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December 2010

December 30, 2010

あの本の感想をもって年の瀬のご挨拶と代えさせていただきます

「KAGEROU」読みました。
ヘタクソだなと思いました。
文章も上手くないし、比喩表現が稚拙だし、人物描写が雑だし。
にもかかわらず、読み終わったとき、なんとも言えない余韻が残りました。
そしてこの上手くない小説を通じて作者の齋藤さん(まあ水嶋さんですけど)がどうしても伝えたかったことがなんとなくですけど伝わってきました。
いろいろ言われていますけど、その“伝えたいこと”だけはリアルに思えたし、感じるものがありました。
誰かの意見は知らないけど、私自身は読んでみてそう思いました。

この前、70歳くらいの腰が曲がったおばあちゃんが「ミズシマさんの本ありますか?」と買いに来ました。
その前くらいに小学生の女の子が買ってったこともありました。
お二人ともご自分で読まれるのか誰かに頼まれたかまではわかりません。
けど、こういうのが国民的作品なんだろうと。

「あれ読んだ?」「ああ、あれねー」で話が続くコミュニケーションツールとしての作品。
こういうのは特定のジャンルが存続していく上で絶対必要な存在です。

今年、Wコロンよりもマツコデラックスよりもブレイクした芸人のピーター・ファーディナンド・ドラッカーは野球部の女子マネージャーに「顧客を創れ」と言ったらしいです。
それはつまり「今までになかった需要を喚起せよ」「届いていないところに届かせろ」という意味なのだと思います。
それができたときに大きなブレイクスルーがある、と。
同じことをアントニオ猪木も「環状線理論」という話でかつて言ってたんですけどね。
プロレスを中心にしたエリアがあってそれを取り囲む外側の線、環状8号線あたり、つまりプロレスファンのコア層から外れた部分を対象にすることによって、世間一般まで巻き込んだ熱やブームを巻き起こせる、という話。
結局そういうものしか世間に届かないし、メディアは扱ってくれないのだと思います。

ブログやネットニュースが普及してみんなよくわかってると思いますが、一番見るのは「新着」とか「更新」となったページです。
新聞もネットもテレビも、そして人自身もみな「新しい話」というのが大好きなわけです。
だから英語には「what's new?」という挨拶があるわけで。
まあ日本語だってありますけどね。「どうよ最近?」っていう立派な挨拶が。

みんな新しいことが大好き。
だから電子書籍が話題になる。
新しい話だし。
でもいずれはあれも小さな一ジャンルとしての当たり前になっていき、また次の「新しいモノ」が出てくる。
ずーっとずっと、繰り返される話。
でも新しい話の下側には確たる存在を築いたものがずっとある。
新しいものと古いものは必ず相互補完の関係にある。
だからやみくもに新しいものを否定したくないし、盲目的に古いものを排除するのもイヤだし、両方を股にかけるように生きていきたい。
そう考えています。

今年一年のまとめを書こうと思ったのに、なんだかよくわからなくなりました。

2010年はいろんな人に助けられた一年でした。

今やネットやケータイですぐ買えるのに、わざわざ店に買いに来てくださるお客さん。ホントありがとうございます。

働いてくれてるスタッフ。今年はずっと続けてくれる人が多くて店長はラクでした。

取次会社の人。いつも無理言ってすんません。

運送会社の人。雨の日も雪の日もおつかれさまです。

出版社の皆様。いろいろ情報ありがとうございます。もうちょっと早く本を出荷してくれるといいなあ、という会社もあるけど。

仕事的にはまったく関係ないけど酒飲んだりプロレス見に行ったりしてくれてる方々。また遊びましょう。

来年もまたがんばります。

なんでかって?

それは、鍛えてるからだー!


伊野尾書店 店長  伊野尾宏之

December 29, 2010

年末年始の営業について

伊野尾書店は12/31(金)~1/3(月)までお休みします。

4日から通常営業します。

4日は週刊誌だけが出ます。
5日は発売ありません。
6日は月刊誌、コミックなんかを含めていろいろ出ます。
書籍の新刊は7日以降です。

よろしくお願いいたします。

December 20, 2010

今年一番印象に残った曲はたむらぱん「バンブー」です。

二週間ぶりのご無沙汰です。
と言ってるうちに今年も残りあと10日ばかりとなってました。
気がつけばどこもかしこも『今年を振り返って~』な話ばかり…と思ったら今日発売になった「週刊ポスト」「週刊現代」「週刊ダイヤモンド」「週刊東洋経済」みんな『2011年は~』的記事が中心。
まあ今日出た号で今年発売分はおしまいですから、わからなくもないですが。

本当は今回「店長が選ぶ2010年最高の本」を発表しようと思ってましたが、やめます。
いや別にわざわざ書かなくてもわかるかな、って。
だいたいここで「この1作だけはどうしても紹介したい!」って熱が入ってるのがそうですよ。ねえ。夏ぐらいに書いたアレとか、読書感想文書いたアレとか。

そんなわけで、今日は本じゃなく、「中井の本屋の店主が選ぶ、今年印象に残った言葉」を紹介したいと思います。
とくに順位はつけませんが、紹介する単なる順番として、数字を頭につけます。

 

  • 1、「彼氏の携帯の中に君の幸せはない」島田紳助

島田紳助がダンナの浮気を疑っていた磯野貴理に向けたコメントらしいですが、ネット経由で知ったものなので若干言い回しが違ってるかもしれません。

たまたま浮気を疑う女の人に向けたコメントですが、「彼氏」は別に「彼女」にも替えられる。
「友達の給与明細の中に~」でもいいです。
きっと安心したくて知ろうとするんだろうけど、そこは知っちゃいけない。
知ったところで何も幸せにならない。
島田紳助はあまり好きなキャラクターじゃないんですが、このコメントだけは実に至言だと思います。

 

  • 2、「本屋って、本当に辛くなったり、悲しくなったりして逃げ場がないときに唯一駆け込める場所じゃないですか」

これは『本の雑誌』の連載にも書きましたが、ある飲み会で出会った、ある若い書店員さんの言葉です。
これは本当に聞いたときハッとしました。
そんな風に思ったことはなかったけど、言われてみればそうかもしれない、と。
以来、本屋という空間について、置いとく本の種類について、接客態度について、いろいろ考えるようになりました。

ひとつ残念なのは、私にこの話をしてくれた書店員さんは事情があって12月いっぱいで今の職場をやめることになったことです。
本当に残念です。本当に。

 

  • 3、「意外と本あるんですね」

これはいつだかお客さんに言われた言葉ですが、たぶん「店の規模のわりに人文書などの内容の堅い書籍が意外と置いてある」という意味で言っていただいたんではないかと思っています。
なんでしょう、多いか少ないかはその人の感覚によるので私からどうこう言うことはありませんが、我々中小書店の本当の敵は大型書店でもアマゾンでもまして電子書籍なんかではなく、「どうせたいした本置いてないでしょ」というお客さんの先入観だと思っています。
だから私たちは一生懸命あれやこれや考えてやることで「まあ一回ぐらいは入ってみてよ」ということをやってるわけで。
方法論はそれぞれだろうけど、今一生懸命なんとかしようとしている本屋の人の根底にあるのはみんなこれだと思います。

 

あ、もうひとつおまけで。

  • 4、「伊野尾さんってタイガー・ジェット・シンみたいだよね」高野秀行

休日に新宿で買い物をしているライバルを襲いそうという意味なのか、突然コブラクローを仕掛けてきそうという意味なのか、カナダで事業家として成功しそうという意味なのかわかりませんがとにかく野宿イベントのときに高野さんにそう言われました。
あ、高野さん↑で呼び捨てにしてすみません。


これで終わりなのもアレなんで、じゃあ最近読んだ本の感想でも。ってもコミックですけど。

○「ビューティフルピープル・パーフェクトワールド」坂井恵理(小学館IKKI COMIX)

http://www.shogakukan.co.jp/comics/detail/_isbn_9784091885340

 

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美容整形の技術が発達し、誰もが美しさと見た目の若さを簡単に手に入れることが出来るようになった、近未来の日本。
あえて素の姿で踏みとどまる者、憧れの存在と同じ姿になる者、愛する人の望む姿を選ぶ者、生きた証を残すため、躊躇なくその見た目を変えてゆく者……。
美醜が全ての基準となる世界の中で、少しだけはみ出してしまった者たちを描いた、連作短編集。

鏡を見るたびに老けたなと思います。
それは今に始まったわけじゃなく、何年か前、ちょうど30歳を超えたあたりからだったでしょうか。
今はだいぶ諦めがつくようになりましたが(笑)、一時期は見た目の老化に対して悶々とした時期がありました。
芸能人が整形かどうかでいまだ話題になります。
整形=悪という図式はおそらく「親から授かったものを変えてしまう」タブーに触れているからだと思いますが、これがもしゼロになったら、人々は「見た目」をどう考えるのか。
さらにその先、誰でも「イケメン」と「美人」になれて、街にその二種類しかいなくなったら。
恋愛はどうなるのか。
自我はどう確立するのか。

この作品で描かれる未来は現実味があるようで無いようで、やっぱりSFなのかな、って思いながらも完全に架空の作品として読むことはできない。そんな筒井道隆的要素があります。
収録されたどの話も作品の余韻以上に「はたしてそうなったら人間は」ということを考えさせられます。
個人的には引きこもりの兄が『美少女に性転換したい』と言い出す話が一番考えさせられました。

あ、「KAGEROU」の話は読んでないんでできません。
なんか文句言いたい奴は読んでから言えよ。
読んでもないのに「つまんないらしいね」とか言うなよ。
だったら最初から「そもそも興味ない」って言えばいいのに。
伝聞情報だけで生きてると人生が乾燥するよ。体感しようぜ。

(H)

December 06, 2010

他意はKAGEROUのようにありません

前回の投稿で「もし水嶋ヒロが本屋大賞とったら授賞式で会えるのかしら?WoooW!」というようなことを書いたところ、ご親切に本屋大賞実行委員の方から
「2011年本屋大賞は2009年12月~2010年11月のあいだに出た本が対象であって、したがって12月15日発売の『KAGEROU』が対象になるのは来春発表の2011年のではなく再来年の2012年本屋大賞です」
というありがたいご助言をいただきました。

というわけで「KAGEROU」は今回の選考対象ではないそうです。
きっと来年春にノミネート作が発表になったときに「あれ?『KAGEROU』入ってないじゃんw」とかなんとかまた話が出てきそうですが、そもそも選考外なんだって。残念だね。再来年にかけましょう。何を。

ちなみに我らが家電アニキの細川茂樹が書いた初の家電恋愛小説「それでも僕は結婚したい」(講談社)は一応ノミネート期間内の作品ですので、投票権をお持ちの同業者諸氏にはジャンジャンバリバリ読んでいただいて、本屋大賞には清き一票を投票してもしなくてもどっちでもいいのでをあの家電俳優さんを応援してやってください。
http://www.oricon.co.jp/news/entertainment/80287/full/

 

☆11月のセールスランキングとちょい売れ本

(一般)

1 「歴史でめぐる鉄道全路線 大手私鉄15(西武新宿線)」  朝日新聞出版
2 「老いの才覚」曽野 綾子    ベストセラ-ズ
3 「S・セキルバーグ 関暁夫の都市伝説3」  竹書房
4 「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーを読んだら」  ダイヤモンド社
5 「猫物語 白」西尾 維新   講談社 
6 「マボロシの鳥」太田光   新潮社
7 「続・体脂肪計タニタの社員食堂」  大和書房
8 「2011 現代用語の基礎知識」  自由国民社 
9 「Girls Girls Girls」平子理沙   幻冬舎
10 「藤原さんちの毎日ごはん」  主婦と生活社

(文庫)

1 「俺の妹がこんなに可愛いわけがない(7)」伏見つかさ   電撃文庫
2 「白銀ジャック」東野圭吾   実業之日本社 
3 「ICO-霧の城-(上)」宮部みゆき   講談社
4 「のぼうの城(下)」和田竜   小学館
5 「みなさん、さようなら」久保寺健彦   幻冬舎
6 「ノルウェイの森 (上)」村上春樹  講談社
7 「沈底魚」曽根圭介    講談社
8 「行きずりの街」志水辰夫   新潮社
9 「僕は友達が少ない(5)」平坂読   メディアファクトリー   
10 「ICO-霧の城-(下)」 宮部みゆき  講談社

(コミック)
1 「ONE PIECE(60)」  集英社
2 「鋼の錬金術師 (27)」  スクウェア・エニックス
3 「NARUTO-ナルト- (53)」  集英社
4 「よつばと! (10)」   角川GP
5 「3月のライオン (5)」   白泉社
6 「リアル (10)」  集英社 
7 「STEEL BALL RUN (22)」  集英社
8 「BILLY BAT (5)」   講談社
9 「ONE PIECE GREEN SECRET PIECES 」集英社
10 「進撃の巨人(1)」   講談社


  

たまには新書のランキングでも出してみましょう。


(新書)

1 「老いの才覚」曽野綾子    ベストセラ-ズ
2 「デフレの正体-経済は「人口の波」で動く」藻谷浩介   角川GP
3 「誰も教えてくれない男の礼儀作法」小笠原敬承斎   光文社
4 「宇宙は何でできているのか」村山斉   幻冬舎
5 「国家の命運」薮中三十二    新潮社
6 「昭和45年11月25日 三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃」中川右介  幻冬舎
7 「中日ドラゴンズ論 “不気味”さに隠された勝利の方程式」今中 慎二  ベストセラ-ズ
7 「発達障害に気づかない大人たち」星野仁彦   祥伝社
9位 (同部数多数につき省略)


  

日頃、本を棚に出してレジで売って売れた本を注文出している我々も実は全体だと何が売れているかというのは結構漠然としかわかっていなくて、こうして出してみることで知ることも多いです。
「国家の命運」がこんなに売れてたんだ、とかまず新刊しか入らないコミックのランキングに「進撃の巨人(1)」は既刊なのに入ったんだ、とか。

その一方、ちょろちょろ売れているようで調べてみたらベスト10にも入っていない、なんだ結構あれ面白そうなのに、って本もいくつかあります。
今日はそんな本をいくつかご紹介します。


  

【今月のちょい売れ本】

・「腰の激痛が消える!革命的療法!マッケンジー体操」石橋俊郎監修(宝島社) ※一般部門13位

 

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あまり認識してませんでしたが結構売れてました。
今年はバンドで巻くのがブームになったように、ダイエットの本が定期的にベストセラーになることはわりとよく知られていますが何気に腰痛と肩こりの本もうまいことやれば結構なベストセラーになるんじゃないかという気がします。悩んでる人多いし。

   

・「花言葉」美輪明宏(パルコ出版) ※一般部門18位

 

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お客さんの層もあると思いますが、ウチでは昔から美輪さんの本がちょろちょろ売れます。
買っていかれるのは圧倒的に女性の方が多いですが、結構若い方が目立ちます。
この本は新刊台のところに置いといたときはあまり売れなかったのですが人生論的な棚に移したら着々と売れるようになりました。

 


・「酔って記憶をなくします」石原たきび編 (新潮文庫)
 ※文庫12位

 

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レジのところに「笑えます!」ってPOPをつけて置いといたら結構売れました。
「家は埼玉なのに、電車の中で目が覚めたら窓から日本海が見えた」とか「目が覚めたら自動販売機の上で寝ていた」とかそんな感じの酔っぱらって記憶をなくした人たちの笑えるエピソード集。
笑える本は無難に売れますね。
ちなみに今月の新潮文庫の新刊には「記憶がなくなるまで飲んでも、なぜ家にたどり着けるのか?」という本があります。

・「さよなら、そしてこんにちは」荻原浩(光文社文庫) ※文庫16位

 

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笑い上戸で泣き上戸の葬儀会社営業マンの悲喜こもごもを描いた短編集。
荻原浩はすっかりファンが定着なあと思います。

 

・「疲れすぎて眠れぬ夜のために」内田樹(角川文庫)  ※文庫23位

 

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街場のインテリジェンス・内田先生の本は口述筆記が多いのでとにかく次から次へと新刊が出ますが何気に3年前に出たこの本がずーっと売れてたりします。
やっぱり人生論は強い。
書店員ばかりでなくいろんな人が推薦文書いてますね。

 

・「造花の蜜(上・下)」連城三紀彦 (角川ハルキ文庫) ※文庫25位

オビによれば「誘拐ミステリの最高傑作!」なんだそうです。
『ミステリが読みたい!2010年版』を始め各誌紙で絶賛なんだとか。
連城三紀彦の本って時々すごく面白い、みたいな話を聞くのでそのうち何か読んでみたいとは前から思っているのですが。

・「地図で読む世界史の謎50 眠れないほど面白い『歴史の裏側』」(三笠書房知的生きかた文庫)  ※文庫35位

 

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「『東方見聞録』はマルコ・ポーロの創作では?」
「ケネディ大統領を暗殺した人物はオズワルドの他にもう一人いる」
「フリーメーソンとテンプル騎士団をつなぐ不思議な線」
とかそういう話がいろいろ。
こういうの無難に売れます。

  
   

☆次回は「忘年会の予定が入ってない日に読みたい!中井の本屋の親父が選ぶ今年よかった本ベスト3」を発表します。忘れてなければ。

(H)

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