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November 2012

November 20, 2012

本来なら安倍さんが「やれんのか!」って言って野田さんが「おまえ、男だ!」って言うべきだったよ

野田総理「16日に解散をします。やりましょうだから。」
安倍総裁「約束ですね。約束ですね。よろしいんですね。よろしいんですね。」

という日本のトップ二人のやりとりを見てプロレスっぽいなあと思った人は少なくないと思いますが、そもそも野田さんは小橋建太に手紙を送るくらいのプロレスファンなのであれぐらいは充分やれるのでしょう。

http://www.nikkansports.com/battle/news/p-bt-tp0-20120421-937542.html

むしろ完全にビビってたじろいでしまった安倍さんが安目を引いてしまったというか。
マイクアピールだけして帰るつもりが想定外にリングに上がらざるを得なくなってしまったレスラーみたいな感じのリアクションでしたけど、やっぱ政治家たるものアドリブに強くあってほしいですね。

で、めでたく12月16日に総選挙&都知事選挙が決まって新聞テレビはワーワー慌ただしくなってますが、そこで必ず出てくるのが「どんな意見であってもまずは選挙へ行こう、選挙に行かない奴は何も言う権利はない」的なメッセージで。
私はこれを聞くたびに小さな違和感があって、それは「んなこと言われたってどこに投票すればどうなるってのがわかんねーんだから投票しようがないだろ」ってことで。

こう言うと「新聞の政治面読まないからだろ」って反論があるかもしれません。
私も昔はそう思って、一時期ずっと読んでました。
でもやっぱりわかんないわけです。
それは新聞やテレビの政治報道のほとんどが「政局報道」になってるからだと。
つまり、
「ハシモトさんの維新の会がイシハラさんの太陽の党と合併した」
とか
「コシイシ幹事長は首相の意向に否定的な見解を示した」
とかそういう情報。
そういうの言ってみれば永田町の業界情報みたいな話で、
「ある政党がある問題に対してどういうアプローチをしているか」
という政策報道がされることはほとんどありません。
今回の解散に至る要因の一つにもなった「社会保障と税の一体改革」についても
「なぜこういう法案が出てきて」
「これが通ることで何が良くなって何が悪くなって」
「野党はこれに対してどういう考えを持っていて、あるいは対案を持っているのか」
という国民が知っておくべき報道よりも「この法案によって民主党内が分裂」「造反党員が○名」といった方に報道が流れます。

こういう不満を以前から持っていたのですが、ちょっと前から津田大介氏が「新しい政治メディアを作りたい」という話をしていてそれに向けた動きをしているというので期待しているのですが、そんな津田さんが実にいいタイミングで新刊出して。

「ウェブで政治を動かす!」(朝日新書)

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ちょっと前に東京都の青少年育成条例改正に際して「非実在青少年」という定義をして規制をかける動きがあり、ネットの世界から反発が上がりその声が都議会議員を動かし、法案がベンディングした、ということがありました。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1003/09/news103.html

もちろんすべてがそのように動くわけではないし、あれなんかはわかりやすい例だったから意見が一致しやすかったというのもあるでしょうが、一つの流れを示した例ではありました。

津田さんがこの本の中で書いてることでハッとさせられたのは「政治や政策に無関心でいては、自分の好きなものがいつか誰かの勝手な都合で変容させられてしまう」という話です。
「自分の好きなもの」は「自分の生活環境」にも変換できるでしょう。
だからこそ、どのような動きが今あって、それに対して自分たちはどういうアプローチができるか、また政党の中でその問題に明確に向き合ってる党があるのか、といったことを伝えるメディアが必要で、今のところそれに近いのはマスメディアよりネットメディアである、ということを津田さんは語ります。

来月の16日までに読んだらいい本を一つ挙げろと言われたら、私はいまこの本を推したいと思ってます。

でも一番いいのは「2012年衆議院総選挙投票ガイドブック」が出ることだと思うんですけどね。

まー書いた責任持てないんだろうしなあ。既存の選挙法でなんかしら引っかかるのかもしれないし。

 

★この作品の評価は完全に二分する気がします

○「母性」湊かなえ(新潮社)

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母娘二代の話がそれぞれの視点から描かれます。
幼き頃から“愛能(あた)う限り”の愛情を注がれて育てられた母。というかその時点では若き女性。
美しい容姿と誰からも愛されるコミュニケーション能力を持った女性が選んだ男はちょっとニヒルで変わった絵描きで、その彼との間に生まれた一人の女の子。
母は自分が育てられたように娘を育てようとします。
けど、自分が育てられたのと同じように育てるには、あまりに環境が違っていた…。

湊かなえが母と娘を書くというだけで発売前から気になってたのですがなかなか見事にモヤモヤした内容でした。
モヤモヤした、って書くと消化不良みたいだな。
悶々とした、というか。
まああまり気持ちよい話ではないです。
歪んでいるなあと。
けどこの歪みってそんな特殊な人の話じゃないよね、というか。
ともかく悶々としました。
「絶対スッキリしたくない小説を読みたい」という人におすすめです。いるのかそんな人。

 

★今月の飾り付け

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石井ゆかりの星占い本はさらっとした誕生日プレゼントによいと思います。
誕生日さえ知ってればあげられるわけだし。

 

★今月作った棚

いじめ本から派生して若者の問題を熱かった本を集めて「十代の君へ」という棚を作りました。

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自分でつけててなんだけどネーミングがなんか朝日新聞ぽいな。

 

 

★今月これから出る本

天童荒太の新作「歓喜の仔」(幻冬舎)が気になるかな。

★この一ヶ月(10/19~11/18)セールスランキング

しばらく出してなかったら期間がアレな感じになっちゃったのでこんな区切りで出してみました。

【一般】
1 練馬本      エイ出版社
2 拉致と決断  蓮池薫      新潮社   
3 64     横山秀夫     文藝春秋  
4 ドラえもん ふしぎのサイエンス(4)  小学館 
5 Cat 毎日モフモフ!ネコParadis  文藝春秋 
6 教科書に載ってないUSA語録  町山智浩  文藝春秋
7 原節子のすべて         新潮社
8 食材別おいしい冷凍大百科    NHK出版      
9 別冊文藝 ナンシー関 増補新版    河出書房新社 
10 ペコロスの母に会いに行く  岡野雄一  西日本新聞社    

【文庫】
1 悪の教典(下) 貴志 祐介   文藝春秋
2 悪の教典(上) 貴志 祐介   文藝春秋 
3 春霞ノ乱 居眠り磐音江戸双紙40  佐伯泰英 双葉社 
4 のぼうの城(下) 和田竜   小学館         
5 往復書簡  湊かなえ   幻冬舎 
6 のぼうの城(上) 和田竜   小学館 
7 ハング    誉田哲也    中央公論新社
8 主よ、永遠の休息を   誉田哲也   実業之日本社
9 万能鑑定士Qの短編集1  松岡圭祐  角川グループ  
10 春の珍事 鎌倉河岸捕物控21  佐伯泰英   角川春樹事務所   

なんかもうウチって新宿区じゃなくて練馬区な気がしてきたなあ。練馬区上落合。

 

 

★とてもどうでもいい情報

店主はいまごろアニメ「鷹の爪」にハマりました。

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(H)

November 05, 2012

【読書感想文】一年遅れで読んだ「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」

あまり読みたくなかった。
少し中を読めば、著者が過剰に柔道側に肩入れしてプロレス側を非難していることがわかるからだ。
けれど、あちらこちらから聞こえてくる絶賛の声を耳にするうちに「これを受け入れるのもまたプロレスか…」という思いが強くなって読んでみた。

そんな能書きがどうでもよくなるくらい面白かった。

増田俊也は狂っている。
「あの木村先生が『力道山に負けた男』という評価になっていることが許せない」
増田はその怒りをエネルギーにして気の遠くなるような遠大な取材にあたり続ける。
木村政彦が柔道で活躍した時代は戦前であり、プロレスをやるようになったのは戦後間もない頃だ。
そんな古い時代にもかかわらず増田は他の資料に書かれている記述をそのまま引用する“孫引き”を嫌い、徹底的に一次情報に当たろうとする。
「真剣勝負なら力道山に負けない」という木村の発言のソースはどこにあるのか、昭和29年の新聞を徹底的に洗う。
全国紙になければ当時の地方版の記事を洗う。
そして見つけてくる。
この情熱はすごい。というか、恐ろしい。

その一方で、正確性が疑わしい関係者の談話を検証せず引用して「という話であるから○○であった」と断定する強引さもあれば、いくつかの証言から脳内で物語を作ってしまっているような場面も多々存在する。
木村と力道山が試合直前に密会している場面など、どこまでが聞いた話でどこから増田の継ぎ足した創作話なのかまるでわからない。
この本の中では、怖ろしいまでの情熱で探し求めた正確な情報と、木村と柔道を愛しすぎるがゆえに暴走して生まれた虚構のストーリーが並列に並ぶ。

この構造は、増田が憎んでやまないプロレスそのものだ。
そのことに彼が気付いたかはわからない。
ただ断言できるのは、面白いノンフィクションというのは必ず白と黒がハッキリしないプロレスになっているはずだ。
これが何かの研究論文とか、技術指南書のようなものだったらそれはダメだろう。白黒はっきりさせないといけない。
しかし、読み物としてのノンフィクションになった場合、「純度100%の正しい情報」だけでは絶対に面白くならない。
そこに「作者の想い」という不純物が入らないと、絶対に面白くならない。

プロレスを心から愛する自分にとって、プロレスを蔑む増田の書き方はたびたび鼻についた。
だが、その中でも心打たれた一文がある。
クライマックスの『第28章 木村政彦vs力道山』。
罠に嵌めた力道山、嵌まった木村、そしてその師である牛島辰熊を指して

「誰もが食えない時代だった。焦土と化した日本で、食うために必死だった。妻を食わせ、子供を食わせるために必死だった。」

勝負に油断した木村。
騙し打ちに成功したものの、絶えず脅迫に晒され続けた力道山。
どちらも幸せにはならなかった。
けれど、あの時代、必死だった。
誰もが必死だった。
そのことを忘れてはいけない。
今の時代からあの時代を見る時、必ず思い出さないといけない。

歴史は勝者によって語られる。
だが敗者から語られるのも、また歴史なのだ。
虚実を織り込んでプロレスが膨れ上がるように、増田が20年抱え続けたさまよえる魂がこの大作を紡いだように、次の狂った魂が本となって我々の前に現れるのを、街頭テレビに集った当時の人々のように私は待ち続けている。

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November 01, 2012

iPS細胞とiPhoneが共にiだけ小文字ってのは何か意味あるんですか

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山中教授がiPS細胞の開発でノーベル医学・生理学賞を受賞されて、受賞三日後という神のようなタイミングで講談社から自伝的な本が出たりで店頭がにぎわってますが、やっぱり私は森口さんの本が読みたいですね。
どこか出さないかな。
『私は間違っていない』とかそんなタイトルで。
『私はiPS芸人じゃない』とか『メディアリンチの闇』でもいいや。
今なら売れると思うんだけど。

という話を先日出版社の人が何人かいる酒の席でガラガラ話してたら某社で編集やってる人から
「じゃあ伊野尾さんがやんなよ!伊野尾さんが森口さんに会って『そうですよね、森口さんは間違ってないですよね』ってずーっと聞いていって、原稿書かせればいいんだよ!」
と言われ、それはやっぱり大変だな、やりたくないな、と思い直した次第であります。

でも見てるとどうにもマスメディアのバッシングがひどいよね。
後ろ盾がないとここまでやるんだなあ、って。

これ見て思いだしたんですが、むかし遺跡発掘で捏造事件を起こしてマスメディアから総バッシングを受けた考古学研究者がいましたが、あの人はメディアに叩かれ過ぎて人格障害を起こしてしまったんですね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A4%E6%9D%91%E6%96%B0%E4%B8%80
しかも自分で自分の指を切断したとか…。

なんかこういうのを見ていると、森口さんも多少は名誉回復されればいいけど、って思ってしまうわけですよ。
私なんかは特に被害も受けてないから余計そう思うんですけど。

  

★「中国って何なの?」

という棚を作りました。

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関連書を集めた棚を作る時は「意図的に本を取り寄せて作る場合」と「そういう本ばかりが入ってきてしまうので作る場合」の2種類があって、これは明確に後者ですね。

関連本がやたら入ってくると「またこういうの来たよ」ってつい思ってしまうのですが、それって世の中で注目されてる事象だから出るわけで。
そういうコーナーは時期を見ながら場所を作りたいと思います。
まあなんでもかんでもというわけにはいかないので、ある部分から間引きはしますが。
ちなみに一番売れている本はこちらになります。

○「中国人が死んでも認めない捏造だらけの中国史」黄文雄(産経新聞出版)

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★7月に出た本を今ごろ読みました

○「父と息子のフィルム・クラブ」デヴィッド・ギルモア/著 高見浩/訳 (新潮社)

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「学校に行きたくない」と言う15歳の息子に、父は「わかった。その代わり週に三本一緒に映画を見て、感想を話し合おう」と誘った。そして二人の奇妙な映画鑑賞会が始まる…。

ってこの話最初に聞いたときに「それこそ映画っぽい小説だな」って思ってたら、著者が実際に息子さんとそういうことやったノンフィクションだった、ってことにまずビックリして。
ずいぶん変わった親父です。

で、二人で昼間っから家で映画を見て「あの場面はアレだね」とか「あの俳優のあの演技は云々だね」みたいなことを話し合ってるんわけで、ま、やっぱ息子も変わってますね。
16歳って日本だったら99%自分の部屋に引きこもる流れになりそうですが。

話はこの中に出てくるさまざまな映画のレビューを軸に二人(とその周辺に出てくる人々の)の人生の変化を描くのですが、なかなか面白かったです。
いろんな面で日本だとなかなかこういう親子関係は生まれにくいだろうなーと思いました。

で、私が一番気になったのは、父親が息子に見せる最後の映画。
あれ、マッスル坂井が「マッスル4」のエンディングで使った映画ですよね。
私の中でマッスルの最高傑作はあの「4」だと思ってるんですが、なんか洋の東西を問わずアンテナが尖ってる人がひっかかるものは同じなんだなーと思ってしまいました。
「マッスル」は一回「ミーン・ストリート」と同じオープニングをやったときもありましたよね。

    
★人を食った本

○「ザ・ウーマン」ジャック・ケッチャム/著 ラッキー・マッキー/著 金子浩/訳(扶桑社)

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○「喰屍の女」根本起男(枻出版社)

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「食欲の秋」とはいいますがなぜか人肉食をテーマにした猟奇小説が続けて出てます。
流行ってるんでしょうか。
「ザ・ウーマン」のケッチャム先生は“鬼畜小説界の筒井康隆”的な大御所ですが、「喰屍の女」の著者は“デパ地下に閉じ込められて食べ放題で阿鼻叫喚”小説「さんくすないと」の根本起男さんですね。
前作が「死ぬまで食う」、今作が「死んだのを食う」、相当おかしいですね。
“鬼畜小説界の朝井リョウ”として今後の悪趣味っぷりに期待したいと思います。

   

   

★なんか食う本

なにが最初の口火だったのか今や記憶も曖昧ですが「花のズボラ飯」「孤独のグルメ」「めしばな刑事タチバナ」といったB級グルメ漫画が花盛りですが、またなんか出てきました。

○「おとりよせ王子 飯田好実」高瀬志帆(徳間書店ゼノンコミック)

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まあタイトル通り、おとりよせ王子が全国の美味いモノをひたすら取り寄せて食べていく、というタイトルそのまんまの話なわけですが、おとりよせしたモノが届く日はあるゆる誘いを断って家に帰る、ってところが現代的草食男子風というか。
読んでるとあんまB級グルメって感じじゃあないですね。

第一話がめでたくネットで読めるのでどうぞ。
http://www.comic-zenon.jp/magazine/otoriyose.html

たまごかけごはんセット3500円か…。高いのか安いのか判断つきずらいところです。

ちなみに私が最近買ったぜいたく品は築地に行ったときに買った20枚入り2100円の海苔です。
値段見ないでレジに出したら事故みたいな金額を言われて一瞬引いたのを「ま、いっか…」と受け入れて持って帰ってきたんですけど、めちゃめちゃ美味いです。
しかしすぐに「これ一枚105円か…」と思ってしまい気軽におにぎりとかに使いづらいのが難点ですが。

  

★発売延期

元オウム真理教の広報で現在は「ひかりの輪」という団体を設立している上祐史浩氏がオウム事件と教団を振り返る本を11月下旬に出し、印税収入をオウム事件被害者団体にすべて寄付するということで注目しておりました。
が、版元が朝日新聞出版で、担当編集が「週刊朝日」で例の「ハシシタ」連載を担当していた関係で発刊企画自体がポシャってしまうという、まさかまさかの展開を見せております。

http://ameblo.jp/joyufumihiro/entry-11390024517.html

上祐氏本人が別の出版社から話が持ち込まれていると明かしているのでいずれどこからか出るのでしょうが、まあなんというか、出版事業って世の中とリンクしている事業ですね。

アンオフィシャルな話ですが佐野眞一の「ハシシタ」もいろんな出版社からオファーがあまた行っているようで、そちらの行く末も大変気になります。

(H)

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