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December 2004

December 29, 2004

2004年を締める

曙がボブ・サップにKOされて日本中に「やっぱりダメだったか」という落胆が広がってからもうすぐ1年、あっという間に年末を迎えてしまいました。
仕事をするようになってから1年は本当に早く感じます。

今年は40℃の猛暑、度重なるクマ出没、台風と大雨による水害、中越大地震と自然災害が非常に多い一年でしたが、最後の最後にインド洋で大変な災害が起きてしまいました。
大地震というのは何十年かに1回はあるという話ですが、人間はわがままなもので、「たのむから俺の生きているあいだはおとなしくしておいてくれよ」と思っていましたが、どうもそれも無理なのかな…と気が滅入る今日この頃です。
それにしても、推測で7万人以上の人がいっぺんに命を奪われた、歴史に残る大惨事であろうにテレビは連日ワイドショー的報道で、違和感を感じます。


とりあえず、気休めみたいなもんですがこんな本を平積みで売っております「サバイバル・ブック」
「大地震が起きたら」は180ページです。

来年も無事に本を売れるよう願います。

今年一年、伊野尾書店をご利用いただいたすべての方に感謝申し上げます。
ありがとうございました。
来年も変わらぬご利用をお待ちいたしております。


店長  伊野尾宏之

December 24, 2004

わからないまま先へは行けない

拉致被害者の遺骨が別人のものと判明してから、北朝鮮(この呼称も向こうからすると蔑称らしいが)への経済制裁をするべきか否か、という議論がかまびすしい。

だが、そもそも経済制裁とは何か?どういう事態を引き起こすのか?ということについてはニュースなどでほとんど説明がない。

あまり、というかほとんどニュースに取り上げられなかったが日本は昨年ミャンマー(ビルマ)に経済制裁を発動している。
具体的には新規ODAの凍結だが、これは民主化運動を進めるアウンサン・スーチー女史をミャンマー政府が拘束し軟禁状態に置いたことに欧米諸国が反発、ついには送金停止など経済制裁に打って出たことに日本政府もお付き合いしたという側面と、以前から「国民の血税を外国に無駄遣いするのはいかがなものか」という批判が一部メディアであったという二つの側面がある。
(日本はその直前にミャンマーに対して2700億円の債務放棄をしていた)

それでミャンマーはどうなったかというと、これがよくわからない。
2003年の夏以降ミャンマー政府は経済動向を発表していない。
ミャンマー国民の生活水準が急激に落ちた、という話も伝わってこない。
情報が伝わってこないから内部では特に変わりはない、というわけではない。
ひょっとしたら大変な変化が起きているのかもしれない。

実際のところ、どれくらい影響があったのかハッキリしない。
それが昨年「多くの先進国」が「アジアの小さな軍国」に行った経済制裁だった。


マスメディアはお気楽に聞く。
「あなたは北朝鮮への経済制裁に賛成ですか?反対ですか?」

振り上げた拳がどういう結果を招くかわからないのに、決断を迫られたくはない。


(H)


December 20, 2004

●レディ・ジョーカー

ladyjoker

人質は350万キロリットルのビールだ―業界のガリバー・日之出麦酒を狙った未曾有の企業テロは、なぜ起こったか。男たちを呑み込む闇社会の凄絶な営みと暴力を描いて、いま、人間存在の深淵を覗く、前人未到の物語が始まる。


ここ5年くらい、「今まで読んだ本の中で何が面白かった?」と聞かれた時に答えているのがこの本。
社会派ミステリーと区分けされるケースが多く、事実何年か前の「このミステリーがすごい!」で1位をとったりしていたが、読み終わったあとに自分の立ち位置がモヤモヤと揺らいでくるような異物感と救いがたい現実に対しての疲れがどっと出てくるあたり、外国の古典文学に通じる雰囲気がある。

この小説は大手ビール会社の社長誘拐事件を軸として話が進んでいくが、やがて事件は添え物でしかなくなり、代わりに浮かび上がってくるのが組織の不条理さ、人間の理不尽さ、救いがたい社会全体のシステムだったりする。

高村薫の硬質な文体は決して読みやすいとは言えないが、一度その世界に入ると重しを乗せられているような重厚さがあり、ページをめくる手を止まらなくする。
気がつくと夜中の2時、3時になってたりする。

ちなみに今現在書店に並んでいるオビには「感動のベストセラー、ついに映画化」とあるが、少なくともよく言われる「泣ける」という意味での感動はほとんどないと言っていいと思う。
そういう類の話じゃないし。
心強く揺り動かされる、という意味でならまだわかるが。
オビに使うなら初版の頃の
「犯罪の愉楽に発狂する男たちの臓腑/合田刑事は地獄を見た/救済は、あるか」
というコピーの方がいいと思うんだけど。

この本は「最近面白い本にあたっていないな」という人に読んで欲しい。
特に「最近の流行の本を何冊か読んでみたけど、なんかどれも…」という人にぜひ薦めたい。
きっと他の小説とは違うので。
自分はこの本を読んでから、それまで手にもしなかった社会や経済の本が少し気になるようになった。
それまで興味をもたなかった範囲に興味を持たせてくれるようになると思う。


ところで映画は面白いんでしょうか。
公式ホームページはかっこいいけど。

http://www.ladyjoker.jp/enter.html

(H)

December 11, 2004

●恋文日和

koibumi

 恋文。
 なんとレトロな響き。
 今どき「告っちゃえ」とメールを送り、その数秒後には返事が返ってくる世の中で、この手紙を使ったやりとりは、じれったくもあります。
 が、そのじれったさがいい。
 返事はくるのか。内容は何なのか。
 わくわく・どきどき・そわそわ……しながら待つ時間は、不安がりつつも楽しいものなのでしょう。

 手紙、FAX、メール、時には眼差しですら、想いを伝えたい心は同じ。
 甘酸っぱい世界にひたってみませんか。


(k)

December 08, 2004

●大奥の謎

ookunonazo.jpg

江戸三百年の中枢・江戸城。その最深部にある大奥は、謎めく「女の園」であった。江戸誕生から、お家騒動、房事の制度、武士の収支、怪事件、城明け渡しまで、大奥を通して描いた江戸裏面史。大奥女人肖像画・写真収録。


初版が出たのは一年以上前の文庫。
ドラマに合わせて置いたらよく売れます。
私は「大奥」の定義をいまだ知りません。

ドロドロつながりで言うと、昼メロの「愛のソレア」も人気だそうで。
けど「牡丹と薔薇」の時もそんなに本は売れなかった。
ここのところ、「砂の器」「白い巨塔」「人間の証明」、最近では「黒革の手帖」と人気になったドラマはみな昔の名作が原作のものばかりで、そうでないオリジナルのドラマ原作本が売れるというのは少ない。
貴公子サマが微笑んだ例のドラマは別にして。

「黒革の手帖」にひっかけて「悪女が主人公の小説フェア」とかやったら面白いかも。
まあ悪女の定義もいろいろみたいですが。


(H)

December 06, 2004

売れる雑誌とそうでない雑誌

今年も大晦日に格闘技イベントが二つだとか。
いつのまにか大晦日の恒例行事として定着している。
けれどこれはいわゆる“格闘技ブーム”とは違う気がする。
だって「格闘技通信」も「ゴング格闘技」も4,5年前と比べてそれほど売り上げ増えてないし。

メジャーリーグもイチローやW松井の活躍でメディアに出る機会は多いが、雑誌の売り上げはあまりよくない。
メジャーも格闘技もテレビでやってれば見るけど、本を買ってまで…という人が多いのだろう。
事実、この2種の雑誌は立ち読みは多いが買われることが少ない。

本屋からして本当にブームになったと思うのは海外サッカー。
98年のフランスワールドカップのあとからずいぶん専門誌が増え、どれもそれなりに売り上げを伸ばしている。
立ち読みも多いが、読み終わると別の海外サッカー誌をサッと買う人も多い。
ということはお金と場所さえあればもっと買いたいのだろう。


「何が売れるか」ということを考えるときに「何が人気あるのか」と考えることは足かせになるのかもしれない。
「どういう雑誌が欲しいですか?」と聞かれて「こういう雑誌」と答えられる人は少ない。
多くの人は現物を提示されて「ああこういうのを待ってたんだ」となる。
出版社にはニーズはあれどまったくスポットの当たってない場所はどこか、懸命に探して欲しい。
書店で協力できることはします。


それにしても曙vsホイス・グレイシーのバーリトゥードが見られる時代になるとは思わなかった。
長生きしてみるもんです。


(H)

December 01, 2004

●弟を殺した彼と、僕。

ototowokorosita.jpg

「半田保険金殺人事件」で弟を殺された著者が、彷徨する魂の救済を綴った壮大なノンフィクション!苦悩する魂にあふれる愛と涙。真夏の拘置所。アクリル板を挟んで向き合った加害者と、被害者の兄。10年ぶりの邂逅は、さまよう二つの魂に“光”を投げかけた…。

凶悪、卑劣な犯罪を伝えるニュースが後を絶たない。
先日も奈良で子どもが犠牲になった痛ましい事件が起きた。
このような事件が起きると、メディアはことさら「被害者の悲しみ」を写そうとする。
時にそれがさらなる被害者の痛みになったとしても、報道の自由とか知る権利といった盾を押し付けて、かまわずえぐり出す。
同時に加害者への憎悪を集めるような報道をする。
こんな悪い奴は死刑にしてしまえ、という情緒的な方向になるよう導く。
そうしてこの国の犯罪報道は長年成り立っている。

この本の著者である原田正治さんは、トラック運転手の弟を職場の上司に保険金目的で殺された。
事故は交通事故に見せかけていたため、当初事故死と知らされていた原田さんは一年後に警察の捜査に
よって実は計画的な殺害であったことを知らされる。
そこからは犯人を極限まで怨嗟し、重度のストレスで仕事は手につかず、夜の街で酒に溺れるようになり、家族とも不和になっていく。
しかし年月を経るに従い、大事なことは犯人を極刑にすることではなく、自分や家族をを少しでも事件前の地点に戻せるよう救済していくことだというように考えが変っていく。
やがて原田さんは弟を殺した犯人と面会を望むようになり、死刑の廃止運動にも関わっていく。

原田さんは自分の抱いたイメージだと称して、こんな話をしている。

弟と自分たち家族が崖から落とされて、弟は死に家族は傷だらけになっている。
そこに崖の上から司法関係者・マスコミ・世間の人々が「かわいそうに、痛いだろうに」と覗き込んでいる。
そして「こいつらも今落としてやるからな、それで気が済むだろう」と犯人とその家族を突き落とそうとしている。
初めのうちは自分たちと同じ目に遭わせたいと考えた原田さんは、次第にそうではなく自分らを崖の上の元いた地点に引き上げて欲しいと願う。
しかし崖の上は何もなかったように、平和なときが流れている。
傷ついた身体で痛みをこらえ、原田さんは必死に這い上がらろうとする…。

この本は非常にレアケースを描いた内容だ。
すべての犯罪被害者がこのような考え方を持つことはできないだろう。
だが、明日には自分も犯罪被害者になり、マスコミに追い回されるかもしれない社会を私たちは生きている。
少しでも犯罪被害者が救済される方法論を示した一冊として、この本の内容は重い。


(H)

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