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December 2007

December 29, 2007

2007ラスト

「さて2007年も残すところあとわずかになりましたが」というアナウンサーの切り出しが定型化してきた今日この頃ですがいかがお過ごしでしょうか。
ところで、2007年問題ってどうなったんでしょうか。
去年ぐらいやたら言われてた気がするんですが、「問題」といってたわりに誰も検証してないような。

一時期やたらと「団塊世代のための~」「~のためのシニアライフ」みたいな新刊が出たりしましたが、そんなに売れなかった記憶があります。
タイトルそのまんまの「団塊パンチ」なんて雑誌も創刊されたりしていましたが、まだパンチはジャブくらいまでしかいってないようで。
近くに団塊世代の方がいないので、どこまで実態のある問題だったのか今ひとつよくわかりません。
そういえば私らの世代は世間では“団塊ジュニア”などとどこの御曹司か政治家か、みたいな言われ方をされてますが、どうせならもう少しスマートに“DJジェネレーション”とか呼んでほしいものです。って言ってることは同じか。すいませんやっぱり今のはなかったことで。

振り返ると、なんだか実態のないものがどんどん一人歩きする時代になったなあと思わずにいられない一年でした。

2007年の一文字は「偽」だそうです。

たしかに実態のないものを作って見せるという意味でいうと的を射た言葉ですが、そもそも何が偽装で何が偽装でないのか、偽装はなぜ起こるのか、あるいはそれを排除した時のメリット/デメリットとか何も考えられないまま、雪崩式に世界が動いていっている印象があります。

たとえば12月に「2月号」を売っている出版物は偽装じゃないのか、あるいは「100万部突破!」って謳っておきながら実はそれって販売部数じゃなく印刷部数の数だったりとか、「ベストセラーランキング」といいつつ全体の販売数じゃなく業界の一端である問屋の自社だけの扱い部数だったとか、そういうこと言い出したらこういうのも偽装じゃねーのかな、大丈夫なの?と思うんですが、考え過ぎですかね。

ものすごくおおざっぱで荒っぽい「こういうものだ」という幻想があって、少しそれから外れた行いや存在があると「ほら外れたぁ!何してんだ!空気読め!」と一斉攻撃する、そんな風潮ができました。
なので常に二者択一か二項対立で、「マジやヤラセか」「八百長やガチンコ」のどちらかしか認めない。
だいたいのものはその中間をフラフラさまよってて、その時々でどっちかに寄ったりしているものなのに。
生まれて初めて好きな人に告白した時、おそらくほとんどの人は思いを伝える真剣さの中に、その日までに精一杯シュミレートした、主演/私・演出/私・観客/私の演技が入り混じっていたと思うんですけど。割合がどれくらいかは人それぞれにしても。

とにもかくにも、“ゲームのルール”が変わっていく以上、書店運営もそれに合わせていかなくちゃな、しんどいな、俺にできるかな、と。大晦日を前に一人、ここにも「やれんのか!」と問い詰められている男がいます。

戯言が長くなりました。

えー、来年も、あるのが当たり前で印象に残らない本屋になりたいです。
けれどその前にクリアすべき問題が平積みです。
山ほどはないと思うんだけど。
平積みが、どんどん捌けるように。

クリスマスから働きづめで若干パラノイア気味の文章で申し訳ありませんが、今年はこれにて終了いたします。

一年間、本当にありがとうございました。
また来年もよろしくお願いいたします。

(H)

December 25, 2007

年間ベストテン

先日もご案内しましたが、おかげさまで伊野尾書店は本日、開店50周年を迎えることができました。
本当にありがとうございます。

今日はご来店いただいたお客様に開店50周年記念の粗品をお渡ししたのですが、何人ものお客様からお祝いの言葉をいただきました。
「次は100周年だね!」というお言葉にはちょっと頬が固くなりましたが、次は55周年をめずしてがんばりたいと思います。
あらためてこれからもよろしくお願いします。

さて、年間セールスランキングが出ました。

 【書籍一般】

1 新宿文化絵図              新宿区地域文化部文化国際課
 
2 女性の品格 装いから生き方まで      PHP研究所
 
3 ホームレス中学生             ワニブック
 
4 ハローバイバイ・関暁夫の都市伝説     竹書房  
 
5 日本人のしきたり 正月行事、豆まき、大安 青春出版社
 
6 鈍感力                  集英社  
 
7 歩きたくなる 東京地図本         京阪神エルマガ
 
8 毎日かあさん   4 出戻り編      毎日新聞社  
 
9 MyHappyTown 新宿 最新改訂版 スタ-ツ出版
 
10 田中宥久子の造顔マッサージ        講談社  
 

 【文庫】

1 探偵ガリレオ               文藝春秋 
 
2 予知夢                  文藝春秋 
 
2 佐賀のがばいばあちゃん          徳間書店   
 
4 憑神                   新潮社  
 
4 犯人に告ぐ 上              双葉社
 
6 あかんべえ 下              新潮社  
 
6 思考の整理学               筑摩書房
 
8 犯人に告ぐ 下              双葉社
 
9 あかんべえ 上              新潮社  
 
9 裁判長!ここは懲役4年でどうすか     文藝春秋 

【コミック】

1 NANA-ナナ-  17         集英社  
 
2 のだめカンタービレ  17        講談社  
 
3 ONE PIECE  45        集英社  
 
4 ONE PIECE  46        集英社  
 
5 鋼の錬金術師  16           スクウェア・エ
 
6 PLUTO   4            小学館
 
7 ONE PIECE  47        集英社  
 
8 のだめカンタービレ  19        講談社  
 
8 NANA-ナナ-  18         集英社  
 
10 のだめカンタービレ  18        講談社  
 

個人的に今年もっとも「これ売れたな~」感があるのは、文庫10位の北尾トロ「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」(文春文庫)ですね。

  Photo

ちょっと面白いな、ぐらいの本がこんなに売れるとは思いませんでした。
北尾トロが第二の東海林さだお、椎名誠みたいになってくれることを祈ります。
   

あと年間1位が地元本でよかったです。
よかったというのも何ですが。

地元本といえば、「東京生活」新宿特集が1年ぶりにまた出ています。

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個人的には歌舞伎町の「つるかめ食堂」の店主インタビューがよかったですね。
あと「あそう」。
かつて学生の時に友人を連れていったら「おまえはなんでそのミソラでこんな親父みたいな店を知ってるのだ」と褒められた経験があります。串焼きがお薦めです。

なんというか、「散歩の達人」が街を“面白く”する雑誌だとしたら「東京生活」は街を“素敵に”する雑誌ですね。
じゃあ「Hanako」や「OZ magazine」はどうなのかというと、それは次回までの宿題ということで。

(H)

December 22, 2007

山手トンネル開通

ウチの店の裏を走っている山手通りの地下で延々工事していた首都高速中央環状新宿線、池袋-新宿間がついに開通しました。

http://sankei.jp.msn.com/life/lifestyle/071222/sty0712221252006-n1.htm

やー。
長かったすね。
私が高校生の頃から工事してましたしね。

でもなんでイメージキャラクターがマッチなんだろ。
やはり「若ーさはいつでもワンウェイロード、誰も引き返せないさー」って歌っていたのが高速道路のイメージに合っていたんでしょうか。
どうでもいい話ですが今「イメージにマッチしていた」と書いてから慌てて書き直しました。危ない危ない。

で、今回開通したこの中央環状新宿線の中の様子を収めた写真集があります。
それがこれ。

 ○首都高山手トンネル (求龍堂)

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未来のために動きだした、がんばる日本を伝えたい。
大都市東京の地下を貫く高速道路。
それはただ渋滞を減らすため、環境を少しでも良いものにするために。
その建設現場を「Deep Inside」の西澤丞が撮影。

さすがに地元も地元の本なので手に取られるお客様は非常に多いですが、まずほとんどの方が興味深げに中をのぞいて戻していかれます。
こうなると自分が間接的に首都高速道路公団のスポークスマンになったみたいで複雑な気分です。

今回は「都心の渋滞を減らす」という目的がさかんに喧伝されてますが、一方でわが上落合には巨大な換気塔が突如として出現し、影響を不安視する声も出ています。

近くの理髪店の店主が言っていました。

「おれたちの子供はさ、ああいう人体にどう影響が出るか誰もわからないもんが最初からあるところで育っていくわけじゃない?自分たちの世代が下の世代に残してやれるものがあれなんだとすると、なんか悔しいよね」

地下の本ではもうひとつロングセラーの本があります。
今年の夏に発売になって以来、ずっと売れている本です。

 ○「新説 東京地下要塞」秋庭俊(講談社+α文庫)

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地下というのはまさしく見えないからか、いろいろ不透明な部分が見え隠れします。
なぜ東京の地下鉄はあのようなグニャグニャした路線になったのか(大阪に行くたびに地下鉄のわかりやすさに感動します)、各繁華街にある“地下街”はどのような経緯でなぜできたのか。
著者の秋庭氏は「帝都東京・隠された地下網」(新潮文庫)なんていう本も出してる地下のスペシャリストみたいな人なので、いずれ今回の地下高速についてもリポートしてもらいたいものです。

しかし山手通りも地下高速は開通したものの、地上の方の拡張工事は用地回収が進まないのか、いまだ終わる気配を見せません。
もう20年くらい工事してますが、アレは私が生きてるうちに完成するのでしょうか。
なんだかサグラダ・ファミリアみたいな話です。

(H)

December 19, 2007

すいません、入ってきました

朝、何の気なしに書籍の段ボールを開けたらミシュランが入ってました。

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あらまあ。

   

というわけで本日20時現在、あと4冊です。
なんか、風は過ぎた気がします。

 

さて先日、田中芳樹の薬師寺涼子の怪奇事件簿シリーズ最新刊「水妖日にご用心」(祥伝社)が入ってきましたが、そのPOPがこちら。

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2007年のPOP大賞があるとしたらまず受賞したであろう、安達千夏「モルヒネ」(祥伝社文庫)の「うずくまって泣きました」(でしたっけ)をもじったコピーですが、書店員のコメントを作家がネタにする時代になったのだなあ、と感慨深くなりました。
しかしあのPOPを書いた方(丸善の方でしたっけ)は売上の3割くらいもらってもいいような気がするんですが、どうなんでしょう。
発光ダイオードの発明で会社はあれだけ利益が出たのに手当がこれしかもらえんかった、と裁判起こした会社員の方がいましたが、こういうのを裁判所に訴えるとどういう結果になるんでしょうねえ。っていいからほっとけよ。

けど自分も先日、団地の中だけで一生を過ごそうとする少年を描いた、久保寺健彦「みなさん、さようなら」(幻冬舎)を読んだときはうずくまるほどさみしくなりました。
こういう話ほんとダメなんだよな…。

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(H)

先月のものです

先月のランキングをすっかり出し忘れていました。
今さらですがどうぞ。

(一般)

1  ホームレス中学生     ワニブックス 07-09-30 1300

2 '08 Michelin GUIDE東京 日販IPS 07-12-17 2200

3 頭がいい人の敬語の使い方    本郷 陽二 監修  日本文芸社

4 ザ・シークレット R.バーン 著  角川グル-プ

5 いつまでもデブと思うなよ 岡田 斗司夫 著  新潮社

6 「1日30分」を続けなさい!  古市 幸雄 著  マガジンハウス

7 The Book―jojo's bizarre adventure 4th another day  乙一 著  集英社  

8 求めない  加島 祥造 著  小学館

9 恋空~切ナイ恋物語~ 下   美嘉 著  スタ-ツ出版

10 世界一やさしい 問題解決の授業  渡辺 健介 著  ダイヤモンド社

(文庫)

1 探偵ガリレオ 東野圭吾  文藝春秋

1 予知夢     東野圭吾  文藝春秋

3 犯人に告ぐ 上  雫井 脩介  双葉社

3 犯人に告ぐ 下  雫井 脩介  双葉社

5 被差別部落の青春  角岡 伸彦 講談社

6 水滸伝  14 爪牙の章  北方 謙三  集英社

7 彩雲国物語 隣の百合は白  雪乃 紗衣 角川グル-プ

7 The MANZAI 4  あさの あつこ ジャイブ

9 攘夷 交代寄合伊那衆異聞 佐伯 泰英  講談社

9 対岸の彼女    角田光代  文藝春秋

(コミック)

1 のだめカンタービレ  19 講談社

2 NARUTO-ナルト-  40 集英社

3 家庭教師ヒットマンREBORN!  17 集英社

4 バガボンド  27 講談社

5 君に届け   5 集英社

6 リアル   7 集英社

7 GANTZ-ガンツ-  22 集英社

7 HELLSING   9 少年画報社

9 PLUTO   5 小学館

10 機動戦士ガンダムTHE ORIGI 16 角川グル-プ

December 14, 2007

Anniversary

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12月25日で伊野尾書店は開店50周年を迎えます。

当日は500円以上のお買い上げのお客様先着100名様に粗品を贈らせていただこうかと思っております。

たいしたことはできませんがひとつよろしくお願いいたします。

ちなみに辞書で「周年」という言葉をひいたら「(俗語)」とあったので、正式な言葉ではないのかもとやや自重気味であります。

   

そういえばいのうえさきこの「かなりあやしい!?  おかんとつっこむ微妙な日本語 」(芳文社まんがタイムコミックス)の中に、キャバクラ嬢と男性客の会話で、

嬢「今日はどちらからいらしたんですかー?」

客「聞くな」

嬢「え…そんなイジワルしないで教えてくださいよー」

客「だから聞くな」

嬢「(…何この人)」

って思ってたら菊名から来た人だった、という話が載ってて日本語って難しいなと思いました。

ちなみに伊野尾という名前も口頭で言うとよく聞き返されます。

たまに佐藤とか田中になりたい日があります。

(H)

December 12, 2007

名曲と思い出

大学三年生の頃、早稲田にあったファミレスでアルバイトをしていた。
仕事は厨房での調理業務だった。
厨房に入るとだいたい夜の6時くらいから10時半くらいまで、次から次に入ってくるオーダーのためにひっきりなしに料理を作る。
11時近くなるとようやくオーダーが減ってくるが、そうなると今度は4時間ぶっ通しで使い続けた厨房のそれぞれの持ち場を掃除する仕事が出てくる。

すぐ調理に使えるよう準備された野菜や肉類が入った小さなコンテナの箱を掃除し、ハンバーグやチキンを焼き続けて黒ずんだ鉄板を掃除し、唐揚げやらトンカツやらを揚げまくって真っ黒になった油を交換する。
何十人分、時には百人分をも超える唐揚げやら豚カツやらを揚げるのに使った油を廃棄し、新しい油に交換する。
まだ使えそうな具合であったら濾過してまた使う。

油交換はフライヤーと呼ばれる油槽の電源を切って、温度が冷めてからやるようにはなっているがなにせ何時間ものあいだ180度の高温に保たれていた油である。
そう簡単に冷めはしない。
そもそも冷めるのを待っていては作業は遅々として進まないし、11時を過ぎてからも学生の団体客が入ったりしたりすると途端に注文がまとめて飛んでくるので、そんな時に油槽が使えないのでは料理を提供する時間がまた遅れることになる。
したがって多少熱かろうが危険だろうが熱が冷め切っていない状態で油を交換するのが常だった。
当然ヤケドは茶飯事で、あまりラクな作業というわけでもなかった。

この油交換の作業をするのはだいたい私か、ニロくんというあだ名の二歳年下の後輩男子のどちらかだった。
もちろん別の人もやっているのだが、特に私たち二人は特にこの作業を任されることが多かった気がする。
油交換は厨房の真ん中でやっていては他の作業の邪魔になるので、だいたい厨房の裏の通路へ持っていって一人でトポトポ行う。
通路はたまにウェイターやウェイトレスの人がコーヒー豆や砂糖といったものを取りに来るぐらいで、だいたいはひっそりとしている。
それまで喧騒のように次から次に送られてくるオーダーのラッシュに一種躁状態になって料理を作り出し続けていたのが、この作業になるといきなりクールダウンして孤独を感じるようになる。

そこで聞こえるのは厨房にいるとまったく聞こえない、店内BGMの有線放送だ。
有線放送は1ヶ月とか2ヶ月いった単位で曲目が変わり、その間は毎日規則正しく順番どおりに同じ曲が同じ時間に流れる。
そして深夜12時前になると、決まって流れていたのがボン・ジョビィの「Always」だった。95年の秋あたりだったと思う。

―ああ今日も終わりだ。

―もうそんな時間か。早いな。

―今日はなんか疲れたな。

ジョン・ボン・ジョビイの幾分悲しげな歌声が聞こえてくると、毎日そんなことを思った。
もちろん一曲まるまる聴いている余裕はない。
日によってはその前に作業が終わったり、作業をしていて全然耳に入らないこともある。

時刻は深夜0時前。
店長はとっくの昔に帰っている。
誰もいないバックヤードで、誰にも声をかけられず仕事をする我々を励ましてくれたのは店長でも他のスタッフでもなく、ジョン・ボン・ジョビイだった。
今でもこの曲を聴くと、あのバックヤードと油槽に入った熱い油が目に浮かぶ。

一度、ニロくんに聞いたことがある。

「油交換してるとさ、必ずボン・ジョビイ聞こえるよな」
「あ、伊野尾さんもですか。僕、気になってCD買っちゃいましたよ」
「あ、いいな。今度貸してくれよ。あれちゃんと一曲聴いたことないから」

けどニロくんはボン・ジョビイのCDを貸してくれなかった。
バイトを辞めてしまったからだ。
彼女が出来たから、とか大学が遠くなって通いづらくなったから、とかいってた気がするが今となっては覚えていない。
結局私が「Always」をちゃんと聞いたのは、バイトから帰ってクタクタのまま見ていたミュージッククリップを紹介する深夜テレビ番組でだった。

ニロくんが辞めてしばらくたった頃、いつのまにか「Always」は流れなくなっていたことに気がついた。
曲はジョン・オズボーンの「One of Us」になっていた。
そして私は将来の自分の姿が何も浮かばないまま、大学四年生になろうとしていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

みたいな感じで森達也が延々名曲と極私的な思い出を語る本です。
長いよ前振りが。

○ぼくの歌、みんなの詩(講談社)

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一番初めの「ホテル・カリフォルニア」の思い出を語るパートは素晴らしかったなあ。そら泣くわ、てな話です。ぜひ。

でもこういう「名曲とその思い出」みたいなのは一人に書いてもらうんじゃなくて、いろんな人に書いてもらえばいいのに。ってそういう本すでにあるんでしょうか。

(H)

December 08, 2007

ガイド本の話

お客様にご案内します。
アテにしていた「ミシュラン」重版分がまったく入荷しないことがわかりましたので、今後当店での予約は当面、お受けできません。

「本屋のほんね」のchakichakiさんが顛末を書いておられます。

http://d.hatena.ne.jp/chakichaki/20071206

こういうことでございます。

そもそも出版社というのはどんな副事業をやってても基本的には「本を売ってその利益でメシを喰おう」というコンセプトで成り立ってる会社だと思ってるんですが、なにせ今回発行しているのはタイヤ会社であって出版社ではないので、そういう意識が希薄、というよりまるで無いようです。

ミシュランという会社はこのガイドブックをたくさん売って儲けよう、一人でも多くの人に売ろう、ミシュランガイドが欲しいという人すべてに届けよう、なんていう気はたぶんありません。
あくまであのガイドブックは「キャンペーンの道具」であって「商品」とはちょっと違うみたいです。

街の本屋からするとこの潜在需要50万部とも言われるマリアナ海溝的機会損失をただ呆然と眺める一方、本そのものを希少品にしてそれをキャンペーンの拡材にするというプロモーションに複雑な思いを抱きつつ、入手までに時間がかかるといった問題はあれど

「その本を欲しい人がいたら必ず手に入るよう動く」

というこれまでの出版流通は、いろんなものを犠牲にしつつどこかインフラ的な役割をしていたんだな、けどだんだんこれも今後どうなるかわからないな…という寂しい思いでございます。

まあ、ミシュランも今後いきなり180度方針転換して「やっぱりバンバン売りましょう!」となる可能性もあるわけですが。
「当面」という言葉を最初に入れたのはそういうことです。
どうかご理解をお願いします。

さて、同じガイドでも「2007年のベスト本」みたいな本のガイドがこのところ立て続けに出てきております。

目についただけでも

  • 「このミステリーがすごい!」(宝島社)
  • ダ・ヴィンチ1月号(特集:ブックオブザイヤー2007)
  • ダ・カーポ12/19合併号(特集:今年最高!の本)   この号で休刊ですね…。
  • SIGHT(第二特集:ブックオブザイヤー'07)

それから来週になると、

  • 本の雑誌(本の雑誌が選ぶ2007ベスト10)

も出ます。
来週には「週刊文春」が「文春ミステリーベスト10」を発表し、詳しくチェックしてませんが他の週刊誌にも同様の「今年のベスト本」といった特集が載ると思います。

さらに、

  • 「このマンガがすごい!2008」(宝島社)
  • 「このライトノベルスがすごい!」(宝島社)
  • 「おすすめ文庫王国2007」(本の雑誌社)
  • 「ミステリが読みたい!2008年版」(早川書房)

とまあもう百花繚乱というか、1ジャンル1ガイドみたいになってきております。
店頭にない分まで入れるともうどうなってるのかさっぱりわかりません。

で、こうなってくると
「どのガイドが一番いいの?」
みたいな「ガイドのガイド」が必要になってくるような気がしますが、それは言うならば

「上戸彩と新垣結衣と長澤まさみは女としてどれが一番上なの?」

みたいな質問ですから、みなさんお好きに決めてください、というしかありません。
みなそれぞれにカラーが違います。

「ダカーポ」は全方位的に薄く広くという感じだし、「ダヴィンチ」はわりと取っつきやすい本から薦めましょうとする方向性が見えるし、「このミス」は言うまでもなくミステリ限定、というように。

その中で私が個人的に好きなのは「SIGHT」です。

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何がいい、っていうより単純に相性が合ってる気がします。

ということで今回の「SIGHT」でまっさきに取り上げられていた

○「若者を見殺しにする国 ~私を戦争に向かわせるものは何か」赤木智弘 (双風舎)

Photo

入りました。
面白そうな本です。
「丸山眞男をひっぱたきたい」(論座1月号)読めばよかった。

みなさんも店頭で相性の合うガイド、そして相性の合う一冊が見つかりますように。

(H)

December 01, 2007

Green Tinted 80's Mind

どさくさにまぎれて西原理恵子の「恨ミシュラン」を置いていますが、やっぱりというか、売れません。
さすがに便乗にも無理があったかな、と中をペラペラめくってると、目次には「ジュリアナ東京」「ザウス」…ちょっと時代を先取りしすぎました。

のちに「ぼくんち」「毎日かあさん」「いけちゃんとぼく」等で国民を泣かせまくることになる西原理恵子が当時何十万部と発行されていた週刊朝日で有名レストランを実名出して毎週毎週コキ降ろすという、今からするとこんな危険すぎる企画がよく通っていたなと思わざるをえない本であります。
今こんなことやったらすぐ訴えられたりするんだろうなあ。
ネットがない分既存メディアが必要以上にアナーキーだったあの頃が、週刊誌黄金時代だったのかもしれません。

ちょうど時を同じくして、ピエブックスの「日本の雑誌広告80s」という本が入ってきました。

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http://www.piebooks.com/search/detail.php?ID=1011

本書では、デザインの優れた広告はもちろん、時代性豊かでコピーの効いた雑誌広告を500点紹介します。広告における80年代のトレンドと、当時の生活・文化を読み解くことのできる価値ある1冊です。

という案内にもある通り、当時の生活が広告を通して浮かび上がります。

購入者プレゼントは圧倒的にテレホンカードが多いとか、軽自動車が50万で買えるんだ…とか。

けどこの本はそんな能書きをすっとばして

「マッチ若っ!何この髪型!」
「斎藤由貴、超かわいい!」
「さんま、エッライ若い!」

と100%片思い…じゃなくて100%ミーハー心で見るのが楽しい本ですね。
そして私は中学生のときに密かに小泉今日子が好きだったという恥ずかしい記憶が今さら脳内の暗い奥底から甦ってきました。そんなの思い出さなくていいのに。

そしてそんな思い出さなくてもいい、もう一生脳内奥深くのフォルダにしまっておきたいような青い衝動をわざわざ呼び起こすような小説が今月映画化されます。

そう、大槻ケンヂの青春大河小説「グミ・チョコレート・パイン」です。

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金八先生と角川映画と松田聖子が席捲していた80年代、若者が恋愛することに対して非寛容な空気が残っていたあの頃の青臭い青春物語をケラリーノ・サンドロビッチがどう映像化したのか大変気になります。

そういえば酒井順子の新刊もそんな80年代をテーマにしたエッセイです。

○「携帯の無い青春」酒井順子(幻冬舎)

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ユーミン、ディスコ、竹の子族。
そんな時代もありました。
沖田浩之はもういない。

(H)

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