったコワイ話

〇「とある新人漫画家に本当に起こったコワイ話」佐倉色(飛鳥新社)

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この本を紹介するかは非常に迷いました。
 
この作品を簡潔に説明するなら「ネットに漫画を発表していた著者のもとに某大手出版社(以下A社、作中では実名)の編集者から出版化の話が来て、本を出すことになったけどそこから大変な目に遭った」という話です。
この著者の佐倉さんとA社の騒動はすでにネットでも話題になっていたので、知ってる人は知っていると思います。
 
で、私が紹介するか迷ったのは一読して「A社…これはないだろう…」という反応をどうしても持ってしまうところです。
著者の佐倉さんは大変な目に遭っている。
けど私ども書店はA社にはお世話になっている立場だからです。
もし仮にA社の本がなかったら、自店の売り上げは結構な数字で減っていることと思います。
 
それでも取り上げたいと思ったのは、この本には現代社会で起きる揉め事の根っこがよく書かれている、と思ったからです。
それは「自分の会社、そして自分自身が仕事するにあたってのルールや価値観は相手も同じように共有している」と思ってしまうことです。
 
例をあげると、作中担当編集者であるボーノさんは佐倉さんに「ごめんなさい」「すみません」と謝りながら苛烈な業務を与えたり、あるいは事前の約束を反故にしたりします。
佐倉さん、そして読んでる側からすれば「なんてひどい編集者だ」と考えるのは当然ですが、たぶんボーノさんは周りの同僚や先輩編集者を見てそうなってるはずです。
「それが当たり前」、あるいは「そうしないとしょうがない」というロジックが編集部にあって、それも長らく積み重なった末にそうなっていったのだろうと思います。
 
ボーノさんは非常に保身的な言動が目立ちます。
もちろん本人のプライドの問題もあると思いますが、「失敗や訂正を口に出せない」空気が社内にあり、それが土壌になっていった部分もあると想像します。
そしてなにより
「というのが社内(A社)のルールなんだけど、それにのっとってやってもらえますよね?」
ということに対して無自覚になってしまっている。
相手側と自分が同じ「ルール」の上に立っているか、確認作業をするという発想がない。
なのでA社側の真意としては「黙って俺らの言うことを聞け」というよりは、「なんでこんなに揉めているのかわからない」が近いのではないでしょうか。
そしてこれは仕事をしていると「絶対に自分もしていないとは言い切れない」感覚なのです。
 
たとえば私は書店の店長ですが、店では学生のアルバイトスタッフにも働いてもらっています。
私は学生時代あまりお金がありませんでした。
だから今働いているスタッフにはたくさん稼いでもらいたい。
そうだ!じゃあ学生バイトのBさんには週五日、一日8時間働いてもらおう!
そうすると月20万円いくじゃないか!
それだけあればうれしいだろう、ねえBさん!
…と私がBさんのシフトを週五日、一日8時間にしたところで学生のBさんは参ってしまうでしょう。
そんな働いてたらBさんは授業に出る時間か睡眠時間か、どちらかなくなってしまいます。
 
この場合、私が自分のルールを「いちばんよいもの」と信じて、それ以外のBさんのルールというものを想像すらしなかった場合、Bさんが「こんなに入れない」と怒ったりしたら「え、なんで?なんで怒るの?だってお金もらった方がよくない?」とか言ってしまうでしょう。
 
これはわかりやすい例ですが、こちら側が「そういうものだ」と思っていても向こうは全然そう思っていない、というのは仕事をしているとそこかしこにあります。
立場が微妙に違う取引先はもちろん、同じ職種や役職でもあります。
そしてそれがトラブルになったとき、第三者に説明するのはかならず「普通はこういう場合A(自分たちのルール)なんだけど、それを先方はBにしろって言うんだよ」という言い方になります。
そこに「先方のルールはまったく違うかもしれない」という発想はありません。
 
というようなことで起きた揉め事が、非常に細かく具体的に書いてあるのがこの作品です。
そしてそれは全然A社だけの問題でない。
どこにでも起こりうる話だと思います。
 
窪美澄さんの小説「よるのふくらみ」には
 
「誰にも遠慮はいらないの、なんでも言葉にして伝えないと。どんな小さなことでも。幸せが逃げてしまうよ」
 
というセリフがあります。
 
私はこれほんと至言だと思ってて。
 
大事なことはなんでも言葉にする。
 
本当にそれをするだけで誤解や揉め事が避けられることって世の中にたくさんあるんですよ。
そんなわけで佐倉色さんにもボーノさんにもここを読んでるあなたにも「よるのふくらみ」を読んでもらいたいです。
ほんと名作です。

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