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August 2006

August 29, 2006

過熱する方とさせる方


伝説的な決勝再試合の末決着がついた高校野球が終わってから一週間以上経つのに、高校野球熱はいまだ衰えるところを知らず、まあ西東京代表が優勝したし、せっかくだからってな感じで多めに仕入れた高校野球雑誌がみるみる減っていきます。
うかつにも「確か高校野球の増刊なんて多くても2~3種類だろう」とみくびっていたらその倍の種類の雑誌が入ってきたわけですが、ああちゃんと需要のあるべくところに供給があるんだなあと思いました。
だからといって来年もこんなには売れるとは思いませんけど。
それが証拠に「去年の駒大苫小牧V2達成時の決勝の相手は?」と聞いたらほとんどの人が答えられないでしょうから。

しかしあの「ハンカチ王子」という敬意の無いふざけたネーミングはどうにかならないもんでしょうか。
自分があんな呼ばれ方されたら馬鹿にされてるとしか解釈できませんが。
18歳の少年を大人が寄ってたかって食い物にしている今の状況は大人の一人として恥ずかしく思います。

先日読んだ横山秀夫「クライマーズ・ハイ」は、逆にそういった過熱取材に殺到するマスコミの内部を描いた作品でした。
Kuraimazuhigh

対象こそもちろん高校野球でなく、1985年8月の日航ジャンボ機墜落事故になっていますが、舞台になっている地方新聞社というメディアの内部を通じて「人間とはいかにあるべきか」を追求した、内容の深い小説です。
人として正しいことが組織の中では正しいと限らない。
人として正しいことが仕事の中では正しいと限らない。
文章にするとただ棒読みのような平板な言葉が、横山秀夫の作品の中では圧迫感すら与える肉厚な情景となって迫ってきます。
もうすでにかなりのベストセラーなので読んだ方も多いとは思いますが、改めて紹介したいと思います。

小川洋子「博士の愛した数式」が書店員が選ぶ「第一回本屋大賞」に輝いたことで現在の知名度を得ていることは今さら説明するまででもないことですが、そのときの「本屋大賞」の二位が、この「クライマーズ・ハイ」です。
今さら考えても詮無いことでしょうが、もし「クライマーズ・ハイ」が最初の本屋大賞を受賞していたら、小川洋子も横山秀夫も「本屋大賞」も微妙に現在とは違った立ち位置になったのかもしれません。

あと少しの差で敗れてしまった存在というのは、どうも気になるものです。
それは高校野球に限ったことではなく。

(H)

August 23, 2006

家族

お盆と言うことでみなさん久しぶりにたくさんの親戚に会いに行ったり、子供が帰ってきたりしたのではないでしょうか。
こういったお盆休みや正月休みというものがきっかけで、普段なかなか集まれない親戚が集まることが出来るのはとてもいいことだなぁと思います。
私も祖父母が高知県と離れたところに住んでいるので毎年夏に会いにいっています。
そして毎年なんて私の親戚は一人一人キャラが濃いんだろう・・と思うのですが、
みなさんのおたくはどうでしょうか?笑
それぞれ素敵な個性があって文才さえあればそれぞれの「ちびまるこちゃん」が
書けるのではないのかなと思ったりします。私の家の場合書ける気がします・・笑。
そんな素敵な家族の漫画として以前
「サムライカアサン」という思春期の息子とその母の面白いやり取りを描いた漫画を当店でおすすめしていたのですが、
今回は面白いお父さんとOLの娘の「わかるその気持ち!」「うちの父さんもやるよそれ!」
というやり取りを描いた漫画をおすすめしたいと思います☆

「ひまわりっ」東村アキコ/モーニング(講談社)
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「きせかえユカちゃん」を描いている人と言ったらピンとくる方もいらっしゃいますよね。
「ひまわりっ」は娘を持ったパパにも読んでもらいたいし、ぜひ女の人に読んでもらいたい!!
パパのこと嫌いとか思ってる人でもコレを読んだら、パパも一生懸命なんだな、とか実はかわいいなとか思えるんじゃないかな、と思います。自分の小さい頃のお父さんの思い出とかも思い出したりしてちょっとキュンとしたり
しちゃいました。なんだか我が家のお父さんと似てるんですよね。笑

August 18, 2006

カーナビでは絶対出てこない情報を得る本

一応、お盆休みが終わりました。
以前は本当のお盆を過ぎてから夏休みを取る人など久米宏か筑紫哲也くらいだろうと思っていましたが、最近では普通の会社の人でもそうやってずらして休みを取るのは珍しいことじゃないようです。
お正月もそうですが、お店やサービスがいつでもやっているというのは便利さと引き換えにだんだん季節感が薄れていく感じがします。
もっとも書店などその中心にいるわけですが。

そんなお盆にクルマの運転席で渋滞と闘った方も少なからずいると思うのですが、8月の新刊にこんな本がありました。

○「浜崎橋はなぜ渋滞するのか ~現地ルポで解明する渋滞ポイント50の謎 首都圏版」(扶桑社)
Hamazakibashi

書名が書名なので、最初渋滞のメカニズムを解く教養新書だと思ってたら、全然違いました。
「首都高浜崎橋ジャンクション」「東名大和トンネル」「環七」といった、ラジオの交通情報でしょっちゅう「~を先頭に渋滞○○キロ」と言われている渋滞ポイントをいかに交わすか、また都心から湘南や伊豆といったクルマで行くとまず間違いなく渋滞する観光地までのアクセスをカーナビでは絶対出てこないルートで探索した本です。

たとえば小田原から国道134号線がずっと混雑する東京→伊豆方面へのアクセスとしては「霧か雨の日以外は伊豆スカイラインを使え」というアドバイスが出ています。(御殿場IC→芦ノ湖経由)
なるほどと思ってしまいました。

その他にも
・「都心へ向かう際、緊急時はリムジンバスについていけ」
(リムジンバスはGPS情報を取り入れ常に最速のルートをとる)
・「東名大和トンネル上りは渋滞している時でも時速25キロは出る。焦って降りるな」
といった「へえー」な交通情報がいろいろ載っています。
カーナビは最短ルートを設定するのが得意であっても、この手の情報は絶対でてきません。
クルマに一冊常備したい本です。

もっとも全編通して読むとこの本は「渋滞を避ける」点にはポイントが置かれていますが、結構大回りなルートなどもあり「ガソリンを節約する」点にはかなり無頓着です。
ガソリン価格が史上最高値を更新する現在、次に出るのは『ガソリンスタンドには3か月に一回』的な、燃費コストを下げるアイデアを集めた内容の本になるかもしれません。


(H)

August 11, 2006

敗者のための祭典

お盆休みを目前に控え、熱闘甲子園の時期になりました。
毎年やっているのに、甲子園は見るたびに新しい発見がある気がします。

高校野球は、プロ野球と比べて格段にエラーやミスが多いです。
中でも、「投げてもセーフだろう」というタイミングで無理して送球し結果悪送球、相手に点が入るというシーンをしばしば見かけます。
解説者はそのたびに苦言を呈したりします。

私自身は遊びでしか野球をやったことがないので、甲子園球児の心理はわかりません。
ただ、なんとなく想像します。
「あの場面で、もし投げていたらアウトになっていたのかも」という後悔をずっと抱えていくことは、結果的に暴投して責められるよりも辛いことなんではないか、と。
やらない後悔よりやってみて後悔した方がまだ諦めがつく。
そういう判断がとっさに働いてしまうんじゃないか、と。

一生で一回の、悔いを残せない試合。
それであるがゆえに生まれてしまう、悲劇的なミスやエラーもきっと数多くあることでしょう。

高校野球の本は例年ポツポツ出ていますが、今年の新刊で面白いなと思ったのは

○「永遠の球児たち ―甲子園の光と影―」(竹書房)
Eiennokyuji

です。

完全試合まであと一人でデッドボールを与えたピッチャーの今。
松井秀喜を五打席連続敬遠したピッチャーの今。
「義足の三塁手」としてメディアから過剰に偏った報道をされた選手の今。
松坂大輔と同じぐらいの話題を振りまきながら、プロでは大成できなかった選手の今。

「あの人は今」だけですまない、濃密な人生の記録がそこにはあります。
高校野球は、間違いなく人生を変えるイベントであるのだなと再確認します。

見方を変えると、高校野球とは「いかに負けていくか」を表現する舞台でもあります。
なにしろ、何千校、何万人という高校球児たちは、ほんのただ一校を除いたすべてのチームが敗北を味わうわけですから。
それは長い人生においていかに負けを乗り越えていくか、あるいは消化していくかという、青年が大人になるための通過儀礼の役目を果たしているのかもしれません。


(H)

お休みのご案内

8/13(日)、/14(月)の両日はお休みとさせていただきます。

ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

August 05, 2006

2006、夏、コミックあれこれ。

今日発売のスタジオボイス最新号はコミック特集です。

Studiovoice9

http://www.infaspub.co.jp/studio-voice/sv.html

表紙は『デトロイト・メタル・シティ』のクラウザーさんですね。
レジに立っていると平台の方から「SATSUGAIせよ!」という声が聞こえてくるようで、非常にイヤな気分です。
「デトロイト~」は極めて偏ったセンスのギャグマンガ(?)ですが、店頭では発売以降ずっと売れ続けております。
これも近いうちにアニメかドラマになるんだろうなあ。

さて、コミック界の21世紀旗手となりつつある作家・浅野いにおの新刊が発売になりました。

○「虹ヶ原ホログラフ」浅野いにお(太田出版)
Nijigatani

こんな作品はもう描けないと思います――浅野いにお

著者初の長編連載作品。雑誌『クイック・ジャパン』の人気連載に、60ページの大幅描き下ろしを加え、待望の単行本化!!

「虹ヶ原」という土地を舞台に、小学校の同級生たちの過去と今が交差する――。子どもたちのうわさ、トンネルの中の怪物、家族の秘密、蝶の異常発生……あらゆる糸が絡み合い織り成す、新世紀黙示録。

非常に幻想的な作品です。
そして、抽象的な作品です。
ただ、理解できない世界ではない。
むしろ、誰でも子供の頃に体験したであろう記憶がフッと呼び覚まされる、そんな物語です。

若者ゆえの痛みと悲しみをリアルな視線で描いた前作までの「浅野いにお」の流れとは、ちょっと路線が変わった内容です。
ぜひお試しください。

それにしても太田出版のコミックはいいところ突くなあ、という印象があります。
山本直樹トリビュート特集の「エロティクス」はすごい勢いで売り切れ、追加した分もとてもよく売れています。
ものすごくクセがある作品ですが、「ライチ光クラブ」(古屋兎丸)なんかも面白かったし。
映像化作品で埋まるコミック棚の隅っこに何冊か揃えておくだけでも、ちょっとした異彩を放つラインナップです。

(H)

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