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January 2016

January 27, 2016

あれから僕たちは 何かを信じて来れたかな

今年は1月から芸能ニュースがフルスロットルですね。
週刊文春は完売ですよ。
たぶん「週刊文春」って媒体を知らなかったり興味持たなかった若年層にまで「どういう雑誌か」というのを一撃で届けたのだから、あれはすごい広告効果だったのではないでしょうか。

そして場末の書店としては一日も早く飯島三智さんの手記が出ることを願ってやみません。

○今月のフェア

2016年最初のフェアを始めました。
今回はド直球です。
「本を読んで泣きたい」
いやーあれは最後ヤバかったね…という本を集めました。
わりとベタなセレクションです。

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なんでこのフェアをやろうと思ったかと言うと、店頭で「なんか泣ける本ない?」と聞かれることが結構多いんですね。

そういう時に「この本は読んだことありますか?」と聞くのがこれです。

・『手紙』東野圭吾 (東野圭吾)

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http://books.bunshun.jp/ud/book/num/974167110116

映画化もして大ヒットしたから読んだ方も多いと思いますが、読んでない、という方もまだたくさんいらっしゃると思います。
東野圭吾は本の販売数の割には過小評価というか「人気あるよね」みたいな感じですが、作品の完成度が高いという面でもうちょっと評価されてもいいような気がします。

ちなみに私が「手紙」に並ぶ名作だと思っている、同じく東野圭吾の「片思い」(文春文庫)は、東野さんが「夜空ノムコウ」にインスパイアされて書き始めた作品と聞きます。

夜空の向こうには 明日がもう待っている。

○祝・テレビ出演

「クレイジージャーニー」(TBS)出演で世間にまでその面白さが広がりつつある高野秀行さんの本を集めました。

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私、知らなかったのですが面白いですね。「クレイジージャーニー」。

ぜひ高野さんにはいろんな媒体に出てもらって有名になってほしいです。

高野さん、いま「考える人」(新潮社)で世界の納豆をめぐる「謎のアジア納豆」というノンフィクション連載をやってますね。

単行本化が待ち遠しいです。

○西武新宿線

西武線の本が昨年くらいからいろいろ出ているのでコーナー作りました。

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今年は何周年かに当たるんだっけ、と調べましたが
「1916年に村山軽便鉄道の箱根ヶ崎(東京都西多摩郡瑞穂町) - 吉祥寺間の免許を譲り受ける」
というのが見つかったぐらいで特に関係ありませんでした。

この路線は結局開通しませんでしたが、もし箱根ヶ崎から吉祥寺まで路線が伸びてたら東京の歴史もまた変わっただろうなあ…。

いまレジ前で「駅名キーホルダー」も売ってるのでよろしければご一緒に。

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○角田光代「坂の途中の家」(朝日新聞出版)

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結婚した人。
これから子供が生まれる人。
そして家に子供がいる人。

で、これからこの本を読もうと思ってる人に忠告します。

この本はやばいです。
ほんっっとにやばい。
読んでてナイフで刺されるような感覚になります。

なんだろう、「自分は(自分たちは)大丈夫」と思ってるものがいかに不安定で、ヒビの入ったものか思い知らされる。
夫婦というのは同じ地平に立ってるようでまったく立っていないんだ…と。

角田光代おそろしい。
なんでこんな話書けるんだろう。

電車ベビーカー問題とか、結婚/未婚、子供のいる/いないにまつわるどうにもならない断絶、SNSでのリア充投稿とそれにいらっとする気持ち、そういった根っこみたいなものが書かれてます。
新年早々激しく掻き乱される小説でした。

 

○東京人2月号増刊「哲学堂と中野のまちを楽しむ本」

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伊野尾書店から歩いて15分くらいのところにある哲学堂を特集した雑誌が出ました。
哲学堂。
東洋大学創立者であり、妖怪博士として名高い井上円了によって作った、世界に類を見ない「哲学」をテーマにした公園。
http://bqspot.com/kanto/tokyo/139

哲学、言うだけあって園内には難解な説明がいろいろ書いてあるんですが、それをこの本ではどういうことが書いてあるのか解説しています。

後半は中野の紹介。
中川翔子さんとカンニング竹山さんが出ています。

(H)

January 14, 2016

文庫『4522敗の記憶』の解説を書かせていただきました

双葉社の栗田さんという編集の方から「村瀬秀信さんの『4522敗の記憶』が文庫化されるのですが、その解説文を書いていただけませんか」という話があったのは昨年の12月初旬の頃でした。

まずびっくりしました。
なんで!?というのがまず最初の感想。

ただ、その奥底には「もしかしてあれかな…」というのがありました。

これです。

4522分のうちの15くらいの記憶
http://inoo.cocolog-nifty.com/news/2013/07/452215-d7c2.html

『4522敗の記憶』単行本発売時にそれを読んでワーッとなって私が書いたこの文章を、著者の村瀬さんが読まれて感激し、店までご挨拶に来てくださったことがありました。
自分の個人的な思い出を書き連ねた文章だったので恥ずかしくもありましたが、やはりうれしい出来事でした。

でも不安なことが二つありました。

一つは、『4522敗の記憶』は屈指の野球ノンフィクションなのだから、解説を頼もうと思えばいくらでも野球界の知名度のある人に頼めるだろうし、その方が読む人にとってもいいのではないか、と思ったことです。

二つ目は、こちらの方が気になったのですが、「本屋の中立性」みたいなものが消えてしまうのではないか、ということです。

私は『4522敗の記憶』を最初に読んだとき「これは名作だ…!」と心から思ったのです。
だからこそあんなブログを書いたりしたのですが、そういう私が解説を書いてしまうと、自分の店でPOPをつけたり目立つようにして売ったとき、買ったお客さんが本文を読み終わって最後に私の名前を見つけて「なんだよ!」と思われるんじゃないか…ということが気になってました。

でも、少し考えると「こんな話二度とないだろう」というのがまずあり、そして「買ったお客さんにもしそう思われたら『ごめんなさい』でいいじゃないか」と。

ということで、どうしても解説書きたかったんで、出しゃばって書いてしまいました。すみません。

よく見たら私の後ろにベイスターズファンというクレイジーケンバンドの小野瀬雅生さんも解説を書かれてるんで、そちらを本当の文庫解説だと思ってください

けどこれプッシュして売ってるのは、自分が解説書いたからじゃなくて、本当にいい本だと思ったからなんです。

今回あらためてこの本を読みなおしたのですが、これは「私たちの本」だなー、と。
ベイスターズというチームのことを、いろんな人が証言している。
読む人はみな思うはずです。
「何なんだろう、このベイスターズ(とホエールズ)というチームは…」と。
でもベイスターズについて考える時、どこかで「自分とベイスターズ」という物語を見ているはずです。
田代を、パチョレックを、鈴木尚典を、石川雄洋を遠くから見ている私たちの話だと。

私はプロ野球が大好きですが、「プロ野球の向こう側」にある物語を読んだり聞いたりするのがもっと好きです。

一番最近心に響いたのは昨年10月に出たベースボールマガジン社のムック「俺たちの藤井寺バファローズ」巻頭に掲載されてる放送作家の礒部雅裕氏の「銀河鉄道の夜。」というエッセイです。

1988年、東京は練馬に住む近鉄ファンの中学3年生だった礒部さんは、あの10・19のとき、受験勉強のために通っていた塾があったため川崎球場には行かず、塾から帰ってきてテレビをつけたら生中継されてることに驚き、そのままテレビの前で近鉄の優勝を願い続けますが、近鉄はあと一歩及ばず優勝を逃してしまう。
失意の磯部さん(中学3年生)はこう考えます。
「自分が川崎球場に行かなかったからだ」と。

そして翌年、近鉄が優勝争いをし、あと一勝で優勝できるとなった時、胴上げがかかった藤井寺球場の試合に高校一年生になった磯部さんは駆けつけることを決意します。
試合のチケットもなければ、その日泊まるところのあてもないのに…というエッセイです。

私はそういう話が大好きです。

そして、『4522敗の記憶』は、読んだ人だけのベイスターズについての記憶や物語が沸いて出てくるはずです。

できたら、それをどこかに書いてください。読みに行きます。
全部は読めないかもしれないけど、探せる範囲で読みに行きます。

野球って、野球の話って、そういうのができると思うから。

4522bunko_2_3

(H)

January 11, 2016

今の時代がいちばんいいよ

領収書を書く時、日付の欄に「2016」と書き入れるのにようやく慣れてきた今日この頃ですが、あけましておめでとうございます。

NHKが40代50代世代を完全に狙い撃ちしてきたような紅白歌合戦を放送し、格闘技は曙vsボブ・サップとか魔裟斗vs山本KID徳郁とか「いったい今は西暦何年だ」というような試合ばかりだった年末を経て、今週はイエローモンキーが再結成とか中邑真輔WWE挑戦とかLINEで卒論提出とかいろいろ騒がしい2016年の年明けですが、今年もよろしくお願いいたします。

 

私自身はわりとのんびりできたお正月でした。
録画したNHK「新・映像の世紀」 第三回「時代は独裁者を求める」を見たのですが、あれはすごかった。腑抜けました。
もうこの回は言葉でどうこう言うより放送を見てほしいのですが(たぶんまたどこかで再放送すると思います。NHKオンデマンドなら契約すればすぐ見られます)、番組を見終わってからこの本を手に取りました。

 

○「劇画ヒットラー」水木しげる(ちくま文庫)

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昨年末に亡くなった水木しげるは妖怪漫画家として知られていますが、自身の出兵体験や伝え聞いた体験談を基にした戦争漫画も数多く書いています。
その水木しげるが残したアドルフ・ヒトラーの伝記作品。

水木さんは同年代を生きたヒットラーへの関心が高かったといいます。
「彼がいなかったら私の運命も変わっていたかもしれない」(『東西奇ッ怪紳士録』)とも。

私はずっと「ヒトラーって政治の道に入るまではどんな若者だったのだろう?」ということに興味がありました。
この作品は水木さんが多数の文献資料を基に再構築した伝記なので真実味は高いと思ってるのですが、読んでいると非常にシンパシーというか、ヒトラーが今の時代の人間にも通ずる世俗性のようなものを数多く持ち合わせていたことがわかります。

それは「人は誰かからの承認欲求を得られていないと何かを攻撃する心理になりやすい」ということで。

若き日のヒトラーは画家を目指していました。
しかし数々の芸術家を輩出したウィーンの美術学校に二回落ちてしまい、その原因を「実科学校(10歳から6年通う中等教育学校)の教師がつけた内申点が悪かったからだ」と考えていました。
ヒトラーは建物や風景は上手に描けても人間を描くのが苦手だったらしく、また模倣は上手くてもオリジナリティのある作品を作ることは苦手だったようで、彼の絵に対しての評価はあまり高くなかったといいます。

また、ヒトラーははにかみ屋で誇大妄想癖を持ち、また興奮すると癇癪を起すことも多々あって、女性と話すことが苦手だったようです。
彼は政治の道に入るよりもずっと前からゲルマン選民思想を持っていたようですが、そのへんが合いまった結果、「ドイツ女性がユダヤ人たちに誘惑されてるかと思うと気が狂いそうです!」と憤激していたりする。

なんかこの辺り見てると、もしこの時代に2ちゃんねるがあったらヒトラーは毎日罵詈雑言を書き込んでそうだなーと思ってしまうんです。

「ウィーンの美術学校なんて行っても無意味。あんなところ行く奴はカス」
「ユダヤ人は(以下略」

とか本当に書いてそう。

膨れ上がった自尊心を持て余し、自己評価と現実の折り合いを付けられず「周りはバカばっかりだ」とひねくれ、「自分以外の民族は劣っている」と考えている若者。

どこかで聞いたことある話です。
ヒトラーは怪物扱いされますが、この漫画を読んでると決して遠い人物ではないんです。

芸術的才能を評価されず、恋人もできないヒトラーは志願兵になり、第一次大戦に一兵卒として赴きます。
支給される食事が一日パン一個という時に周りの兵士がこぞって「こんなんじゃ腹が減って戦えない」とこぼしてるのにヒトラーは「僕は戦えるね。愛するドイツのためなら」と答えて周りの兵士たちに「毛色が違うのがいるとどうにもやりにくい」と煙たがられたりしていますが、それぐらい彼の心の穴は強烈な愛国心で埋められていた。

満たされなかった彼の承認は自身という内側から、「愛するドイツ国」という外側に向かっていきます。
物語はこのあと彼が政治運動に身を投じて躍進し、果てはドイツ国家元首になっていくのですが、もし彼がこの頃に芸術面でも恋愛面でも承認を得ていたら、政治活動にあそこまで熱は入らなかったのでは、と思えてなりません。

この作品ではヒトラーがいかに政治活動に長けていたか、国家社会主義ドイツ労働者党という小さな政党を巨大化させて「総統」と呼ばれる国家元首になり、第二次世界大戦へと向かっていく話が描かれていくのですが、個人的には若き日のヒトラーの姿が一番印象に残りました。

私はずっと「水木しげる=妖怪漫画家」という認識しかなく、事実、水木さんの名声はその面に対して与えられてる部分が大きいと思います。
しかしこの「劇画ヒットラー」や一連の「総員玉砕せよ!」(講談社文庫)に代表される戦争漫画を読んでいると、人間の愚かさや怖さを極限まで見せられてきた水木さんが人間ではないものをひたすら描いていたというところに、戦争の恐ろしさが浮かび上がっているように感じてしまいます。

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水木さんの訃報が流れて一か月を過ぎ、年も変わりましたが著作はいまだに売れ続けています。
その存在の大きさを思い知らされます。

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年末年始に読んだ本をもう一冊。

○「朝が来る」辻村深月(文藝春秋)

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子供ができない夫婦と、14歳で望まぬ妊娠、出産した少女。
普通であれば交わることのない二組の人生が特別養子縁組仲介施設によって重なった時に起きる物語。

この本は結構いろんなところで「よかった」「感動した」という声を聞いていて、それで読んだのですが…感動、と言ってしまうと割り切れない感情が残りました。

いや、これすっごく面白かったんです。
読みだしてから寝る間も惜しんで夢中で読んでしまうくらい、没頭しました。
だから絶対面白いことは間違いないんですけど…悶々としました。
というか今もしてます。
なんかそれは女の人が「子供を産む」ということに対しての重みを突きつけられたようなところがあって。

うーん、まあ読んでみてください。ってひどい流れだけど。
終わり方が美しいです。
読み終わって辻村さんがどうしてこういう物語を描こうとしたのか、どうしてこういう終わり方にしたのか、が伝わってきたような気がしました。

今さらな話ですが、本はいいなあと思った年末年始でした。
少しでも本に触れられる場所でいられるよう、がんばります。

タイトルは最近一番シンパシーを感じた言葉から。

音楽CDですけど出版社(エランド・プレス)扱いなので、伊野尾書店でも売ってます。

前野健太、すごくいいです。

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