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May 2007

May 29, 2007

BOY'S LIFE

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 ○少年時代〈上・下〉ロバート・マキャモン (文庫・ヴィレッジブックス)

 12歳、なにもかもがきらめいて見えていたあのころ…アメリカ南部の田舎町で暮らす空想好きの少年コーリーはある朝、父とともに不可思議な殺人事件を目撃してしまう。
そこからコーリーの冒険に満ちた一年間が始まった!
底なしの湖に車と共に沈んだ無惨な死体は誰なのか?
悪夢にうなされる父はしだいにやつれてゆき、コーリーは現場に残された緑の羽根を手がかりに、謎解きをはじめる。
その過程で友や愛犬と体験する忘れ得ぬ体験の数々――誰もが子どものころに持っていながらも、大人になって忘れてしまった魔法を信じる心をよみがえらせ、世界中の読書好きを夢中にさせた珠玉の名作。


 12歳の時、あなたはどんな子どもだったのだろう。
 はじめて自分だけの自転車をもらったときの喜びを、
 はじめて大人抜きで子どもだけで出かけた時の不安とワクワクした気持ちを、
 はじめて先生の言うことに反論した時の孤立感を、今も覚えているだろうか。

 顔を見ると自分をいじめてくる上級生、スポーツに特別の才能をもっていた同級生、その人のことを考えるとぼんやりと胸の隅がチクチクする異性の友達、いつも優しく接してくれた近所の大人たち、みんな顔を思い出せるだろうか。


 『少年時代』は1960年代のアメリカ南部の田舎町と、そこで暮らす少年の物語だ。
 ジャンルでいえば青春小説でもあり、ミステリーでもあり、ファンタジーでもある。
 町にはいろんな人がいて、そこではいろんな考えがあって、いろんな問題が起きる。
 冒険、失望、別れ、様々な体験を経て、人間を、世界を知っていくコーリー。
 そのすべてが美しく、すべてが胸に詰まる。

 「ロバート・マキャモンの『少年時代』だけを置いてある本屋があってもいいよね」

 そう話した書店員がいるという。
 バカいっちゃいけない。
 我々のすべきことは店の本棚をマキャモンの『少年時代』で埋めることではなく、日本中どこの本屋にいっても『こころ』は置いてあるように、日本中、いや世界中どこの本屋にも『少年時代』のペーパーバックが棚に並べられるよう声をあげてこの小説の良さを広めることじゃないか?そうだろ同志?

 たぶん、私はこの本をずっと店に置き続ける。
 誰にも手に取られることもなく、棚に置きざらしになっていたとしても。
 そしていつか、たまたまこの本を手にとって、たまたま買う気になってレジに持ってきたお客さんに言う。

 「いつか、あなたの子どもにもこの本を読ませてほしい」

 黙ってカバーをかけながら、心の中で。


 (H)

May 25, 2007

作家の偉大さを知る

 一ヶ月くらい前にレンタルCD屋にいった時、なんか聞くもんないかなーと30分くらい悶々とした末たまたま手に取ったイエロー・モンキーのCDを、このところ毎日聴いてます。
彼らが活動していた10年くらい前は何かで耳にすることはあっても自発的に聴くことはなかったのに、不思議なものです。
 別にそのCDは特段店員のオススメになっていたわけでも、目を引くジャケットだったわけでもなく、棚にひっそりあった一枚です。
 何でヒットが見つかるかわかりません。
 そして、これだけ情報があふれて時間潰しの手段が増えた時代に、いかに多くの方に「何か面白いもんないかー」と悶々してもらう環境を作るのは只事じゃないよ出版業界、っていうことをいまいち歌詞の意味がわかるようでわからない、吉井和哉の歌声を聞きながら考えました。しかし「So Young」は名曲だ。


 そんな話はともかく、こんな本が出てました。

 ○「小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所」(集英社)
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 http://j-books.shueisha.co.jp/kochikame/


 ジャンプコミックのノベルス(小説版)というのはたくさんあるんで、それ自体は珍しくはありませんが、書いてるメンバーがすごい。
 大沢在昌、石田衣良、京極夏彦、逢坂剛、東野圭吾…なんですかこの集英社の力を総動員した作家陣は!?

 そして怖ろしいことに、「新宿鮫」の鮫島刑事や「池袋ウエストゲートパーク」のマコトが両さんと対面します(残念ながら京極堂とは対面しませんでしたが。短篇じゃページが短すぎるか)。
 東野圭吾の話に至っては両さんが賞金目当てで江戸川乱歩賞に応募しようとします。
 すごい話です。
 そしてこんな無茶苦茶な小説が出るようになったんだなあ、と感慨深くなりました。

 読んでもらえればわかりますが、ハードボイルドにもミステリーにもなりすぎず、「こち亀」の世界観が小説の中にそのまま残ってます。
 ああいう世界を崩さず、それでいて自分たちの作風を残せる作家の先生方は本当にたいしたものだなあとこんなところで学びました。


   (H)

May 18, 2007

後楽園の少年ファイターズは大人になって札幌へ行った

 日本ハムファイターズの田中幸雄選手が二千本安打を達成したそうで、本当におめでとうございます。

 ファン投票一位で出場した86年だか87年のオールスターで2夜連続暴投していたり、東京ドームのライト側応援団がところかまわず幸雄の応援に合わせてドスンと跳ねていたのが昨日のことのようです。
 誤解を恐れず書きますが、田中幸雄レベルの選手が二千本打てたというのは、本当に励みになります。
 だって現役生活20何年で一度も3割打ってないバッターですよ!
 イチローや松坂にはそうそうなれないけど、田中幸雄ならなれそうじゃないですか!
 若返りだ何だってホサれてもあきらめず続けていれば大きな結果になるんですよ。
 がんばりましょう、全国の中堅どころの皆様。

 しかし記録達成を報じるスポーツ紙によると、

>初安打は昭和61年6月10日の南海戦(後楽園球場)

 とあり、そのあまりの遠さにクラクラしました。

 昭和ですよ!
 南海ですよ!
 後楽園球場ですよ!

 完全にセピア色の世界です。
 そして、かつて後楽園球場でロッテのレロン・リーにサインを求めたもののスカッと無視されて落ち込んでいた小学校の同級生M君は今どこで何をしているのだろうと思いました。


 ということで田中幸雄を祝して何か野球本はないか探してみたのですがこれといったものがなく、かといって今頃開き直ったように本を出した


「オシムジャパンよ!」フィリップ・トルシエ(アスキー新書)
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 とか、

「ジーコ備忘録」(講談社)
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 といったサッカー元監督本シリーズをを紹介するのもなんかイヤなので、もう文庫になったのかと思ったらいつのまにか映画化まで決まっていたこの小説を。


○「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」本谷有希子(講談社文庫)
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 自己顕示欲の強い人間が自己表現の道として採る選択肢としては音楽・文学・演劇・モデルその他いろいろあると思いますが、特に我が強い人が進んでやりたがるのが演劇で、やってる人がいちいちめんどくさいことを言うのも演劇という気が個人的に、あくまで個人的にはするのですが、主人公はその演劇の世界で『あたしには人とは違う才能がある』と信じ込んでいる女性です。
 ちなみにこれを書いてる本谷有希子自身、演劇の人ですがこの主人公自体が本谷を投影したキャラクターであるかは知ったこっちゃないし考えてもめんどくさいだけなので放っときます。

 で、その「あたしには特別な才能がある」と信じて東京に出て行った姉がはっきりしない理由で故郷に戻ってきて以来、妹を日々厳しく責め立てる。それはなんでか、というのが物語の入り口なわけですが…。

 表紙を山本直樹が書いてますが、実際彼の漫画にありそうな話で、ヤマ場の姉が絶叫するところなど大きなコマ割りになった山本直樹の絵がつい頭に浮かんでしまいました。
 読み出したら最後まで読んでしまう、面白い小説です。
 登場人物はみんなめんどくさいけど。

 しかし映画となったら、妹役の出来がすべてだろうなあ。
 結構、姉役は誰でもいい気がします。
 なんていったら佐藤江梨子ファンの方に怒られますね。ごめんなさい。
 見に行けたら劇場に行きたいです。

 けど結局『手紙』も『東京タワー』も見てないんだよなあ…。

 (H)

May 14, 2007

落合の著名人

 間があいてしまいましたが、ランキング更新しました。
http://homepage3.nifty.com/inooshoten/ranking.htm

 一位の「新宿文化絵図」は、企業や学校などのまとめ買いでなく普通に店で売れてった分をカウントしてます。
 まあ業界の人以外にとってはこんなことどうでもいいことですね。
 以前紹介した「地図本」や「OZ新宿改訂版」などガイド本が売れてる印象です。

 ちなみにウチのパソコンは毎度「真珠区分変えず」と出ます。
 一発で覚えないところが店長と同じです。


 さて、このようにどこの本屋でも「地元を紹介した本」というのは着実に売れるわけですが、今回は「地元の著名人の本」でも紹介してみます。

 まず西落合出身の泉麻人が書いた東京本。

 ○「青春の東京地図」(ちくま文庫)
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 泉麻人はプロフィールに「新宿区下落合出身」と書かれることが多いのですが、実際には中落合、今で言う落合南長崎のあたりに住んでいたようです。
 当時はあの辺りまで下落合扱いで、その後区分変更で西落合という地名が出来たということがこの本のどっかに出てきます。
 あのあたりで彼はゴムボール野球やったり、駄菓子屋で買い食いしたり、おとめ山公園までザリガニ釣りに行ってたりしたことが書かれています。
 その頃中井の本屋に来たことはあったんでしょうか。

 私は泉麻人の約20年後輩にあたるわけですが、小学校高学年にファミコンという核爆弾級のオモチャが登場するまでほぼ同じようなことをやっていたというところに、我々団塊ジュニアーズが中途半端な世代扱いされる所以があるのだろうなあと思ってしまいます。
 まあそんな話はともかく、ビッグコミックスピリッツの「東京エイティーズ」とかに胸を熱くしたような人は共感できる本ではないかと。

 しかし私が初めて泉麻人を知ったのは80年代後半にやってた「ウルトラ倶楽部」というウルトラマンの深夜番組で、その頃は「若者文化とサブカルチャーに詳しいオシャレな文化人」みたいな扱いだったはずが、気がつくと「TV番組とか乗り物とか東京とかの過去を振り返るエッセイが専門のオッサン」みたいな扱いになっていて、なんとなく悲しいというか、しょうがないかというか、そんな感じがいたします。


 続きましてこの方の本。


 ○「赤塚不二夫のことを書いたのだ!!」武居俊樹(文春文庫)
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 赤塚不二夫と35年の付き合いだったという編集者が書いた本。
 発売日の朝イチで買いに来られた方がいました。

 赤塚不二夫は中落合に住んでいたので、今でも中井商工会のスタンプラリーのキャラクターにもなっていたりこの辺りとの深い結びつきが見受けられます。
 本の中でも編集者を集めて白雪鮨で飲んだ後妙正寺川に誰か突き落とそうとした話なんかが描かれています。

 日本赤軍がよど号をハイジャックしてかの有名な「われわれはあしたのジョーである」という声明を出したとき、それを聞いた赤塚不二夫はこう言ったそうです。
 
 「われわれはバカボンのパパである、って言えばいいのに。」

 この本は赤塚不二夫と担当編集者のストーリーでありますが、二人を通して見える昭和という時代のストーリーでもあり、日本の出版(コミック)業界の歴史書でもあります。

(H)

May 07, 2007

5万4千円でトルコまで

 連休中は千葉マリンスタジアムに千葉ロッテ-東北楽天戦を見にいってきました。

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 晴れた日のデーゲームは本当に気持ちがよく、最高ですね。
 とはいえゲームはお互いポロポロとランナーが出るのに点数は入らない、調子の悪いチーム同士の典型的な貧打戦でありました。

 しかし「学業に専念しないで野球だけやっていればよいという誤解を与える」特待生制度が問題というのなら、プロ野球は「野球さえ上手であれば大人になっても仕事せず野球だけやってればよい」という誤解を大いに与えている気がするのですが、どうなんでしょうその辺。
なんでドラフトの問題が学生や学校の問題にされてしまうんだろう、という気がいたします。
 そういや江川のコメント聞いてないなあ。
 聞きたいなあ江川のコメント。


 で、連休も終わってしまいましたがこんなミニフェアをやっております。

「新潮文庫 旅と食のフェア」
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 ○「波の向こうのかくれ島」(椎名誠)
 ○「食味風々録」(阿川弘之)
 ○「食卓の情景」(池波正太郎)
 ○「不味い!」(小泉武夫)
 ○「さかな料理指南」(本山賢司)

 などなど。
 わりと渋めのラインナップです。

 その中でも一番「旅っぽい」のがこの本かと。

 ○「5万4千円でアジア大横断」(下川裕治)
 54000

 先に挙げた椎名誠本もそうですが、たいがいの旅本は読むと「うわあ、行ってみたいなあ」という感覚を呼び起こすものですが、この本はその間逆というか、「よくこんな旅に行ったなあ」という旅行記です。
 私も知らなかったのですが、『アジアハイウェイ』というアジアを大横断する道を整備する国連事業があるそうで、それに沿ってバスで東京・日本橋からトルコ・イスタンブールに向かうという、途方もない旅です。

 読んでると本当に「辛そうだなあ」という感想しか出てきません。
 一見沢木耕太郎の「深夜特急」と似てますが、あっちが「26歳の若者の成長の旅」という凛々しい趣があるのに対し、こちらは「51歳のおっさんの何でこんな年になってまでこんな旅に出なきゃいけないんだろう」的イヤイヤ感が随所に見受けられ、気の毒だなあと思いつつ面白いのでスラスラ読んでしまいます。
 しかしアジアには、あまりに前の席との感覚が狭いため、体育座りでないと座れないバスがゴロゴロあるようです。
 私も一時期「深夜特急」に憧れた時期がありましたが、あの時血迷ってバックパック背負ってデリーのバスターミナルに向かわずに本当によかったとこの本を読んで思いました。


(H)

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