« March 2017 | Main | May 2017 »

April 2017

April 03, 2017

ReStart

だいぶ間が空いてしまいました。
4月です。
新年度ですね。
伊野尾書店もこの春に人の入れ替わりが大きくありました。
毎週日曜日定休日に関してご心配の声をいただいたりしました。
もともと伊野尾書店は父、母、私の家族営業でやっていた時代(1999年~2004年ごろ)は毎週日曜日が定休日でした。
その後いろんなスタッフの力を借りて、
「日曜日定休→毎月第一、第三日曜日定休→毎月第三日曜日定休→定休日なし」という風に変わっていきました。
いままた原点に戻った、という感覚があります。
できるところからコツコツやっていくしかないので、ご不便をおかけしますがなにとぞよろしくお願いいたします。
 
いまこんなフェアやっています。
○「誰かとつながるってむずかしい」

Photo

「他人との関係」をテーマにした小説やコミック、エッセイなどを集めました。
おかげさまで好評です。
若林正恭さんの文庫『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』がとてもよく売れています。
 
この本がヤバかったですね…。
郊外で夫、娘と暮らす平凡な主婦が、娘の通う幼稚園ママとの交流で“ちょっとしくじった”ことから始まる心理的圧迫が淡々と描かれます。
角田光代『森に眠る魚』を彷彿とさせる怖さです。
しかもここで書かれるような話って、近い話が現実に起きてるんじゃないかな…というリアリティがあります。
副題が『卒業したと思ったスクールカーストが、ママになったらまた再開』というのもまたおそろしい。
これ、たぶん人によっては読んだら過呼吸になるくらい心理的圧迫が強いと思うんですが、もしそうなったら次に読む本として田中圭一さんの『うつヌケ』をおすすめします。

Photo_2

 

『うつヌケ』は売れてるだけあって本当にいいことが書いてある本で、いろんな方々の「心理的にヤバい状態になったとき、自分はこうやってその状態を脱した」という実践的な話が出てきます。
大槻ケンヂさんが精神的な不安から逃れるためにプラモデルを作った、という話はすごく納得できるものがありました。
大人になれば誰しもうつ病までいかなくても「うつ病二歩手前」くらいのところまで精神的に追い込まれた経験の一つや二つはあると思うのですが、そういったときに何も知らないでパニックになるのと、“救命胴衣の付け方”的なことを知っていて対処するのではまったく違ってきます。
本当に誰しも読んどいた方がいい本ではないかと思います。
 
☆上半期もっとも衝撃を受けた本
○「裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち」上間陽子(太田出版)

Photo_3

 
すごい本、でした。
ため息が出て、言葉が出てこない。
こんなに苛烈な話なのに、ずっと取材対象の少女たちに寄りそう優しさが上間さんの文章からはにじみ出ていて、その温もりによって中和されている感覚があります。
「裸足で逃げる」は安息の場所としての「家庭」がなく、自分たちを求めてくる男たちが暴力で相手を屈服させることに何ら抵抗がない人間であることを理解しつつ彼らと生きていくことを選んでしまう、沖縄の女の子たちの物語です。
ここに出てくるのは沖縄の女の子たちですが、沖縄以外でもこういう話はいろいろあるんじゃないだろうか、ということが気になりました。
 
私たちが何の気なく人の多い電車に乗って苛立ちながら帰宅し、レンジで温めた昨日の残りのご飯を食べ、ぼんやりテレビを見て「ああ、風呂入らなきゃ」とか考えてるその時間に、今日眠るところもない少女が身体を売ってどうにか生きている。
現実は知れば知るほど、暗鬱な気分になります。
 
ただ、これは最近素晴らしいノンフィクションを読んだ時に共通する感覚ですが、「私たちは本当に他人を知らない」と思わされます。
沖縄のキャバクラ(風俗も含まれるのかも)は現実的に行き場のない少女たちの受け皿になってることを私は知りませんでした。
 
娘を暴力を奮う夫のところに殴られるのを知りながら返す父親がクワガタを持たせる話が一番刺さりました。
いろんな人に読んでもらいたい本です。
 
☆こんなのやってます
○「どうしても読んでもらいたい本があります」

Dsc_0564

 
1月下旬からこのような企画を店内でやっております。
基本的には昨年話題になった「文庫X」と同じようなものです。
 
「文庫X」の仕掛け人であるさわや書店フェザン店の長江さんは古い知り合いだったりします。
昨年、「文庫X」を始めたばかりの頃にさわや書店さんが「一緒に売ってくれる全国の書店募集」というような案内をされていて、一瞬申し込もうかと思ったのですが、「…やっぱり自分で本選びたいな」という思いがあって見送りました。
そこから「じゃあうちでやるなら何かな…」という選定課題がずっとあって、なかなか決まらないまま時間が過ぎてしまったのですが、今年に入ってある本を読んだとき「やるならこれしかない」という天啓のようなものがありました。
それがこの本です。
 
ただ、よかったのか悪かったのか、この本が結構普通に売れてしまいました。
ここを読んでいただいてる方は書店のベストセラーリストなども割合目にされる方が多いと思いますが、この中の本はそういったランキングに何回か出ているはずです。
なので、この「どうしても読んでもらいたい本」はいわゆる本好きの方には「あ、これもう持ってる」ということになりそうなのであまりおすすめしません。
どちらかというと「たまたま時間があって本屋入ったけど何を買っていいかわからない」的な、あまり普段本を読まない方に、手に取っていただけたらいいなと思い始めました。
 
おかげさまで発売開始から発売70冊を超え、好意的なお声をいただいたりしていますが「タイトルを隠す」というのは売り方としてはやはり邪道ですので、どこかで公開すべきかと考えています。
またそういったこともお伝えできればと思っております。
 

○「本の雑誌おじさん三人組が行く!」(本の雑誌社)

1

「本の雑誌」の不定期人気連載「おじさん三人組が行く!」が単行本になりました。
「おじさん三人組が行く!」は「本の雑誌」の浜本編集長、営業の杉江さん。編集の宮里さんの3人が出版業界のいろんなところを訪ね歩いてリポート…といえばリポート、ただ3人がダラダラしゃべってるだけといえばそんな気もする、出版業界版「水曜どうでしょう」みたいなとてもゆるい企画ですが、意外とここだけでしか見ないような潜入記事も多いんです。
 
たとえば「新潮社に行く」は新潮社のホームページからは絶対に出てこないような内部の様子が見れますし、「地方小流通出版センター倉庫に行く」もこれまたなかなか見られない場所です。
個人的に一番面白かったのは「与那国島にある日本最西端の出版社を訪ねる」で、え!与那国島に出版社あるの!という衝撃と、離島マニアにはおなじみの琉球エアコミューターに乗って3人が「朝ご飯食べる店がない…」と呻きながら与那国島にある日本最西端の出版社・カディブックスを訪ねる回は非常に面白いです。
 
ただいま伊野尾書店にはこの「おじさん三人組」のサインが入った貴重なサイン本が1冊だけ在庫あります。
なぜこの3人のサイン本が貴重かはこの本のラストに判明するのであまり触れられないのですが…。

Photo_4

☆元PL球児が描く超リアル高校野球漫画
 
いまさらバトルスタディーズ」(講談社モーニングKC)にハマりました。

1_2

 
著者のなきぼくろさんは実際に元PL学園野球部だったそうで、名門野球部の細かくてリアリティのある描写がたまらないです。
全寮制での3年生の振る舞い、1年生の食事や洗濯などのお世話、さらには練習中などに飛び交う『野球部用語』などなど、本当にリアルです。
深夜1時を過ぎて先輩のユニフォーム洗濯が終わりやっと寝られる…というタイミングで「たのむ!練習ボールが1球見つからない…一緒に探してくれ…」と同級生が泣きながら頼みに来るシーンは胸を打ちました。
 
しかし、ここのこのマンガに出てくる『DL学園』野球部の生活って、新日本プロレス入門者がたどる生活とよく似てますね…。
『強くなる』ということを突き詰めるとこういう感じになるのでしょうか。
 
☆NumberWeb「書店員のスポーツ本探訪」
 
 
連載続いてます。
私はあと一回で終了の予定です。
☆連休明けから新しいフェアを開催する予定です。
(H)

« March 2017 | Main | May 2017 »