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April 2014

April 27, 2014

「妖怪ウォッチ」狂騒曲

先週は村上春樹に、今週はこれに追われた一週間でした。

○「 妖怪ウォッチまるごとともだちファンブック 2」(小学館)

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毎日「予約できますか?」「すみません、もう一杯です」を繰り返してました。

え?「妖怪ウォッチ」って何?そんな人気なの?という方はこのあたりをご覧になってください。

「子どものおもちゃなのに…業者が高値販売」
http://www.mbs.jp/voice/special/201404/14_post-487.shtml

聞いた話だと、付録や応募者プレゼントのメダルを作るのに時間がかかるみたいですね。
それで本ができるのが何ヶ月も先になってしまう。
けど熱が冷めるのも早いゲームの世界でその頃にはどれくらい需要があるのか、予測するのはなかなか難しい。
残ったらまるまるメーカー(今回は小学館)の在庫になってしまう。
今回だってウチの店の入荷数から類推するに全体では相当作ってると思うんですけど、それでもこれだけのブームになってしまうと買えない人が続出してしまう。

けど何年かに一回こういうブームは来るわけで。
私が子どもだった80年代にはファミコンブームというのがあり、「スーパーマリオ」の頃だったと記憶してますが、ファミコン本体が品薄でなかなか買えない時期がありました。
90年代にはたまごっちブームがあって、ポケモンもゲームソフトが買えないくらい人気が過熱していた時期がありました。

で、そのときと今と何が違うって、良くも悪くも情報が見えるようになってしまった、ってことだと思うんですよね。

自分が当事者だったファミコンブームのときは、おもちゃ屋さんに「今ないんだよー」って言われたらそれで終了でした。
親にしても地元以外の繁華街の量販店を覗く、ぐらいしか方法がなかったと思います。

ところが今はネットですぐ見られてしまう。
楽天で「妖怪ウォッチ ファンブック」で検索すると定価720円のファンブックがいろんな業者の手によって2000円~3000円代で売られているのがすぐわかってしまう。
http://search.rakuten.co.jp/search/mall/%E5%A6%96%E6%80%AA%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%83%E3%83%81%E3%80%80%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF/-/?l-id=s_search&l2-id=shop_header_search&x=26

なければないで平穏だったものを、見られるようになってしまったことで、浮き足立ってしまう心をコントロールしなければいけない時代なんだなーと思います。
諦める区切りがない世界、というか。

一方で金額や手段に関わらず入手できる手段があることで助かってる人も多数いるんでしょうから、悪いことばかりではないんでしょうけど。
「予約でいっぱいなんです、すみません」って言ったあとのションボリ帰られるお客さんの数を直接見てるとなんとかしてあげたいと思いつつ、出版社サイドの事情もそれなりに聞いているので、なんとも難しいなーという思いで一杯です。
これから先、本に限らずすべての製造メーカーでこういう突発的なブームに対応できる効果的な受注生産システムができるといいのですけれど。

 

☆村上春樹さん

○「女のいない男たち」村上春樹(文藝春秋)

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発売になりました。まだ読んでません。
読んだ人の中には『多崎つくる』よりこちらの方が好き、という声があったりしたのでいずれ読みたいと思います。

 

☆「最悪なことが起こります」 

その春樹さんと同じ日に発売になった本ですが…これは…。

○「ケモノの城」誉田哲也/著(双葉社)

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実際の殺人事件をモチーフにして書かれたミステリーですが、えーっと…だいぶ刺激が強いので注意して読んでください。
なんていうんだろう、結構地獄の釜をこじあけてます。
そういう刺激が得意でない人には絶対に薦められない話です。 

 

☆これもまた…

これは小説でなくてノンフィクションですが、なかなか飲みきれないものが読後残りました。

○「奥さまは愛国」北原みのり/著 朴順梨/著(河出書房新社)

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愛国運動にはまる女性を取材したノンフィクション。
昨今、「嫌韓本」と呼ばれる、韓国および韓国人はこういうところが愚かだ、というような本が非常に多く出てます。
出てるのは売れるから、読みたい人が多いからです。

で、これは表現物すべてに通じる話なんですけど、どんな内容やテーマであれ心の中で思ってる分には何考えても何を思ってもいいわけです。
フランス書院の文庫的なことは、実際に行動に移したら即逮捕ですが、頭の中で妄想してる分には娯楽だと思います。
同じ話で、「韓国(あるいは中国、別の国でも可)はこういう良くないところがある」と考えること自体はいいと思うんですが、それと新大久保行って「出て行け!」みたいな行動を起こすこととの間にはすさまじく大きな差があるわけです。
そういう活動は多くが男性によって行われているわけですが、最近はそこに一定数の女性がいる。
中には慰安婦問題に関して当時の日本兵を擁護し、元慰安婦の向こうの女性に厳しい言葉を出す人もいる。
彼女たちはどういう人生を送ってきて、どこでどのようにしてそういうことを考えるようになったんだろう?ということを探ったのがこの本です。

もちろんここに登場してくる女性はほんのごく一部でしかない。
でも彼女たちの話からは、この問題の大きな根っこのようなものが見え隠れします。
この本に出てくる、トリーバーチのシューズを履いて、ベビーカーに載せた赤ちゃんとともに日章旗を振ってデモに参加するVERY系の主婦の人を「私たちとは違う人」と分断しちゃえば話はラクなんでしょうけど、実際には

その人はわれわれと同じような人であって、何も変わらない。でもお互いの意識には深い断絶がある。
非常に考えさせられる内容です。

 

☆鳥取に行ってみたくなりました

木嶋佳苗さんという人に私は興味があって、正確に言うなら「木嶋佳苗に殺された人々はどのようにして彼女に篭絡されていったのか」というのが興味あるのですけれど、その木嶋さんが獄中で始めたブログ(今度有料メルマガになってしまうようですが)はこの本に触発されて開設したそうです。

○「誘蛾灯 鳥取連続不審死事件」青木理/著(講談社)

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鳥取のスナックホステスの周辺にいた6人の男たちが連続して亡くなっている不審死事件を青木理が自らの取材で得た主観で語っていきます。
被告の上田美由紀は「さえない太った中年女」(青木理の印象)だった。
では、そんなさえない女にどうして次から次へと男たち(中には刑事や新聞記者もいた)が引っかかっていったのか?
彼女は何者だったのか?
そんな疑問を解き明かす過程で、著者の青木理は何回もいろんなことがわからなくなっていきます。
その「人間がわからなくなっていく様」が重厚です。
そして、取材の中心となる、上田美由紀が働いていたスナックの人たちが実にいいキャラクターです。

この本の推薦コメントは木嶋さんの次の言葉をそのまま借りましょう。

「私は上田美由紀に嫉妬している。彼女は馬鹿だ。せっかく青木さんのような素晴らしいジャーナリストが書いてくれる僥倖をわかっていない」(木嶋佳苗)
http://blog.livedoor.jp/kijimakanae/archives/2112262.html

 

☆ついに来た

○「棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか」 棚橋弘至/著 (飛鳥新社)

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新日本プロレスが誇る絶対的エース、「100年に一人の逸材」棚橋弘至初の自伝。
棚橋は他にも著作はあるのですがそっちはブログ本だったので、ちゃんとした自伝はこれが初になります。
自伝ではありますが一つ一つのエピソードはあまり濃くなりすぎず、代わりに「会社を良くするために自分が何をしたか」というのが事細かに語られます。
特に総合格闘技に押され、選手は次々離脱し、リング上は二転三転右往左往、客席はガラガラ…という2000年代中期の低迷していた時期にエースを任された棚橋がどのような心持ちでプロレスと向かい合い、会社を立て直そうとしたか、の辺りは業種を問わず傾いてきている会社で第一線に立たねばならいすべての人たちにヒントになるような話が詰まっていると思います。

一例をあげると、「否定から入るな」「自分にはできる、と言い続けろ」。
昨年、ずっと欠場していた内藤哲也が夏のG1クライマックスを制覇したとき、マイクを持った内藤の第一声が「みんなはオレのことを忘れてると思ってたけど…」だったことに対し「それはいらない、言い切れ、もっとエネルギーのある言葉を使え」という話をしています。
「勝ちたいと思います」ではダメ。
「勝ちます!」と言おう。
断言することで自分を追い込み、またちょっと無理そうなことでも「やれます」と言い続けることで「もしかしたらやってくれるかも」という視線を持たれるようになる。
棚橋は低迷期の頃からずっと「オレが新日本を守ります」と言っていた。
自分でも「本当にできるのかな?」と不安になりながら言い続けることで、周りの視線も自分の意識も変わっていく。この変化が大きい、と棚橋は語ります。
棚橋は「逸材」というキャッチを好んで使いますが、やっぱり根本的には努力の人なんだな、ってのが伝わってくる一冊です。

☆今月の雑貨

○町娘のハンカチーフ

ってのを入れました。
めっちゃ売れております。

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(H)

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April 11, 2014

明日来てくれるかな?(店に)

前回の更新から一ヶ月ほど間が空いてしまいました。
その間世の中では「笑っていいとも」が終了し、プロ野球が開幕し、消費税が8%になり、本屋大賞が「村上海賊の娘」に決まり、小保方さんが会見する一ヶ月間でしたがいかがお過ごしでしたでしょうか。
会社員の方の中には人事異動でこの春から違う部署に、という方も少なからずいるようです。春ですね。

小保方さんの件で思うのは、「これバレないだろ」と思って科学誌に論文発表する人はそうそういないと思うんですね。
たぶん、論文の不正が騒がれだした時の感覚は「え?これダメなの!?」だったと思うんですよ。
他の人も日常的やってるのか、単純なミスなのかわかりませんが、そのことが問題になる、という意識はおそらくなかったのではないかと。
そして「自分たち以外の研究チームが再現実験に成功していない」ことと「STAP細胞は存在しない」はイコールではつながれないわけで。
どういう条件を満たせば細胞ができるかを把握してない段階かもしれない。それを発表しちゃった、ってのは問題なのかもしれませんが。

今回の騒動見て思うのは、科学にせよ医学にせよ研究の世界というのは門外漢にとっては本当にわかりにくい世界なんだなと思います。
「この世界では普通そういうもの」がこっちにはわかりませんから。
そしてメディアって、やっぱ男の人視線で作るんだなーというのを実感しています。プチ鹿島さんが「あれが上京仕立ての林真理子みたいなビジュアルだったら絶対に反応は今とちがっていた」といっていたのがヤケに印象的です。

そんなわけでいま店の「科学」の棚に並んでる本の中ではこれが面白いなと思います。

○「世界一素朴な質問、宇宙一美しい答え  世界の第一人者100人が100の質問に答える」ジェンマ・エルウィン・ハリス 編、西田 美緒子 訳、タイマ タカシ 絵 (河出書房新社

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科学、哲学、社会、スポーツなど、子どもたちが投げかけた身近な疑問に、ドーキンス、チョムスキーなどの世界的な第一人者が答えるという本。
朝日新聞に載ってそうな企画です。
「ウシが一年間おならをがまんして、大きいのを一発したら、宇宙まで飛んでいける?」という質問の答えが素晴らしいです。

 

☆香取慎吾のスピーチで泣きました

「笑っていいとも」は私が小学生のときに始まりました。
「グランドフィナーレ」の中で大竹さんか三村さんかどっちかがスピーチで言ってましたが、夏休みとか、学校が休みの日だと見られるテレビ番組でした。
なんで昼間に家で『いいとも』が見ている状況そのものに幸福感があり、内容は結構どっちでもよかった気がします。

あの「グランドフィナーレ」でのビッグスター大集結には見た人それぞれに語るポイントがあったと思いますが、私はダウンタウンとウッチャンナンチャンが「長いわ!」って入ってきた時に、「うわーこの組み合わせは『夢で逢えたら』以来だ…!」と胸が熱くなりました。
実際にはあの番組以降も二組はどこかで共演してたのかもしれませんが、少なくとも自分にとってはあの四人が同じ場にいるのを見るのは『夢で逢えたら』しかなく、あの番組を見てたとき自分は高校生だったわけで。
これまで見てきた人たちが一堂に出てきて、でもみんなそれぞれに年をとっていて、「『いいとも』が終わる」ということがそのまま「過ぎ去った時間は帰らない」ことであるというのを強烈に意識させられました。

「いいとも」は平日の昼休みにご飯を食べながらなんとなくテレビをつける、というシュチュエーションにもっとも適した番組で、肩肘張らないというか、あってもなくてもかまわないぐらいのユルさが常にあって、だからこそいつまでもそこにあるような錯覚をしてしまう存在だった気がします。
自分が本屋の仕事を始めた最初の2~3年、時代にして1999年から2001年くらい、毎日お昼に弁当を買ってきて父親である社長と二人で「いいとも」を見ながらこれといった会話もなく昼ごはんを食べていた時期があって、そんなことを思い出しました。

昨年後半からタモリ論的な本が樋口毅宏の新書を筆頭にいろんなところから出たのですが(参照:http://hatenanews.com/articles/201403/19434)、当のタモリさんはこの10年くらいほとんど自分の本を出してないんですね。

唯一出したのが講談社から2004年に出た「タモリのTOKYO坂道美学入門」(2011年に改訂版が発売)。
この中でタモリさんが自身の少年時代のことを書いている、「少年はいつも坂道を眺めていた」というエッセイが大変素晴らしいです。
読んでみてください。

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http://matogrosso.jp/tamori/tamori-01.html

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○タモリ伝 森田一義も知らない「何者にもなりたくなかった男」タモリの実像 (コア新書)

 

 

☆今まで誰もが触れなかった核心に初めて触れた妊娠・出産コミックエッセイ

○「ママだって、人間」田房永子/著 (河出書房新社)

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「母がしんどい」の著者が自身の妊娠出産を描いたコミックエッセイ。
妊婦の性欲という、わりとブラックボックスに入れられがちな話とか、産後うつになるメカニズムとか、ダンナとの関係性の変化とか、非常にナイーブで繊細になりがちなテーマをズサッ!という感じで切り込んでいく内容です。
途中「これ大丈夫か?」という部分があるのですが、まあそのあたりはいろいろありつつ、最後の読後感がとても良いです。
最近妊娠したばかりで、サブカル的な読み物に拒否反応を示さない女性へのプレゼントにちょうど良いと思います。

という話をツイッターに書いてたら著者の田房さんが来店くださって、サイン本(結構手が込んでますよ!)を作ってくれました。
残りわずかですのでお早めに。

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☆8%

いろんなものが中途半端な値段になってしまいました。
今週「少年ジャンプ」が255円という金額でしたし、税込410円だったコミックが軒並み432円になったりしてます。

残念ながらうちの店は3月末にあまり駆け込み需要がなかったのですが、この本が着実に売れました。
斎藤貴男は何年も前から講談社現代新書で消費税の本書いたりしていたので、よく調べてあるしこの本はわかりやすいです。
「学校で納税のことは教えない」「税金を教えるのは難しい」という箇所にあーなるほどなあ…と深く納得してしまいました。

○「ちゃんとわかる消費税」 斎藤貴男/著 (河出書房新社 14歳の世渡り術シリーズ)

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○「週刊私鉄全駅・全車両基地」

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今週は西武新宿線です。
これ読んで所沢駅がこんな開発されていたことを知りました。
全駅の細かいデータが載っていて、中井駅の一日の乗降客数は約2万8000人だそうです。
しかしこれ中井駅ちょうど改装中の写真だな…。

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☆確かにあまり知らないかもしれない

○「お前はまだグンマを知らない (1)」井田 ヒロト 著 (新潮社バンチコミックス)

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チバ県からグンマ県に引っ越すことになった主人公が次々に体験する恐るべきグンマの秘密!…ってもうなんだか書いててどうでもよくなりますが、なんだろう、「散歩の達人」的に面白いです。
清野とおる群馬版というか。
よくこれを無理矢理ストーリー仕立てにしたな。
なんか「“世界最後の魔境"群馬県から来た少女」 (スマッシュ文庫)なんていうラノベも出てるんですけど、最近群馬をネタにするのが流行ってるんでしょうか。

 

☆さーて来週のゲストは

村上春樹さん(一年ぶり・3回目)の登場です。
4月18日。
「女のいない男たち」発売。
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163900742

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