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March 2011

March 26, 2011

戻る日常、戻らない思考

福島の浪江という町があります。
海沿いの小さな町です。
海水浴場があり、そんなやたらキレイな海ってわけじゃありませんが、夏場でもそこまで混んでいないのでのんびり泳げます。
海の近くには国道6号線が走っており、回転寿司屋があったので入ったことがあります。
若干キレイとはいいがたい店舗でしたが、出された寿司はおいしかった。
カウンターの向こうに座っていた遠距離トラックの運ちゃんらしき男性がやたらたくさん皿を重ねていたことを思い出します。

浪江町は近年、焼きそばを地元B級グルメとして売り出そうとしていて、去年開催された「B-1グランプリ」にもエントリーしたようです。
麺が太く、もやしが入っていることを除けばさほど大きな特徴はない、わりと普通の焼きそばです。
向こうの店は東京の店と違って、必ず店内に靴を脱いであがるお座敷があります。
日曜の昼過ぎぐらいに行くと、NHKの「のど自慢」を横目で見ながらおじいちゃんから孫まで三世代くらい勢ぞろいした家族がみんなで焼きそばやらラーメンを食べてたりします。

町役場のそばにサンシャイン浪江というホールがあって、最近ちょっとご無沙汰ですが、何年か前まで定期的にみちのくプロレスが来て試合をやっていました。
きっと、プロレスの時だけは日常の仕事や業務を中断して会場に来ていた地元のおっちゃんやお兄ちゃんや子どもらもたくさんいたんだろうなと思います。

ときどき、浪江町のことを考えます。
福島第一原発から20キロ圏内の浪江町には現在避難命令が出ています。
あの焼きそばストリートは今この時間真っ暗で誰もいないんだろうな、とか、あの人たちは今どうしているんだろう、と考えると目の前に靄がかかったような気持ちになります。
どこに避難しているんでしょうか。
公民館でしょうか。
学校でしょうか。
暖房はついていないんだろうな、とか、ちゃんと暖かい食べ物は出てるのかな、とか。
福島市の知人がつい最近「やっと水が出るようになった」って言ってたけど、この放射能騒ぎでどうなったかな、とか。

当たり前だと思ってた日常が奪い去られたとき、それも誰かの責任にできない、責任を追及したところで極めて無力感を味わうような事態で、そういう事態を免れた者たちはどうすべきなのか。
あるいは何を考えるべきなのか。それとも考えないで「変わらぬ日常を送る」「経済活動に貢献する」って言ってればいいのか。
おそらく100人いれば100通りの正解がある問題を、日々突きつけられてる気分です。

新宿区は計画停電を受けていません。
その事実がまた薄甘い罪悪感を植えつけます。

ガソリン不足で一日置きの配送になってた物流は今週から元通りに戻りました。
が、製紙工場が東北にあったという関係で、「少年ジャンプ」やジャンプコミックですら発売延期になる状況であり、今後どうなるか見通しは立ちません。

http://www.shueisha.co.jp/info/110317_2.html

http://www.shueisha.co.jp/info/110324.html

地震関連のニュースを伝える週刊誌が異常な売れ行きを示す一方で、お客さんの来店数は明らかに1~2割ほど減ってたりします。
が、それでもまだ全然いい方なんだと思います。

茨城のある本屋さんは入居しているショッピングセンター自体が壊れたため立ち入り禁止になっており、地震で崩れた店の商品をいまだに直せないといいます。

神奈川のテナントビルに入っているある本屋さんは「計画停電を実施すれば店は休業、停電しなければ営業」という対応を迫られ、停電が予定の時間になってあったりなかったりするため、そのたびアルバイトスタッフを呼んだり帰したり、で大変疲れています。
当然、休業が増え、ガクッと減った売上に頭を痛めています。

そして、福島と宮城、茨城の一部の書店には、3月12日以降すべての雑誌・新刊が入っていないといいます。
それでも店を開けて、なんとか頑張ってらっしゃる方も多いと聞きます。
無事に営業できている東京の書店としては、本当に頭が下がる思いです。

店にはいろいろ本が入ってきています。
今回の震災を伝える速報的な雑誌、原発に関する書籍、明るい気分になれる本、それらとはまったく関係のないところで出ている大半の本。
本来、そういう本をちょこちょこ紹介するのが当ブログの趣旨ですが、まだ気分になれません。
すみません。
お店に来てみてください。

浪江町にも何軒か書店がありました。
名前は忘れましたが、焼きそばストリートの近くに一軒、小さな町の本屋がありました。
店の前には「小学一年生」や「てれびくん」「コロコロコミック」が出ていました。
きっと毎月1日や15日にはあれを買いに来る子どもと、そのお母さんがやってくるんだろうな、そう思いました。
あの本屋も、お母さんも、子どもも、みんな生きていけますように。
日曜の昼間には家族がお互い文句を垂れながら、焼きそばが食べられますように。

今はそれだけしか。

 

Photo

(H)

March 16, 2011

報告その2

・本日3/16から伊野尾書店は通常営業に戻っております。
ただし、節電のため、外看板、一部の照明、エアコンをオフにしております。
ご理解いただければ幸いです。

・各所で報道されていますが、輸送業者の燃料不足により3/22まで出版物の配送は2日に1回の隔日配達となります。

http://natalie.mu/comic/news/46403

そのため、雑誌が発売日の店頭に並ばなかったり、ご注文いただいた商品の入荷が通常よりも送れる事態が出てきますが、このようなご時勢ですのでご了解いただければと思います。

今日も本来発売されるはずの週刊文春やテレビ雑誌などについて問い合わせを多くいただき、中にはその理由を聞いて一部の消費者の買い占め行動に憤激される方なんかもいました。
取次からは来週の配送状況がこのような隔日体制のままになるのか、元通りになるのかは18日の金曜日に決定すると聞いております。

・実は先週の地震直後の土日は、意外にもお客さんがたくさん来ました。
どこにも出かけられない状況で、かつテレビがニュース一色だったことも関係あるのかもしれません。
しかし、昨日今日あたりはお客さんが少ないです。
計画停電の影響で西武線が不安定な運行をしていることもあり、街を歩く人の数が通常よりも少ないように思われます。

たちかえって、「今、本屋として何ができるだろう」と考えたとき、やはり本を売ることだろう、と思いました。
こんなときだからこそ、明るい気分になれる本、楽しくなれる本、笑える本、そういう本を売ろうと思いました。
そんなことをTwitterに書いたら多数の方にご賛同いただき、いろんな本が出てきました。
近いうちにその本たちを集めたフェアをやりたいと思います。

先に言った輸送状況もあり、また地震で委託している倉庫会社や在庫にダメージを負った出版社も少なくなく、今は頼んだ本がすぐには書店に届かない状況です。

それでも書店は今、これをやらなければダメなんじゃないかと私は思います。
グチャグチャになった人々の心を救えるのは煽情的なニュース番組よりも本だと思います。
がんばろう日本。
そしてがんばろう書店。
今、営業したくてもできない書店がたくさんある。
働きたくても現場に立てない書店員がたくさんいる。
津波でメチャクチャになってしまった街の中にはおそらく何軒かの書店もあったはずだろうから。
今現場に出られる人は、今店を営業できる経営者は、本が売れる喜びをかみしめて、もうちょっとがんばってみよう。
俺らにしかできない仕事を、がんばってみよう。

 

Photo

○「絵のない絵本」アンデルセン/〔著〕 矢崎源九郎/訳(新潮文庫)

March 12, 2011

報告

今回の地震で被害はありません。

(棚の上の案内プレートが落ちた程度)

店は本日(3/12)は18時までの営業、明日(3/13)は通常営業します。

March 01, 2011

会話の基本は相手の中の宝物を探すこと。

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店内のレイアウトを若干変えました。
どう変わったかはお店に来て確かめてください。
まあ若干、ですよ。

うちぐらいの本屋の棚の並びってのは鏡の前に立って髪形を気にする男子高校生みたいなもんで、「ここヘンじゃね?」「なんかこのヘンがなあ」みたいに気になってちょろちょろ変えるんですが、傍目には何が変わったのかよくわからない、本人が思ってるほど周りは気にしていない、てな部分があるような気もしますけどね。
田舎のソバカスだらけの高校生がどう頑張っても山下智久みたいになれるわけがないように、うちがどう頑張ってもジュンク堂みたいな本屋にはなれないんですけど、でもソバカスだらけの男子高校生でも何もしないよりは何かした方がまだいいじゃないですか!

てなわけで日本中のソバカスだらけの男子高校生および場末の本屋たちに贈る、今週の一冊。
強引なイントロデュースだったけど。

○「元・カリスマホストが教える時給100万円の会話術」夕聖(ロングセラーズ新書)

Photo_2

時給100万円ですよ。
時給100円じゃなく。100万円。
月給でも100万行く人はそうそういないのに時給って!

なんでもこの方は歌舞伎町の「クラブ・ニュー愛」というホストクラブで代表をつとめられていたそうですが、自分の28歳の誕生日イベントのときに(ホストって誕生日は「仕事」で祝ってもらえるのですね)、一本20万円以上するドンペリのピンクを年の数(つまり28本)お客さんに入れてもらい、それ以外にも一本40万円ほどのドンペリのゴールドを2本入れてもらい、イベントにプロの演奏家を呼んだり、そうやったりなんだりでトータルの金額が約800万円、イベントが8時間足らずだったのでその日は「時給100万円」、だったそうです。はー。

これだけで脱力してしまいますが、この本で言いたいのは「酒屋で買うとン万円のドンペリニヨンがなぜそんな金額に高騰するのか」ではなく、「そんな無茶な値段設定でも『この人が喜ぶなら』と女性に注文させてしまう男にどうやったらなれるのか」という話で。
まあ実際になれるかどうかはともかく、言ってることは実に面白いです。

たとえば「お客様相手に絶対に地雷は踏むな」。

  • 友だちや同僚に対しての失言だったらまだその後の挽回はきくけど、お客さん相手に一回失言をしてしまうとその後どうやっても信頼を取り戻すことはまず難しい。
  • だからまず「相手のNGワード」を探す。
  • それにはまず事前に相手がどういう人か情報を集めておくこと。
  • それから相手の話を聞くこと。
  • 聞きながら「どういう話題が触れて欲しくないのか」想像すること。
  • また、同行者がいる場合、仮に自分が失言しなくても同行者がしてしまった場合まったく無駄になってしまうので気をつけること。

さすがだなあと思うと同時に、これはホストに限らず営業職に就いている人全員に言える話だなあと。
勉強になります。

それから「相手が自分に対して期待している欲求が3つあったら1つだけ叶える」。
まあこれは異性に対しての話になるんでしょうが、相手が薄々「こうしてくれないかな」と思ってることを一つだけ叶えてあげる。
たとえば「サプライズで大きな花束(青いバラとか)を贈る」「すごくゴージャスなレストランで食事に誘う」とか非日常な体験を一度だけやってあげる。
で、スッと引く。
そうすることで相手が「次は何だろう」という期待感をこちらに向けるようになる、と。
すげー。

まあこれを読んだところで誰しもが即カリスマホストになれるわけではないでしょうが、いろいろ勉強になる話が多いです。
「ホストに学ぶ書店員のための接客講座」があれば受講したいと思いました。

  

★2億冊突破キャンペーンが全国各地で開催中ですが

ジャンプフェスタで発売していたという、「ONE PIECE ペーパートリックシアター」というのを扱い始めました。
紙で組み立てるペーパークラフトですが、2Dとも3Dとも違う不思議な扉絵アート。
紹介されてるページがありましたのでリンク張っておきます。

http://blogs.yahoo.co.jp/omaenotouchanxx/20959343.html


http://tonytonychopper0.blog112.fc2.com/blog-entry-1010.html

 

★今月の雑誌

○「Newton」4月号

 

201104

特集は「未来は決定している?」。
「『運命』さえ物理学で考えられるのか…」というサブコピーがついてます。
ようは物理学と量子力学の入門なんですが、こうつけられると気になりますよね。上手いです。
でも運命決定論は面白かったです。
「ビリヤードは台上でどんな複雑なことがおきたとしても、最初にその方向に手玉をはじいた時点で決まっていたこと」というのが運命決定論。
じゃあそれって人生も…?というお話。おもしろいです。ちっと難しいけど。

 

★よくわかんない雑誌

3月12日に枻出版社からこんなムックが出るようです。

○「本屋さんに行こう!!」780円

「本好き・本屋好きに贈る一冊。蒼井優など著名人オススメの本や、カフェや雑貨屋併設のユニークな本屋などを紹介。POPやカバーにも注目!」

だそうで。
どんな本でしょう。
気になりますね。
さすが焼き鳥についてだけで一冊の本を作る会社は違うぜ。

○「やきとり本」

 

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