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November 2010

November 22, 2010

もしこれが2011年本屋大賞になったら授賞式で水嶋ヒロが見られるのかしら

たぶんここを読んでるほとんどすべての人が知っていることを書きますが、水嶋ヒロの初作品「KAGEROU」は12月15日発売です。
http://www.poplar.co.jp/info/news/005333.html

簡単な紹介文があったので転記します。

◆第五回ポプラ社小説大賞受賞作品。「人間の命とは何か?人間の価値とは何か?」という深遠なテーマに、ダイナミックな物語構成で鋭く切り込む。今日的な問題を取り込みながら、時にユーモアあふれる筆致でぐいぐいと読者を引き寄せていく……。小説のあらたな領域に挑む意欲作! 『KAGEROU』――儚く不確かなもの。廃墟と化したデパートの屋上遊園地のフェンス。「かげろう」のような己の人生を閉じようとする、絶望を抱えた男。そこに突如現れた不気味に冷笑する黒服の男。命の十字路で二人は、ある契約を交わす。肉体と魂を分かつものとは何か? 人を人たらしめているものは何か?深い苦悩を抱え、主人公は終末の場所へと向かう。そこで、彼は一つの儚き「命」と出逢い、かつて抱いたことのない愛することの切なさを知る。水嶋ヒロの処女作、哀切かつ峻烈な「命」の物語。


とにかく2010年下半期の最大の話題作。
世間ではなんだかんだ言われてますが、もっとなんだかんだ言われてほしいです。
いいかげん電子書籍どうこうの話題に飽きました。
はっきり言って街場の本屋からするとあれは任天堂の次世代ゲーム機の話ぐらい縁遠い話です。
まあいずれ何らかのお仕事的関わりが発生する可能性はあるでしょうが、たぶんそうなったところで今ウチで副業的に売ってるボールペンの売上みたいなもんじゃないでしょうか。
文房具を扱うようになってわかったのは、とりあえず何を差し置いてもまず筆記具が売れるということですが、売り上げ的には本業の書籍のほんのほんの一部に過ぎません。
そんなことよりやっぱりヒロだろうと。
ヒロ水嶋だろうと。
読んでみないことには何のコメントもできません。
だから早く読みたいです。
そしてそういう話題が作り出せる書店業界はまだまだ楽しいです。

 

Kagerou1


  

☆髪型変われば人生変わる

○「わらの人」山本甲士(文春文庫)

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人生の転機を迎えたり自分に自信が持てなかったりそれぞれ問題を抱える人たちがとある不思議な理容店で髪を切ってもらうと意外な展開が待っている、という6つのお話。
荻原浩的エンターテイメント路線ですがなかなか面白いです。
人間、ちょっとした転機で煮詰まってた考えからフッと解き放たれたり、ちょっとしたきっかけで悩んでたこと自体が馬鹿馬鹿しくなったりすることがありますが、髪型で人生が変わることもあるかもなあ、と。
わりとストレスフルな日常生活を送ってる方にお薦めしたい小説。

  

☆生き方の棚

「人生論」の棚は店主のそのときそのときの気分で出してる本が違いますが、今はこの3冊。

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同じ「男性の憧れであった原さん」でありながら原紗央莉と原節子の本が並ぶ本屋は全国でウチだけだと思うのですがもし他にもあったらそれはそれで教えなくていいです。

 

☆地味によく売れてる本

○「12か月のクロゼット」杉浦さやか(ベストセラーズ)

 

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かわいくて暖かいイラストでおしゃれな女性向きファッションのあれこれを書いたイラストエッセイ。
「ファッション誌はいっぱいありすぎて何買ったらいいかわからない」という方にお薦めします。

  

☆著者本人が「15分で読める」と言ってましたが

○「マンガ版 新・資本論」堀江貴文(宝島社)

 

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もともと親書で出した本のマンガ版ですが、マンガになったらすごく読みやすくてわかりやすいです。
「クレジットカードってどうなの?」「保険って入らないといけないものなの?」みたいな身近なお金の話の真理をやけに丸っこいイラストに描かれたホリエモンがいろいろ説いてくれます。
「お金とは信用である」って話が面白かったです。


☆こういうガイドブックが好き

○「首都圏発B級グルメドライブ」(昭文社)

 

B

「B-1グランプリ」は最初のイロモノイベント感がすっかり抜けきってその結果がYahoo!ニュースで速報されるぐらい国民的イベントになってしまいましたが、それでもなお日本には紹介されたところで「は?誰それ?」ってなるローカルインディプロレスラーのようなB級グルメが終わりがないくらいに待ち受けているのだなあ、とこの本を見て実感させられました。
「土浦ツェッペリンカレー」とか「湯河原名物坦々やきそば」とか「静岡波乗りバーガー」とか、本当にそれ地元でも知られているのか?という逸品がもりだくさんです。
しかし見ているとやっぱり目につくのは静岡県のB級グルメに対する過剰なやる気ですね。
海と山が両方あるというアドバンテージもあるのでしょうが、やけに@静岡県なメニューが目につきました。
とりあえずスイーツ部門にある「おこげパフェ」と「ビールソフトクリーム」(ともに静岡県)が食べたいです。

 

(H)

November 16, 2010

店長の読書感想文Vol.1 角田光代「ツリーハウス」

小学校に入るまで、いやもしかしたら入ったあともしばらくのあいだ、商店の子どもだった私は「サラリーマン」という言葉の意味がよくわからなかった。
誰にでも親はいる。
それはわかる。
親は仕事をしてお金を稼ぎ、家族を養っている。
それもわかる。
けどそこで「会社にいく」という話が出てくると、途端に混乱してしまう。
「会社」にお客さんは来るのだろうか。
どうやって「会社」はお金を稼ぐのだろうか。
なんだかよくわからない。

私が知っていたのはカメラ屋の息子のエイジと、ふとん屋の娘のミカちゃんと、ラーメン屋の息子のイサオくんと、そば屋の息子のマサル、それから花屋の息子のトモくん、名前は忘れてしまったけどクリーニング屋の女の子。
みんな年齢が少し上だったり、少し下だったりしたものの全部「この辺の子ども」という枠の中に生きていた。
彼らと彼らの家族は「お店」をやってお金を稼ぐ。
そのシステムは幼かった私にも十分理解できた。
私たちはみんな「この辺の子」だった。
そして、「この辺の子」は自分たち以外の子どもをよく知らなかった。
幼稚園や保育園で顔を合わせる「おともだち」は所詮、幼稚園や保育園の中でしか顔を合わせない。
だからわからなかった。
彼らのお父さんの多くがそうだった、「サラリーマン」という仕事のことを。
世の中のお父さんお母さんすべてが、自分で店をやってお金を稼いでいるわけではない、という事実を。

何かを差別したり、卑下したり、優越感を持つつもりはない。
ただまず間違いなく存在するであろう事実として聞いてほしい。

商店の子は生まれながらにしてあるものを受け入れる。
「そうするより仕方がない」という感覚を。
もちろん、勤め人の子だって受け入れるだろう。
けど違うのは、抗いようのない事実を目の前で見せられることだ。
カレンダーが赤い日でも親が働いている。
休みだからといって必ずしも自分と遊んでくれるわけでもなく、店の用事やクミアイの用事で家を出て行く。
テレビのアニメに出てくるような、家族揃っての食卓は時折しかない。
必ず誰かそこに欠けている。
それはその人が悪いからじゃない。
そうするより仕方がないから、我慢するより仕方がない。

角田光代の「ツリーハウス」にはそんな商店の子どもたちのことがリアリティもって書かれている。
慎之輔が「ここはどうなっても父の店なんだ」と気付いたときの絶望。そしてその後の堕落。
根っこがない、簡易宿泊所のような家族だと考える子どもたち。
すべて深く突き刺さった。

戦時下の満州からギリギリ戻ってきて、角筈、今の西新宿あたりに中華料理屋を開いた祖父が言う。

「そこにいるのがしんどいと思ったら逃げろ。逃げるのは悪いことじゃない。逃げたことを自分でわかってれば、そう悪いことじゃない。闘うばっかりがえらいんじゃない」

「勝ちっぱなしの戦いなんかありやしない」と言ったのは浅井慎平だ。
必ず戦わなければいけないなんてことはない。
ただ、人生は長い。
逃げても逃げても、人生は続く。
その長い人生の幹を貫くのは自分の家族であり、家族同然の仲間なんだと思う。
人は人に活かされている。
それは戦争の時代であっても、乾ききった今の時代であっても変わらない。

○角田光代「ツリーハウス」(文藝春秋)

 

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November 09, 2010

文春のNumberビデオシリーズ「激闘!日本シリーズ」がまだ続いていたなら

日本シリーズ、すごかったですね。

ロッテファンである私も(※)最後は「やった!」とか「嬉しい!」ではなく「…疲れた」という感覚しか出てきませんでした。
見てる方がそんなんですから、やってる選手たちは本当にしんどい試合だったのではないかと思います。

(※なんでロッテファンになったかはこの辺参照http://inoo.cocolog-nifty.com/news/2005/10/post_6984.html

 

ワールドカップもWBCもない、ケータイもネットもない1980年代に少年時代を過ごした私にとって、当時日本シリーズは「特別なイベント」でした。
「スポーツ」といえばまず野球、続いて野球、ほとんど野球、あとは相撲やプロレス、ボクシングなんかがちょろっとあって、サッカーやバスケは日曜夕方の「独占!スポーツ情報」という番組の中だけにしかなかったあの時代、日本シリーズは「特別なイベント」だったような気がします。
それは平日の昼間に父親が仕事をサボってテレビを見ていたり、学校の職員室に行けば先生がみんな見てたり、翌日の学校ではひたすらその話題ばかりだったり。

あれは私が小学3年生だった1983年、巨人と西武が戦った年の秋の日曜日に、家族でハイキングに行ったら山の上でラジオで日本シリーズを聞いている人がいて、その人を見るや駆け寄って「いまどっち勝ってますか!?」と聞いたことを覚えています。
別に私はどちらのファンでもなかったのに、とにかく気になって気になって知らないおじさんに聞いてしまった。
日本シリーズはそういう「国民的なイベント」だったような気がします。
だから「こち亀」で4年に1回しか起きない日暮は毎回両さんに「日本シリーズ4年分録画しといてね」と言って寝てたわけで。

時代が変わって、いろんなものが多様化して、メディア環境も変わって、もうあの頃のような報道を独占していた日本シリーズは帰ってきません。
今年の日本シリーズは第一戦が地上波でテレビ中継されませんでした。
初めはそんな扱いだった試合がゲームの内容だけで話題を呼び、最終的にはかなりの世間的な耳目を集めたことは嬉しい出来事でした。

http://www.47news.jp/CN/201011/CN2010110801000249.html

いろんな選手が自分の著書で書いてたりしますが、野球というのは本当に難しいスポーツです。
あんな細いバットで小さなボール、それもやたら速く投げたり変化して動くボールを打たなければいけないのですから。
でもそれが子どもの私らには楽しかった。
楽しかったからその辺の路上でよくやったし、その流れで食い入るようにプロ野球を見てた。
野球が子どもにとって「その辺でやるもの」から「お金かけないとできないもの」に変わりつつある現在、未来の野球はどうなってるんだかさっぱりわかりません。
けど、20年後もきっと自分は日本シリーズを見てるんだと思います。
その頃はドーム球場が無くなってるのか1リーグになったりしているのか想像もつきませんが、「2010年の中日とロッテはすごかったな、あれを超えるシリーズはないな」とか言いながら、本当はそれ以上の試合が生まれることを期待して見続けていると思います。

 

☆というわけで

出た時から気になってた本。

○「中日ドラゴンズ論 “不気味”さに隠された勝利の方程式」今中慎二(ベストセラーズ新書)

 

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まず書いてるのが90年代の中日を支えた左腕エースの今中という時点でテンションが上がる本なわけですが、「不気味」という表現は言われるまで考えませんでした。
しかし何より

「Q、なぜ中日は強いのか」
「A、プロにとって当たり前のことをしているから」
「Q、プロにとって当たり前とは具体的にどういうことか」
「A、たとえば終盤戦になっても一塁まで全力疾走すること」

というような話が出てくるわけですが、これを聞いて「そっかー、一塁まで全力疾走することが中日の強さの一端なんだ」と納得できる人は小数ではないかと思います。
つまりこの話自体が不気味。
どこまでいっても不気味。

これは落合監督の記者に向けて出すコメントなんかもそうなんですが、「わかるような、わからないような」話がすごく多いわけです。
結局人々に何かを与える人の話というのはこの「わかるような、わからないような」点が重要なんだろうなと思いました。
まったく「わかってもらえない」のでは困るけど、全部を「わかってもらう」必要はない。
そういうのを称して「不気味」という表現なのかもしれません。

 
 

☆もうひとつ野球本

○「第一回選択希望選手 選ばれし男たちの軌跡 プロ野球「ドラフト1位」という人生の“その後”」横尾弘一(ダイヤモンド社)

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日本シリーズが始まるちょっと前にドラフト会議があり、今年は早稲田大学の斎藤投手の去就なんかが話題になりましたが、そのドラフト1位選手たち、それもどちらかといえばあまり栄光をつかんだとは言い難い選手たちのノンフィクション。
この手のノンフィクションを読むたびに思うことですが、プロ野球選手の人生って重いな、と。
私らはいくら業界が縮小しようが売り上げが下がろうが、明日やることが即そのまま人生に直結してるとは思えないし、五年後はともかく一年後はまだ同じ仕事でメシが食えてるんじゃないか、そんな風に思ってしまいますが、プロ野球の世界はホントに今日明日の成績で決まったりする。
ゆえに重たいです。
あの98年甲子園、延長17回を戦ったPL学園vs横浜で松坂大輔の相手として立ちはだかり、その後横浜ベイスターズにドラフト1位で入団した田中一徳選手の話が特に印象深いです。
一時期は一軍でレギュラーの座に近いところまで行きながらも志半ばでユニフォームを脱ぐことになった田中に、PLの先輩である桑田真澄が贈った言葉が素晴らしいので紹介します。

「俺たちは野球人生を生きている。
現役を引退するというのは、「野球」の「野」の字を終えたに過ぎない。
その先、「球」の字もまっとうしなければ野球人生は完結しない。
現役時代に与えていただいたことを、これからは後輩たちに返していくんだ」


  

☆2010年の人

野球の話はこのぐらいにして、最近よく出てます。テレビも本も。

○「世迷いごと」マツコ・デラックス(双葉社)

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○「うさぎとマツコの往復書簡 」中村うさぎ/マツコ・デラックス(毎日新聞社)

 

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ご本人さんはあまり本を読まれないということですけど。
むかしはゲイ雑誌の編集者で、その雑誌の編集後記を読んだ中村うさぎがエッセイ書くことを薦めたのがコラムニストになったきっかけ、という話は面白いですね。



 

☆ランキング

しばらくここに書くのを忘れてましたが10月のセールスランキング。
イベントの影響受けまくりです。



10月ランキング

(一般)
1、「野宿入門 ちょっと自由になる生き方」かとうちあき  草思社
2、「放っておいても明日は来る― 就職しないで生きる9つの方法」高野秀行    本の雑誌社
3、「イヴ・サンローラン 揺るぎない美」   宝島社
4、「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです」 村上春樹  文藝春秋
5、「のはなしさん」 伊集院光  宝島社
6、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」  ダイヤモンド社
7、「藤原さんちの毎日ごはん」  主婦と生活社
8、「本の雑誌2010年11月号」   本の雑誌社
9、「孤舟」渡辺淳一   集英社
10、「 新約聖書 1」佐藤優   文藝春秋

(文庫)
1、「白銀ジャック」東野圭吾    実業之日本社
2、「とある魔術の禁書目録 (22)」 鎌池 和馬   電撃文庫
3、「悪人(下)」吉田修一   朝日新聞出版
4、「のぼうの城(上)」和田竜  小学館
5、「怪獣記」高野秀行   講談社
6、「交易 交代寄合伊那衆異聞」佐伯泰英   講談社
7、「アヘン王国潜入記」高野秀行   集英社
8、「酔って記憶をなくします」  新潮社
9、「インシテミル」米澤穂信   文藝春秋
10、「阪急電車」有川浩   幻冬舎

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