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April 2006

April 30, 2006

脱・新人

もうすぐ本屋のアルバイトを初めて半年になろうとしています。
本屋さんからみれば新米でも、私よりも新人のバイトさんも入り
もはや新人というほど初々しくなくなった今日この頃。
いうなれば「新人」でも「エキスパート」でもない「凡人店員」です。

本や漫画はアルバイトを始める前から好きだったのですが(好きでなければ働かないか・・笑)
働きだしてからは本に触れている時間が長くなっただけに新しく読みたいと思う本が
たくさん出てきて困っています。
お金を稼ぐためにアルバイトをしているのに本や漫画を読みすぎてお金が減っていきます。
ハードカバーの書籍達には「ごめんねまたいつか読むからね」と別れを告げ、もっぱら文庫さんたちの相手をして財政難を乗り越えています。漫画は・・我慢できません。うっかり20巻ぐらいでている漫画とかを買い始めた日には地獄をみます。友達にもバカにされます。
いいんです。本屋の店員には向いてるんだと思って自分を慰めています。笑

そんな日々の葛藤の中で最近読んで面白かった文庫を紹介します。

○「黒と茶の幻想(上・下)」恩田陸(講談社文庫)
Kurotochano1 Kurotochano2


大学時代の友人4人が40歳を前にして久々の再会をする。
そこでY島に旅行に行く話になり後日4人で出発。
その旅行には「美しい謎」をそれぞれが持ち寄って
大自然の中で謎を一つずつ解き明かそうというテーマがあります。
謎について話していくなかでそれぞれが抱えていた心の傷や謎が解き明かされ、
新しい気持ちになりY島を離れるといった話です。(またもや超簡単な解説・・というかこの説明からは面白さを感じれない・・笑)

話の中には色々な究極話がでてきます。「無人島に1枚だけ持っていくならなんのCD?」とか。
その疑問だけでも「無人島でCDは聴けないよ」なんて言いだす人もいるし、
4人の人物像がたくさんの疑問や謎について語り合う形で伝わってきて、
「さすが恩田陸の文才はすごいな」と文学をかじってもいない凡人店員は偉そうに思ったわけです。

人間って妄想大好きですよね(私だけ?)
もしも死ぬ時に頭の中でエンドロールが流れたら・・
登場人物が全員でてきて、この人とは何時間一緒に過ごしたとかランキング出てきてとか(笑)

そんな妄想がすきな人にはぜひオススメしたい本でした。
私の説明じゃわからなかったのならば、読んでみればよいのです。うん。

(W)

April 25, 2006

プロフェッショナルを見る

そんなに熱心にテレビを見るほうじゃあないのですが、最近熱心に見ている番組がひとつだけあります。
NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」(毎週木曜午後10時~)という番組です。
新進気鋭の脳科学者、茂木健一郎さんがキャスターを務め、毎週あらゆる道のプロフェッショナルを一人ゲストに招いてその仕事っぷりを紹介していきます。

ある道のプロは「自信を失くしたらおしまい、失敗をおそれるな」と言い、ある道のプロは「自信を持ってしまったらおしまい、常に失敗を想定しておけ」と言います。
プロ論などといいますが、結局何を以ってしてプロというのかなんて誰にも決められないものだと、この番組を見ていてつくづく思います。
プロの仕事っぷりを見て、感銘を受け真似してみたところで100%うまくいくとは限りません。

ただこの番組に出てくる素晴らしいプロたちの共通点は、みんなそれぞれ大きな挫折を経験してるということです。
挫折から何かを学び、何かを悟り、プロと呼ばれる所以の「こだわり」を手にしました。
とどのつまりは、諦めないこと。

近々「プロフェッショナル仕事の流儀」をまとめた本が出ます。
1、2巻同時発売で、その後も順次続刊されていく予定です。

諦めそうになったとき、開ける本があるというのはいいものです。
即効性があるならなおさらです。

(N)

April 22, 2006

読書という価値

少し前のニュースになりましたが、第三回の本屋大賞が大方の予想通り、リリー・フランキー「東京タワー」(扶桑社)に決まったことで、本好きの間でいろいろ議論が出ているようです。

自分で見たり聞いたりした範囲で言うと、否定派の意見としては「なーんだ」という集計結果に対する失望がほとんどです。もう十分ベストセラーじゃないかよ、と。
それに対して賛成派の意見の大筋は「そういう経過を踏まえて一位になったのだから、それだけ『東京タワー』が素晴らしいってことじゃないか」といったところになると思います。

賛否両論の意見が出てくるというのは、そのムーブメント自体の注目度が非常に高いということなので、そもそも本屋大賞という取り組み自体を応援している私としてはどっちが正しいと安易に結論づけないで、いつまでも喧々諤々やっていてもらった方が結果として賞の価値を上げることにつながると思うので、その議論自体の行く末はどっちでもいいのですが、ひとつ気になったことがありました。


それは否定派の方のブログを読んでるとよく出てくる、
「結局書店員であろうと読んでるのは売れてる本ばっかりだ」とか「メジャーなものしか投票されない」といったコメントです。
書店員であるからにはベストセラーとか名のある作家の本より、マイナーな作品こそを読むべきだ/読んでいてほしい、という意見です。

文面から察するに、真意としては「自分たちが知らない、マイナーな本を読んでいてほしい/教えて欲しい」という感覚だと思うんですが、これが自分にはどうにも違和感があります。


確かに私たち書店員は店で「オススメの本」を選ぶ時にまずベストセラー以外の本の中から選びます。
それは「まだ買ってない人が多い」のと「ベストセラーは黙ってても売れる」からそうしているだけであって、
「どうだ、珍しい本だろう、俺はこんな珍しい本を読んで知ってるんだぜ」
と思ってやってる人はまずいないと思います。


そもそも、

○売れてる本を読んでる人=凡人、
○あまり世に知られていない本を読んでる人=読書家

というような画一的な構図などありえません。
そんなのは「周りと同じ本を買うことは自分の価値を低める」と考えてしまう人の価値観が裏返っただけです。
人間の価値は読む本なんかで決まらないし、珍しい本を買ったからといってその人の価値が上がるわけでもありません。
読書家というのはいろんな本を読んでればすなわち読書家であって、その内容を認知度の高い/低いで分けることには何の意味もないと思います。


おそらく本好きであるがゆえに陥ってしまう思考じゃないかと思うんですが、「マニアックな本を読んでる方が偉い」(あるいはその逆の「みんなが知ってるベストセラーを読んでおいた方が偉い」)的思考が入った文章を目にするたび、「…またか」というため息が出ます。

どっちも偉くないです。
本は本です。

そう思って中井の本屋は今日も働いています。


(H)

April 14, 2006

そんな、時代も、あったねと…


4月もなかばになってくると暖かい日が増え、バイクでの配達もずいぶん気持ちよくできるようになりました。
プロ野球も始まり、テレビ番組も変わり、駅のそばではやたらとテンションの高い大学1年生をチラホラ見るようになり、春だなあと実感する毎日です。
バイクで街を走っていると、同じような風景でいてもところどころちょっとずつ変化しているのが結構わかります。
「テナント募集」と出ていたビルの一階が医者になってたり、駐車場だった場所にマンションができてたり、工事していた道が突然キレイになってたり、また別のところを工事してたり。
そうやって少しずつ街は変わっていくのでしょう。


生活情報センターから最近「新宿の1世紀アーカイブス―写真で甦る新宿100年の軌跡 」という写真集が出ました。
Shinjuku1seiki


その名の通り、明治時代から現在までの100年に渡って新宿近辺の写真が収められた写真集です。
いろいろ見所はあるのですが、やはり昭和30年代~40年代あたりの写真が一番郷愁を誘うような気がします。

この中には40年前の中井駅の駅前写真が3点、収められています。
「構内無断駐車禁止」という看板が見えますが、逆に言えば駐車できるスペースがあるというのが驚きです。。
今は「目白大学」として出ている看板は、「目白学園」になっています。
駅の向こうには今でもある「とり一」が見えます。
もうちょっとこっち側も写してくれれば、40年前の伊野尾書店が見られたのに。
なんとなく今とあまり変わってないような、そうでもないような、微妙な頃合いです。

隣りのページは下落合駅です。
電車の初乗り料金が、10円です。
駅前にある電話ボックスが、とてもなつかしく思えます。
つい10年くらい前までどこにでもあったものですが。
こちらは今とあまり変わってないと、はっきり言える風景です。

さすがに新宿駅周辺はだいぶ変わりましたが、それでもなんとなく面影が残っています。
こうして見ると、街も人間みたいなもんだなと思いました。


いまさらながら、写真というのは味があるものですね。
ケータイでどこでも写真が撮れる今、ときどきは街の風景も収めて、メディアに残してみようかと思います。


(H)

April 07, 2006

Web2.0時代の名刺交換


ウチのような小さい書店でも出版社の人などと酒を飲む機会がたまにはあり、今まではそういうところに行くと

「伊野尾と申します。西武新宿線と大江戸線の中井という、新宿区と中野区の境目にある地味な商店街で…」

と店の地理説明から入っていたのですが、この頃名刺を出すなり

「あ、伊野尾さん。ホームページ見てます!」
「ブログ見てます!」

といった初回先頭打者ホームラン的なファーストコンタクトを受けることがちょこちょこ出てくるようになり、その度に「ああ、それはどうも」といったヘドモドした対応をしております。
実際はこういうブログを実名で書いてる書店(あるいは書店員)が少ないので、ただそれで物珍しいだけだと思うのですが、いかんせん人間目の前に初めて会った人を前にして、

「おたくの店は特徴がないね」
「つまらないブログだね」
「文章が意味不明だね」

と言ってこられる方はまずいないので、必然的に相手の方は誉めざるをえなくなってるんじゃないか、そんな居心地の悪さを感じたりもします。
やっぱり匿名で書いた方が色々いいのかもしれないなー、とも思ったりしますが、もう戻れなくなってしまいました。
あとは本が売れなくなってこんなことをやってる余裕がなくなるか、迂闊な発言をして2ちゃんねるにさらされてボコボコにバッシングメールが来るまでは、チミチミと更新を続けていきたいと思っております。

それにしても、ネット時代になって、「ある分野の中で有名になるまでの過程」が音速的に早くなった気がします。
とそれは同時に、自分の評価を一気に暴落させるスピードでもあるのでしょうが。
そんなことを思いながら、話題のこの本を読みました。

「ウェブ進化論」梅田望夫(ちくま新書)
Webshinkaron

インターネットが登場して一〇年。いま、IT関連コストの劇的な低下=「チープ革命」と技術革新により、ネット社会が地殻変動を起こし、リアル世界との関係にも大きな変化が生じている。ネット参加者の急増とグーグルが牽引する検索技術の進化は、旧来の権威をつきくずし、「知」の世界の秩序を再編成しつつある。そして、ネット上にたまった富の再分配による全く新しい経済圏も生まれてきている。このウェブ時代をどう生きるか。ブログ、ロングテール、Web2.0などの新現象を読み解きながら、大変化の本質をとらえ、変化に創造的・積極的に対処する知恵を説く、待望の書。

「Web2.0」とか「ロングテール」とか、ビジネス雑誌やパソコン雑誌の表紙で見たことがある単語であっても実際はよくわかっていなかったこととか、Googleは凄い凄いと言われながら何が凄いのかちっともわかっていなかったりとか、そういったことが「あーそういうことなのね」と目からウロコが落ちる一冊でした。
「オープンソース」という言葉はわからなくてもウィキペディアなら知ってる、そういう感じでスラスラ読めます。
同時にこれまで長きに渡って「表現」の世界を一手に引き受けてきた出版業界の末端にとっても、いろいろと考えることの多い一冊でした。

これを読んだら棚にある「ザ・サーチ ~グーグルが世界を変えた」ジョン・バッテル(日経BP)も気になってきました。
その上には「インターネットは僕らを幸せにしたか?」(アスペクト)という本もあり、文庫の「グーグル完全活用本 」(三笠書房)は自店ベスト10入りするほどよく売れています。
まだしばらくは、「ネットのことを書籍で勉強」する流れは続きそうな感じです。

(H)

April 01, 2006

痛みを知る、すべての男たちへ。あるいは、すべての痛い男たちへ。

「ボーイズ・オン・ザ・ラン」(小学館ビッグコミック)現在2巻まで発売中、以下続刊
Boysontherun


田西敏行、27歳、ガチャガチャメーカー営業マン。
仕事は、冴えない。毎日も、冴えない。
そんな彼は密かに生活の張り合いにしている、後輩の女の子と職場の飲み会で初めて話す。
自分で送ったメールの内容を後から見て「失敗だっただろうか、嫌われたんじゃないだろうか」と悩んだりしたりしながら、ようやく彼女とのデートにこぎつけた田西。
しかし、恋愛経験と自信の無さからとった行動が、彼に過酷な修羅場をもたらす…。


「電車男」には、そうはなれない。
多くの男たちは、今日も味気ない日常を生きる。
そんな味気ない日常の中にある小さな幸せの芽を、主人公・田西は必死に育てようとする。
しかし育て方がわからない。
ある人は水をやりなさいと言う。
別のある人は水をやりすぎるなと言う。
ある人は日にあてなさいと言う。
別のある人は日にあてすぎると枯れてしまうと言う。

田西のダメ男ぶりは、見ていて悲しくなるほど情けない。
けど、笑えない。
田西の向こう側には、かつての自分自身の姿がダブって見える。

あの時どうして、あんなことを言ってしまったんだろう。
あの時どうして、あんなことをしてしまったんだろう。

パンドラの箱を開けたように、過去の後悔が次々に湧き上がってくる。
箱から最後に出てきたのは希望ではなく、本当は今も情けないままなんだろう、という事実と諦めだ。

「ボーイズ・オン・ザ・ラン」は、そんな私のための物語だ。
そして、そんなあなたのための物語だ。

痛みを知る、すべての男たちへ。あるいは、すべての痛い男たちへ。

(H)

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