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May 2008

May 31, 2008

さらばヤンサン

今から十数年前、大学よりもバイトを優先するような生活をしていた私はよく夜番の仕事上がりにバイト先の同僚と近くの雀荘に出向き、朝の6時だの8時だの時計が一周して昼の12時だの、いいかげんにしろお前という時間まで「ロォーン、タンヤオドラドラ」などとやってる、どこにでもいるアホ大学生でありました。
当時の私らはキッチリ4人雁首揃えていざ雀荘へ、というのよりはヒマな連中何人かでぶらぶら出向いて交代交代で卓に座り、眠くなったり翌朝学校があったりする奴は途中で適当に抜けて帰っていくというスタイルが多く、そのため卓から外れたときは仲間の打ち方に茶々を入れたりTVを見たり雑誌を読んだりしてヒマを潰したものでした。

そしてその雀荘に「近代麻雀」や多数のマンガ雑誌とともに置いてあったのがまだ週刊になる前の「ヤングサンデー」で、当時私は雀卓待ちの間に読み始めたこの雑誌にすっかり魅了されてしまい、新井英樹の『ザ・ワールド・イズ・マイン』に度肝を抜かれ、『チャイルド・プラネット』で大人たちが松田聖子の歌を歌いながら死んでいくシーンに妙な恐怖を覚え、柏木ハルコの『いぬ』と喜国雅彦『月光の囁き』で青少年の正しい目覚めを学び、沖さやかの『マイナス』に異常と日常の境目の緩さを教わりました。
人生でもっとも「次号を早く読みたい!」と渇望していたマンガ雑誌は『キン肉マン』『男塾』時代の「少年ジャンプ」でしたが、その次となると青木裕子(アナウンサーでない方の)か黒田美礼が表紙の、あの時代の「ヤングサンデー」です。

その「ヤングサンデー」が7月で休刊ときいて、またひとつ自分の過去が閉じてしまった気がして、猛烈に寂しくなりました。

http://mainichi.jp/enta/art/news/20080530dde041040039000c.html

あの頃週に二日は顔を出したその雀荘にはもう10年以上いってませんが、今あそこに通ってきているアホ大学生たちは順番待ちしている間、何してヒマを潰してるんでしょう。
私には彼らが雑誌よりもケータイを手に取っている姿が連想されて仕方ないです。
わたしら中小書店は主に雑誌を売って生計を立てていますが、そのことに対して強烈な危機感を感じた今回のニュースでした。
いや、もちろんとっくに尻に火はついてるんですけど、初めて「あちっ!」って感覚になったというか。
「月刊ジャンプ」の時は「ジャンプSQ」へのリニューアルが前提でしたが、今回何もない、本当の休刊ですし。

  

なんだか暗い話になったので、ヤケクソで暗い小説でも紹介します。

○「少年たちのおだやかな日々」多島斗志之(双葉文庫)

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「症例A」(角川文庫)がスマッシュヒットした著者の短編集。
タイトル通りすべて少年が主人公の話ですが、タイトルとは裏腹にあまりおだやかなストーリーではありません。
暗いです。
結構、救いがないです。
でも読んでるうちにかなり引き込まる。
そういう小説です。

実は新刊ではなく、99年に一度絶版になったものの復刊を求める声が多く、リニューアルして再発売された作品です。
表紙だけ見るとライトノベルスぽいですが、内容は決してライトではないです。

ちなみにこの右隣に並んでいるのは東野圭吾「さまよう刃」(角川文庫)、左隣りは絶賛大ブレイク中の矢口敦子「償い」(幻冬舎文庫)。
みんなヘビーなテーマの小説ばかりです。
読む際のBGMには中島みゆき「まつりばやし」あたりでも。

(H)

May 26, 2008

きっかけは~フジテレビ

小林多喜二の「蟹工船」が売れているそうです。

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そうです、と伝聞調なのはウチの店ではあんまり売れてないからです。
新聞にそんな記事が出てたので後追いして置いてみましたが、やはりというか何というか、イースト・プレスの「まんがで読破・蟹工船」の方が売れております。
まあそうだよね。
いくら現代のワーキングプアに相通ずるものがある、と煽ったところで中身は戦前の文学なわけで。
若い人でなくともちゃんと読むのはなかなかシンドイんじゃないかなあ…などと思っていたのですが、そんな今朝、某テレビ局から「おたくでも『蟹工船』、平積みしてますか?」という問い合わせの電話がかかってきました。

なんだかこうやって無理矢理ブームが作られてる気もしないでもないですが、まあスペインの牛追い祭りの牛よろしくドドドドッと大衆の中を突進するマスメディアという存在があってこそ場末の本屋もちっとぐらいは皆様の需用にお答えできるような品揃えができるわけで、まったく何も無かったらタコツボ化した無数の好奇心に応えるすべての本を取りそろえるタコツボ書店を目指さなくてはなりません。
なので場末の商店としてはやっぱりまだマスメディアに頑張ってもらいたいなどと思いつつ、一方で「マスメディアが思考停止を助長する」的論陣も用意して、今日もせっせと八方美人な本棚作りに精を出したいと思っております。

ちなみにネットを検索していたらこんなものを見つけました。

http://www.asahi-net.or.jp/~IH9K-YNMT/Lv99/kanikousen.html

「蟹工船」Tシャツだそうです。

でも今はもう買えないみたいです…残念。

で、『B型自分の説明書』『A型自分の説明書』に続いて、次は『AB型自分の説明書』が発売だそうです(予定発売日6/13)。
やっぱりO型は最後かよ…いやいいんだけど。

それと「ルーキーズ」、ヨレヨレですが在庫あります。ヨレヨレなのでいつ消えるかわかりません。お早目にどうぞ。

 Rookies1

(H@熱血教師がいつのまにかみんな年下)

May 21, 2008

確かに珍しい苗字ではあるけれども

ここに書いてもたぶん効果ないと思いますが、一応通達します。

当店はジャニーズJrの伊野尾慧くんの実家ではありません。
電話をかけられてきても困ります。
勘弁してください。

いや、本当に勘弁してください。

こういうとき鈴木さんや佐藤さんがうらやましくなります。
ファミレスで待つときに名前を間違えられることもないだろうし。
個人的にあこがれの苗字は「葛城」ですね。響きがかっこいい。

といったところで最近の気になった本を。

○「百瀬、こっちを向いて。」中田永一(祥伝社)

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恋愛アンソロジー集「I LOVE YOU」(祥伝社文庫)で絶賛を浴びた大型新人・中田永一初の著作集。
装丁が素敵です。
真っ白。
真っ白の地の中心に書名が小さな文字でポツンとあるだけの超シンプルな装丁ですが、、書店の平積みされた本の中ではかなり目立ちます。
リリー・フランキーが『東京タワー』を出すときに「ポテトチップスを食べた手で読んでほしくないから」という理由で白い表紙にしたという話をしていましたが、『東京タワー』がまだ赤とか金色が混じってたのに対しこちらは本当に真っ白です。

表題作は冴えない男子高校生が憧れの先輩に頼まれて後輩の女の子と偽装カップルを演じ、そうこうしているうちにその相手の女の子を本当に好きになってしまう…というライトノベルスにありそうな話ですが、かなり引き込まれます。
30男でも十分キュンとなりました。
「夢なんか見なければよかったんだ。知らなければよかったんだ」と苦しみを吐露する主人公に対して同じく冴えない友人である田辺が返すセリフが結構泣けます。
こういうの岩井俊二が撮ったらいい映画になるでしょうね。

○「人間はどこまで耐えられるのか」F・アッシュクロフト(河出文庫)

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人間はどれくらい高いところまで登れるのか、どのくらい深く潜れるのか、暑さには、また寒さにはどれくらい耐えられるのかといった人間の限界について調べ上げた本。

夏場に「あつい~死ぬ~」と言ってる人は多いと思いますが、暑さの場合、温度だけでなく湿度が大きく関係してくるので、案外大袈裟というわけでもないようです。
気温が体温より高くて湿度が高いと脱水症状を起こして徐々に身体の機能が低下していき、反対に高温でも湿度が低ければ短時間なら快適に感じるとのこと。
サウナが90度くらいでも平気で入れるのは湿度がないからだそうです。。
反対に体温以上の温度で湿度100%の場所、つまり風呂は(それも42度以上は)長時間入ることは危険である、といったことについても記されています。
「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ」のディレクターにぜひ読んでもらいたい一冊です。

○「車中泊マニュアル」(地球丸)

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私も車で一晩寝たことが2,3回ありますがだいたい安眠できず、その上決まって次の日は身体の節々が痛くなっていたので、『車中泊』と聞くとなんとなく「…大変だね」という印象を持ってしまってたのですが、この本で見てるとそういう印象を改めないといけないかもしれないと思ってしまいました。
軽自動車ですら、すごく快適そうです。
私もこれを持って車中泊の旅に出たくなりましたが、けどそのためにはもうちょっとガソリンに優しくなってもらわないと…。

ところで明日発売の「Vジャンプ」の予約が大変なことになってます。
そりゃ商売だからいいんだけどさ…いいんだけど…。

(H)

May 13, 2008

雑誌のはなし

「B型自分の説明書」に続いて、「A型自分の説明書」という本が売れています。

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血液型トークというのは話題に詰まった合コンで場をつなぐ定番メニューぐらいに考えていましたが、やっぱりこういう話はみんな好きなんだなあと実感しました。

普通の人を看守役と囚人役という風に決めて2週間その役を演じさせ続けると看守役は本当の看守のように攻撃的になり、囚人役は本当の囚人のように屈服していくという「スタンフォード監獄実験」という有名な実験がありますが、こういった血液本で「B型はマイペース」「A型は几帳面」と言わ続けていると実際あまりそうでなくても本当にそうなってしまうような気がしてしまいます。
私は一般におおざっぱと言われるO型ですが、まわりから「おおざっぱ」「おおざっぱ」言われるうちに本当におおざっぱになったような…でもないか。もともとか。
すいません今の話は聞かなかったことにしてください。

さて書店業界はだいぶ前から「雑誌が売れない」「雑誌が売れない」と言われ続けています。
けれどそんなことばかり言ってるとますます売れなくなりそうなので、「雑誌売れてるよ!」と一人で叫んでみます。
雑誌売れてるよ。
案外これがプラシーボ効果となって、「売れてる」「売れてる」言ってるうちに本当に売れる可能性がなきにしもあらずとは言い切れませんしね。
雑誌売れてますよ。

…って今はこういうのも『偽装』扱いされるのか。せちがらい時代だなあ。

というわけで、今発売中の雑誌の中から気になった特集を抜き出してみます。
なんだか日曜昼のワイドショーぽい企画ですが。

○食楽 6月号 特集「いま通いたい焼鳥屋・焼きとん屋」

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リニューアルして売れてます(これはホントです)。
焼き鳥…ビール…。

○TRANSIT 新発刊1号 特集「美的中国」

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私はたまに棚の『地球の歩き方』を抜いてポルトガルの公用語とかイスタンブールの観光地とかパラパラ調べては脳内旅行に浸っているのですが、そういう趣味がある人だとかなりヒットする雑誌だと思われます。
しかし今号の特集・中国は地震で四川省が大変なことになってしまったので、しばらくはあんまり気軽に旅行ってわけにもいかないかもしれません。

○m9(エムキュー)

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晋遊舎から出たオピニオン誌。
赤木智弘×小飼弾というなんだかすごい対談があったり、巻頭インタビューで大槻ケンヂが「男子とサブカルとネット」について語ってたり、掟ポルシェがアイドル論を語ってたり、なんだかよくわからない雑誌です。
ちなみにタイトルは指差ししているアスキーアートからきているそうです。やっぱり。

○裁判傍聴マガジン Vol.1

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こんな雑誌もあります。
著名人19人に「裁判員制度ってどう思う?」って聞いたインタビューがなかなか面白く、小倉優子が「(裁判員制度について)いろんな人の意見が入るので賛成ー。(では裁判員に選ばれたら?)えー、気が重いので断れたらいいと思う」とゆうこりんイズムが爆発した回答を寄せています。
佐藤優が「私が裁判員制度に反対する理由」という論文を寄せています。

○日本語学5月号「ネット広告と日本語」

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学校の先生なんかに買われている専門雑誌ですが店頭でも売ってます。
迷惑メールの定型と言い回しを分析した「スパムメールのレトリック」という記事が興味深く、それによるとスパムメールにはいくつかのパターンがあり、
1)軽さ
2)希少価値
3)誠実さ
4)親しさ
5)女らしさ
という演出のどれかが用いられているそうです。へー。

○Number5/22号「格闘大国再生計画。」

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秋山成勲、青木真也、五味隆典といった現在の日本の格闘技シーンのトップランナーたちの記事も興味深いですが、中程に組まれた「PRIDEに憑かれた男たちの話」として佐竹雅昭・アレクサンダー大塚・小路晃・玉海力の4人を取り上げた、いかにもNumberらしいノンフィクションが載っています。
玉海力って実業家として成功してたんですね。

○DMM DVD6月号

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18歳未満の方は買えない大人の雑誌ですが、今号の付録についてるのがAVまるまる1本とローションという、なんだかすごいことになっています。ビックリしました。
繰り返しますが18歳未満の方には売れません。

というように書店には様々な雑誌がございます。
時間がありましたら、雑誌の棚をいろいろフラフラ見てみてください。
意外な発見があるかもしれません。

(H)

May 05, 2008

絵本と読み物雑誌のススメ

おすすめの絵本を紹介する無料小冊子「おひざでだっこ」を作りました。
絵本選びのご参考になれば幸いです。
児童書コーナーにて配布していますのでご自由にお持ちください。

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この春にいくつか新・文芸雑誌が創刊されたのでご紹介します。
「文芸誌」と書くと堅苦しくてそれだけで読む気が失せる方も、中を見てもらえれば認識が改まるのではないか、それほどにグレードの高い作りのものばかりです。
ぜひお立ち寄りの上ご覧ください。

○「Story Seller」(新潮社)

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伊坂幸太郎、近藤史恵、有川浩、佐藤友哉…といった現在の日本の小説界のトップどころが顔を揃えた、読み切り小説集。

http://www.shinchosha.co.jp/shoushin/storyseller/

○「モンキービジネス」(ヴィレッジブックス)

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柴田元幸責任編集の若干サブカル寄りな文芸誌。創刊号の特集は「野球」。「ポール・オースターの語る日本人大リーグ論」といった変わった特集が載っています。

http://www.villagebooks.co.jp/villagestyle/monkey/index.html

○「真夜中」(リトルモア)

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文芸、写真、絵、デザインなどジャンルを横断した新雑誌。松尾スズキ、いしいしんじ、ECD、市川実和子、伊藤存、古川日出男、高山みなみ、内田也哉子、保坂和志、高野文子などが参加。

http://www.littlemore.co.jp/magazines/mayonaka/

4月セールスランキング

4月セールスランキングです。
あの本が1位です。
   
【一 般】   

1  俺たち文化系プロレスDDT  高木 三四郎  太田出版
2  るるぶ中野区                                 JTBパブリッシング   
3  08 新宿Walker                          角川グループパブリッシング
4  B型自分の説明書   JamaisJamais   文芸社
5  おつまみ横丁 すぐにおいしい酒の肴185    池田書店
6  金田夫妻                 けらえいこ     幻冬舎
7  新宿区 落合文士村・目白文化村コース篭谷 典子   明治書院   
8  不機嫌な職場                  高橋 克徳      講談社現代新書
9  大人力を鍛える敬語トレーニング  本郷 陽二   池田書店
10 ぼくの週プロ青春記       小島 和宏      白夜書房
    
【文 庫】   
 
1  白桐ノ夢 居眠り磐音江戸双紙     佐伯 泰英   双葉社
2  小判商人 御宿かわせみ  33     平岩 弓枝    文藝春秋
3  水滸伝  19 旌旗の章         北方 謙三    集英社
4  閉鎖病棟                           帚木 蓬生   新潮社
5  ゆめつげ                             畠中 恵    角川グループパブリッシング
6  震度0                                      横山 秀夫    朝日新聞出版社
7  新装版 天璋院篤姫 下         宮尾 登美子   講談社
8  上海 交代寄合伊那衆異聞       佐伯 泰英     講談社
9  替天行道-北方水滸伝読本       北方 謙三     集英社
10 狼の血                   鳴海 章      光文社
    
【コミック】   
1  BLEACH-ブリーチ-  33    久保 帯人  集英社
2  桜蘭高校ホスト部  12        葉鳥 ビスコ  白泉社
3  銀魂  23                             空知 英秋  集英社 
4  名探偵コナン  61                   青山 剛昌  小学館
5  家庭教師ヒットマンREBORN!19   天野 明  集英社 
6  ハヤテのごとく!  15       畑 健二郎   小学館
7  オトメン 乙男   5        菅野 文    白泉社
8  遊☆戯☆王R   5                 伊藤 彰    集英社 
9  ヴァンパイア騎士   7         樋野 まつり   白泉社
10 アイシールド21  29     村田 雄介   集英社 

先日本屋プロレスを行った高木三四郎氏はレスラーになる以前はディスコパーティーなどを仕切るイベントプロデューサーで、電通へ就職する道があったにも関わらず独立系プロレス団体に入団、さらには選挙に出馬、その後自らの団体DDTを設立、という異色の経歴を持っていることが「俺たち文化系プロレスDDT」には書かれています。
プロレスという特殊な業界の中でベンチャーを立ち上げて成功した理由を具体的に書いているあたり、やってる事業内容はまるで別種ですが「渋谷ではたらく社長の告白」とか「成功のコンセプト」といったIT企業経営者の書いたビジネス書とも似た趣を感じさせる内容になっています。

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それと昨年販売され、現在ネットでの購入が極めて難しい状態になっている「新宿文化絵図」まだ当店に在庫あります。お早目にどうぞ。

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(H)

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