« April 2011 | Main | June 2011 »

May 2011

May 31, 2011

気がつけば昔好きだったアイドルがみな子育てエッセイを出している

   

コミック棚の並びをちょっとだけ変えました。

入り口から、

文庫(ライトノベルス・BL系)→コミック(少女コミック)→(少年コミック)→(青年コミック)

だったものを

コミック(少女コミック)→文庫(ライトノベルス・BL系)→(少年コミック)→(青年コミック)

に変えました。
ライトノベルと併設しないと収まりが悪いものが多くなりましたので。
「僕は友達が少ない」なんてコミックと文庫、新刊が同時に出てますし。
そりゃ少ないよ。
オレだって少ないよ。
友達なんて1人か2人くらいしかできないように、この現代社会では巧妙なシステムで成り立っているんだよ。
だから気にするな!

なんの話でしたっけ。

 

★意外な味

○「シアワセのレモンサワー」東陽片岡(愛育社)
 

Photo_9

 

営業に来た鹿砦社の方になぜか案内されました。
販売を委託されてるのでしょうか。
それはともかく、最初チラシを見た時に「東陽片岡のエッセイ?誰が買うんだそんなもん」と直感で思ったのですが、一応おつきあいで一冊だけ取ってみたのですがこれが面白い。
内容は東陽片岡が食べ物とか男と女とか人生とかについて思ったことを脈絡なく書いていく、まあ「下流層な池波正太郎エッセイ」みたいな感じなのですが、たとえば
「お風俗(※氏は必ずこう呼びます)でどうしようもないお姉さんに当たったらどうするか?」
とか
「近頃の野菜炒めについて」
とか
「男は“ナンパ派”か“風俗派”に分かれるが、“ナンパ派”から“風俗派”に転向する奴はいるが“風俗派”から“ナンパ派”に転向する奴はいない」
といった、生きていく上で知っていても何の役にも立たない教養が盛りだくさんです。
オビの推薦文(40歳男性失業者)を借りると『根拠のない勇気をもらいました』。
このオビが素晴らしく、
「場末のハンニバル・レクター東陽片岡が贈る大不景気時代の世渡り術」
いや、これ読んでも渡れないと思うけどなあ。世の中。

ところで東陽片岡って誰?って方。
あなたは正しい。
そのままでいてください。
むしろ女子なら知らないでいてほしい。
だってこの人の漫画って基本的に女の人の裸が載ってる雑誌でしか見ないもん。


★よく晴れた予定のない休日は

○「東京空気公園 誰も知らない穴場満載、東京公園お散歩ガイド」(主婦の友社)
 

Photo_8

これは不思議な本で、お散歩ガイドであると同時に散歩をテーマにしたオムニバスコミックでもあり、「クウネル」的なただ見ているだけで癒される写真集、という三つの要素を満たしています。
この説明だとたぶん「?」となると思いますが、店頭で手にしてもらえればなんとなくわかってもらえるのではないかと思います。
いろんな切り口が同時に入っていますが、共通するのは「公園に行く時間がある人生は幸せな人生」という感じの押し付けがましくない空気がとてもいいです。抽象的な言い方ですが。

自分が好きなのは葛西臨海公園ですかね。
公園つっても水族館があって観覧車があって釣りをするところもあれば園内を子ども列車みたいなのが走っている、公園というよりはアミューズメントパークみたいなところですが、それだけバラバラなのが逆に「何しててもいいし、それについてお互い干渉しない」みたいな空気を出してて好きです。

 

★タイトルで損をしているような

○「パ・リーグがプロ野球を変える 6球団に学ぶ経営戦略」大坪正則(朝日新書)

Photo_7



ひとむかし前、野球は巨人、一も二もなく巨人、だった時代に日陰なパ・リーグを応援する「純パの会」という組織が少し話題になったことがありましたが、これもその流れを汲むパ・リーグ礼賛本なのかなと思ったら全然違いました。
著者はヤクルトスワローズの経営コンサルタントを務められたこともあるスポーツ経営学の専門家で、「経営の観点から見たプロ野球ビジネス」をひたすら説いていきます。
パ・リーグ各球団は2004年の球団合併騒動以降、セ・リーグに比べて劇的な経営改革を進めておりその面で俎上に上げやすかったから取り上げているに過ぎません。
逆に言うとセ・リーグ各球団がなぜ経営改革に着手しない(あるいはできない)のかも、この本では記されます。

かつてパ・リーグ各球団は「親会社の広告塔」として年間数十億の損失を親会社に負担してもらって運営していたといいます。
しかし21世紀に入り、親会社自体の経営が苦しくなって赤字を埋めるのが難しくなったり、会計制度が変わって今までのようにはすまなくなったり、何より2004年の合併騒動、それを経て誕生した新球団・楽天が初年度から数十億の損失どころか黒字決算、利益を出したことにより各球団は相当大きな変革を迫られたようです。
そういったあまりテレビやスポーツ新聞には出ない、いわば「裏側から見たプロ野球」が事細かに語られます。

この本を読んでハッ!としたことはたくさんあるのですが、たとえば

「東京と埼玉を結ぶ鉄道事業がメインの西武グループが巨額の資金を必要とする全国規模の“広告塔”であるプロ野球チームを持つ合理的な意味は見つからない」。

言われてみればまったくその通りなのですが、今までこのことを指摘する人はいませんでした。
良くも悪くもそれが「プロ野球」だったのでしょう。

他にも
「クライマックスシリーズ(ならびに日本シリーズ)は球団経営の根幹に関わる重要な催事と認識する必要がある」
「メジャーと選手年棒を同じレベルにしない限り、“世界一決定戦”は無理だし人材のメジャー流出は続く」
といった他ではあまり出て来ない現実的な指摘が多く、プロ野球ファンなら一度は読んでおいた方がいい本な気がします。

 

★最近の店頭

なんか女優さんとかそんな感じな女の人が出すエッセイが急に増えたような…。滝川さんの本よう売れてますね。


○「恋する理由 私の好きなパリジェンヌの生き方」滝川クリステル(講談社)
 

Photo


 

○「ふつうはとくべつ」牧瀬里穂(ベストセラーズ)

 

Photo_2

  


○「東原亜希のHAPPY BOX」(ベストセラーズ)

 

Photo_3

 


○「小雨日記」小泉今日子(角川グループ)

 

Photo_4

 


○「アンナ流親子ゲンカはガチでいけ!」土屋アンナ(河出書房新社)

 

Photo_5

 


○「ユンソナの「あ・は・は」な毎日。 小さな幸せ。大きな笑顔!」(主婦の友社)

 

Photo_6


(H)

May 21, 2011

「3月12日、人々は何の本を買ったのか」

★これはホントによかった

出たばっかりの新刊ですが、とてもよかったのですぐご紹介。

○「想い出あずかります」吉野万理子(新潮社)

Photo

とある海辺の町に住む、「魔法使い」と呼ばれる「想い出の質屋さん」の物語。
その質屋さんは子どもたちから想い出を聞くことでお金を貸す。
質屋さんにお金を返せば想い出は戻るけど、ほとんどの子どもは想い出を取り返しには戻ってこない。
その子たちの頭からは質屋さんに話した想い出はすっかり抜け落ちてしまう。
ただし、それは二十歳未満までの話。
大人になると質屋さんのことも、質屋さんに「想い出を質に入れたこと」もすっかりわからなくなってしまう――。

このちょっと不思議な設定が何人かの登場人物と絡んで、実に劇的なストーリーを生みます。
いや、参りました。
今のところ今年読んだナンバー1です。
今年読んだ中でこれに匹敵するのは「サラの鍵」(新潮クレスト・ブックス)くらいかな。

それにしても去年の「ふがいない僕は空を見た」といい、このところ自分の中での新潮社打率が井口か内川かバレンティンかってくらいのハイアベレージですね。
つーかバレンティンなんなんですかあの人。打ち過ぎです。
そんなところで今月の「本の雑誌」は「新潮社特集」です。

Photo_2

 

 

★これはいい

○「しごとば」(ブロンズ新社)

Photo_3

絵本出版社のブロンズ新社から出ている絵本で地味に売れているというので取ってみましたが、これはいい!
この手の職業紹介本にありがちな地に足がついてない職業が過剰にフューチャーされるところもなく、説教臭くもなく、なによりわかりやすい。
全然大人が読んでも耐えられる内容ですよこれは。
ちょっと小さいのが難点ですが、版元のページ見てください。

http://www.bronze.co.jp/books/9784893094612/

「すし職人」ですよ(笑)。

 

 

★延長

映画「これでいいのだ!」公開記念・中井が生んだ…わけじゃないけど、中井にたまたまいた偉大なるカルチャースター・赤塚不二夫フェアやってます。
いや、ちょっと前からやってたんですが、一応地元なんでまあ多少は長めに展示します。

 

Photo_4

 

別冊宝島の「赤塚不二夫マンガ大全・ぜんぶ伝説のマンガなのだ!!」という本を読んだんですが、結構エグイ話も書いてたんですね。
四十六歳で童貞のマンガ家のもとに届いた女性ファンからのファンレターを八十歳の母親(息子を溺愛している)が検閲し、内容をそれぞれ書き換えて両者に送る「くそばばあ」はそのオチも含めてかなりドキッとしました。
藤子不二雄もそうでしたが、あの時代の人たちは国民的人気作品の陰で結構毒のある話書いてるんですね。

Photo_5

 

 

 

★特別企画「3月12日、人々は何の本を買ったのか」

先日会った、物書きを主な仕事にしている知人に3月11日は何をしていたか?とお決まりの質問をぶつけると「ずっと家にいた」と言われました。
その方は「3月12日も、13日も家にいた。ずっといた。スーパーに買い物程度には行ったけど、電車に乗ったのは金曜日だったから…17?18?その辺りまでほとんど家にいた」と言います。
職業的にどうしても家での仕事が多くなるのでそれは理解できるのですが、面白いのは「いや、伊野尾さんがうらやましい」と言います。
なんで?と聞いたら「だってリアルで体験したわけでしょ。こっちは家族ともすぐ連絡とれたし、ずっと家にいたから、テレビやなんかでは見ても実体験として社会の混乱ぶりがいまいち実感なかったんだよ」と引きこもりそのものの発言をしていました。

でもそれを聞いて思ったのは、今でこそこんな感じだけど11日の夕方くらいまでは意外と東京の人たちは「まだ日常」という感じを引きずっていたよな、と。
私は普通に出版社に電話注文しようとしてたし(まったく電話がつながらなかったので「みんな仕事してんなあ」とか見当外れなことを考えてました)、週刊誌を買ってくお客さんもいればレディースコミックを買うお客さん、18禁の本を買うお客さん、そんな感じの「いつもどおりな」お客さんもちらほらいました。
本当に深刻な感じが出てきたのはいよいよ電車が今日は動かないらしいとなり、いろんな映像がテレビに出るようになった夜以降ではなかったでしょうか。

そんな翌日の3月12日、世の中はどんな空気だったのか。

自分のツイッターを見返したら「商店街はわりと普通」みたいなことを書いてました。
http://twitter.com/#!/inooshoten/status/46386815824957440
http://twitter.com/#!/inooshoten/status/46389595545415680

3月12日は福島第一原発が爆発した日で、前日帰れなかった帰宅困難者がやっと家に帰れた、そんな一日でした。

テレビが次々と抜き差しならない情報と映像を混乱気味に映し出していたそんな日に、本屋に来た人々は何の本を買ったのか?
「3月12日に売れた本」を一覧にしてみました。
ただし、相当な量になりましたので、折りたたみます。
見たい方だけご覧ください。
表示は書名・出版社・分類だけです。

見ればわかりますが、まったくもって「普通」です。
逆にこの時点で店頭に「地震」だの「原発」について書かれた本はほとんどなかったので、当たり前っちゃ当たり前ですが。
こういう本が3月12日に買われていたんだということにいろんな感想が出ると思いますが、私からは特にコメントはありません。ではどうぞ。

Continue reading "「3月12日、人々は何の本を買ったのか」" »

May 11, 2011

贖罪の山羊

高校時代、「キレオ」というアダ名をつけられた同級生がいました。
キレオの本名はイシカワ君といって、背が高くて濃い顔立ちの若干お調子者で声が大きくてうるさい奴でした。
たしか何かの運動部に所属していたと思います。
イシカワは少年ジャンプとテレビ番組とアイドルの話が大好きなどこにでもいるような高校生でしたが、どこにでもいる高校生らしく、自分の小さな非を認めてトラブルを終息させるのが苦手な奴でした。
クラスメートに対しても、教師に対しても、常に自分本位な理屈を述べ抗弁する。
そのことを諌められると、そのたびに小さな爆発を起こす。
新学期が始まって間もない頃はクラスの輪の中心にいた彼が修学旅行に行く秋口の頃には、何か言おうとするとクラスメートたちに「うるせーなキレオ、黙ってろよ」と言われてしまうような存在になりました。
何かあったときに最初に彼を罵倒するのはクラスの中でも攻撃的なグループです。
そしてそのあと、私を含めた多数のその他大勢な連中が口々に「うるせーなキレオ」「キレオ」「キレオ」と挑発する。
すると頭に血が上ったイシカワは必死に言葉で、腕力で、僕らに反抗を試みる。
時には涙を浮かべていたこともあったと思います。
それを見てさらにまた僕らは「ほらキレた」「キレオこえー」と囃したてながら逃げる。

記者会見で大声を張り上げ時には涙も見せていた焼肉チェーン店の社長を見ていて、私は十数年ぶりにキレオのことを思い出しました。

今にして思えば、イシカワが感じていた怒りのもとは「キレオ」という失礼なアダ名そのものではなく、クラスのほぼ全員が自分に向かって同じ単語を突き付けている異常な光景にあったのだと理解できます。
同時に、彼が感じていた圧迫感や孤独感はきっと並大抵のものではなかったのだろうな、ということも。
そして彼が暴発すればするほど喜んでいた自分たちは、なんてヒマな奴らだったのだろう、ということも。

肉の扱いが雑で死者を出してしまったとしても、そのことは当事者と法律の中で粛々と処分を受ければよいことで、周りが囃したてることではない。
あのときの教室とテレビの中の世界は、今もどこか地続きでつながっているような気がします。

不思議なことにイシカワが「キレオ」という呼び方にいちいち反応しなくなると、彼のことを攻撃しようとする人間は少しずついなくなりました。
卒業する頃にはイシカワの周りには普通に友達が何人もいました。
そしてその友達は、イシカワのことを普通に「キレオ」と呼んでいて、イシカワも普通にそれを受け入れていて笑っていた。

我々はヒマだからすぐ新しいものをいじくりたがり、ずっとヒマだからすぐに飽き、死ぬまでヒマだからどんなことにも慣れてしまうのだろうと思います。哀しいことに。

 

★だいぶイメージ違います

○「この女」森絵都(筑摩書房)

 

Photo

大阪・釜ヶ崎で働く青年のもとに、知人を介して「俺の妻の小説を書いてくれ」と依頼してきた神戸のホテルチェーンのオーナー。
青年は唐突な依頼と見合わない好条件に戸惑いながらも受託し、その女・結子と面会を重ねる。
つかみどころのない結子に翻弄されるうちに、青年はこの不思議な依頼の裏にあるもう一つの理由を探し始める…。

森絵都というと「DIVE!!」とか「カラフル」といった瑞々しい作品世界を連想されると思うのですが、新刊のこの作品ではだいぶ毛色を変えてきています。
「1994年の神戸と大阪を舞台にした冒険恋愛小説」…って版元のページに書いてありますけど、「冒険恋愛小説」って何だろうなあ。
普通に「青春小説」でもいいような気がするけど。んー。

タイトルからもっと悪女小説っぽいものかと思ってましたが、そうでもないような。
「悪」というより「懸命に生きる人たち」、という印象を受けました。
私がタイトルつけていいなら「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・釜ヶ崎」にします。
ちっとイメージ変わっちゃうけど。

あんまり言うとネタバレになるのでアレですが、ちょっと面白い小説構造になっています。
全部読めばわかります。

本八幡の書店で働くお友達さんがこの本の応援フリーペーパー作る、というので参加させてもらいました。
明日来るという話なので、明日から店頭で配布予定です。
明日来なければ明後日から配布予定。
明後日来なければ筑摩書房にクレームの電話が入る予定。

 

★いま読みたい

○「電気が面白いほどわかる本」(新星出版社)

 

Photo_2

計画停電真っ盛りの頃、お店にいらした営業さんに「そもそもなんでこういう(計画停電)ことが起こるのか、そういうの解説してある本とかってないんですかね」と言われてそういう本がないか調べたのがこの本を置くようになったきっかけです。
残念ながら計画停電のシステムとか、東京電力のやってることの技術的な解説をしてある本というのは見つからなかったのですが、この本は電気の話から発電のしくみ、テレビや携帯電話といった家電がなぜ動くかの技術的な解説、とかく電気にまつわる様々な雑学が一挙にわかる大変お買い得な内容となっております。

が、お買い得ではありますがなかなか簡単にパッと理解できる内容でもありません。
理系話はむずかしー。
オームとかアンペアとか出てきただけで身構えてしまう…。

当然、発電所の話もいろいろ出てきます。
いまやすっかりおなじみになった沸騰水型軽水炉とかウラン235といった単語がむなしく踊る「原子力発電所」の項目には「何かあったときに被害が広範囲に広がる」とちゃんと問題点も記されており、いろいろ鬱な気分になることができます。

で、それよりも気になったのが、今後のエネルギー政策の注目株として「核融合発電」という技術が紹介されております。
有限と考えられている化石燃料を使う火力発電と違ってこの核融合発電に使う重水素や三重水素は海水から取りだすことができるのでほぼ資源の枯渇を心配することがなく、原子力発電と違って放射線を出すことも核分裂連鎖反応が暴走することもないという、夢のような発電方法です。

ただし、核融合反応は超高温で超高真空という条件を満たす核融合炉が必要なため、実験段階から実用段階に至るすべてが巨大施設を必要とするため、莫大な予算がかかり、現時点での実用化は20年~30年先だそうです…。
詳しくはこの辺の話を。ムズカシー!
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%B8%E8%9E%8D%E5%90%88%E7%82%89

  

★今週聞いた某出版社広告営業さんのお話

「うちで出してる雑誌で『スマートフォン特集やるから部数増やすぞ』って話きて、えーもう散々出てるんじゃん今からじゃ遅いんじゃ…って思ってたけど、いやー出したら売れましたね。
なんでしょうね。
だから同じような本や特集がいっぱい出ちゃうんでしょうね」

そんなもんなんでしょうか。

(H)

May 03, 2011

雨のゴールデンウィーク

連休に入りました。
お店はヒマです。
まあわざわざ書くことじゃありませんが、街に人が少ないです。
人が少ないということは売上が少ないということですから全然よくはないんですが、少しホッとしている部分もあります。

震災以降、ちょっとした異変といっては何ですが、伊野尾書店は日曜日のお客さんがずいぶん増えました。
しかしそれはウチに本を買いに来たお客さんが増えたというより、「今は遠出はやめとこう」という心境から家の近くで休日をブラブラ過ごす人が増えた、というように見えました。
なにしろ3月、4月は遊園地や動物園、各種イベント、あらゆるところが閉まっていましたから。

その流れが連休に入ってピタッと収まりました。
例年の、いつもどおりの連休な感じです。
それでなくても今年は休みが多いゴールデンウィークです。
ニュースでどこだかの高速道路が渋滞70キロとか言ってるのが聞こえました。
ようやくパンダが来た上野動物園は大変な混雑なようです。
プロ野球も今月から首都圏のドーム球場での試合やナイター(節電モードらしいですが)が復活します。
ああ、戻ったんだなあ、ということを実感します。

書店店頭では「原発」「震災」「放射能」という文字が入った本がおびただしく増えていくのに、ニュースは「東日本大震災で~」「福島第一原発で~」から始まるものが減ってきました。

安心しながら、悶々とします。
「未曾有の大震災」とか「この災害を教訓に」と言いながら、一方で少しずつ3月10日以前の状態に回帰しようとする日常の中で、私たちはいつまで今回のことを考えられるのでしょうか。

私が子どもの頃、太平洋戦争の悲惨さとそこに突き進んだ当時の日本の愚かさを戒めるような本がたくさんありました。
それを読んで「なんで日本はそんなバカな戦争をしたんだろう」と思ったものです。
今、子どもたちに
「起きちゃったことは仕方ないにしても、あなたたちちゃんと考えてたの?戦後、日本が選択したエネルギー政策についてちゃんと選挙で意思を示したの?」
って聞かれたとき、はっきり「意思を示してきた」と返答できる大人はどれだけいるでしょうか。
今後どれだけ国民負担が増えるのか想像もつきませんが、その後始末をすべてひっかぶらせる子どもたちに申し訳ないなと思います。

出版は事業なので、売れなければ本を作るのは難しい話です。
その意味で、今後この震災・原発問題から後世へのヒントを考える本は、失われていく人々の興味を考えれば難しいかもしれません。

でも、なるべく置きたいです。
一人でも多くの人に考えてもらうために本屋ができることは、機会を与えることです。
置いてある本を見ないのはお客さんの自由です。
ただ、視界の端にそういう本が目に入るような、それぐらいの押し付けがましさは、すみませんが持たせてください。
8割の世の中のニーズと2割の店主の押し付け、それぐらいなほどほどのバランスを保って、本屋という仕事をもうちょっと頑張りたいと思います。

★今月の本

○AERA増刊「原発と日本人 100人の証言」

 

Photo

印象に残った何人かの話を抜粋しました。
コメントはつけません。
あくまで私の要約であり、原文はもっと長いです。
なお頭の番号は誌面に登場する「100人」の中の順番です。

6、 南相馬の工務店社長
「いま100万円を送るなら1万円を100ヵ月送ってほしい」

12、大熊町旅館経営男性
「地元では原発に就職できるのはエリートコースだった。そこに行けば一生安泰した生活を送れると思っていた」

14、双葉町中学生
「町にいるときは何もないと思ってたけど、離れるといい町だったなって」

22、いわき市主婦
「家族と関西まで避難しましたが、あまりの対応の冷たさに避難をあきらめました。
夫と娘はいわきに帰りましたが、私はどうしても放射能が怖く、一人で東京に避難することにしました。
この恐怖感は家族ですら理解してもらえないのだから、東京の人にはなおさらわからないと思います」

28、双葉町男性
「原発の排水口の近くは水温が高くなるからか釣りの穴場で、クロダイやカンパチなど変わった魚がとれた」

65、東京電力広報
「この一ヶ月間、自分の席で毛布をかぶって寝ています。
会議室のソファで寝られればいい方。
ほとんどの社員は自席で寝ています。
風呂に入るだけのために、4,5回帰宅しました」

82、中川秀直(第1次橋本内閣で原子力委員会を担当)
「マスコミは『専門性が高くてカバーできない』と泣きついてきましたが、『批判する以上はカバーすべきだ』と迫りました」


 

★気になったコミック

○「8 はち / 1」(小学館ビッグコミックス)

 

Photo_2

正確な読み方が私もよくわからないのですが、「はち」がタイトルでそのあとの「1」は1巻、という意味だと思われます。って見たまんまですが。

なんてジャンルかと聞かれると説明が難しいのですが、SFファンタジーギャグ、とでもいうのでしょうか。
でもギャグじゃない部分もあるしなあ。
岡崎二郎と吉田戦車と喜国雅彦の中間点にいるような作風です。
ともかく一読の才能は絶対にある作品だと思います。

   

★気になった絵本

○「パパのしごとはわるものです」板橋雅弘 作  吉田尚令 絵(岩崎書店)

 Photo_3

パパの仕事を調べに行くと、なんとわるものレスラーだった。ずるいことばかりするパパ。最後にはやられてしまうパパ。観客は大喜び。そんな姿、見たくなかった!でも……。

これ、絵本なんですけど、完全に読者層は大人の男性です(笑)。
ミッキー・ローク主演の映画「レスラー」を見て泣いた方には「絶対にこれも間違いないから」と強く推したいです。
父親の仕事が悪役レスラーだと知った男の子がつける絵日記の内容が泣かせます…。

  

★4月のランキング

久しぶりに載せてみます。

【一般】
1、謎解きはディナーのあとで  (小学館)
2、心を整える。  (幻冬舎)
3、老いの才覚  (ベストセラーズ)
4、誰も教えてくれないお金の話  (サンクチュアリ出版)
5、Cat LOVE・ネコ   (文藝春秋CREAムック)
6、日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか   (PHP新書)
7、写真集・東日本大震災    (朝日新聞出版)
8、らくらく日帰り山さんぽ   (交通新聞社ムック)
9、大局観-自分と闘って負けない心  ( 角川ONEテーマ新書)
10、文藝別冊・佐野洋子  (河出書房新社)

【文庫】
1、八日目の蝉  (中央公論新社)
2、紀伊ノ変 居眠り磐音江戸双紙36  (双葉社)
3、IS〈インフィニット・ストラトス〉7  (メディアファクトリー)
4、わたしを離さないで  (早川書房)
5、FLY  (文藝春秋)
5、朝廷 交代寄合伊那衆異聞  (講談社)
7、三陸海岸大津波  (文藝春秋)
8、ソードアート・オンライン7  (電撃文庫)
9、流星の絆  (講談社)
10、審判  (徳間書店)   

【コミック】
1、進撃の巨人(4)  講談社
2、NARUTO-ナルト-(55)   集英社
3、テルマエ・ロマエ(3)   エンターブレイン
4、月姫(7)   講談社 
5、ヴィンランド・サガ (10)    講談社
6、青の祓魔師(6)    集英社
7、GANTZ-ガンツ-(31)   集英社
8、BLEACH-ブリーチ-(49)   集英社
9、桜蘭高校ホスト部(18)   白泉社
10、トリコ(14)    集英社


★今月の文庫

久保寺健彦の「ブラック・ジャック・キッド」がようやく文庫化されるらしいので今から楽しみです。
http://www.shinchosha.co.jp/book/135466/

そういえば「神様のカルテ」も6月に文庫化だそうです。

(H)

« April 2011 | Main | June 2011 »