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December 2015

December 27, 2015

伊野尾アワード2015

はい、今年もやってまいりました、伊野尾書店店主が選ぶ独断と偏見の表彰式「伊野尾アワード」の季節が。

今年もまた誰に期待されたわけではありませんがネットの片隅で粛々と発表したいと思います。

 

振り返ってみるとこれ始めたのって2011年なんですね。4年前。

歴史があるようでそうでもなかったですね。

もともとはみちのくプロレスが(というよりザ・グレート・サスケが)「みちのくアワード」という表彰をやってて、その年に行われた素晴らしい試合や活躍した選手とかのほかにサスケが心に残った映画とかムーブメントを選ぶというのをトークショーとか雑誌誌面でやっててそれが面白いなーと思ってマネを始めたのですが…いまgoogleで「みちのくアワード」というのを検索してもまったく何も出てこないことが判明しました。私が見ていたものはなんだったんでしょう。夢でも見ていたのか。

 

そんな模倣の表彰として始まった伊野尾アワードの「伊野尾が選ぶ今年最高の本」、過去4年はこんな本が選ばれてました。

 

2011年=金原ひとみ「マザーズ」(新潮社)

2012年=卯月妙子「人間仮免中」(イーストプレス)

2013年=いがらしみきお「I【アイ】」(全3巻・小学館ビッグコミックス)

2014年=ぼく『ぼくのおやつ ~おうちにあるもので作れるパンとお菓子56レシピ~』(ワニブックス)

 

見事に統一性がないですね。

いかにそのときそのときで思いついた本を選んでいるかがよくわかりますね。

 

といったあたりで「伊野尾が選ぶ今年最高の本」、2015年はこの本にしたいと思います!

 

岸政彦「断片的なものの社会学」(朝日出版社)

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はい、これにしました。

昔なんかのCMで、タバコだったかお菓子の箱だったかが映ってるカメラが引きのロングショットになってくとそれが線になってて、さらに引きのショットになるとそれが人の顔になっている(モナリザの絵だったかも)、というような映像があったと思うんですけど、私は読んでるうちにそういうことを感じさせる本が大好きで。

すごく小さなことを書いてるようで読んでいくと実はそれって人間とか社会全体に対して普遍的に言える真実を書いている、というような。

この「断片的なものの社会学」は大阪の社会学者で大学教授である岸さんが自身のこと、周りで見聞きしたことを書き綴ってるエッセイ集といえばエッセイ集ですが、通して読むといろんなことに通じる深い話がたくさん出てきます。

 

たとえば、岸さんが以前住んでいたアパートの隣部屋には顔を合わせるといつも小さな植木鉢をくれるばあさんがいた。最初はありがたくもらったが何回も何回も持ってくるので「もう次はいい」と岸さんが断るようになった。けど断っても部屋の前に置いていく。いらない、とはっきり言っても部屋の前に置いていった植木鉢をどかそうとはしてくれない。

ある時、岸さんは学生との聞き取りの中で年寄りの女性が近所の人と円滑なコミュニケーションをするのに植木鉢が一役買っている、ということを耳にする。「その花きれいね」「肥料なにやってるの」「これは鶏糞でね」「鶏糞は匂いがね」云々。

それから別のところで孤独死は男性の方が圧倒的に多いという事実に触れる。女性はどこに行っても女性同士でコミュニケーションを取れる。男性は仕事を抜きにすると途端にコミュニケーションを取るのが難しくなる。

そうしたところで冒頭の植木鉢をくれるばあさんに戻っていく。私たちは気軽に植木鉢を分け与えてたわいもない話をするのがどうして難しいのか…と。

 

非常に示唆に富んだ、それでいて人の温かみも感じられる、奇跡的な一冊だと思っています。

読んでほしいです。

 

 

この小説が素晴らしかったで賞

今年は又吉さんの「火花」がモンスターヒットになりました。書店的には大変に売り上げに貢献いただきましてありがとうございました。

また某所で伊野尾がお世話になりました羽田圭介さんの「スクラップ・アンド・ビルド」も本当に売れました。

年が明けて1月半ばには次の芥川賞・直木賞の発表があるわけですが、えらいハードルが上がってないかってくらいこの二作は大きな作品になりました。

そういった流れを踏まえた上で、今年一番面白かった本はこれを挙げたいと思います。

 

○「流」東山彰良(講談社)

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ちょ、いまそこで「あー直木賞のね…」って流そうとしたあなた。

読みました?

意外に「知ってるけど読んでない」という人は多いのではないでしょうか。

まあそう言ってる私も毎年必ず芥川賞と直木賞の受賞作読んでるわけではないのですが。

 

この「流」、オビに「20年に1度の傑作!」と書いてあるんですよ。

北方謙三さんが直木賞の審査の時にそう言ったらしいのですが、読む前は「またまたあ」と思ってたわけですよ。

20年ですよ?20年前って、松本人志の「遺書」と「松本」がベストセラーになってた時代ですよ?

そこから更新されてなかったんか?ってぐらいの話ですけど…これが読むと「20年に1度は言い過ぎかもしれないけど、それぐらいのことを言いたくなるわ」と納得せざるをえないぐらいの大傑作で。

本当、面白かったです。個人的な好みに合ってた、というのもあると思うのですけど、なんか一部の人が抱きがちな「直木賞獲った時点で読まなくてもだいたいどういうのかわかる」的なことを思っていたなら、「これ読まないでホントにそう思ってるの?本当に?」と問い詰めたいくらいです。

別にいいじゃないですか、何賞獲ってようが、どれだけ売れてようが。他の人はいいんですよ。あなたにとって大事かどうかです。

そして私にとって今年一番推したい小説はこれなのです。

 

そういえばここのブログには載せそびれたのですが、12/1から「伊野尾書店の担当者が選ぶ今年売れた本・素晴らしかった本」というフェアを開催しています。

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そこにこのアワードに載せたような本も並んでいます。

気になったらぜひ見に来てください。といっても12/31までなんですが…。

 

 

☆2015年に売れた実用書

今年売れた実用書の中から伊野尾が気になったものをいくつかピックアップしたいと思います。

まずこれ。

 

○「酢タマネギでやせる! 病気が治る! 」(マキノ出版)

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はい。売れましたね。酢たまねぎ。

たまねぎの酢漬けが健康にいい、ということで今年前半爆発的に売れました。

「高血圧、糖尿病を撃退する」といった具体的な効果のほかに「院長の耳鳴りも消えた!」という報告も寄せられています。高血圧と糖尿病と耳鳴りは根っこは同じなのでしょうか。

で、ここで「院長って誰だよ」という当然の疑問が出てくると思います。

調べてみたところ、この酢たまねぎ健康法を最初に提唱したのが南越谷健身会クリニックの周東寛先生という方で、おそらくこの周東先生のことだと思われます。

ちなみにこの周東先生、「健康とカラオケの効果を説く講演を随所で開催している」とのことで、「カラオケ演歌療法」というCDを出してたり、

・「医者がすすめる『演歌療法』改訂版 最前線で実証!健康長寿になる『歌い方』」 (コスモトゥーワン)

 

・「健康に長生きしたければ1日1曲歌いなさい」斎藤一郎氏らとの共著(アスコム)

といった書籍も出しています。いろんな発見をされているんですね。

 

「酢たまねぎ」は夏くらいまでずっと売れ続けていましたが、「週刊文春」が「効果がない」と書いたりなんだりしてるうちに徐々に静かになっていきました。

こういうのって何で売れるようになって、何で止まっていくのか本当にわからないですね。

さしあたって今の時点でネット書店で「酢たまねぎ」で検索すると、同種の本が約15種類ほど出てきます。

2015年、確かに酢たまねぎはそこにあった。

 

 

 

○「聞くだけで自律神経が整うCDブック」小林弘幸、 大矢たけはる(アスコム)

Cd

これもなんかずっと売れていました。実用書業界(そんなのあるのか)を見てるとアスコムとマキノ出版の勢いが非常に目立ちます。

さて自律神経が整う音楽というのはこういうのらしいです。

 

そういえば昔、私も学生時代に「勉強ができるクラシック」みたいなCDを買ったことがありました。α波が脳にどうとか…。内容はゆったりしたクラシックでした。

 

 

☆ふるさと納税の本

これも酢たまねぎ同様、売れるとなったらいろんなところからバンバン出ましたね。

どこの版元の本が売れた、というよりお客さんが買いに来た時にその時点で並んでるふるさと納税本を買っていく、という印象なのでとりあえず今店頭にあるものを紹介します。

○「ふるさと納税 最旬ベスト!」 (マガジンハウスムック)

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いろんな出版社から出ましたが酢たまねぎと違うのはこれからも刊行予定が出てることで。

平日夜7時くらいに民放でやってるような情報バラエティ番組で「お得!」とか取り上げられたりすると、まだしばらくはブームが続くのかもしれません。

 

 

☆おにぎらず

これも今年流行りました。宝島社のが売れたかな。

○「おにぎらず」しらいしやすこ(宝島社)

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私も作ってみたんですが普通のおにぎりよりいろんな具材を入れやすいかも、というのは思いました。あと手で握るってめんどくさかったな、とも(笑)

定着するような気がしますが、数年後に揺り戻しで「おにぎりブーム」が来るような気もいたします。

 

 

☆ミニマリスト

断捨離ブームは数年前ですが、去年ぐらいから「そもそも所有するモノを限りなく減らして暮らそうという人たち」=『ミニマリスト』のライフスタイルを紹介した本が結構売れました。

一番売れたのはこれかな。

○「ぼくたちに、もうモノは必要ない。 - 断捨離からミニマリストへ」佐々木 典士 (ワニブックス)

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著者の佐々木さん、出版社の方なんですね。

インタビューがありました。

http://www.sinkan.jp/news/index_5926.html

今年は「フランス人は10着しか服を持たない」(大和書房)とか「服を買うなら、捨てなさい」(宝島社)なんて本が売れたりしてて、少しずつ「モノを減らそう」という方向に行ってるんだな、と思います。

なんて「捨てる!技術」辰巳渚(宝島社新書)がベストセラーになったのは15年前なんで、あんま変わってないのかもしれませんが…。

 

☆雑誌の表紙で見る今年の顔

今年の8月に結婚発表された堀北真希さん。

堀北さんはそれまで定期的に少年マンガ誌の巻頭グラビアに出ていましたが結婚発表があったその翌月の9月下旬の「週刊少年マガジン」でグラビアを終わりになられます。

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「10年間ありがとう!」なんて書かれてますが、本人の意向なのか事務所の意向なのか少年マガジン編集部の意向なのか、そのあたりはわかりません。

堀北さんはその後もいろんな女性誌の表紙になってるのですが、「あ!」と思ったのが12月初旬です。

毎年12月の頭には「すてきな奥さん」とか「ESSE」といった生活雑誌が新年号といって豪華付録なんかをつけた、通常号より力の入ったものを出します。

その「ESSE」新年号の表紙が堀北さんだったんですよ。

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ああ、結婚するとステージが「こっち」に変わるんだ…と思い知らされました。

というわけで次に生活雑誌の表紙に来るのは吹石一恵さんなんだろうなーと思います。

まあ、そもそも私ら世代で言うと後藤真希さんが「赤すぐ」の表紙に出てますからね。

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いろいろ感慨深いです。

 

 

☆伊野尾が読んだ2015年コミック

今年もすばらしいコミックはたくさんあって、ブログで紹介した「透明なゆりかご」とか、まんしゅうきつこさんの「アル中ワンダーランド」(扶桑社)とか、青野春秋さんの「スラップスティック」(小学館)とか、その他いろいろ紹介しきれないんですけど、最近面白かったのがこれだったのでこれにします。

 

○「太郎は水になりたかった」大橋裕之(リイド社)

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ガイコツみたいな中学二年生の男の子の太郎。太郎の友達でなぜか分断された頭のヤスシ。何もできないけど何かやりたいと思っている男の子達の、淡い時間を描いた青春マンガ。

「っんと馬鹿だなあ」ってアホさと「ああ…(ポンポンと肩を叩く)」ような郷愁と「ひゃっはあー!!」っていう大人になったら抜けてしまう喜びの絶頂のような感覚と、そういうのが一緒くたになって何とも言えない味わいになってます。

オビで東村アキコさんが「疲れてるとき、しんどい時、私はいつも大橋君の漫画を読む」

ってコメント贈ってるんですけど、ああ、なんかわかる…!と思ってしまいました。

いろいろと疲れてるときに読むといいマンガかもしれません。

ここで試し読みができるんで、ちょっと読んでみてください。

http://www.to-ti.in/product/?action=story&id=5

 

 

 

☆2015年プロ野球ベスト瞬間

ソフトバンクホークスが圧倒的な強さを見せた2015年。

“男気”黒田が広島に復帰して全広島ファンが泣いたり、DeNAベイスターズがまさかの前半戦首位からさらにまさかのそこからの最下位転落とかあったり、野球で賭博しちゃった人がいたり、秋山翔吾が空前絶後にヒットを打ってすごい日本記録を作ったのにどうにも西武ファン以外話題にしていなかったり、「トリプルスリー」がなぜか流行語大賞受賞して世間様から「知らねえよそんな言葉!」と言われてなぜか全プロ野球ファンが下を向いたり、いろんなことがありましたが。

今年一番心に残ったのはこれなんですね。

 

 

私の知人ですごいヤクルトファンの女性がいて。リーグ優勝決定試合、クライマックスシリーズ、日本シリーズ、全試合神宮球場で見ていたという人なんですけど。

その人に「山田の三連発はスタンドで見ててどうでした?」って聞いたら、ちょっと考えたあとで「なんか、夢みたいだった」と言ったんですよ。

「スタンドで見てて、『これは今本当に起きていることなんだろうか』『ひょっとして夢じゃないんだろうか』と思った」と。

なんかそれ聞いてめちゃめちゃいい話だなあ、と。

なかなか生きてて「今目の前で見ている光景は夢じゃないだろうか」って思わせてくれることないですよ。

プロ野球最高だなって。

ヤクルトは日本シリーズをソフトバンクに1勝4敗で敗れて日本一を逃すわけですが、

きっとこの山田3連発があったから救われた、って人がたくさんいると思うんですよ。

だから今年プロ野球最高の瞬間はこの山田哲人3連発にしたいと思います。

 

 

☆そんなわけで

長く書きすぎました。

来年はもうちょっと頻繁に更新できるようにします。

それではみなさん良いお年を。

(H)

December 20, 2015

年末年始の営業につきまして

年末年始の営業時間は下記の通りとなります。

12/29(火) 10:00~21:00
12/30(水) 11:00~20:00
12/31(木) 11:00~18:00

1/1(金)~1/3(日)  休み

1/4(月)~ 通常営業

よろしくお願いいたします。

※12/30~1/4の期間に新刊は出ません

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気が付けば一か月以上更新が停止しており申し訳ありません。
いろいろと書きたいことやお知らせしたいことはあるんですが…全部言い訳になってしまいますね。

当面、ツイッターアカウントの方をチェックしていただけると幸いです。
https://twitter.com/inooshoten/

プロレス情報のリツイートが多くて恐縮です…。

年末恒例のアレはなんとか発表したいと思います。
本当にド年末になっちゃうかもですが。

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