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July 2015

July 25, 2015

奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール

☆コーロキは「宮本から君へ」を読んだことがあるのだろうか

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○「奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール」渋谷直角(扶桑社)

 

コーロキは35歳の雑誌編集者である。独身。
奥田民生を尊敬していて、奥田民生のような生き方をしたいと思っている。

コーロキは家電雑誌「ゲットガジェ」からライフスタイル雑誌「マレ」に異動してきた。
「マレ」の編集部員はみなオシャレ度が高く、歓迎会は居酒屋ではなくウォーターフロントにある編集長のマンションでホームパーティ、飲むのはビールや焼酎ではなくオルヴェノアのシャルドネというワインで、料理は編集長が自分で作ったものをポーランドの蚤の市で買った皿に乗せて出してくる。

カルチャーショックを受けているコーロキは「何が好きなの?」と聞かれ、「音楽が好きそうー」という合いの手に思わず「奥田民生が好きです」と即答するが、場の空気は「ああ、いいよね」と当たり障りのない反応で、やがて他の編集部員が「私、チャーチズを見に行った」という話を始め、別のさらにオシャレな話題に流れていく。
帰り道、コーロキは「吉そば」で立ち食いそばを食べながら、周りの話題についていけない自分を恥ずかしいと考える。

渋谷直角のマンガの最大の特徴はこの恐ろしいまでに書き込まれたディティールにある。
「神は細部に宿る」という言葉があるが、まさしくこのマンガはまんべんなく神が宿っていて、その様子はもはや「神がいるのが普通」みたいになっている。
それは山内マリコが『ここは退屈迎えに来て』で同じように店名やアイテムの固有名詞を出すことで地方在住女性の欠落感を浮かび上がらせるのに似て…

 

あああーめんどくさいっ!!

 

すみません。サブカルっぽい書評を書こうとしましたが無理でした。

なんでこんなことをしようと思ったのか。

やめようやめよう。

えっと、これ読んで最初に思ったのは「これはやばい」で。

次に思ったのは「まだ俺はこういうのに振り回されないといけないのか」という感情で。

というのもこれは、新井英樹「宮本から君へ」から花沢健吾「ボーイズ・オン・ザ・ラン」につながれた“青春ノイローゼなタスキ”を見事に引き継いでる作品だと思うんですね。

男子が、仕事で七転八倒して、恋愛に苦悩するという王道青春マンガのタスキを。

これは本当に世の中の痛みを知るすべての男たちに読んでもらいたいです。
あるいはすべての痛い男たちに。
いやこれは「ボーイズ・オン・ザ・ラン」第一巻発売時のコピーですけど、本当にそんな感じ。

まあちょっと気になるのは、「宮本から君へ」の宮本浩は20代前半で、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」の田西敏行が20代後半で、今作のコーロキは35歳なわけですよ。
なんかこういうマンガの主人公の年齢がどんどん上がってきていて、このままだと次は40代の主人公が仕事と恋愛にもがきまくる話とか出てきそうなんですが…さすがにそれはないか。

でも本当に、これはいいマンガだと思いました。
前作「カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生」も面白いマンガでしたけど、個人的にはこちらの方が好きです。
毎日の中の細々した小さな出来事が、大きな人生を作っている。
そういうものが書かれている作品が、私はマンガでも小説でも大好きです。

コーロキが奥田民生を人生の規範に置いたように、私は天龍源一郎を人生の規範に置いて生きてきました。
直接リングに上がって戦うわけじゃないけど、天龍源一郎みたいな生き方をしたいと思って生きてきました。

だから、最後に成長したコーロキが語るつぶやきは、私にとっても重かったです。
でも人の成長ってそんなものなのかもしれません。

僕らの自由を、僕らの青春を、おおげさに言うのならば、きっとそういうことなんだろう。

(H)

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