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November 2013

November 26, 2013

「あの日からすべてが変わったと思える、そんな日がある」(「リアル」13巻より)

車椅子バスケを扱った井上雄彦の人気マンガ「リアル」の最新刊13巻には腰椎を痛めて車イス生活になったプロレスラー・スコープオン白鳥の話が出てきます。

○「リアル(13)」井上雄彦(集英社ヤングジャンプコミックス)

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13巻はバスケをひと休みしてまるまるリング復帰戦を迎える白鳥の物語に当てられてるのですが、これがすごくよい。
プロレスの試合どころか歩くこともできない、ロープをつかまいと自力で立つことさえできない白鳥の『復帰試合』を、団体側は開催します。
「立つことさえできないプロレスラー」が、どうやって試合をするのか。
どう決着をつけるのか。
会場を埋め尽くすファンに何を見せるのか。
レスラーの持つ無茶さ、悲しさ、ハッタリ、事実と虚飾の曖昧な境目、そして人間としての強さ。
僕等がなぜプロレスに夢中になるのか、なぜプロレスで感動し、泣くのか、そういったことが全部描かれています。
本当にすばらしいのでこの13巻だけでも読んでみてください。

「KAMINOGE」最新号ではその井上雄彦に「なぜプロレスを描こうと思ったのか」というインタビューが載ってます。

○「KAMINOGE Vol.24」

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それによると井上雄彦自身がプロレスを見るようになったのはつい最近のことで、今年の8月に初めて会場で試合を見たのだとか。
それであんな深い物語が描けるんだ…天才だな…とつくづく思ってしまいました。

「プロレスと少年マンガは構造が似ている」
「スラムダンクはほとんどの試合で最初からどちらのチームが勝つということを決めずに描きながら勝敗をつけていった」
「でも、あらかじめ勝つと決めて書く場合にもまた別の闘いがあって、そこにはもっと高等な“何か”を要求されるんですよ」

など、大変興味深い話が次から次に出てきます。
こちらもぜひ。

でも、今回の「KAMINOGE」で一番笑ってしまったのはバッファロー吾郎Aによる「妄想・笑っていいとも最終回」でした。
最後の放送のテレフォンショッキング、タモリが出てきて「今日のゲストは…森田一義さんです」といって紹介するともう一人のタモリが出てきて…ここから先は読んでください。
私は笑いながら、泣きました。

○「自殺」末井昭(朝日出版社)

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元「パチンコ必勝ガイド」編集長が語る半生と自殺についての数々の考察。
もともと岡山の山の中の出身で、小学生の時に母親が隣の家の息子と鉱山でダイナマイト心中したという生い立ちで、親族や友人にも自殺した人が数多くいて、自身も過去何回か自殺を考えたということで様々な話が語られます。
両親が自殺したというアーティスト、青木ケ原樹海で自殺者を止める運動をしている人、自殺予防の研究をしている大学教授。

が、残念ながらというか、この本は自殺をテーマにしているんですけど、何よりそれを語る末井さんの半生の無軌道ぶりが凄くて、次々に出てくる濃すぎるエピソードがすっかり本来のテーマをぼやかしてしまうという、いいんだか悪いだかわからないけどとにかくインパクトのある本でした。
特に30代のころに会社に入ってきた女の子と不倫を始めて、徐々に後戻りができなくなって、会社も家庭もメチャクチャになっていって、そしてその交際相手の女の子もだんだんおかしくなっていくくだりは、こういうのが本当の意味での「修羅場」、修羅が待ち構える時なのだなと思うくらいの切羽詰った話でした。
表現欲求が満たされずに悶々としたものを抱えていた20代の頃、明け方の新宿でストリーキング(って今の若い人はわかるんでしょうか)した日の午後に三島由紀夫が割腹自殺したエピソードも印象的でした。

個人的には2013年を代表する本の一つだと思います。

○大今良時「聲の形」(講談社マガジンコミックス)

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ネットを中心に「これはヤバい」ということで話題を呼び、この作品が掲載された週の「少年マガジン」は一気に店頭からなくなり、この作品が載った号は6万部余計に売れたという逸話を残したマンガがついに単行本化。

テーマは小学校から中学校にかけてのいじめ、障害。
聴覚障害の女の子が入ってくることで変質していくクラスの空気が変わり、以前はいじめる側だった男の子がちょっとしたことでいじめられる側に転落していく、そんな物語です。

最近はマンガ家も出版社も面倒を嫌います。
表現として出したことがクレームの対象になりそうだったら、違うテーマや描き方にしてしまう…そういう風に流れやすくなってしまってる部分はあると思います。
そんな中で、直球で問題定期してきた作者と担当編集者の意気込みを、一書店としてぜひ買いたいと思います。

10代から20代の若い人に読んでほしい作品です。

○「雨のなまえ」窪 美澄(光文社)

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置かれた環境や毎日の生活に軋みを感じている人たちをテーマにした5篇の短編集。
いずれの短編にも印象的な雨の場面が出てきます。
どの話もすごく近くにありそうで、かといって近くであったところで「ああ…」としか言えないものがあり、それを含めて人生で…といろいろ考えさせられるものが多々詰まってます。
私はパート先に入ってきた大学生アルバイトに心ときめかせる40代主婦の懊悩を描いた二番目の話(「記録的短時間大雨情報」)に一番ウワーッとしました。
いやもうあれはなんというか…。笑えないし泣けないけど胸には相当きましたよ。
家が資産家で細かいことを気にする奥さんを持った男が浮気する話も、自分が担任するクラスに転校してきた美少女にかつて好きだった子の面影を重ねる中学教師の話もヤバかったですけど。

「最近おんなじような小説ばかりで飽きた」という人に薦めたい小説。

 

○「爆発しないケータイをください、を中国語で言ってみよう」近兼拓史/著 カネシゲタカシ/イラスト (宝島社)

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一応「中国国内でこんな状況になったら中国語でこう言おう!」という本らしいのですが…どう読んでも中国のおかしな文化を紹介する本ですよね。これ。

例文として、
「偽妊婦パッドはどこに売ってますか?」(=中国では電車内で優先席に座るためのニセ妊婦パッドというものが売られている)

「この神戸牛は北京産ですか?上海産ですか?」(=。。。)

「ハリー・ポッターは七巻で完結したはずですが」(=七巻で完結したはずのハリー・ポッターの八巻が売られているそうです。もちろん著者はJ・k・ローリングではない)

「私の頭上に洗濯物を干さないでください」(=バスの網棚や手すりに子どもの洗濯物を干す母親がいるそうです…)

中国…。

☆ウルトラマンタロウが初の著書を出しました。

○「ウルトラマンの愛した日本」ウルトラマンタロウ/著 和智正喜/訳 (宝島社新書)

No

翻訳本でした。
まあ出身が地球じゃない方ですしね。
内容は意外に保守的な話でした。

(H)

November 15, 2013

SSTは「シミ・シワ・タルミ」の略 by美ST

BSフジで土曜日の夕方に放送している「原宿ブックカフェ」という番組をご存知でしょうか。

http://www.bsfuji.tv/hjbookcafe/

毎回本をテーマにいろんな有名人が本屋で本を物色する様子を流したり、本のプレゼンを競い合う「ビブリオバトル」があったり、本屋に関するちょっとしたウンチク(「日本で一番高いところにある本屋は○○県にある××書店」とかそういうの)とか、ドリップコーヒーの淹れたての美味しさがどうのこうのとか。
ああ、番組スポンサーがネスレなんですね。ネスカフェ。
番組タイトルも原宿にある「カフェ原宿ネスカフェ」が関係しているらしいのですが。

その「原宿ブックカフェ」の中の「有名人が本屋で本を買う」コーナーの収録が先日伊野尾書店でありました。
どんな有名人が何の本を買うか、よかったら見てください。
放送日は11/30、12/7、12/14の3回になる予定です。

 

○本の雑誌「本屋さんが消えていく」特集

最近本当に「本特集」とか「本屋さん特集」みたいなのが増えました。
10年くらい前はたまーに「BRUTUS」が特集やって、たまに「ダ・カーポ」がやってたのが記憶にあるくらいでそれほど数があった印象はないんですけど最近は本当にいろんな雑誌でやってます。
そんな中、本と本屋のことを書き続けて10年どころか37年の歴史を持つ「本の雑誌」が「町から本屋が消えていく!?」という特集を組んでおります。

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今号で浜本編集長が「街の本屋で一日書店員の体験をする」というコーナーがありますが、その研修場所が伊野尾書店だったりします。
でまあ、私が「あれやってください」「これやってください」とか適当に指示を出してたのですが、浜本さんの手記を読むとだいぶ大変だったみたいです。

その他にも「神戸・海文堂書店のいちばん長い日」など興味深い記事が並んでおります。

 

○能町みね子「雑誌の人格」(文化学園文化出版局)

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能町みね子さんがいろんな雑誌の読者層を独断と偏見でものすごく細部にこだわったイラストと文章で解説するコーナー。
って言ってもいまいちピンとこないと思うので、例を出すと

「SWEET」さん
年齢:26歳
職業:OL
居住地:東京都杉並区
憧れの人:梨花
家族構成:一人暮らし(実家も日帰り可能な距離)
愛用品:ラインストーン多用のキラキラ小物

・ポップでかわいいものを愛する。でもそれなりの高級感は欲しい。
・小物大好き。雑誌の付録も大好き。
・エコバッグはDEAN & DELUCAよりcher
・普段の服は現実的
・彼氏の影は見えない

というような。

なんかもう…どこで見てきたの!?ってぐらい設定が細かいんですよね。
「KERA!」を読んでる女子高生の居住地が新潟県燕市だったり、「アイラブママ(正確にはI♥mama)」を読んでるギャルママの家族構成がトラック運転手のダンナと“ちびコ”(名前は『龍宇空(るうと)』)だったり。
「神は細部に宿る」という言葉を思い出しました。宿ってます。

 

○「家族喰い 尼崎連続変死事件の真相」小野一光/著 (太田出版)

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2012年に発覚した尼崎を中心としたこの事件は、聞けば聞くほど恐ろしい事件として深く印象に残っています。
ある日、ちょっとしたことで強硬なクレームを入れてくる人間が、少しずつ少しずつ家族の中に侵入してくる。
平和な生活が崩れ、金銭をむしり取られるようになり、人間関係は崩壊し、暴力の恐怖に怯えるようになる。
遠い身内だったりするので、警察に駆け込んでも「民事不介入」で追い返される。

こんなホラー映画みたいな話が今の日本にあるのか、と思いました。
その尼崎連続変死事件を現地で丹念に丹念に取材を重ね、他のメディアが一斉に引いていった後も尼崎に残り、ついには他のメディアには出ていない関係者の証言を拾い、事実を解き明かしたノンフィクション。

著者はフリーライターで、新聞社や雑誌社のような機動力を持たないため、ひたすら尼崎に通いつめます。
事件関係者が来ていた飲食店に毎日のように行ってお客としてお金を使って帰ることを繰り返し、そうして何回も通った末に「…あのな、小野さん、この人知ってるか」と一人の男性の写真を見せられます。
わからない、というと「この人は角田美代子に追い込まれて、行方不明になったんや」と教えられます。
警察発表にもマスコミにもこの人の名前は被害者として出ていない。
そういう、「表に出てない消された人間」がまだたくさんいる、というくだりで。

これは冒頭の場面ですが、読んでいけば読んでいくほど恐ろしくなる話が次々に出てきます。
また警察の反応がね…これ以上あんまり言わないようにしますが。
いろいろ想像すると…。

太田出版はこんな本出して大丈夫なんでしょうか。
今年下半期最大のヤバい本だと思います。

 

○「蜩ノ記」葉室麟/著 (祥伝社文庫)

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前藩主の側室との不義の疑惑容疑で、幽閉されて家譜編纂を命じられ、しかも10年後には切腹をすることを命じられた男の物語。

ウチのスタッフが「今年読んだ本の中で一番よかった」と激賞しておりました。
「日本語が本当に美しい。葉室麟は一番美しい日本語を書ける作家じゃないか」とのことでした。
私はまだ読んでないのですが、私の好きな作家である藤沢周平と似た雰囲気を感じるので、そのうち読んでみたいと思ってます。

 

○『モテるマンガ』(1)(ソウ・ゆうきゆう/少年画報社/ヤングコミックチェリー)

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ド直球なタイトルつけるなあ…と思いつつ楽しく読んでしまいました。
モテるためには道を聞くといいらしいです。
なんでかは単行本で読んでください。
個人的には「社会交換理論」のくだりに大変納得してしまいました。

しかし最近またこういう男性向けの「Howtoモテるマンガ」がポツポツ増えてきましたね。
「LOVE理論」(双葉社)とか。

あとヤングマガジンで「FRINGE-MAN」っていう、愛人を作りたい!というアホな男どもがどうやって愛人を作るかを教わっていく大

変ゲスいマンガがあるのですがご存知でしょうか。

http://kc.kodansha.co.jp/content/top.php/KB00000989

12月6日に単行本1巻が出るようです。

試し読みを読むとわかりますが、「愛人を作りたい」という、場合によっては人生を破綻させかねない反道徳的な野望を掲げているわりにはノー天気すぎる展開で、下手をすると少年マガジンとかに乗ってる少年向けラブコメ漫画、具体的には「我妻さんは俺のヨメ」とかああいうのと同じすさまじく都合のよい話のノリで、あまりにもファンタジックというか、中学生の妄想か!というような気もしますが、生暖かく放っておくことにします。
そもそもヤングマガジン自体10代から20代の男性が中心読者で、リアルに嫁さんがいる男性は少数派なんでしょうし、「夢のあるお話」として読むものなんでしょう。

参照
http://matome.naver.jp/odai/2137905905840746901

でもなんだろうなあ、よく「SPA!」とかにもこういう特集出てますが…ファンタジーですよね(笑)。
ファンタジーしかいらないんだろうなあ。

仮にもしダンナさんがいる女性読者が中心の雑誌、たとえば「VERY」とか「In Red」あたりに「年下の愛人の作り方」みたいなマンガが載るとしたらどんなマンガかなあ、と想像してみましたがどう考えても雑誌そのものが炎上することしか想像できないので女性向けだと難しいのかなという気はします。
どうなんでしょうか。

ここまで書いてタイトルが「不倫自慢」の当て字だったことにようやく気がつきました。
結構人気あるみたいですが、連載を完結させる際のオチが気になります。

 

☆セールスランキング(10/14~11/13)

【一般】
1 人間にとって成熟とは何か         幻冬舎
2 エッセで人気の「つくりおきできるおかずの素」を一冊にまとめました  扶桑社 
3 エッセで人気の「おいしくて太らないおかず」を一冊にまとめました 扶桑社
4 終物語 (上)    西尾 維新            講談社
5 人に強くなる極意             青春出版社  
6 ポケモンX・Y公式ガイドブック完全ストーリー攻略ガイド  オーバーラップ
7 ありがとう!わさびちゃん         小学館
8 日本が戦ってくれて感謝しています     産経新聞出版
9 人生はニャンとかなる!          文響社 
10平26 神宮館九星本暦          神宮館  

【文庫】
1 雀蜂     貴志祐介    角川ホラー文庫
2 人類資金(1)  福井晴敏    講談社
3 小暮写眞館(上) 宮部みゆき    講談社
4 小暮写眞館(下) 宮部みゆき    講談社
5 感染遊戯    誉田 哲也     光文社
6 もぐら 凱 (上)    矢月 秀作  中公文庫
7 オレたち花のバブル組  池井戸潤    文藝春秋
8 三十光年の星たち(上) 宮本輝     新潮社
9 民宿雪国    樋口 毅宏      祥伝社
10限界集落株式会社   黒野 伸一   小学館

☆前回小さく告知したサイン本、全部なくなりました。
サイン本って売れるんですね…。誰に言ってるんだか。

☆次の更新のときにはもう今年を振り返る感じになるの?
 早いよ…。

(H)

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