●S60(ショウワシックスティ)チルドレン
あと数年で“昭和”という年号が終わりを告げるなんて思いもよらなかったころ、俺たちは小学生って呼ばれる人種だった
『ああ、あの頃ぁよかったねぇ…』
――なんてマヌケな大人が気楽に言ってくれる、長ーい人生の中で比較的幸せな時代……らしい
ならば少しだけ……
つきあってくれよ
あんなにも無知で……
非力だった時代――
すばらしき
子供の日々って奴――
物語はサクラジマの噴火にたびたび悩まされる南の国「過去島(かこじま)」という地方都市で暮らす音仲晶(おとなかしょう)少年が主人公。
小学校のクラスメイト、兄弟、憧れの先輩、怖い番長。
狭い狭いコミュニティで起こる、小さな出来事。
その小さな出来事を、ひときわ大人びた考え方を持つ晶の視点を通して描かれる。
現在30歳前後の大人たちが子供だったころのアイテムを細かく出すことでノスタルジーの隠し味としつつ、子供社会の持つある種の残酷さや無常さが一つ一つのエピソードに散りばめられています。
個人的に一番好きな「勉強大決戦!」(一巻収録)のあらすじを紹介すると、
晶のクラスメイトの藤倉はいつも勉強しているガリ勉君。
学校が終われば寄り道に誘う晶たちをやんわりと断りながら塾に向かい、テストの前は黙々と勉強。
そこまでしているのに、テストの点数は遊んでばかりの委員長に追いつけない。
来る日も来る日も勉強する藤倉。
テストの直前まで遊び続けまったく勉強などしない委員長。
そして行われたテスト、答案を返す先生は言う。
「今回はすごく悪かった。そんな中、一人だけがんばった子がいます」
そういって先生から満点の答案を返されたのは、藤倉ではなく委員長だった…。
そこで決定的な敗北を喫した藤倉が何を言うか。
読後、胸がきつく詰まります。
最近自分が読んだ中では出色のコミックスです。
昭和60’sに子供時代を過ごしてなくとも、きっと深く心に残る作品になります。
「なーに……学校生活なんて長い人生の中で
ほんのわずかなひととき……らしいよ?
けど……その割には
やたらと、
長く感じるけどなあ……」
(講談社イブニングKC、2巻まで発売中)
(H)