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January 2006

January 31, 2006

静謐な世界を


「ローマの休日」「風とともに去りぬ」「カサブランカ」といったかつての名画DVDを扱いはじめました。
価格はすべて500円です。
店頭に出してから飛ぶように売れていますが、やっぱり本屋なので本で飛ぶように売れた方がいいなあという思いも多少ありますが、懐かしい名作揃いなので一度のぞいてみてください。
あと近所のTSUTAYAさん、ごめんなさい。

さて「東京タワー」と「博士の愛した数式」(文庫版)が100万部突破だそうで、おめでとうございます。
「博士の愛した数式」と「白夜行」は入ったそばからなくなっていき品切れしている期間もあったりして、ご迷惑をかけていると思います。
もしよかったら次に入ってくるまでの間にでも、同じく映画化した重松清「疾走」もいい本だと思うので、そちらもどうぞよろしくお願いします。
それにしても先のニ作品以外にも「けものみち」「推理小説」「神はサイコロを振らない」「氷壁」「出雲の阿国」と文庫はドラマ化作品が目白押しです。
それ以外にも映画原作の「オリバー・ツイスト」「ミュンヘン」が結構売れています。
まさかディケンズの本が21世紀になってこれほど売れるとは思いませんでした。
「デビット・コパフィールド(全5巻)」も入れたら売れるんでしょうか。

ライブドア騒動がようやく落ち着いてきたところに牛肉輸入再停止とか一夫多妻おやじとか、なんだかんだで騒がしい毎日です。
少しはそういうところから離れた世界へ行きたい、そういう人にはこんな本をおすすめしたいと思います。

『リンさんの小さな子』フィリップ・クローデル
rinsan


戦争で国を追われ、小さな乳飲み子を抱えたまま難民になった老人の話です。
言葉も通じない、どこだかわからない、今までいた故郷とはまったく違う国に難民として送られてきたリンさん。
ともにキャンプに寝泊りする周りの人間からは冷たい扱いを受け、しかたなく異国の公園であてどなく過ごすうちに、ひとりの男と顔なじみになります。
そうして始まるリンさんの小さな喜びと、やがて二人を襲う悲しみ。
決して明るくない話なのに、読後しばらくはこの本の世界に心をひたらせながら温かな気持ちでいっぱいになれる、そんな不思議な小説です。

新刊ではありません。
去年の秋に出た本です。
でもじわじわと評価の声が出てきています。
こんな時代だからこそ、すすめたい一冊です。

(H)

January 25, 2006

ホリエモン逮捕とその報道について思う

23日月曜日は仕事が早く終わり、家族で夕飯を食べたあとテレビもつけず早めに寝てしまいました。
翌日朝、TVをつけると「ライブドア堀江貴文」のあとがいつもの「社長」ではなく「容疑者」に変わっていたので、そっか逮捕されたかと理解しました。
地検特捜部が動いた以上、遅かれ早かれ逮捕はされると思っていましたがそれにしても早かったなと思いました。

「狙われたホリエモン」とタイトルのついたAERAが売り切れました。
強制捜査以来、燎原火のごとく広がったライブドアバッシングはここにきて頂点を迎えています。
民主党の前原代表はホリエモンを選挙に担いだ自民党の責任を問い質しています。
ライブドアでブログを書いている人がどんどん別のサイトに引っ越しています。

私はライブドアの幹部が今回の証券取引法違反の容疑について語った「違法性の認識はなかったんです、本当に」というコメントの「本当に」のところが気になりました。
あくまで推測にすぎませんが、たぶん今回地検が動き出して初めて「え、それってマズかったの?」という風になったんじゃないかと思ってます。
もちろんアメリカだけではなく世界経済にも影響を及ぼした、エンロンの粉飾決算事件を持ち出すまでもなく、違法性の認識がなかったから情状酌量されるというわけではありません。
ただ、マスコミが言うところの“ライブドアの錬金術”は金融庁も東証も専門家もみんな知っていただろうに、どうしていきなり逮捕なんだろうという戸惑いは酌んでやってもいいんじゃないかと思っています。

なにしろライブドアに強制捜査が入ったその日は、ヒューザーの小島社長の証人喚問と、宮崎勤の最高裁決定が出た日でした。
この1週間、『耐震偽造』に関するニュースは激減しました。
ホリエモン逮捕も自民党にとってマイナスポイントであるとはいえ、深く追求されると本当に困るのはどちらであるかは明白です。
そこの部分の真相はあと何年かしないとわからないでしょうけど。

ホリエモンは多くの中高年に嫌われています。
その怒りのほとんどは「額に汗して働かず、株をいじくったり会社を買収したり派手なことばかりして巨額を手にするなんて許せない、しかもあの年で」という点に集中しているようです。
「金さえあればなんでもできると思っている」という意見もよく聞きます。

では聞きたいのですが、「金さえあれば何でもできる」ように思えてしまう社会を作ったのは誰なんでしょうか。
この「下流社会」とか「希望格差社会」と呼ばれる現代を作ったのは、戦後日本すべての人たちではないんでしょうか。
今「ホリエモン逮捕」にざまあみろと溜飲を下げている、「団塊」の方々はそこにまったく加担しなかったのでしょうか。

たぶん、多くの人が「自分はそうは思わないけど、社会がそういう風になっちゃったんだよ」と言うんじゃないかと思います。
「そういう風になっちゃった社会」で若い人間がなんとかやっていこうとするには、結局金しか指針がなかったということではないんでしょうか。

メディアだって基本は金です。
叩いた方が売れるから、叩くのです。
そのことはしょうがありません。
しかし、「気に食わないから」「嫌いだから」排除しろ、ああせいせいした、この画一的な空気は、中高年層が忌み嫌う2ちゃんねるとよく似ています。

「ホリエモンってなんかムカつくわ。でもまあ、ああいうのも一つの方法なんだろうな」
という意見が生まれない、「好きか嫌いか」「勝ちか負けか」といった二元論に収束するのは、それだけ時代に余裕が無いからなのでしょうか。

ホリエモンバッシングで埋まる新聞の片隅に見つけた、ライブドアと同じベンチャー社長のコメントが忘れられません。
「ライブドアは確かにやり過ぎた。しかし、法の抜け穴を狙わないと、ベンチャーは絶対に大手に勝てない」

なんだか虚脱感と、圧迫感と、諦めが入り混じった今回の事件とその報道。
今日はこの本を買って帰ります。

●「ビミョーな未来をどう生きるか」藤原和博(ちくまプリマー新書)
bimyonamirai


(H)

January 18, 2006

「ギャンブル小説フェア」はじめました

直木賞と芥川賞が発表になりました。

http://www.asahi.com/culture/update/0117/021.html

東野圭吾と絲山秋子、正直「今頃?」というような組み合わせですが、東野圭吾はわりと好きな作家なので素直に「よかったですね」と言いたいところです。
東野氏は昔早稲田のミステリー研究会が主催した講演を聴きにいき、「同級生」という本にサインをしてもらったことがあります。
作家というオーラがほとんど感じられない、日曜日にイトーヨーカドーで買い物してそうなお父さんという感じでした。
でもこれで「超・殺人事件」(新潮社)に書いてたような、文学賞とその選考委員を茶々入れるような作品は書けなくなっちゃうんだろうなあ。

閑話休題。

新年最初のフェアとして、「ギャンブル小説フェア」を始めました。
白川道、阿佐田哲也、森巣博など、ギャンブラー作家中心に集めてみました。
おすすめは現在第三作まで出ている、白川道「病葉(わくらば)流れて」シリーズです。
周りの人間との違和感を抱いていた大学生が次第に博打の世界へと傾いてゆき、大人へと成長していく様を描いた、ギャンブル小説でありながら青春小説の大作です。

wakurabanagarete

さらに宝島社「この文庫がすごい!」にもランクインした阿佐田哲也「ドサ健ばくち地獄」、「アカギ」「カイジ」の福本伸行が初期に描いた異色ギャンブル漫画「銀と金」も並べてあります。
ミステリーとはまったく違う、破滅を背に負った男たちが繰り広げる、読むものをゾクゾクさせる世界をぜひお楽しみください。

(H)

January 14, 2006

気まぐれに置いてみたら


本屋というのは次から次へと新刊が入ってきます。
ウチのような小さな店では入ってこない新刊もかなりの数あるのですが、それでも毎日毎日たくさんの本が入ってきます。
新しい本が入ってくれば当然売れない本や古い本は押し出されていきます。
「この本はまだまだ売れそうだ」となれば売れても注文するのでまた入ってきますが、「この類の本は売れちゃったらそれで完売終了」というものも多くあります。

で、この本も普段なら後者に属する類のムック本なのですが、なんとなく気になって追加したらその分も売れて、以後ずっと平積みしています。

「歴史群像シリーズ81 戦後事件史」
sengojikensi


三億円事件、あさま山荘、地下鉄サリン、神戸連続児童殺傷事件など60の戦後重大事件を扱った本です。

1974年生まれの自分にとって印象深いのは宮崎勤事件と酒鬼薔薇事件ですね。
両方とも事件当時かなりショックで、毎日新聞を読み漁っていたのを覚えています。
あと子供の頃のグリコ森永事件。
しばらくチョコレートを変えなくなりました。

一冊通して見るとまさしく戦後日本史です。
カラーページには「捜査での指紋の採りかた」なんてのが写真入りで詳しく載っているのも面白いところです。


(H)

January 09, 2006

「創(つくる)」を読む


「創(つくる)」2月号の特集は毎年恒例の「出版社徹底研究」です。
出版業界の展望、大手出版社の状況分析と続く記事の最後に、「書店業界の研究」として埼玉県行田市の商店街にある小さな本屋の話が載っています。
商店街全体の沈下による客離れ。欲しい本は入らないのに必要ない本は届く。そのことによって増える返品作業の増加。悪化する資金繰り。
中小書店、それも地方の書店からは底なし沼に足をとられた叫びのような声が耳に入ってきます。
自分の店はたまたま都内の駅前という恵まれた環境にありますが、沼には片足つっこんでいます。
できれば抜きたいと思っていますが、完全に抜くのは無理でしょう。
なるべく両足をとられないように、日々奮闘するだけです。

しかし最近になってわかったことは、たとえ大型書店であっても現場で働く人は別の沼に足をとられているようだ、ということです。
長時間の労働、休みはほとんどなく、収入はごくわずか。
業界の成長性や将来性も暗く、今の収入では家庭を養えるかもわからない。
売上は下がっても課せられるノルマ、増える一方の万引き。
彼らの話からも、明るい未来は見えてきません。

結局多少景気が良さそうなのは、大手出版社、大手取次、大手書店グループの一部幹部のみじゃないか。
そんな気すらしてきますが、他人を責めたところで自分の境遇は変わりません。
なにしろ時代は「下流社会」、たぶん他業界でも似たような話はあることでしょう。

そんなことより、新しい本屋とはどんな本屋なのか。
どんなことをやったらいいのか。
日々それを考えている毎日です。

(H)

January 04, 2006

新年のごあいさつ

2006年を迎えて4日が過ぎました。
あけましておめでとうございます。

本屋というのは年末年始入荷がまったくなく、ようやく今日週刊誌だけ入ってきました。
その分大掃除や書類の整理といった、普通の家と変わらぬ仕事が年末年始は山積みです。
ビジネスというのは家庭から遠く離れたイメージがありますが、商店というのは家庭に近いイメージがありです。
伊野尾書店は変わるべきところは変えつつも、できるだけ商店であり続けたい、そう考えております。

とりあえず新春のうちの限定サービスとして、中学生以下のお子さんにのみ「お年玉サービス」を行っています。
内容は開けてみてのお楽しみです。
ただ、あんまりたいしたものじゃありませんので、過度な期待はご遠慮ください。

今年はもうすぐトリノオリンピックがあり、春にワールドベースボールクラシックがあり、6月にはワールドカップです。
何かとイベント続きの一年になりそうですが、テレビに疲れたら少し本屋にも寄ってみてください。


本年もよろしくお願いいたします。

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