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April 2012

April 30, 2012

女よGOMEN GOMEN

ぼやぼやしているうちにゴールデンウィークになってしまいましたがみなさんいかがお過ごしでしょうか。
今年の5月は連休どうこうより5月22日に東京スカイツリー開業というイベントが用意されており各書店店頭ではあきらかに作り過ぎだろうと思われるぐらいスカイツリー関連本が山のように並んでおります。
えー、正直ガイドブック以外そんな売れておりません。
要するにみんな「スカイツリーがどうできたか」よりも「スカイツリーの周りでどんな美味いものが食べられるか」にしか興味ないんだね…。いやわかるけどさ。

たしか「BUBKA」だったと思いますが、みうらじゅんがいろんな物事を適当に予想するコーナーがあって、スカイツリー開業の日の予想で

「開業の瞬間、入り口で『押さないでください!走らないでください!』と絶叫する職員にタックルをかまして搭乗エレベーターに一番乗りしたものの、よく考えるとエレベーターで一番先に乗ると展望台に着いたあと出るのが一番あとになることに気づいてなんとか一番最後に乗り込もうと変な譲り合いを始めて収集つかなくなる」

がメチャクチャ笑いました。
はたして当日どんなドラマが待ち構えているのでしょうか。
あと、絶対に「あの、ツカイスリーってのができたからよお」みたいな豪快な間違え方するオヤジいるんだろうなあ。日本のあちこちで。

 

   
★待ってました

週刊朝日で連載されていた北原みのりさんの「木嶋佳苗100日裁判傍聴記」が単行本になりました。

○「毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記」北原みのり(朝日新聞出版)

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この連載が続いているあいだ、「週刊朝日」を4週に3週くらいは購読していて、挙句北原さんの手記が載った「婦人公論」までつまみ食いしてたんでだいたいのところは読んでるんですが、あらためて読み返すと「何なんだろうなあ」という想いばかりが沸き出てなりません。
「なんなんだろうなあ。男と女って」とか、「なんなんだろうなあ、人生って」とか。

この事件は木嶋容疑者が最後に会った男性が不審死している事例が3例もあって殺人容疑が裁かれてるわけですが、どうも皆不審死の部分にあまり興味を持っていない。
持っているのは木嶋さんの生き方というか、「嘘をつきながら何人もの男性に援助してもらい続けることで人生を成り立たせている女性が美人でなかった」という部分であって。
そもそも結婚詐欺って、どっからアウトで、どこまでだったらセーフなんですかね。
結局当事者同士が怒りの感情を起こすことなく終わってしまえば、何百万渡そうが何千万渡そうがそれだけでは犯罪ではないわけで。
木嶋さんに関わった男性の中でとりわけ印象深いのは婚活サイトで知り合う50代男性のB氏で、メールと電話のやりとりで「学費を援助してほしい」と言われるものの130万円という金額に悩んで結局払わず、しかしあとになって「やっぱり払えばよかった」と振りかえる男性です。
誰がどう見ても詐欺だとしても、本人からすると「彼女を救えるのは俺しかいなかったのかも」という後悔になっていたりする。
やっぱりそこが法律とか善悪論で裁けない人間の部分なんだろうなあ、と思います。

仮に3人の男性が死んでいなかったら今も木嶋さんは池袋にいて、本好きだったそうだから(でないとあれだけの手記もメールも書けないよね)リブロとかジュンク堂で買い物をしているのかもしれない。そう考えると感慨深い。
というか、表に出ないだけで同じようなことをしている女性(あるいは男性)は結構いるのかもしれない。
きっと、今日も私たちの知らないいろんなところでいろんな「はじめまして」という男女の出会いが起きていて、その中の何組かは確実に人生を変える出会いになってるんでしょう。

そもそもこういうことを考えるようになったきっかけが、去年読んだ「困ってるひと」「秋葉原連続殺人事件」でした。
この二つの本には私の中で共通項があって、それは「結局彼女かよ」「結局彼氏かよ」で。

読んだ人も多いと思うので多少ネタバレ気味に書きますが、「困ってるひと」は難病に苦しむ26歳女性の手記です。
「重い話を明るい筆致で書いてる」ということで話題になりましたが、読んでるとユーモアが交じった明るい筆致ではあってもそこかしこに他罰的というか、攻撃的な面がちらちら見えました。
それは病院の医者や看護士に対してであったり、家族や友人に対してであったり、笑いに包みながら常に「なんで理解してくれないのよ!」「なんで上手くいかないのよ!」という苛立ちの感情が見えた箇所が多かったのです。
それが一変するのが病院内で彼氏ができる場面です。
相手も障害者なので、できることも限られれば二人で何かすることで増える負担も少なくない。
にも関わらず、著者の大野さんからはその場面以降「生きていればいいことある」というようなポジティブな思考が目立ち、攻撃的な思考がグッと減少します。

その逆が「秋葉原連続殺人事件」で、加藤智大がああいった犯罪を犯した背景には派遣工の環境とか虐待を受けてきた出自とかいろんな問題を含めつつも、最大の引き金は「心の荷物を降ろせる人を作れなかった」という点だったと思います。
最後の方は自分自身の心と身体すら制御できていなかったような状態でしたが、その状態ですらガンショップの女性店員と話して「人と話すっていいね」とネットに書いていました。

なので「『結局彼女』…なんかなあ?」というのは最近の自分にとって大きなテーマです。
そのこと以外に、精神の安定をもたらすものというのは何かあるのか、あるとすればどんなものなのか、長いスパンで探っていきたいと思います。

 

★そうすると

こういう本もまた気になってくるわけで。

○「母の遺産 新聞小説」水村美苗(中央公論新社)

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自分の欲望のままに好き勝手に生きつつ最後は娘である自分にすが​りつく、一人で暮らせなくなった母親の世話に疲れてく一方で何度​も浮気を繰り返す夫との関係に悩む女の話。
五十代の女、という人生で一番重たい荷物を背負わされる時間をこれでもか、というぐらいに描きます。
年老いてワガママになっていく母との関係、介護問題、相続、微妙な距離感のきょうだい、愛情の亡くなったダンナ、そのダンナの浮気、老後…。
重たいです。
正直めんどくさいです。
けど、こういう時間は確実に我々にもやってくるわけで。

「ねえママ、いつになったら死んでくれるの?」

というオビ文にはドキッとしました。

 

 
★というわけで

最後はこうなるんでしょうか。

○「だから女はめんどくさい」安彦麻理絵(ベストセラーズ)

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なんだか三題噺みたいなオチになってしまいましたが。
けどこれ面白かったな。
冒頭で出てくる「ねえ!私と仕事、どっちが大事なのよ!」という永遠の難問に対しての正しい答えは目からウロコが500枚くらい落ちました。
この手の質問になんて答えるかという問いはyahoo知恵袋や発言小町その他で膨大に見かけますが、初めて「うわこれが正解か!」という答えを目にした気がしますね。ポアンカレ予想並みの大発見です。男は全員読んだ方がいいと思います。

そいやポアンカレ予想の本も文庫になってましたね。

○「完全なる証明 100万ドルを拒否した天才数学者」マーシャ・ガッセン/著 青木薫/訳 (文春文庫)

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いや読みたい本が多くて楽しいな。売ってるんだけど。

(H)

April 18, 2012

Good-bye青春、退屈なんて落ち込んだ時の言い訳だったんだね

という歌をロン毛だった頃の長渕剛が歌ってましたが、そんな日常の退屈さを持て余している方にひたすら刺激を与えるような絶妙の娯楽作品を紹介するコーナー、題して「俺の愛した絶頂エンタメ本MAX」のお時間がやってまいりました。

もちろんタイトルは「散歩の達人」の好評連載「俺の愛した国道の味 絶頂チェーン店MAX」のパクリであります。
村瀬さん無断借用してすみません。

さて記念すべき第1回の作品はこちら。

○「神さまの言うとおり(1~3巻)」藤村緋二・画 金城宗幸・原作(講談社マガジンコミック)

1   

さあすごいですよこれは。
1巻から説明しましょう。

主人公の瞬くんは高校2年生。平凡な男子高校生です。
瞬くんが午後の教室で退屈な授業を受けていると、退屈な授業を教えている先生の顔がいきなり破裂します。いやするんだって。
まあパニックになりますわねそりゃ。
先生が突然顔面をパーンと破裂させて血を噴き出させて死んだら。
そのパニックになった教室の教壇にいつのまにか鎮座しているダルマ。
ダルマがしゃべりだします。
「だーるーまーさーんがーこーろーんーだっ!」
そのとき動いている生徒が次々スパーン!と破裂して血を流して死んでいきます(笑)。
異様なスピードで状況を分析した委員長が叫びます。
「動くなー!!これ、『ダルマさんが転んだ』じゃないのかコレ!動いたら死ぬぞー!!
そしてそのダルマさんの後ろ側にはボタンがあって、『おしたなら終わり』。

というわけで1巻は突然「死の『ダルマさんが転んだ』ゲーム」が始まります。
いやー「リアル鬼ごっこ」「王様ゲーム」と来て次はこう来たかー、と感心していると、これ以降すべて「命懸けの風雲たけし城」のような、ヤケに肉体的にハードすぎるイベントが次々瞬くんの元に降りかかってきます。

「一瞬で人を殺す巨大ネコの首に鈴をつけたら脱出可能ゲーム」
「やはり一瞬で人を殺傷するコケシによる“かごめかごめ”、後ろの正面誰か当てないと即死亡ゲーム」
「いつ始まるかわからない・無制限サバイバル綱引き」

とかいろいろ出てくるわけですが、個人的には2巻に出てくる

「触れたら一瞬で身体が切れるロープ(?)で大縄跳び100回飛ばないと逃げられないゲーム」

が素晴らしいなと思いました。
いや、これポイントはこれ「4人一組で100回飛ぶ」ってことなのよ。
誰か一人ひっかかったら終わり、っていう(笑)。

かの名番組「ウッチャンナンチャンのこれができたら100万円」を思い出しますね。出さねえか。
たぶん4巻は電流イライラ棒をクリアしないと死ぬことになるんだと思います。

お次はこちら。

○「さんくすないと」根本起男(エイ出版社)

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ガイド本とか実用系ムック本を多数発行しているエイ出版社が昨年からゴールデン・エレファント賞というエンターテイメント小説のブランドを作るようになったのですが、そのゴールデン・エレファント賞の中の1作。

とあるデパートで社員やその家族等から12人の女性を深夜のデパ地下に集め、フロアーにあふれる惣菜・ケーキなどの高級グルメの数々を食べ放題にさせるイベント、それが「サンクスナイト」。
そんなリアル「TVチャンピオン」のようなイベントに招かれて12人の女性たちがデパ地下グルメを堪能しまくってると突然倒れてうめきだす女性。血を吐く女性。「おい救急車!」と言うもケータイの電波がつながらない。外に出る出口は何者かの手によってすべて閉められている。気がつけば防火シャッターも降りている。
完全に閉じ込められた地下に響く何者かのアナウンス。
「このフロアの食材に神経毒を撒いた。1時間ほどで死に至る。解毒剤は、このフロアにある食べ物のどこかに入っている。さあ、食べて食べて、食べまくってください」(※本文はもっと長いので要約しました)

というわけで参加者は解毒剤の入った食品を探してデパ地下を次から次に食べ続ける…という、とてもさわやなかストーリーです。
いや後半気持ち悪かった。
ちゃんとラストもオチがついててよくできてると思うんですが、とにかく気持ち悪かった。
これ読むとしばらくデパ地下に行きたくなくなります。
ちょっとしたトラウマになるかも。

まあ、「神さまの言うとおり」も「さんくすないと」も突っ込めれば突っ込めないこともない設定なわけですが、読んでるとどうでもよくなってくる瞬間があるんですよ。
やっぱこういう作品は必要だなーと思いました。

というわけで次回のフェアは「絶対に読み返したくない本・読んでトラウマになった本」フェアを行う予定です。
5月の連休明けぐらいから。
請うご期待。

(H)

April 10, 2012

あの頃僕が見ていたガードレール越しの黄昏

先日、尾崎豊の遺稿(と言うんでしょうか)をまとめた「尾崎豊NOTES」という本が新潮社から出て僕の心の中の17歳の地図を照らしたかと思えば、そのすぐ後には24年ぶりに復活したという「キン肉マン」の新刊38巻が出て心がマッスルドッキングしました。
何なんでしょうかこのタイミング。
アラフォーの団塊ジュニアの財布が大変メインターゲットにされてる気がしますね。
こういう状況を福満しげゆき先生だったら現状分析と被害妄想と巧みな比喩を交えてうまく描いてくれると思うのですけど。
でもホント不思議な気がします。
なんかフェースブックで再開した旧友同士が盛り上がって同窓会やるぞとか言ってるし。振り返りたくなる時期なんでしょうか。たまたまか。

それにしても「キン肉マン」38巻は発売日に飛びついて買ったんですけど、もうジェロニモの使い方が見事過ぎますね。
ジェロニモがいなければ「キン肉マン」は成立しないですよ。

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★「これは」本

私たちの仕事は毎日毎日入ってくる新刊をダンボールから出して店に並べていくわけですが、年に何冊かダンボールから出した瞬間「こ、これは…」という本があります。
「これは!」ではないです。
そんな強い発見ではなく、あくまで(まだ全然中身を読んでないけど、なんか大変な本な気がする)という予感「こ、これは…」本。

最近だとちょっと前に紹介した萩尾望都の「なのはな」、そしてこれ。

○「母がしんどい」田房永子(新人物往来社)

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ほんわかした絵柄と対称的な「母がしんどい」という書名。
その相反する組み合わせに「え?」と思いながら読んでいくと、どんどん心が曇っていくような、明るい気分が閉ざされていくような、急激にお腹が痛くなるような、そんな感情に包まれていきます。

始めの方で描かれる「夏休みの宿題」の話が印象的です。
夏休みの自由研究をやっている小学生のエイコちゃんのところにお母さんが来て、ニコニコしながら紙を差し出し「ここにクマさんの絵を描きなさい」と言います。
エイコちゃんがうまく描けないでいるとお母さんの表情が険悪なものになり、「違うよバカ!こう描くんだよ!」と怒りだし、「ちがう!もういい貸せ!」と自分で描きだします。
数時間後、「できた!」と目を輝かせるお母さんの脇にいるエイコちゃんはもう違うことで遊んでいます。
そして「先生には一人で作ったって言えばいいからね」と差し出された自由研究はすぐ先生に「お母さんにやってもらったでしょ」とバレる。
けどお母さんはそれを有名なアート展の子ども部門に応募し、結果的には落選すると、泣きながら「エイコちゃんがんばったよね~ママわかってるからね」と抱きしめる。
けど抱きしめられたエイコちゃんはなんとも無表情な顔をしている…。

この作品は著者の田房永子さんが子どもころから大人になるまでの母(ときには父)との関わりを回想していくのですが、時折セリフのない回が出てきます。
そこでは背景に説明があったり、英語のコメントが挟まってたりして読めば話はわかるようになっているのですが、それ以上に「ここはよっぽど再現するのがつらかったんだろうな」というのが伝わってきます。

福満しげゆき氏も書いてましたが、過去のネガティブな記憶を絵で再現するのは相当しんどい作業だといいます。
文章で済むならまだいいけど、読者にイメージを伝えるには封印したい出来事のディティールを脳内に一度再現して、それを自分の手で書かないといけない。
想像するだけでもキツイ作業です。

ネタバレになるので多くを書けませんが、この作品で本当にキツイのは中盤から後半にかけてだと思います。
田房さんのブログにこの作品を出版するにあたっての想いがつづられていますが、「娘としての怒り」という言葉が重く心に響きました。
http://mudani.seesaa.net/article/259220636.html

とにかく一度読んでもらいたい作品です。
そして、この本とほぼ同時期に出た「ポイズン・ママ」にも惹かれまくっていますがまだ読めていません。こっちも何かすごそうな気がします。

○「ポイズン・ママ 母・小川真由美との40年戦争」小川雅代(文藝春秋)

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★セールスランキング3月

しばらく出すの忘れてたら「最近ランキング出してないですね」とある人に突っ込まれました。すみません。

(一般)
1  ザ・西武線さんぽ    交通新聞社
2 日本人の知らない日本語3 卒業編  メディアファクトリー
3 50歳を超えても30代に見える生き方  講談社プラスアルファ新書
4 中国嫁日記2     角川GP
5 前田敦子写真集 不器用  小学館
5 松井玲奈写真集 きんぎょ  光文社
6 「空腹」が人を健康にする  サンマーク出版
7 寝るだけ!骨盤枕ダイエット  学研マ-ケティング
8 PK  講談社
9 ’12 プロ野球カラー名鑑  ベースボール・マガジン
10 このまま30歳になってもイイですか?  サンクチュアリ出版

(文庫)
1 新約 とある魔術の禁書目録4  電撃文庫
2 夏天の虹 みをつくし料理帖  角川春樹事務所
3 仇討 吉原裏同心16    光文社
4 少女    双葉社 
5 三匹のおっさん  文藝春秋
6 左岸(上)   集英社
6 かばん屋の相続  文藝春秋
7 世界史(上)  中央公論新社
8 日光代参 新・古着屋総兵衛3   新潮社
9 ミレニアム1  ドラゴン・タトゥーの女(下)早川書房
10 学問   新潮文庫         

☆明日は

本屋大賞の発表がありますね。
「中二賞」は今年はやんないのか。
そいや本屋大賞ってダブル受賞あるのかな。
ま、明日になりゃわかりますわね。

(H)

April 02, 2012

紙の月

代官山の蔦谷書店に行きました。
日本のおしゃれなものを煮詰めて煮詰めて抽出したおしゃれな町の一角にたたずむお店はやっぱりオサレで、書店というより観光地のようだな、という感じがしました。
なんかここは日本で唯一結婚式が挙げられそうな書店だな、と思ったり、旅行書コーナーの一角に旅行代理店のカウンターがあるのにビビってたじろいだり。
本屋というよりは総合カルチャースペースだなあ、と思いました。
あ、あとあのファサードとか二階空中通路とかああいうのがあればさぞかし良い本屋プロレスができると思うんですけど、なんならDDTプロレスを紹介しますけど…いいですか。そうですか。

蔦谷書店もすごいんですが、やっぱり代官山という場所が「最先端である」という空気を出してるなあ、という感じがしました。
実際に住んでる方からすると反論があるかもしれないですけど、めったに行かない人間からするとあの町はたくさんの「おしゃれ」が散りばめられてて、要するにただ歩いてるだけでテンションがアガるわけです。

けどその「おしゃれ」はお金がかかってるから得られる「おしゃれ」なわけで、激安セールで得られるテンションとは違います。
「お金を使う」という代償行為で何か心理的に満ち足りた気分になるのは男も女も一緒なのではないかと思います。
それはいいことでも悪いことでもなく、そういうものであって。

角田光代の『紙の月』は横領に手を染める女性銀行員の話です。
最近読んだ小説の中でもっともインパクトがありました。

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お金に困っていなかった人がどうして困る状況になっていくのか。
そしてそれはその人だけの特別なものなのか。
洋服や靴を35万円分買って得られたホクホクした気持ちが店を出た瞬間から急速にしぼんでいくのはなぜなのか。
35万円の買い物をクレジットカード一括払いした人がデパ地下の1000円惣菜を買うのをためらってしまうのは何なのか。

「人間とお金」というテーマで書かれた小説は山のようにあるけど、ここまで突き刺してくる小説って今まで読んだことがなかった気がします。
ここには「こうしなさい」という作者のメッセージは何もない。
あるのは「お金に振り回される人間の形」が同時平行に描かれるだけで。

ぎゅうぎゅうと胸を締め付けられると同時に、思うはずです。

角田光代はどうしてこういう小説を書けるんだろう。
あの人の頭の中はどうなってるんだろう。
なんでこんなに人間がわかるんだろう。

と。

ずっと悶々します。
読み終わって1週間以上経った今でも、悶々します。

(H)

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