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December 29, 2008

年の瀬のごあいさつ

今年も残すところあと3日となりました。
毎年思うのですが、年末を題材にした歌ってユニコーンの「雪が降る町」くらいしかないんで、アーティストの方は「愛がどうたら」とかいう歌を作るより「年末だね」「帰省ラッシュだね」「初詣だね」みたいな曲を作った方がよっぽどラジオとかで宣伝してもらえると思うんですけど。
それはともかく、斉藤和義の「おつかれさまの国」はすばらしい曲だと思います。確かに我々は「こんにちは」より「おつかれさま」の方が言ってる気がします。

ある方が「今年は(今年も)東野圭吾とハリーポッターしか売れてなかった気がする」と書いてましたが(Kさん無断借用ゴメンナサイ)、続ける言葉が出てこないくらい同感です。
ただ世界中が「100年に1度の金融危機」と言われてあちこちで深刻な雇用危機が出ている中で書店は「今年もあんまり良くねえなあ」ぐらいですんでいるわけですから、不況不況言われながらまだマシな方なのかもしれません。

本が売れなくなったのは一時的な不況というよりもケータイを含めたネット環境の整備によって情報伝達手段が飛躍的に増えたことと個人の可処分時間をめぐる構造的な問題だと私は認識していますが、山本一郎の「情報革命バブルの崩壊」(文春新書)には毎月二千いくらでADSLが契約できる今のネット環境そのものがバブルであり、“ネット=無料文化”は徐々に崩れるだろう、という話が出ています。
仮に今後ネット文化が現在と違う形に変わっていくとすれば、出版という情報流通モデルに求められるものもまた変わっていくのかもしれません。
そのとき自分がどういうお客さんにどういう商売をやっていけばいいのか、それは今のところちっともわかりません。
ただ、自分がこうやったらいいんじゃないか?と考えたことが世の流れに合うことを祈るだけです。

私は一応経営責任者なので、常に店から入ってくるお金と出ていくお金のことを考えざるをえない日常を送っています。
昨今はどうしても入ってくる方が減ってばかりなので、当然出る方のお金のことが減らせないかということを考えてしまいます。
ふと見渡せば店に並ぶビジネス書に、あちらこちらの取引先に、「無駄をなくせ」という言葉が見えます。
「無駄を減らす」のは悪いことではないでしょう。
けれど「無駄をなくす」のは良いことなのでしょうか。

最近ずっと思ってることなのですが、人間は無駄なことに幸せを感じるんじゃないでしょうか。
私は面白いものは無駄なものからしか生まれないと思っています。
必要最低限の人員で店を回したとき、残業してまで面白いこと、面白そうなことを企画・実行してくれる人間が何人いるでしょうか。
仮にいたとして、その熱意はいつまでもずっと続くものなのでしょうか。
「無駄がある」というのは言いかえれば予想外のプラスが生まれるかもしれない前提条件であり、「無駄をなくす」というのはプラスαがないことだと思います。
酒を飲みにいった先で「これサービスです」と一品出てきたら嬉しいじゃないですか。
そんなことだって「無駄をなくす」という観点からしたら余計な無駄のひとつです。
普段つれない態度しかしない女の人が弱ってる時に優しいことを言ってきたらクラっときちゃうじゃないですか。これは違うのか。

売れそうもない本を入れるのは無駄なことです。
けれど売れそうもない本が置いてあることで喜んでくれたり、買ってくれたりするお客さんも出てくるはずです。
それは「無駄だから」で入れなかったら生まれないことです。
本屋プロレスだって「お客さんが選んだ俺の一冊・私の一冊」だってたぶん労力から見たら結構無駄なことです。
けれど、私は面白いと思うのでこれからも無駄を追及したいと思ってます。
無駄をなくしながら。 

 

今年も一年間お世話になりました。
来年がどんな年かはわかりませんが、ここを見ていただいてるすべての皆様が笑って新年を迎えられることを中井の小さな本屋の寒々としたバックヤードのパソコンの前で祈っています。

 

伊野尾書店店長 伊野尾宏之

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