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June 2012

June 30, 2012

13年目の「Separate Ways」

1999年3月、一年弱働いた歌舞伎町のゲームセンターでのアルバイトを辞め、私は本屋の道に入った。
結局家業を振り払うほどの仕事が見つからなかったということのほかに、高齢化した両親を助けたいという気持ちもあった。

が、その一ヶ月後、私は体調を崩し、部屋のベッドで臥せっていた。
最初はおたふく風邪、次に原因不明の腹痛に悩まされた。
いくつか回った医者はそれぞれ「急性胃炎」「ストレスによる胃腸炎」「軽い潰瘍」と似たような、それでいて少しずつ違う診断を下し、けれどどの医者にもらった薬を飲んでも楽にはならず、日々布団の上でうめく日々を送った。
母親はただでさえ店の仕事に忙殺されているのに、時間を見ては家事や看病のため私の部屋にやってきた。
母が部屋に来てくれるとホッとする反面、「今頃店は忙しいのではないか」と考えると不安になってしまい、来てくれることに対してとても落ち着かない気分になった。

約二週間寝込んだ後、症状を見ながら少しずつ店の仕事に復帰した。
復帰と言ってもまだ実質まだ1ヶ月くらいなのだから、わからないことばかりだ。
仕事が自分の予想や想像と違うことに苛々し、身体が本調子でないことも加わり、余裕がないからちょっとしたことですぐ腹を立てる。
その矛先は同じ店で働いている家族に真っ先に向かった。
気がつけば家業を手伝っているのか足を引っ張っているのかわからない状態になっており、そのことがまたさらに自分を落ち込ませた。
愚痴をこぼす同僚はいない。恋人もいない。学生時代の友達はそれぞれの生活に忙しそうだった。ネットに書きこむためのパソコンはまだ家にも職場にもなかった。
自分の鬱屈は誰に話されることもなく自分の中で醸造し、心の中の何かが発酵するように腐っていった。

「週刊プロレス」で大日本プロレスの記事を見て、新川崎で行われた試合を見に行ったのはその頃だ。
大日本プロレスはその半年くらい前に、主力選手が相次いで辞めて若手選手だけが残され、興業の看板選手を失った状態になっていた。
団体は苦肉の策でそれまで前座に出ていた若手選手を興業の中心に据えたが、彼らの奮闘とは裏腹に観客数は以前よりも落ちていた。
すっかり変わってしまった環境で苦闘する彼らのことが気になっていた。

そんな大日本プロレスの若手選手二人、シャドウWXと山川竜司によるデスマッチは、新川崎の高架沿いの野外会場でそれほど多くはない観客の前で行われた。
二人は限界まで身体を張り、時には危険な試合に慣れきった我々マニアですらショックで凍りつくほどの凄惨な攻撃を行い(割った蛍光灯の切っ先をガスバーナーで色が変わるまで炙ってそれを相手選手の背中に投げつける、なんて攻撃はいまだあの時しか見ていない)、それでいて二人の極限まで身体を削った闘いには「絶対に今までなかったような試合をしてみせる」という決意のようなものがあった。

二人の試合を見た帰り路、高揚していく気分と入れ替わるように沸いてきた鉛のような重い気持ち。
それは「体調が悪い」「仕事がわからない」というだけで下を向いている自分に対して沸いてきた、悲しみにも似た情けなさだった。
彼らがあそこまで身体を張って、もしかしたら報われないかもしれないのに一生懸命やっているというのに、自分は何をやっているんだろう。どこに言い訳を見つけているんだろう。
帰ってから、そればかりを考えていた。
翌日からも、考えていた。

それから私は定期的に大日本プロレスの試合を見に行くようになった。
今すぐ誰かに大声で話したくなるくらいすごい試合の時もあれば、消化不良で納得できないまま帰途につくような試合の時もあった。
ただ、一貫して彼らはがんばっていた。
がんばっている中心には、必ず山川竜司がいた。

山川竜司は華のない選手だった。
山川は先輩選手のパートナーとしてよくデスマッチという危険な試合形式に抜擢されたが、大半は彼が一方的にやられ、試合の後半になると彼のパートナーである先輩選手が出てきていいところを見せて終了する、そんな試合ばかりやらされていた。
その先輩選手も団体からいなくなると、そこそこの場数を踏んでいた彼が必然的にメインに出るようになった。
華のなさを埋めるように、彼は会場のどこから登場するかわからない「山川イリュージョン」と呼ばれた演出で入場し、往年の沢田研二のような派手な格好をしてリングに上がるようになった。
それに合わせるかのように彼が好んだ決め台詞は「待たせたな」。
けど、実際に彼を待ちわびているファンはそんなにいなかった。
そんなどこか空回りしていた山川が大きく変わることになったきっかけが、私が見に行ったあの新川崎でのデスマッチだった。
あれ以来、彼は小さい団体ながらそこを引っ張る看板レスラーになり、他団体との対抗戦にも出て知名度を上げ、レスラーとしての幅を広げて行った。

しかし私の体調が回復し、本屋の仕事に慣れてきた頃、山川は試合中の事故で頭を打ち、意識不明のまま病院に運ばれた。
幸い命に別条はなかったものの、頭蓋骨骨折と診断され、長期療養が決まった山川に団体側は引退勧告を行う。
しかし山川は拒否。
平行線をたどる山川と団体側は「会場のファンに問う」という解決案を取る。
そこでファンが示した意思は「復帰してほしい」が圧倒的だった。
泣く山川。
そしてその半年後に行われた大日本プロレス初の横浜アリーナ大会で、彼は感動的な復帰戦を行う。
試合後にマイクをつかんだ山川は涙を浮かべ、こう語った。

「プロレスは素晴らしいですよ。金なんかもらえなくてもいいですよ。こうしてリングに立つことができて、俺は幸せです」

しかし復帰後の山川は事故の後遺症による左半身麻痺と椎間板ヘルニアを併発し、思うような試合ができなくなっていた。
最初は寛容に見ていたファンからも低調な試合が続くうちに徐々に不満が漏れるようになり、期待→トーンダウン→改めて期待→トーンダウンを繰り返すうちに山川の出番はなくなっていった。
そして彼は長期休養に入った。
その頃私は苦悩していた仕事に対して少しずつ道筋が見え始め、同業者や同じ業界の中で相談したり話す相手が見つかり、段々と仕事が楽しくなっていった。
そして大日本プロレスからも何となく足が遠くなっていった。

山川は何度か本格復帰を模索した。
が、最後まで体調が戻らなかった。
そして今年、引退を発表した。
1999年から13年が経っていた。

今にして思えば、あのとき自分が体調を崩していなかったら、傾きかけた大日本を気にすることはなかったような気もする。
仕事をどうしていいかわからない。
人生をどう選べばいいかわからない。
それを話せる人もいない。
そんな自分を救ってくれたのは大日本プロレスと山川竜司だった。
後楽園で、新川崎で、横浜文化体育館で、彼の試合を見てはいつも「がんばろう」と思っていた。
当時の自分にはそこにしか、寄るべきものがなかった。
華があるわけでもない、華麗な技ができるわけでもない、ただ無様にやられ続けて血を流す山川は、いつも自分以外の誰かのために闘っていた。
それはタッグを組んだ先輩レスラーであり、看板を背負って立つ団体であったり、少ないながら集まってくる我々のような熱心なファンであったり。
がんばりながら常につきまとう彼のカッコ悪さに我々はいつも落胆し、笑い、そして感動した。
彼女に逃げられたことをファンの前でネタにし、「妻逃し」というTシャツを着て入場する山川を、「不死身」と書こうとして「不自身」と書いてしまう山川を、私たちは笑いながら愛していた。
格上団体だったFMWやアメリカの過激団体・CZWとの試合にも率先して出て行った山川を、事故や退団で他の選手がいなくなれば一人で団体を背負おうとした山川を、私たちは誇りに思っていた。
けど、そんな山川は頭の大怪我以降、ついに帰ってこなかった。

今にして思えばあのとき引退勧告した団体側は正しかったのかもしれない。
けど、あそこで幕を引いていたら、どうなっていただろう。
何が残っていただろう。

プロレスラーはただ試合だけをリングで見せるわけではない。
山川竜司はプロレスの夢と現実の両方をリングで見せてくれた。
あの頭部骨折がなければ、ヘルニアがなければ――それはどうなったかわからない。
ただ、起きてしまったことを受け入れて、山川竜司は人生をリングで表現した。

山川は入場曲にジャーニーの「Separate Ways (Worlds Apart)」を使っていた。
どうしてこの人は別れの歌を入場に使うんだろう、とずっと不思議に思っていた。
たぶん理由なんてなかっただろう。
けれど、プロレスの入場とはあんなに合っていなかった歌詞の意味が、最後の最後で合ってしまった。

If you must go, I wish you love
You'll never walk alone
Take care my love
Miss you love

※(どうしても行くというのなら、君の幸せを祈ろう)
(決して一人ぼっちになるなよ)
(気をつけてな)
(君がいないと淋しくなるぜ)
 

山川の引退試合は7月15日に故郷の北海道で行われるが、その前の東京での最後の試合は7月5日。
相手は新川崎で死闘を繰り広げた、あのシャドウWX。

引退を発表して以降の山川は映像で見る限りあまりコンディションが良さそうには見えない。
それ以前に長期欠場した状態からあまり変わっていないように見える。
そんな状態で迎える7月5日、山川竜司は何ができるのだろう。何を見せるのだろう。
そしてあれから13年たった今、それを見た自分は何を思うのだろう。
鼓膜の奥で「Separate Ways」のイントロが始まっている。

※(訳:KUNI TAKEUCHI )

(1999.5.30 大日本プロレス新川崎大会 シャドウWXvs山川竜司)

June 29, 2012

ママ、台所にテラフォーマーズが!

梅雨の時期になり、夏は目の前ですが、夏になると毎年憂鬱なものがひとつありますね。
夜、家に帰ってきて、台所の電気をつけると遭遇してしまう黒いアレ。

そんなアレをフューチャーしたSFマンガがあるのですがご存知でしょうか。

○「テラフォーマーズ」橘賢一(著), 貴家悠 (原著) (集英社ヤングジャンプコミック)

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舞台は西暦2599年。
人類は人口激増にともない、火星移住計画を立てます。
しかし火星は平均気温マイナス58度の星で、住むことができない。
ただ火星には二酸化炭素が凍っており、地表を暖めることでそれを溶かし温室効果で温めることができるのではないか。
その温める方法として火星の表面に苔と“ある生物”を放って、地表を黒くして太陽光を吸収できないかと科学者たちは考えます。
その“黒いある生物”とは・・・もうおわかりですね。

物語はその「火星に解き放った、かなり過酷な環境でも生き抜くことができる、地表を黒く染め上げるアレ」を選ばれた15人の宇宙飛行士が駆除しにいく、そういうところから始まるわけですが、いざ火星に行ってみたら「黒いアレ」はえらい進化を遂げていた・・・と。
そしてその「えらい進化を遂げたアレ」はロケットに乗ってやってきた地球人にたいしてどうやら「意味もなく単純な殺意」を持つらしい。
ちょうど我々が「黒いアレ」を発見した瞬間、無条件で殺意を抱くのように・・・。

いや実際、これで火星の温度が上がるかあ?とか、宇宙飛行士側に施された「ある手術」についていろいろ突っ込みを入れたくなる部分もなくはないんですが、いざ読み出すとそういう細かいことがどうでもよくなるSFバイオホラーっぷり。
大変逆説的ですが、黒いアレが苦手な人ほどハラハラして読めます。

一巻で終わるのかと思いきや、どうやら二巻にまで続くような非常に気を持たせる終わり方。
(あの最後の話の、子供が「ママ、ゴキブリー」って言われた奥さんがドアを開いたらいたアレは何!続きは!)

読み終わったらぜひこちらもどうぞ。

○「害虫の誕生 ─虫からみた日本史 」瀬戸口明久(ちくま新書)

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★待望の新刊

○「羊の木」2巻 いがらしみきお画/山上たつひこ原作 (講談社イブニングコミック)

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出ました。
「静かな不穏さ」をここまで表現したマンガは本当に稀有だなあってつくづく思います。
しかしこの2巻で一番インパクトがあるのは巻末に収録された、原作者・山上たつひこが書いた短編小説「浜辺」ですね。
1巻、2巻ときて最後にこの小説を読むと震えますね。マジで。
これ本編にフィードバックされるのかな。

なお、同じいがらしみきおの力作、

○「I(アイ)」2巻 いがらしみきお(小学館IKKIコミック)

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も発売になっています。
早く読みたい。

 

★今月の文庫

○「ロスト・トレイン」中村弦(新潮文庫)

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「日本のどこかに、誰も知らない廃線跡がある。それを端から端までたどっていくと、ある奇跡が起こる―」

なんじゃその「フィールド・オブ・ドリームス」の鉄道版みたいな話は?と思いながら読んだらこれが意外に名作でした。
って私が読んだのは単行本ですが。
鉄道旅情小説、青春小説、ファンタジー、恋愛、いろんな要素が交じり合ってます。
「銀河鉄道999」の世界を「旅行読売」と「鉄道ジャーナル」風に味付けしたというか。違うか。
って「銀河鉄道の夜」って言えばいいんだね。
いやGOING STEADYの方でなくケンジの方ね。
そもそも「999」はあれをモチーフに作ったんだし。
そいや「999」もパートワークになりましたね
あれはビックリしました。
個人的にはガラスでできた少女のクレアが鉄郎を助けるために身を投げ出して壊れてしまう話の回を見たいです。

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★平成24年のレスラーが見た「力道山vs木村政彦」

今月の「Gスピリッツ」が非常に面白い特集で。

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昨年ベストセラーになったノンフィクション大作「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」(新潮社)に対する返答のような特集。
現役プロレスラー、元プロレスラーにあの力道山vs木村政彦戦を見せ、その上で「これをどう思うか」と訊く。

当然、プロレスラーなんで力道山側に立った目線が多いのですが、それでもそこから通して見えるのが「プロレスとは何か」「勝負とは何か」という話で、大変興味深い内容です。
まあ「木村政彦は~」が柔道側に立った作りになっているので、これはこれでいいんじゃないでしょうか。

なお、力道山vs木村政彦戦はyoutubeで見ることができます。

http://www.youtube.com/watch?v=ykZe3DI_81o

すごい時代になったものです。
この映像を見て両方の本を読むとまた違った視点が出てくるのではないでしょうか。

 

 

★来月の予告

次のフェアは『親がしんどい』です。
だいたい想像がついたと思いますが、あの辺やあの辺の本を中心に親がしんどい本を並べてみたいと思います。

あ、各社文庫夏フェアも来週からやりますよ。

文庫といえば「ハリー・ポッター」の文庫も来週発売です。

(H)

June 18, 2012

恋とマシンガンと水彩画レッスン

先週、阿佐ヶ谷ロフトで行われた「『母がしんどい』『ポイズン・ママ』出版記念“毒母ミーティング”」というイベントに参加してきました。
http://www.loft-prj.co.jp/lofta/schedule/per.cgi?form=2&year=2012&mon=6&day=14

私自身は毒母に悩まされた経験もないんですがこの2冊の本は今年上半期大変印象に残った本だったので、完全に野次馬根性で行ってみました。

本を出されたお二人が共通して語ったのは、

「本を出すのは相当な罪悪感があった。『母親のことをこんな風に書いて!』というお叱りの言葉が相当来るのを覚悟してたが、意外にもほとんどなかった。逆に『よく書いた。お母さんには(娘に)謝るべきだ』という意見を目にして、意外な感じがした」

という話で。

その一方で

「こういう本を書いて出したしまったことで、『こういう形で依然母に支配されているのかな』と思う」

というコメントも印象に残りました。

精神科医の斎藤環氏が「どんな親でも、親である限り子どもを多少なりとも支配する」という話をしていて、まあそうだよなと思いながら深く納得しました。

『母がしんどい』の著者の田房さんが

「泰葉がワイドショーで暴れてた時に、なんかホッとした。ああ、ウチの母親だけじゃないんだこういう人、って(笑)」

という話をしていて、それに『ポイズン・ママ』の著者である小川雅代さんも同意していて、泰葉のような人を見て癒される『泰葉セラピー』というものが世の中に存在するのを知りました。
いろんなところでいろんなことが起きているものです。

というわけで次回のフェアは親子問題、題して「親がしんどい」です。
7月上旬展開予定。

選書の過程でわかったのはたいがい悩んでいるのは母娘関係で、意外にも父親との関係に悩む人に向けた本ってすごく少ないんですね。
結局父との関係というはどうでもいいか、本を読むほど悩むものではない、ということなのでしょうか。
どっちかいったら「父がしんどい」よりも「父でしんどい」という本の方が出そうだもんなあ…。

 

○今週の雑誌

「週刊ダイヤモンド」接待特集

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リーマンショック以降、あるいはその前から交際費が大幅に削減された企業が多い中、現在はどういった接待が多いのか、あるいは有効なのかという大変面白い特集です。
とかく「いろんな意味で凄い」という話をよく聞いた病院への製薬会社の接待がだいぶ変わってきたという話に「へー」と思いました。

一方でいまだに一晩で何十万という接待も残ってるとこは残ってるようで、「島耕作に学ぶ接待術」なんて記事があったり、興味深い内容がいろいろ出てます。
「今までに印象に残ってる接待」というアンケートには「海外でF1レース観戦」なんて答えがあったり。なんじゃそれ。すんげえ世界があるもんだねい。

ちなみに私が初めて受けた接待というのは、今から7~8年くらい前、最近ではすっかり更新をしなくなったことで一部で有名な『知ったかぶり週報』の管理人・kajieさんと某会合の帰りに二人で高田馬場の日高屋に行ってビールとラーメン食べて「書店ってさあ」的な、前向きだか後ろ向きだかわからない話を小一時間くらいグジャグジャしたときに「じゃ、ここは(会社の)経費で持ちますよ」と奢られたのが最初であり、一番うれしかった接待であります。
確か二人で1000円ぐらいだったけど(笑)。
その後、いくつかの出版社の方に飲み代を経費持ちでご馳走になったりしまして、それはそれで大変恩義に感じたりしているのですけれど、いまだにあのときの日高屋が一番うれしかったりするわけです。
なので私はkajie氏の務める某出版社が好きですし、非力ながらなんとかできることはなんとかしようかなと今でも思うわけです。

まあ、だからといってそれがすべてになってしまってもまずいんですけどね。
結局、接待というのは「何をしたか」というより、「相手に誠意をどれくらい伝えられるか」という意味で、恋に落ちるアクションと似ている気がします。

ほら、ああいうのって「お金さえかけたらすべてが上手くいく」って筋合いのものではないじゃないですか。
ちょっとした気遣いでストンと落ちる瞬間があるもので。
話長くなりそうだな。お姉さんビール。

 

★今週のトレンド

最近なんやかやとFacebookを見る機会が増えたのでこんなのも読んでみました。

「Facebookバカ 友達を365日たのしませる男の活用術」美崎 栄一郎(アスコム)

Facebook

うーん。
読んだけど
「イベントを活用しろ」
「リストを作って活用しろ」
「思ったことをすぐ書くな」
しか覚えてないなあ。
結局リアルコミュニケーションの延長なんだなあ、と思いました。

一時期iPhoneやアンドロイドのアプリ本がバブルでしたが、最近はもっぱらFacebookですね。
来年は何が流行るんだろ。

 

★今週の品切れ本

アシェットコレクションズのパートワーク「はじめてでも描ける水彩画レッスン」創刊号がCM効果なのかすごい反響で品切れになってしまいました。
再入荷の目途が立っていないので、これを取りました

○「今日から描けるはじめての水彩画」(日本文芸社)

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いやこっちなら一冊だし。絵具はついてないけど。
http://www.nihonbungeisha.co.jp/books/pages/ISBN978-4-537-20478-0.html

 

★今週のニュース

貴志祐介「悪の教典」は8月に文庫化されるそうです。
11月には映画公開。
http://akunokyouten.com/
「海猿」の人が殺人教師か…。

(H)

June 09, 2012

「生きてるだけで最高だ」とは言えない人生であっても

先週の土曜日、さて寝ようかなと思ったところでテレビを回したら「NHKスペシャル 未解決事件―オウム真理教」というのをやっていて、「何じゃこのドラマ」「警察に寄りすぎてねえ?」とか文句言いながら3時半まで見てしまい、翌日は朝普通に起きるスケジュールだったのでえらく眠かったりしていたのですが、その日の夜にオウムの菊地容疑者が逮捕されるというニュースが出て、あまりのタイミングに戦慄しました。

「これでまたオウム真理教事件に注目が集まるかも」と思って森達也の「A3」を始めとする関連本を発注したんですが、どうも注目が集まっているのはオウム事件でなくて菊地容疑者が逮捕時に来ていたトレーナーだったり、二人の高橋容疑者との同棲生活だったり、なんかあさっての方向に飛んでいるので、もうよくわかんないですね。
一時期「遺族感情を考えて」云々という話がよく出てましたが、遺族の方々は今回のこのあさっての方向に滑り流れるメディアの扱いとそっちにワーキャーする私たちをどのように見ているのか、聞いてみたいところです。

まあ、

「彼女(菊地容疑者)に結婚を申し込んだが、『私はオウムの菊地だから結婚できません』と素性を明かされて断られた」
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20120604/dms1206041811010-n1.htm

とか、

二人で「結婚写真」を撮っていた
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2012/06/06/kiji/K20120606003402660.html

というような報道を見ていると、いずれ菊地容疑者の17年間も角田光代に小説化してもらいたいなと思うわけで。

まあ、今回の事件で「オウム信者だった人」みたいなテーマに興味もったなら「A3」と村上春樹の「約束された場所で」はいいかなーと思うんですが。
オウム事件に関する本で私が薦めるとしたらこの2冊です。

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★戦慄せよ

私は本の価値というのはつくづく「読み終わったあとどれくらいボーっとさせるか」だと思っているのですが、その意味でこれは今年一番かもしれません。

○「人間仮免中」卯月妙子(イースト・プレス)

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卯月さんは元AV女優、ストリップ嬢の経験を持つ漫画家さんです。
AVに出たのは旦那が作った借金を返すためだったそうですが、その旦那さんは自殺願望がある人で、ある時実際にマンションから投身自殺を図って植物人間になり介護に追われつつ一年半後に亡くなられたり、その頃から自身が幼少の頃から悩まされていた統合失調症という心の病気が悪化し、ストリップに出演している時に壇上で自殺を図ったり・・・という波乱過ぎる人生。
そんな卯月さんが25歳年上の会社員(普通の会社員かどうかは疑問ですが)・ボビーと知り合うところからこの話は始まります。
前半部は壮絶な過去と病気を抱えた卯月さんと、60歳を超えながら「ザ・昭和の男」といった男気溢れるボビーとの、いろんなトラブルやアクシデントを重ねつつも二人で乗り越える睦まじい様子が描かれます。
しかし、ヨガと占いによって投薬をやめようと無理した卯月さんが「運試し」と称して歩道橋から飛び降りる事故を起こしたことで、一変します。
かろうじて一命は取り留めたものの、顔面から落ちて粉砕骨折、片目が「ワンブロックずれる」という重症を負います。
そして治療のため入院する中で、意識混濁した卯月さんは悪夢のような妄想に襲われ続けます。
この妄想が・・・すさまじい。
精神の均衡が図れなくなるというか、「よくこれを覚えていて療養後にマンガにしたな」という内容で。
この部分はどんな人が読んでもノドがカラカラになると思います。

そして1冊読み終わったあとに出てくる、名前のつけられない読後感。
しばらく放心状態というか、簡単な感想が出てこない本になると思います。
本当に、いろんな人に読んでもらいたい本です。

 

★ベスト・オブ・上半期

「ダ・ヴィンチ」を見てたらベスト・オブ・上半期みたいなアワードで「楽園のカンヴァス」が取り上げられてました。
こないだは「王様のブランチ」に取り上げられたりして、遅ればせながらだいぶワーワーしてきましたけど、これでルソーの「夢」が上野の現代美術館で見られるようになったりしないですかね。

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ちなみに私のベスト・オブ・上半期は「紙の月」です。あとは「母がしんどい」。

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重い話ばっかりだな・・・。

  

★ランキング

どうも忘れがちですが5月のセールスランキングです。

5月のセールスランキング

(一般)
1  毒婦。-木嶋佳苗100日裁判傍聴記  朝日新聞出版
1  舟を編む   光文社
3  ザ・西武線さんぽ  交通新聞社
4 '12 AKB48総選挙公式ガイドブック  講談社
5  世界遺産に行こう    学研マ-ケティング
6 置かれた場所で咲きなさい  幻冬舎
7 人の心を自由に操る技術 DVD付き  扶桑社
8 実はスゴイ!大人のラジオ体操 DVD付き  講談社
9 日本人が知らない幸福  新潮新書
10 聞く力 心をひらく35のヒント  文春新書

「毒婦。」は何回も品切れを起こしまして、それがなかったらもっと売れたと思うので口惜しいです。

(文庫)
1  ヒトリシズカ  (誉田哲也) 双葉社
2 1Q84 BOOK3 前編 10月-12 (村上春樹)  新潮社
2 1Q84 BOOK3 後編 10月-12 (村上春樹)  新潮社
2  読むだけですっきりわかる日本史  (後藤武士)  宝島社
5  デュラララ!!×11  電撃文庫
5 1Q84 BOOK2 前編 7月-9月 (村上春樹) 新潮社
5 1Q84 BOOK2 後編 7月-9月 (村上春樹) 新潮社 
8 鍵のかかった部屋  (貴志祐介) 角川文庫
9 ガール  (奥田英朗)  講談社文庫
9 1Q84 BOOK1 前編 4月-6月 (村上春樹) 新潮社

なんかこの文庫ランキングは無意味だな…。Q。

(H)

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