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February 2012

February 26, 2012

間があいたのでラーメン二郎で言う豚ダブル並みなボリュームでお送りします

気がつくと2月後半です。
プロ野球選手名鑑が出ました。
そっか、ダルビッシュが抜けると「プロ野球の顔」はマー君と中日の浅尾になるんだなあと思わせる今年の表紙です。

先日、野村さんの新刊「プロ野球重大事件」(角川ワンテーマ21)を読んだのですが、その中で落合監督が解任されたことおよび高木、栗山、中畑といった今年から新しく監督になった点に触れ「名監督を必要としない時代になった」と言っていたのが印象的でした。

何年も続けて勝たれると監督の年棒が上がって逆に球団経営を圧迫したり、GM制が普及して監督はあくまで選手のマネージメントだけを求められるようになったりして、球団運営にまでタッチしていたようなかつての監督像は求められていない、監督は組織のリーダーではなく現場の運営責任者となった、という話でした。

野球に限らず、時代が変わればおのずと求められるものも役割も変化していきます。
この本でしきりにノムさんが思いを馳せる鶴岡監督や三原監督がいた時代のようにはもうならないでしょうから、今のスタイルの中でやれることをやるしかありません。
ただし、道を作った先人には必ず敬意を払わねばならない。
壁にぶつかったときのヒントもたくさん持っているはずでしょうから。

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なんて、後半は自分の仕事にあてはめていろいろ考えてみました。

プロ野球開幕は3/30です。

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★いくつか紹介したい本が出たのでまとめて。

○「晴天の迷いクジラ」窪美澄(新潮社)

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デビュー作「ふがいない僕は空を見た」が昨年の本屋大賞2位になった窪美澄さんの新作。
終わることのない仕事に追われて次第に心を壊していく由人。
その由人の会社社長で、過去に修羅を背負っている野乃花。
そして二人とは別の場所で、追い詰めるような潔癖さを押し付けてくる母親に日々圧迫されていく正子。
生きることに疲れた3人の男女の物語。

読み終わったとき、「新潮社はすごい作家をつかまえたなー」と思いました。
窪美澄さんの第一作、「ふがいない僕は空を見た」は今度映画になりますが、そういうのを差し引いても年に何作も無い、読み終わると心から何かが剥がれおちる小説でした。
正直あのあとだからつらいだろうな、と思っていましたが、「二作目でまたこういう書けるんだ」と思いました。
そしてきっとこの人は、いずれ国民的作品を書くんだろうなあ、とも。
東野圭吾が「容疑者Xの献身」で、角田光代が「八日目の蝉」でそうなったように。

窪さんの小説は、「人生の重み」みたいなものがすごくうまく表現されているように思います。
それは窪さん自身が背負ってきた人生の重みでもあるのと同時に、おそらく誰もが背負うことになる重みではないかという気がします。

窪さんは現在「週刊新潮」にて『アニバーサリー』という小説も連載されており、そちらも単行本になるのが楽しみです。

 


○「転落の記 私が起こした詐欺事件、その罪と罰」本間龍(飛鳥新社)

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博報堂の元社員である著者が犯した未公開株詐欺事件、およびその後の逮捕・懲役生活について語った手記。
ノンフィクションですが、全編異様な迫力で、よっぽど小説より小説ぽいです。

転落のきっかけが得意先の未回収金を自分で埋めようとしたことで、なぜそうしようと考えてしまったかという当時の心理描写などは読んでてザワザワします。
その様子はまさしくリアル「ナニワ金融道」。
そして著者は自分の持っている未公開株がいずれ上場した際には何百万もの資産になるという話をヒントに、友人や知人から巧みにお金を引っ張ろうとします。
このお金を引っ張るところで、最初のうちの動機と、二回目以降の動機が微妙に変わっていくのが人間の恐ろしさを感じさせました。

そして回収が難しいと思われていた得意先から集金したことで(実際は自分がだましとった金で得意先を装って会社に入金するわけですが)、社内で「よくあの難しいところから回収した!タフ・ネゴシエーターだ!」というように評価が上昇する一方、自宅の貯金も架空入金に転用したため奥さんとの仲が急速に悪化し、その結果愛人ができて不倫するようになり、そしてまたお金が必要となり…といった負のスパイラルに陥るサマが本当に小説みたいです。

また、出てくる会社関係の名前がなぜか基本実名なので、「過払い金は取り戻せます!」のCMで有名な某弁護士事務所って実はこんな極悪な仕事をしているのだな、とか世の中のブラックな一面を知ることができます。

読み終わるとオビに書いてある「たとえ順風な人生においても、落とし穴は至る所にある」という一文がしみじみ恐ろしく感じます…。

 

●静かに売れていく本

ベストセラーランキングには入りませんがひっそり売れ続けている本を。


○「子どもの名前が危ない」牧野恭仁雄(ベストセラーズ新書)

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タイトルでだいたいの内容が想像つくと思いますが、そういう最近の事象を解説した本。
新書コーナーよりも一般書コーナーに出しといた方がよく売れました。
8冊入荷7冊売れ。

「与夢」と書いて「あとむ」(男の子)、「新千絵」で「にーちぇ」(女の子)、そして「雄」で「ゆう」…ではなくこれで「らいおん」(男の子)と読ませる名前があるそうです。
いやはや、日本人のネーミングセンスの多彩さはすごいですね。
実際、保育園と小学校に出入りした際に下駄箱を眺めてたりしてるとそんなに珍しい名前は多いわけじゃないですけどね。
地域的なものもあるのかもしれませんが。

最近の名前も面白いんですが、時代時代の名前の研究も面白いです。
たとえば戦前に多かった男の子の名前は「勇」と「勝」。
戦後になると「茂」と「豊」。
戦争の色合いが強かったのが、食べ物や生活の豊かさに移っていく、という。

まあ「日本人なら知っておきたい日本文学」(幻冬舎)によれば、徒然草の作者、吉田兼好は「最近凝った名前多いよねぇ…難しい字を使えばいいってもんじゃないよ」と平安時代にすでに言ってたそうなんで、こういうのはわりと時代を問わず普遍的なテーマなのかもしれません。


○『凹凸を楽しむ 東京「スリバチ」地形散歩』皆川典久(洋泉社)

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地図というのは基本平面図で平面図で見るものですが、そこに高低差を加えて三次元で東京を歩いて見よう、というような本。
けど散歩というよりは地形学の本ですかね。
中沢新一の『アースダイバー』と似た系統の本なのかなって気がします。

14冊入荷9冊売れ。

 


○『今日が「最後の1日」だとしたら、今の仕事で良かったですか?』中村将人(経済界)

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読んでないので版元紹介文を転用します。

「今日仕事に行く理由はなんですか?
たった一度しかない人生の中で、
自分が「本当にやりたいこと」とは何か?」

15冊入荷10冊売れ。


○「29歳の誕生日、あと1年で死のうと決めた。」葉山アマリ(泰文堂)

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同様に版元紹介文を転用。これちょっと気になってるんでいずれ読みたいなとは思うんですが。

「彼女には絶望しかなかった。派遣切り、親の介護、婚約破棄。どうせ死ぬのなら、すべて失ってもかまわないと思った。日本感動大賞大賞作品。」

8冊入荷6冊売れ。


★というわけで

来週には「小学一年生」入学号発売ですよ。はえー。

(H)

February 09, 2012

2月が永遠に続けば

というわけで店長の私が風邪をひいたり、飲みにいったり、映画「ヒミズ」を観に行ったり、祝日出勤をしたり、秋山準vs大森隆男の運命の三冠選手権を観に行ったり、NET21のお仕事をしたり、また風邪をひいたりしているうちに前回の更新から無事一ヶ月を迎えようとしています。
もう2月ですよ。
2月といったらアレですよ。
そう、みんなが胸をときめかせるアレです。
棚卸。
いやウチ2月決算なんで。

そんな私の最近の楽しみは「週刊朝日」に連載されている北原みのりの"婚カツ詐欺師"木嶋佳苗被告裁判傍聴記で。
これが本当に面白くて。
ぜひ一日も早く単行本にして欲しいなと思います。
まあ裁判やってる間は無理なんでしょうけど。
一部は立ち読み(ってウェブでもそういうのか)できますのでご覧ください。また北原みのりの文章がうまいんだ。

北原みのりの100日裁判傍聴記#2
http://www.wa-dan.com/article/2012/01/post-261.php

とにかく、いろんなことを考えさせられます。
「これ裁判やればやるほど、被害者側の名誉が棄損されていくんじゃないか」とか、
「人間の幸せって何だろう?」とか、
「男と女って、同じケースで加害者/被害者入れ替えても絶対同じにはならない非対称の存在なんだな」とか。

なんかこの裁判記録と、「困ってる人」と、「秋葉原殺人事件」を通して読むと現代社会の問題がかなり表層的ですけど見えてくる気がするんですよね。
まあ、とにかく人間てのは業の深い生き物だなあと、ただそればかり考えさせられる連載です。

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★最近読んだ特に面白かった本

○「ラーメンと愛国」速水健朗(講談社現代新書)

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ちょっと前の本ですけど、これは本当に面白かったです。
読んでみて、わりと早くに「タイトルで損してるな」と。
内容を考えると「戦後史とラーメン」の方が近いです。
あくまでまずあるのは「日本の戦後史」。
昭和から平成、日本はどう変わっていったのか、日本人はどう変化したのか、それは経済とか政治といった大きな物語よりもラーメンという小さな物語で見た方がものすごく伝わるのだな、ということがわかります。

そしてその大きな時代の中で生まれた小さなこぼれ話みたいなエピソードが綺麗に詰め込まれています。
カップヌードルを国民的な食品にした大きな要因があさま山荘事件で警察隊が食べていた様子がテレビ中継されたことだったという話はわりと有名みたいですが、ケロッグコーンフレークを開発したケロッグ博士は禁欲的な新興宗教の信者で「穀物を潰した食品が性欲を減退させる」という仮説を作ってコーンフレークを開発したはいいけど流通を任されたケロッグ博士の弟がそれに勝手に砂糖をまぶして出荷し「甘い物は性欲の原因」と考えていた博士が激怒したけどそうやって出荷したコーンフレークが大ヒットした話とか、『ご当地ラーメン』は田中角栄の国土改造計画の負の側面から生まれた戦後日本の食文化の象徴的な商品であるとか、湾岸戦争と環七ラーメン戦争の近くて遠い関係性とか、とにかくいろんな話が読めます。
正直、新書じゃもったいない内容だと思います。
「神は細部に宿る」ってこういうことだなあ、って。
これ1680円くらいの価値はあると思うよ。

ちなみに私が最近よく行くのは高田馬場の「つけめんHALU」ってとこです。
うまいよ。
この本でよく出てくる「店員が作務衣を着て、『麺屋~』と難しい漢字を使って、壁には『ラーメンに対する俺の魂がこの一杯に入っている』みたいなラーメンポエム(というらしい)が書いてある店」じゃないけど。


 

★そのマイナーな絵画にはなぜ300万ドルの落札価格がつけられたのか

○「楽園のカンヴァス」原田マハ(新潮社)

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アンリ・ルソーという画家を知ってるでしょうか。
私は知りませんでした。
調べたら小学館発行「週刊西洋絵画の巨匠」にも登場してたので、それなりに有名な画家なのかもしれません。
http://www.shogakukan.co.jp/w_seiyoukaiga/list/list21_40.html

そのルソーが書いた「夢」という一枚の絵画に翻弄される人間たちの物語。
岡山の大原美術館で監視員(作品を警備する人)を務める一人の中年女性に、ニューヨークから連絡が入るところから話は始まり、そこからはルソー、そしてピカソが活躍した20世紀初頭と二つの物語が同時進行していきます。
細野不二彦「ギャラリーフェイク」が長編になった感じ、というか。
あんなカッコよくないけど、その分ミステリアスというか。
ルソーの「夢」はニューヨーク近代美術館、通称MoMAに所蔵されているという話ですが、これ読んだら実物の「夢」が猛烈に見たくなりました。

ちなみに私はパウル・クレーが好きでポスターを部屋に貼ったりしているのですが、1998年秋ごろの「週刊モーニング」に短期連載されていた作品で「クレーな人」というマンガがあったのを誰か知ってる方はいないでしょうか。
確か三週か四週続けて連載されていて、その前は「ゴッホな人」「ピカソな人」だったと思うんですけど、Googleで調べてもそれらしいものが見つけられず。
あのシリーズは名作だったので単行本が出たら買おう、と思っていたのに一向に出る気配がなく、気がついたらあれから14年。
もし「ああ、あれならこの本に所収されてるよ」というのを知ってらっしゃる方がいましたらご連絡ください。

 

★いつも会うあの人は どんな人生を歩んできたのだろう?

○「公園で逢いましょう。」三羽省吾(祥伝社文庫)

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昼下がりの公園になんとはなしに集まる5人のママたち(パパもありますが)の物語。
一章ずつそれぞれの人物から見た他のママの様子、子どもたちのこと、自分の過去の思い出が語られていき、最後に公園での異端児的な存在になっているケータイに夢中で子どもを放置しているギャルママの視点で話が締められる連作短編集。

公園に集うのは収入も、家族構成も、年代も微妙に異なる、「ただ住むところが近くだった」人たち。
そんな彼女らにもママになる前には一人の女性の物語があり、パパになる前は一人の男の物語があり、そうして培った自分の体験を通して見ると公園に集まる他のママたちはちょっと違うように見える、というような、すごく多角的な物語になっています。
それでいて読んだあとになんとなく温かくなる、そんな小説。
ある出版社の営業さんに薦められたのですが、これはよかったです。
特に最後があのママさんの話で締められるところがよかった。

 

★1月のセールスランキング

(一般)
1 新宿本    京阪神エルマガジン
2 50歳を超えても30代に見える生き方  講談社+α新書
3 平清盛 前編    NHK出版 
4 やってはいけない風水   河出書房新社
5 続・体脂肪計タニタの社員食堂    大和書房 
6 タブーの正体!   ちくま新書
7 寝るだけ!骨盤枕ダイエット   学研マーケティング
7 父・金正日と私 金正男独占告白   文藝春秋
9 鮫島の貌 新宿鮫短編集    光文社
9 下山の思想    幻冬舎

(文庫)
1  東雲ノ空 居眠り磐音江戸双紙  佐伯泰英   双葉社
2 ビブリア古書堂の事件手帖 三上延  メディアワークス文庫
3 歪笑小説    東野圭吾  集英社
4 陽だまりの彼女   越谷オサム   新潮社
5 傍聞き  長岡弘樹    双葉社
6 ビブリア古書堂の事件手帖2  三上延  メディアワークス文庫
7 ストロベリーナイト   誉田哲也  光文社
8 シンメトリー  誉田哲也  光文社
9 廃墟に乞う   佐々木譲  文藝春秋
9 身の上話   佐藤正午   光文社 



はい、年をまたいでだいぶ変わったような。
「ビブリア」とか「傍聞き」とか注目株はいろいろありますが、やっぱり今一番アツいのはこれですかね。

○「50歳を超えても30代に見える生き方」南雲吉則(講談社+α新書)

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これね、中読むと意外に内容難しいんですよ。
栄養学の話とか免疫の話とか。
でもこれだけ売れてるのは、もうこれ装丁の先生の顔出して「これで56歳!」がすべてですよね。
なんかすげえなあ、と思いました。
とりあえずゴボウ茶を飲むといいらしいです。

南雲先生はこれでブレイクを果たし、先日は

○「若返り食堂 50歳を超えても30代に見える人の食の習慣術」(PHP研究所)

という若返り食事レシピ本を出しましたが、来月には

○「50代なのに30代に見える人の習慣(仮)」(PHP文庫)

という本を出すそうです。おんなじじゃないのかこれ…。

そんな南雲先生のお名前で本を検索すると、昨年以前は乳がんに関する本をたくさん出されてることがわかります。
乳がんの専門家が、なぜか突然アンチエイジングのオピニオンリーダーになる。
人生どこで変わっていくかわからないものです。

(H)

February 07, 2012

アングラって?

はじめまして。

伊野尾書店実用書担当のkkと言います。
店長命令でこのブログにやってきました。

ムーを愛する母親の教育により今では立派なサブカル嬢です。
何かの因果応報か、こちらにお世話になり2年が経ちました。
これからも書店員として日々精進します。

というわけで自己紹介はこれぐらいにして、世間はバレンタインです。
キャピキャピでピンクな空気のチョコレシピ棚を左手にまっすぐ行くと…

好奇心の扉をちょっと開けるフェアをやってます。


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毎日の繰り返しの生活の中でちょっとした刺激が欲しい時ってありますよね?

そんなあなたオススメの本はコチラ


○「世界の猟奇ショー」唐沢俊一/〔著〕 ソルボンヌK子/〔著〕(幻冬舎文庫)

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男性必見のパキスタンの秘宝から外科歴史グロまで
期待以上のトンデモ本です。
しかもコミック文庫という通勤通学にはもってこいの読みやすさ!
裏モノJAPAN(鉄人社)読者には是非買っていただきたい勉強になる1冊です。



過去に店長がブログでとりあげたあの本も再登場しています。
http://inoo.cocolog-nifty.com/news/2009/09/index.html




是非お越しください。アングラ君(↓)も待っていますよ。

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読み終わったあとに人生の何かが変わるかどうかは…
あなた次第です(笑)

(KK)

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