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April 2011

April 27, 2011

名前のつけられない罪悪感を前に

少し前の話になってしまいましたが、今年の本屋大賞が発表になりました。

○「謎解きはディナーのあとで」東川篤哉(小学館)

 

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あらためて本屋大賞は絶妙なバランスの上でうまく成り立っているなあと思います。
今年は東川さんの軽快なコメディミステリー、昨年は時代小説(「天地明察」)、その前はホラーサスペンス(「告白」)、その前はエンターテイメント大作(「ゴールデンスランバー」)、その前がスポーツ青春小説(「一瞬の風になれ」)。

特に何かしたわけではないのに、毎年違うジャンルの作品が選ばれています。
なにがしかの集団心理が作用しているのかもしれませんが、バランスとれてるなあと思います。

ちなみに私が投票したのは

○「ふがいない僕は空を見た」窪美澄(新潮社)

 

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○「ツリーハウス」角田光代(文藝春秋)

 

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でした。
もいっこは思い付かなかった。

今年は「中学2年の男子に読ませたい!中2賞」という若干意味不明な企画があり、なんでもいいやと思ってコメントを書きなぐりつつ我らが立嶋篤史の「ざまぁみろ!」(幻冬舎文庫)を推薦したところなぜか浦安市入船中学校の小山君に「小山賞」という賞をもらってしまいました。
この場を借りて小山君に「もう少し考え直した方がいいと思うよ」という御礼の言葉を述べたいと思います。
まあ真面目に言うなら中学生というか、全世界の男子に読ませたい名著ですけどね。
「ざまぁみろ!」が世界160の国と地域の方々に読まれるような時代が早く来るといいなと思います。

 

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☆今週の雑感

店頭には震災や原発の関連書がいろいろ並ぶようになりました。
が、「緊急出版」と名がついた本はよくよく見ると何年か前に出した本に一部加筆して改題して出した増補版だったりします。
それなりの人が震災後それなりに考えをまとめた本はまだこれから出てくるのだと思います。

震災後に会った人への挨拶として誰もが口にしたであろう、「3.11のときって何してた?」をまとめた雑誌がいくつか出てきています。
「SWITCH」とか「en-taxi」とか。

 

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みんな面白いです。
知ってる人、知らない人、ネームバリューに関係なく、それぞれがそれぞれの状況であの大地震と向かい合ってたのが伝わってきます。

他方、それができるのは我々が「ある程度終わった」からなんだろう、という気持ちもあります。
各新聞社が今週揃ったように震災報道写真集を出しました。
いくつかは表紙に「3.11~4.11 一ヶ月の記録」という文字があります。

けど、暖房もない、風呂もない、プライバシーもない、着替えもないという避難所生活を強いられている方々にとっては終わるどころか今も続いている事象です。
それを考えると、何を言ったところで「いち抜けた」みたいな感じになっている状態が、ホント申し訳ないです。
謝ってもしょうがないんだろうけど、やっぱり謝るべきだろうなと思います。
同じ立場になれなくて、本当に申し訳ない。

ここにきてメディアは一段と東電バッシングを強めています。
そりゃあ、歴史に残る惨事になってしまったわけだから、誰かをスケープゴートにしたいのはわかる。
でも東電が住民や国の意向を無視して無理矢理原発を設置したならともかく、実際はそうではないわけで。
第一義的な責任は免れないとはいえ、その後ろには何十年とわたって原発を推進してきた時の政府と、黙認してきた国民がいるわけで。

過日、「図書新聞」に原発反対運動を長年行ってきた方の寄稿が載っていました。
その方いわく、
「原発の問題は突き詰めれば日本全体の問題につながる。いくら『原発は危険だ』と言ったところで、原発があるおかげで生活できている人の前でその言葉を言うことは無力だった」
というような文章がありました。

首都圏に人口と産業が集中し、そこで使う電気を作るために、私たちは人も仕事もないエリアに原発を作らせた。
こうなって思うのは、ただ申し訳ない、と。
広瀬隆が言うように、もし原発が東京にあったなら、ここまで考えることはなかったのに。
どうにもならない歯がゆさと、はっきりしない罪悪感のような感情が、いつまでも頭から消えません。

☆本当なら、気持ちを切り替えていろいろ楽しい本や面白い本を紹介するのが筋なんでしょうが、一人で漠然と考え事をしていると気持ちがそっちにばかり引きずられてしまいます。
すみません。

店頭では映画「これでいいのだ!!」公開記念・赤塚不二夫フェアやってます。

文庫もいろいろ面白そうなものが出てきています。映画化した「八日目の蝉」が大ヒットしていて、前からこの作品の大ファンだった人間としてはちょっと嬉しかったりとか。。

二転三転した末にシーズンが始まったプロ野球の本がいろいろ出てたりとか。「野村克也に挑んだ13人のサムライたち (双葉新書)」は90年代に神宮によく通っていた人間としては実に面白かった。

コミックもいろいろ出てます。とり・みきの新刊「クレープを二度食えば」は面白そう。

にもかかわらず、気持ちは福島と、宮城・岩手の沿岸部のことを考えてしまうのです。
そしてそういうモヤモヤを溶かしてくれる本を探し求めています。
上から目線で「頑張れ」と言う前に、まず自分が頑張らないと、ですね。

いろいろありますが、もうすぐゴールデンウィークです。

いい休みになりますように。

(H)

April 11, 2011

「日本中に散る花を 集めて海に浮かべましよ」

地震や原発に関する書籍を調べて発注したのは震災が起きてから翌々週の月曜日です。
本当だったら翌週にやればよかったんでしょうが、ちょうどその頃は電車の運行状況が不安定で出勤できないアルバイトスタッフが出たりしてシフトの組み換えに忙しかったり、運送業者の燃料不足で荷物が隔日配送になってその対応に迫られたり、なにより福島原発をめぐる状況がもっとも切迫していた時期で仕事以上にニュースに気を取られ、ほとんど仕事に身が入らなかったというのが実情です。

地震や原発に関する書籍を調べている際、「そういえば来月は都知事選」と思い付いて何点か関連書を発注しました。
それらが店頭に届いた頃、書籍棚の一角にもともとあった石原知事研究書とともに「東京都知事選挙」というミニコーナーを作りました。
3月の終わり頃だったと思います

結果から言うと、都知事選関連書はほとんど売れませんでした。
平凡社新書の「石原都政副知事ノート」が2冊売れたくらいかな。
ま、そんなもんですから他は推して知るべし、です。

石原現知事が実に4選を果たし、少なくともネット上では「なんで!?」というような意見が多かったように思います。
逆に言うとそれだけ「ネット世論」と「民意」には開きがあるんだな、というのを思い知らされた選挙でした。
単純な人口数でいえば若者―中高年―老年という3つの層どこが大きいかは明らかで、しかも一番少ない若年層は選挙に行かないので、ある種当然の結果だったのかもしれません。

直前までのネット上あちこちで見受けられていた石原ネガティブキャンペーンとそれに反する結果、そしてあまり売れなかった都知事関連本。

「政治と本」ということを考えるとき、今後はこの3つのことをいろいろ咀嚼して考えていきたいと思います。

 

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★雑記

気がつくと、プロレス中継を見なくなっていました。
この一ヶ月、会場には2度ほど足を運んだのですが
(「節電興業」という条件で開催されたDDT3月27日後楽園大会は歴史に残る大会だったと思います)、
ひと月前までバカみたいに見ていたCS放送のプロレス中継をまるで見なくなりました。

代わりにニュースと、ネット上の震災にまつわる情報、youtubeに上げられた震災や震災後の町、津波の映像をむさぼるように見ています。

そういうのをずっと見続けていくと、ある疑問が出てきます。

「これを知って何になるんだろう」

という疑問です。

震災後、過去に出た地震・原発・放射能関係の本がいくつか重版されました。
その中に、

○「人は放射線になぜ弱いか」(講談社ブルーバックス)

 

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http://www.bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2572389

という本があります。
学術的な記述も多く、誰にでもわかりやすく…という本ではありませんが、まるで物理化学がダメな私でも読んでいけばおおよその理解はできました。

簡単に言うと、「放射線のリスクは過剰に広まって伝わっている」というのがこの本の主旨です。
チェルノブイリ事故や東海村JCO事故、さらに広島・長崎の原爆の被曝被害といった様々なデータとそれにまつわる分析の結果が事細かに載っています。
直接この本では触れられていませんが、「放射能はちょっとぐらい浴びても人体に影響を与えることはない」という学説と「放射能はあなたの身体を破壊するリスクがある」という学説があれば、明らかに後者の方が広まる力は強いです。
私自身はこの本を読んで明らかに今の放射線に対する危機意識は行き過ぎなのではないかと思いました。

けど、仮に「放射能がくる!」と不安に思っておられる方が身近にいて、そういう人に
「この本読みなよ、ほら大丈夫って書いてあるじゃん」
って言ったところで、それでその人が救われるのかと思うと疑問なのです。

不安に思ってしまった人は不安に思う理由があるわけで、それを本、情報、教養といったものが解消できるのか、懐疑的になってしまいました。
むしろ「そうだよね、怖いよねー」って言ってあげた方が救われるのではないか。

だから、そうやって考えた時に「放射能はそこまで危険じゃない」っていうのと「放射能は危ない」っていうのは両方正解になりえるんじゃないかと。
相反する意見が両方正解というのはめちゃくちゃですが、きっとそれでいいんだと思います。

ただし、それを人に押し付けてはいけない。
正解を求めることより、認め合うこと。
それだけが今必要なことなんじゃないかって。

だから、押し付けない。
押し付けないけど、そばで「こういうのもあります」と提示だけはしていたい。
それを選ぶも無視するもすべて認められていいんだ。

Twitterでいろんな方にご意見を聞いて集めた「今読みたい、明るい気分になれる本、楽しくなれる本」というフェアは、そんな思いをもとにやってます。
提示だけはしていきたい。

 

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★明日はちょうど本屋大賞の発表があります。

http://www.hontai.or.jp/

本屋大賞は「全国の書店員がいちばん!売りたい本」というフレーズで「これを読め!」的な押しの強さが印象に出てしまいますが、私自身は「いろいろあって迷うようならこんなのもありますよ」程度な推しの集合体だと思っています。

本屋大賞の投票は2月で締め切られますから、明日発表になる本が「全国の書店員が」選んだ本であることには間違いありません。
けどその締切の後、日本は二つの層に分断されてしまいました。

「震災でこれからどうなっちゃうんだろう」という人と、「今現在震災で苦しんでいる」という人の感情の断裂。
その断裂は簡単に埋められないし、わかった気になっていいものでもない。
東北・茨城の書店員さんと、それ以外の俺たちでは同じ目線にならないかもしれない。

けど、「本」という話題が、「今年の本屋大賞はこれです!」という明るい話題が、どうにかそれを、一瞬でも埋められるように願っています。
「それどころじゃねえよ」って言われてしまうかもしれないけど、嘘でもいいから「楽しいこと」として届きますように。

ACのCMってたくさん種類があるだろうに、この時期に金子みすずの詩があれだけ流れたのも、なんかの巡りあわせなのかなと考えてしまいます。
著作権的にどうなのかなと思いましたが、Yahoo知恵袋によれば50年過ぎてればOKらしいので、金子みすずのこの詩だけ引用させてください。


 ~ 明るい方へ ~

     明るい方へ  明るい方へ。
     一つの葉でも 陽の洩るとこへ
     やぶかげの草は。
     明るい方へ  明るい方へ。
     はねこげよと 灯のあるとこへ。
     夜とぶ虫は。
     明るい方へ  明るい方へ。


明るい方へ。
明るい方へ。
陽の洩るとこへ。
灯のあるとこへ。

今は笑えなくても、明日には笑えるように。

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(H)

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