May 20, 2012

ずっと後ろに通り過ぎてしまった記憶の中に

高校三年生の冬に、私ははじめてアルバイトをした。
自宅の最寄駅から電車で2つ目の駅を降り、坂道を5分ほど上がったところにあったファミレスで週に3回、白いキッチンコートに着替え、厨房でドリアやサラダやその他いろんな料理を作っていた。

もともと、高校のクラスメイトが「一緒にバイトしねえ?」と言ってこなかったら、自分はここにいなかった。
二人で面接を受けに行き、先に終わった自分が後から出てきた彼に「俺キッチンになっちゃったよ。おまえは?」と聞くと、彼は「ああ、ここ稼げなそうだから俺はやめたわ」と何の気なしに言った。
この寄る辺ない気持ちを「梯子を外される」と表現すると知るのはずっと後のことだ。

初めてのアルバイトは初めての社会経験だ。
職場に入る際の挨拶の仕方を教わる。
タイムカードの切り方を教わる。
同じ時期に入ったアルバイトであっても、彼にはできるのに自分にはできないことがあるというのを教わる。
同じ失敗をしても「何してんだおめえはー!」と言われる自分と「それは間違えやすいから気を付けてね」としか言われない女の子がいることを教わる。

職場には同年代の女の子がたくさんいた。
女子といえば30歳くらいの音楽の先生と売店のおばちゃんしか知らない男子校に中高合わせて6年間通っていた自分にとって、オレンジの制服に身を包んだ10代後半から20代前半の彼女たちは、直視できないほどまぶしかった。
直視できないから下を向いていた。
うつむいてはいるけど、意識は始終そっちに向かっている。
すでに彼女らと仲良くしゃべっている自分より年下の同僚がいるのに、自分はどうやって彼女らとコミュニケートしていいかがわからない。
なにしろこっちは与えられた仕事もちゃんとできないで怒られてばかりいるのだ。
職場のヒエラルキーの中で最底辺にいるという自覚が、外部に対して壁を作る。
グズグズになった小さなプライドを守るため、本当はものすごく彼女たちを意識しているのに、さも眼中にないような態度を取っていた。

そんなある日、休憩室で一人まかないのクラブハウスサンドを食べていると、社内用語でフロアーと呼ばれる、いわゆるウェイトレスのタナカさんが同じく休憩で入ってきた。
タナカさんは21だったか22歳のアルバイトだったが経歴が長いのか、フロアー部門のチーフのような仕事を任されていた。
それほど背は高くなく、むしろ低い方で、特に太ってはいないが際立ってやせてもいない体型で、卵型の輪郭に細い眼をしており、ピシパシした普段の仕事ぶりと相まって若干キツそうな印象を持っていた。

6人座れる休憩所のテーブルの端で黙々とクラブハウスサンドを食べている私の対角線上の席にタナカさんは座り、こちらをチラッと見てからは資料のようなものに目を落として黙ってコーヒーを飲んでいた。

すると突然「サンドイッチまずいの?」という声がした。
タナカさんの声だ。
顔をあげると、タナカさんがこっちを見ていた。
「…いや、まずくはないです」
「そう?なんかすごい怖い顔して食べてるから、よっぽどまずいのかと思った」
「そういうわけではないです」
「いっつもそういう顔して食べるの?」
「いや、違います」
「じゃあ普通に食べたら」

タナカさんはそう言うと煙草に火をつけた。
煙草吸うんだ、と思った。
煙草を吸う女の人を初めて見た。
タナカさんはそれ以上は自分に何かを話しかけることもなく、黙って煙草を右手にはさみながら資料を見続け、たまにコーヒーを口に運び、そのうち「お先」とだけ言って休憩室を出て行ってしまった。

私はずっと、女子の前では「引き締まった表情」を心掛けているつもりだった。
男というのはヘラヘラしているより、引き締まった顔をしている方がカッコいいものだと思っていた。
けれど、私が「引き締まった表情」と考えていたものは、単に「不機嫌な顔」にしか映っていないことを、その日私は教わった。
そっか、俺そんな怖い顔してるのか、と考えるのは失意だった。
そして自分がワケのわからないカッコのつけ方をしていたことを見透かされた気がして恥ずかしかった。

だが、翌日からバイトに行ってタナカさんに会うと「イノオくんは今日もクラブハウスでしょ?」って言われるようになった。
バイトに行くたびに言われた。
そのたびに私は「いや、別に毎回あればかり食べてるわけじゃないです」と馬鹿正直な答弁を繰り返していたが、あまり何回も言われるので他の人が「なんで伊野尾はクラブハウスサンドなの?」と聞かれたりするようになった。
それがこちらはとても嫌で、「この人なんで人前で言うんだろう」「やめてくれないかな」と思っていたが、タナカさんはなんか面白そうだった。
それをきっかけに私は誰かといるときに「引き締まった表情」を作るのをやめて、なるべく不機嫌に見えないように、不機嫌に見えないように、と心がけるようになった。
私がアルバイトの女の子たちと普通に話せるようになったのは、それからしばらくたってのことだ。

「マスタード・チョコレート」は人とかかわることが苦手で、いつも孤独感を抱える女子高校生・つぐみが周囲の人たちの関わり合いによって少しずつ変わっていく物語だ。
明確な意思をもってつぐみに関わる人、なんとなく流れでつぐみに関わる人、それほど数は多くないが少なくもない人たちに関わられ、関わっていく中で、つぐみは人生の喜びを少しずつ得ていく。

きっと誰でもそうだ。
誰でも、自分を変えてくれた人がいる。
ただそのきっかけは小さく、あまりにささいなことだから、人はみな忘れてしまう。

もしあのとき休憩室でタナカさんが話しかけてくれなかったら、今も私は下を向いたままだったかもしれない。
意識していないようで誰よりも意識しているねじれた自己顕示欲を持て余して、「話しかけるな」オーラを出し続け、他人とうまく関われなかったかもしれない。

だから私はタナカさんに感謝してもしきれない。

タナカさんは私があまり怒られなくなってきた頃、ひっそりといなくなっていた。
異動だったのかもしれないし、退職だったのかもしれない。
気がついたらいなくなっていた。

 

「あのときのタナカさんの休憩室の一言があるから今の自分があります」と御礼をキチンと伝えられぬまま、タナカさんと会う機会はなくなってしまった。

もしかしたら今はもうこういう時代なんだから、どっかしら連絡先を調べて言う方法があるかもしれない。

そう言う人もいるかもしれない。

だが、それはできないのだ。

私は、18歳の私を救ってくれた人の名前が、はたしてタナカだったか、スズキだったか、はたして違う名前だったのか、今もって正確に思い出せないのだから。

 

○「マスタード・チョコレート」冬川智子(イースト・プレス)

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May 12, 2012

5月は君の嘘

前回、「今月の大きなイベントは5/22スカイツリー開業」なんてどこの経済新聞だみたいなことを書いてしまいましたがよく考えたらその前日5/21には金冠日蝕というこれまた100年レベルの一大イベントがありました。
書店には2月ぐらいから日食メガネ付きのムックや書籍がわらわら送られてきて「はえーよ!多いよ!」とか思ってたら4月に入ったあたりからわらわら売れ始め、すっかり在庫が少なくなってしまいました。
日食メガネは週明けに最後の分が入ります。
肉眼で見るのはホント危険らしいんで、気をつけましょう。
http://www.kinkan2012.jp/observation-j.shtml

ちなみに3年ほど前の本屋大賞受賞作「天地明察」は今月文庫化されるんですが、それは算学者・渋川春海が日食の起こる日を予報するという話なのでわざわざ日食の直前の5/18に発売されるということなんですが…多少はそのへんのことが認知されるでしょうか。

いま見たら秋の映画化にむけて結構なキャンペーンやってるんですね。
http://www.tenchi-meisatsu.jp/campaign/vol01/index.html

なんとなくですが、結構な商品のわりにこのクイズそんなに応募総数が集まってないような気がするので案外いいものが当たるかも…ってこのクイズ4つ当てるの難しくないか。
なかなかこの4つの場所で金冠日蝕か部分日食か予想するの難しいぞ。

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★スタッフKは「タイトル見てドキッとしました」と言ってましたが

○「遅刻をメールで伝えるバカ 「しゃべりのプロ」が教えるコミュニケーションプアから抜け出す秘術」梶原しげる(廣済堂出版)

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伊野尾書店は基本的に遅刻の連絡は店長の携帯にメール連絡すればそれでOKです。
いや、電話でもいいんですけれど、てかもともとは「電話で報告するように」だったんですけど、忙しい時に電話かかってきたりしてやっと出てそんな内容だと「なんだよ」ってなるし、かける方も電車乗ってたりすると結構負担だし。
そもそも双方の話し合いや詰め合いが必要な要件ならメールじゃなくて電話で連絡してもらいたいですが、通達事項的な一方通行で済む要件ならメールでいいや、と。

まあ実はこのタイトルは2ちゃんねる語で言う「釣り」であって、あくまで書かれてる内容は「どうしたら互いが気持のよいコミュニケーションをとれるか」っていう実務的な方法論なんですけれど。
コミュニケーションは互いが同じだと思っているのに実は結構ずれてたりする価値観の溝を埋めて行く作業だなあとつくづく思い知らされます。

★勢いにのってビジネス本をもう一丁

○「図解まるわかりビジネス力をグンと上げる整理術の基本」(新星出版社)

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こんまりさんの「人生がときめく片づけの魔法」(サンマーク出版)が大ベストセラーになってそういう本が一時期乱発して出てましたが、そんな様相の最中にひっそりと出ていた本。
あまり色気のないシンプルな装丁ですが、読んでるとこれはいいな、と。
自分でこの手の本はほとんど買わないんですが、この本は役に立ちました。

なにしろ整理と名がつくものは「モノの整理」「書類の整理」から「時間の整理」「思考の整理」まで、実に多岐にわたって図解されてます。

たとえば

「整理の基本は
 1 使ったら戻す
 2 雑多なものを分ける
 3 いらないものを捨てる」(第一章「整理上手になる」)

の具体的なやり方から始まって、

「仕事の山は
 1 今やらなければならない仕事 →緊急/緊急でないかを分ける
 2 後回しにしてもいい仕事 →締め切りを確認する
 3 他人に任せられる仕事 →締め切りを伝えて割り振り、随時進行状況をチェックする」(第四章「時間の整理術」)

といった仕事のやり方まで。

特にこの第四章「時間の整理術」はすごく「あー…」となりました。

「仕事をしていると突然発生する『すきま時間』(=予定のキャンセルや変更で生まれた時間、移動時間など)にやれること、やっておきたいを日ごろから決めておく」

というのがあって、

・書類整理
・メール返信
・いずれはやらねばならない調べ物

などが例として挙げられてます。
この辺なんかはなるほどなあーと思いました。いや、単純にこういう本読みつけないんで、ビジネス書では割合基本的なことなのかもしれませんが。

★今月の雑誌

○dancyu(ダンチュウ) 6月号
 「人生最後の一食。1000円で何を食べるか?」

Dancyu

昔、「ニュースステーション」の中で久米宏がいろんな著名人に「人生最後の食事に何を食べたいか?」という連続インタビューをやってましたけど、こっちは1000円なんだ。
まあ要は「至高の1000円グルメ」特集なわけで、角田光代さんが紹介している荻窪だかの定食屋がいいなあと思いました。

最後。
最後ねえ。
自分で作ったカレーがいいかな。
もしくは落合駅そばの「天鳳」のラーメン。最後だから全部のせで。
まあ、きっと何食べても「あれがよかったかな~」って悩むんだろうから何でもいいっちゃいいんでしょうが。

(H)

April 30, 2012

女よGOMEN GOMEN

ぼやぼやしているうちにゴールデンウィークになってしまいましたがみなさんいかがお過ごしでしょうか。
今年の5月は連休どうこうより5月22日に東京スカイツリー開業というイベントが用意されており各書店店頭ではあきらかに作り過ぎだろうと思われるぐらいスカイツリー関連本が山のように並んでおります。
えー、正直ガイドブック以外そんな売れておりません。
要するにみんな「スカイツリーがどうできたか」よりも「スカイツリーの周りでどんな美味いものが食べられるか」にしか興味ないんだね…。いやわかるけどさ。

たしか「BUBKA」だったと思いますが、みうらじゅんがいろんな物事を適当に予想するコーナーがあって、スカイツリー開業の日の予想で

「開業の瞬間、入り口で『押さないでください!走らないでください!』と絶叫する職員にタックルをかまして搭乗エレベーターに一番乗りしたものの、よく考えるとエレベーターで一番先に乗ると展望台に着いたあと出るのが一番あとになることに気づいてなんとか一番最後に乗り込もうと変な譲り合いを始めて収集つかなくなる」

がメチャクチャ笑いました。
はたして当日どんなドラマが待ち構えているのでしょうか。
あと、絶対に「あの、ツカイスリーってのができたからよお」みたいな豪快な間違え方するオヤジいるんだろうなあ。日本のあちこちで。

 

   
★待ってました

週刊朝日で連載されていた北原みのりさんの「木嶋佳苗100日裁判傍聴記」が単行本になりました。

○「毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記」北原みのり(朝日新聞出版)

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この連載が続いているあいだ、「週刊朝日」を4週に3週くらいは購読していて、挙句北原さんの手記が載った「婦人公論」までつまみ食いしてたんでだいたいのところは読んでるんですが、あらためて読み返すと「何なんだろうなあ」という想いばかりが沸き出てなりません。
「なんなんだろうなあ。男と女って」とか、「なんなんだろうなあ、人生って」とか。

この事件は木嶋容疑者が最後に会った男性が不審死している事例が3例もあって殺人容疑が裁かれてるわけですが、どうも皆不審死の部分にあまり興味を持っていない。
持っているのは木嶋さんの生き方というか、「嘘をつきながら何人もの男性に援助してもらい続けることで人生を成り立たせている女性が美人でなかった」という部分であって。
そもそも結婚詐欺って、どっからアウトで、どこまでだったらセーフなんですかね。
結局当事者同士が怒りの感情を起こすことなく終わってしまえば、何百万渡そうが何千万渡そうがそれだけでは犯罪ではないわけで。
木嶋さんに関わった男性の中でとりわけ印象深いのは婚活サイトで知り合う50代男性のB氏で、メールと電話のやりとりで「学費を援助してほしい」と言われるものの130万円という金額に悩んで結局払わず、しかしあとになって「やっぱり払えばよかった」と振りかえる男性です。
誰がどう見ても詐欺だとしても、本人からすると「彼女を救えるのは俺しかいなかったのかも」という後悔になっていたりする。
やっぱりそこが法律とか善悪論で裁けない人間の部分なんだろうなあ、と思います。

仮に3人の男性が死んでいなかったら今も木嶋さんは池袋にいて、本好きだったそうだから(でないとあれだけの手記もメールも書けないよね)リブロとかジュンク堂で買い物をしているのかもしれない。そう考えると感慨深い。
というか、表に出ないだけで同じようなことをしている女性(あるいは男性)は結構いるのかもしれない。
きっと、今日も私たちの知らないいろんなところでいろんな「はじめまして」という男女の出会いが起きていて、その中の何組かは確実に人生を変える出会いになってるんでしょう。

そもそもこういうことを考えるようになったきっかけが、去年読んだ「困ってるひと」「秋葉原連続殺人事件」でした。
この二つの本には私の中で共通項があって、それは「結局彼女かよ」「結局彼氏かよ」で。

読んだ人も多いと思うので多少ネタバレ気味に書きますが、「困ってるひと」は難病に苦しむ26歳女性の手記です。
「重い話を明るい筆致で書いてる」ということで話題になりましたが、読んでるとユーモアが交じった明るい筆致ではあってもそこかしこに他罰的というか、攻撃的な面がちらちら見えました。
それは病院の医者や看護士に対してであったり、家族や友人に対してであったり、笑いに包みながら常に「なんで理解してくれないのよ!」「なんで上手くいかないのよ!」という苛立ちの感情が見えた箇所が多かったのです。
それが一変するのが病院内で彼氏ができる場面です。
相手も障害者なので、できることも限られれば二人で何かすることで増える負担も少なくない。
にも関わらず、著者の大野さんからはその場面以降「生きていればいいことある」というようなポジティブな思考が目立ち、攻撃的な思考がグッと減少します。

その逆が「秋葉原連続殺人事件」で、加藤智大がああいった犯罪を犯した背景には派遣工の環境とか虐待を受けてきた出自とかいろんな問題を含めつつも、最大の引き金は「心の荷物を降ろせる人を作れなかった」という点だったと思います。
最後の方は自分自身の心と身体すら制御できていなかったような状態でしたが、その状態ですらガンショップの女性店員と話して「人と話すっていいね」とネットに書いていました。

なので「『結局彼女』…なんかなあ?」というのは最近の自分にとって大きなテーマです。
そのこと以外に、精神の安定をもたらすものというのは何かあるのか、あるとすればどんなものなのか、長いスパンで探っていきたいと思います。

 

★そうすると

こういう本もまた気になってくるわけで。

○「母の遺産 新聞小説」水村美苗(中央公論新社)

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自分の欲望のままに好き勝手に生きつつ最後は娘である自分にすが​りつく、一人で暮らせなくなった母親の世話に疲れてく一方で何度​も浮気を繰り返す夫との関係に悩む女の話。
五十代の女、という人生で一番重たい荷物を背負わされる時間をこれでもか、というぐらいに描きます。
年老いてワガママになっていく母との関係、介護問題、相続、微妙な距離感のきょうだい、愛情の亡くなったダンナ、そのダンナの浮気、老後…。
重たいです。
正直めんどくさいです。
けど、こういう時間は確実に我々にもやってくるわけで。

「ねえママ、いつになったら死んでくれるの?」

というオビ文にはドキッとしました。

 

 
★というわけで

最後はこうなるんでしょうか。

○「だから女はめんどくさい」安彦麻理絵(ベストセラーズ)

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なんだか三題噺みたいなオチになってしまいましたが。
けどこれ面白かったな。
冒頭で出てくる「ねえ!私と仕事、どっちが大事なのよ!」という永遠の難問に対しての正しい答えは目からウロコが500枚くらい落ちました。
この手の質問になんて答えるかという問いはyahoo知恵袋や発言小町その他で膨大に見かけますが、初めて「うわこれが正解か!」という答えを目にした気がしますね。ポアンカレ予想並みの大発見です。男は全員読んだ方がいいと思います。

そいやポアンカレ予想の本も文庫になってましたね。

○「完全なる証明 100万ドルを拒否した天才数学者」マーシャ・ガッセン/著 青木薫/訳 (文春文庫)

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いや読みたい本が多くて楽しいな。売ってるんだけど。

(H)

April 18, 2012

Good-bye青春、退屈なんて落ち込んだ時の言い訳だったんだね

という歌をロン毛だった頃の長渕剛が歌ってましたが、そんな日常の退屈さを持て余している方にひたすら刺激を与えるような絶妙の娯楽作品を紹介するコーナー、題して「俺の愛した絶頂エンタメ本MAX」のお時間がやってまいりました。

もちろんタイトルは「散歩の達人」の好評連載「俺の愛した国道の味 絶頂チェーン店MAX」のパクリであります。
村瀬さん無断借用してすみません。

さて記念すべき第1回の作品はこちら。

○「神さまの言うとおり(1~3巻)」藤村緋二・画 金城宗幸・原作(講談社マガジンコミック)

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さあすごいですよこれは。
1巻から説明しましょう。

主人公の瞬くんは高校2年生。平凡な男子高校生です。
瞬くんが午後の教室で退屈な授業を受けていると、退屈な授業を教えている先生の顔がいきなり破裂します。いやするんだって。
まあパニックになりますわねそりゃ。
先生が突然顔面をパーンと破裂させて血を噴き出させて死んだら。
そのパニックになった教室の教壇にいつのまにか鎮座しているダルマ。
ダルマがしゃべりだします。
「だーるーまーさーんがーこーろーんーだっ!」
そのとき動いている生徒が次々スパーン!と破裂して血を流して死んでいきます(笑)。
異様なスピードで状況を分析した委員長が叫びます。
「動くなー!!これ、『ダルマさんが転んだ』じゃないのかコレ!動いたら死ぬぞー!!
そしてそのダルマさんの後ろ側にはボタンがあって、『おしたなら終わり』。

というわけで1巻は突然「死の『ダルマさんが転んだ』ゲーム」が始まります。
いやー「リアル鬼ごっこ」「王様ゲーム」と来て次はこう来たかー、と感心していると、これ以降すべて「命懸けの風雲たけし城」のような、ヤケに肉体的にハードすぎるイベントが次々瞬くんの元に降りかかってきます。

「一瞬で人を殺す巨大ネコの首に鈴をつけたら脱出可能ゲーム」
「やはり一瞬で人を殺傷するコケシによる“かごめかごめ”、後ろの正面誰か当てないと即死亡ゲーム」
「いつ始まるかわからない・無制限サバイバル綱引き」

とかいろいろ出てくるわけですが、個人的には2巻に出てくる

「触れたら一瞬で身体が切れるロープ(?)で大縄跳び100回飛ばないと逃げられないゲーム」

が素晴らしいなと思いました。
いや、これポイントはこれ「4人一組で100回飛ぶ」ってことなのよ。
誰か一人ひっかかったら終わり、っていう(笑)。

かの名番組「ウッチャンナンチャンのこれができたら100万円」を思い出しますね。出さねえか。
たぶん4巻は電流イライラ棒をクリアしないと死ぬことになるんだと思います。

お次はこちら。

○「さんくすないと」根本起男(エイ出版社)

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ガイド本とか実用系ムック本を多数発行しているエイ出版社が昨年からゴールデン・エレファント賞というエンターテイメント小説のブランドを作るようになったのですが、そのゴールデン・エレファント賞の中の1作。

とあるデパートで社員やその家族等から12人の女性を深夜のデパ地下に集め、フロアーにあふれる惣菜・ケーキなどの高級グルメの数々を食べ放題にさせるイベント、それが「サンクスナイト」。
そんなリアル「TVチャンピオン」のようなイベントに招かれて12人の女性たちがデパ地下グルメを堪能しまくってると突然倒れてうめきだす女性。血を吐く女性。「おい救急車!」と言うもケータイの電波がつながらない。外に出る出口は何者かの手によってすべて閉められている。気がつけば防火シャッターも降りている。
完全に閉じ込められた地下に響く何者かのアナウンス。
「このフロアの食材に神経毒を撒いた。1時間ほどで死に至る。解毒剤は、このフロアにある食べ物のどこかに入っている。さあ、食べて食べて、食べまくってください」(※本文はもっと長いので要約しました)

というわけで参加者は解毒剤の入った食品を探してデパ地下を次から次に食べ続ける…という、とてもさわやなかストーリーです。
いや後半気持ち悪かった。
ちゃんとラストもオチがついててよくできてると思うんですが、とにかく気持ち悪かった。
これ読むとしばらくデパ地下に行きたくなくなります。
ちょっとしたトラウマになるかも。

まあ、「神さまの言うとおり」も「さんくすないと」も突っ込めれば突っ込めないこともない設定なわけですが、読んでるとどうでもよくなってくる瞬間があるんですよ。
やっぱこういう作品は必要だなーと思いました。

というわけで次回のフェアは「絶対に読み返したくない本・読んでトラウマになった本」フェアを行う予定です。
5月の連休明けぐらいから。
請うご期待。

(H)

April 10, 2012

あの頃僕が見ていたガードレール越しの黄昏

先日、尾崎豊の遺稿(と言うんでしょうか)をまとめた「尾崎豊NOTES」という本が新潮社から出て僕の心の中の17歳の地図を照らしたかと思えば、そのすぐ後には24年ぶりに復活したという「キン肉マン」の新刊38巻が出て心がマッスルドッキングしました。
何なんでしょうかこのタイミング。
アラフォーの団塊ジュニアの財布が大変メインターゲットにされてる気がしますね。
こういう状況を福満しげゆき先生だったら現状分析と被害妄想と巧みな比喩を交えてうまく描いてくれると思うのですけど。
でもホント不思議な気がします。
なんかフェースブックで再開した旧友同士が盛り上がって同窓会やるぞとか言ってるし。振り返りたくなる時期なんでしょうか。たまたまか。

それにしても「キン肉マン」38巻は発売日に飛びついて買ったんですけど、もうジェロニモの使い方が見事過ぎますね。
ジェロニモがいなければ「キン肉マン」は成立しないですよ。

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★「これは」本

私たちの仕事は毎日毎日入ってくる新刊をダンボールから出して店に並べていくわけですが、年に何冊かダンボールから出した瞬間「こ、これは…」という本があります。
「これは!」ではないです。
そんな強い発見ではなく、あくまで(まだ全然中身を読んでないけど、なんか大変な本な気がする)という予感「こ、これは…」本。

最近だとちょっと前に紹介した萩尾望都の「なのはな」、そしてこれ。

○「母がしんどい」田房永子(新人物往来社)

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ほんわかした絵柄と対称的な「母がしんどい」という書名。
その相反する組み合わせに「え?」と思いながら読んでいくと、どんどん心が曇っていくような、明るい気分が閉ざされていくような、急激にお腹が痛くなるような、そんな感情に包まれていきます。

始めの方で描かれる「夏休みの宿題」の話が印象的です。
夏休みの自由研究をやっている小学生のエイコちゃんのところにお母さんが来て、ニコニコしながら紙を差し出し「ここにクマさんの絵を描きなさい」と言います。
エイコちゃんがうまく描けないでいるとお母さんの表情が険悪なものになり、「違うよバカ!こう描くんだよ!」と怒りだし、「ちがう!もういい貸せ!」と自分で描きだします。
数時間後、「できた!」と目を輝かせるお母さんの脇にいるエイコちゃんはもう違うことで遊んでいます。
そして「先生には一人で作ったって言えばいいからね」と差し出された自由研究はすぐ先生に「お母さんにやってもらったでしょ」とバレる。
けどお母さんはそれを有名なアート展の子ども部門に応募し、結果的には落選すると、泣きながら「エイコちゃんがんばったよね~ママわかってるからね」と抱きしめる。
けど抱きしめられたエイコちゃんはなんとも無表情な顔をしている…。

この作品は著者の田房永子さんが子どもころから大人になるまでの母(ときには父)との関わりを回想していくのですが、時折セリフのない回が出てきます。
そこでは背景に説明があったり、英語のコメントが挟まってたりして読めば話はわかるようになっているのですが、それ以上に「ここはよっぽど再現するのがつらかったんだろうな」というのが伝わってきます。

福満しげゆき氏も書いてましたが、過去のネガティブな記憶を絵で再現するのは相当しんどい作業だといいます。
文章で済むならまだいいけど、読者にイメージを伝えるには封印したい出来事のディティールを脳内に一度再現して、それを自分の手で書かないといけない。
想像するだけでもキツイ作業です。

ネタバレになるので多くを書けませんが、この作品で本当にキツイのは中盤から後半にかけてだと思います。
田房さんのブログにこの作品を出版するにあたっての想いがつづられていますが、「娘としての怒り」という言葉が重く心に響きました。
http://mudani.seesaa.net/article/259220636.html

とにかく一度読んでもらいたい作品です。
そして、この本とほぼ同時期に出た「ポイズン・ママ」にも惹かれまくっていますがまだ読めていません。こっちも何かすごそうな気がします。

○「ポイズン・ママ 母・小川真由美との40年戦争」小川雅代(文藝春秋)

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★セールスランキング3月

しばらく出すの忘れてたら「最近ランキング出してないですね」とある人に突っ込まれました。すみません。

(一般)
1  ザ・西武線さんぽ    交通新聞社
2 日本人の知らない日本語3 卒業編  メディアファクトリー
3 50歳を超えても30代に見える生き方  講談社プラスアルファ新書
4 中国嫁日記2     角川GP
5 前田敦子写真集 不器用  小学館
5 松井玲奈写真集 きんぎょ  光文社
6 「空腹」が人を健康にする  サンマーク出版
7 寝るだけ!骨盤枕ダイエット  学研マ-ケティング
8 PK  講談社
9 ’12 プロ野球カラー名鑑  ベースボール・マガジン
10 このまま30歳になってもイイですか?  サンクチュアリ出版

(文庫)
1 新約 とある魔術の禁書目録4  電撃文庫
2 夏天の虹 みをつくし料理帖  角川春樹事務所
3 仇討 吉原裏同心16    光文社
4 少女    双葉社 
5 三匹のおっさん  文藝春秋
6 左岸(上)   集英社
6 かばん屋の相続  文藝春秋
7 世界史(上)  中央公論新社
8 日光代参 新・古着屋総兵衛3   新潮社
9 ミレニアム1  ドラゴン・タトゥーの女(下)早川書房
10 学問   新潮文庫         

☆明日は

本屋大賞の発表がありますね。
「中二賞」は今年はやんないのか。
そいや本屋大賞ってダブル受賞あるのかな。
ま、明日になりゃわかりますわね。

(H)

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