March 19, 2017

4月から毎週日曜日が定休日となります

 
いつも伊野尾書店をご愛顧いただきありがとうございます。
 
2017年4月より当面のあいだ、毎週日曜日を定休日とさせていただきます。
 
 
この3月に人員体制の大きな変化があり、端的にいうとスタッフが大きく減りました。
 
その分を埋める人材が育っておらず、現状の定休日無しの状態で店を回せないと判断しました。
 
さしあたって当面のあいだは「毎週日曜日を定休日」というようにさせてください。
 
祝日は今までどおり「11時~20時」で営業します。
 
今後の休業日変更に関しては状態を見て、判断させていただきたいと思います。
 
 
ご迷惑をおかけしますが、今後の店舗運営継続のためにご理解いただけると幸いです。
 
ひきつづき伊野尾書店をよろしくお願いいたします。
 
 
 
伊野尾書店 店長 伊野尾宏之

March 13, 2017

アルバイト募集のおしらせ

伊野尾書店では現在若干名アルバイトを募集しています。
 
(1) (平日)9:00~17:00 (日祝)11:00~20:00
週3~4日程度(土日含む)
 
(2) (平日)17:00~21:00 (日祝)11:00~20:00
週2~3日程度(土日含む)
 
出勤可能時間は相談に応じます。
 
■時 給 950円~(開始一ヶ月間900円)
 
■昇給あり 
 
■交通費支給(一日500円まで・災害時の帰宅を考え遠方の方はお断りしております) 
 
■社員割引あり
 
《応募》
ご応募の方は電話かメールで「アルバイト希望」とご連絡ください。
日程を調整のうえ、面接を行います。
面接の際は履歴書(写真貼付)をご持参下さい。
 
伊野尾書店 採用担当 伊野尾
TEL 03-3361-6262
E-Mail: inooshoten@gmail.com
 
よろしくお願いいたします。
 

March 07, 2017

臨時休業のおしらせ

3/20(月・祝)は休業日とさせていただきます。
 
ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。
 
伊野尾書店

February 28, 2017

「罪の声」塩田武士

2月はいろんなことがありまして、ちょっとバタバタだったのですが読んだ本など書いていきます。

 

○「罪の声」塩田武士(講談社)

Photo

グリコ・森永事件を題材に、「あったかもしれない」物語を書いたミステリー。

これは面白かったです。
よくできている。
よくここまで書けた。
おなかいっぱいな読後感がありました。

ストーリーは架空です。登場人物も架空。
でも題材になってるのは昭和最大の未解決事件。

あのグリコ・森永事件で脅迫音声に使われた子供の声。
あれが、もし幼き日の自分の声だとわかったら――。

講談社の本気具合は、わざわざYouTubeにこの「罪の声」の中に出てくる脅迫テープを再現したことからもわかります。

昭和49年生まれの自分にとって、グリコ・森永事件は小学生の時の事件でした。
「どくいりきけん たべたら死ぬで」
衝撃的なフレーズは当時子供の間で流行語になりました。
あの事件はなぜ、どういった人物によって引き起こされたのだろう。
いろいろな検証本が出ましたが(一橋文哉の本は面白かった)、結果的にはわかりませんでした。

今回取り上げる「罪の声」はフィクションです。
創作です。
しかし、どこかでこんなことが起きていたら。
もしかしたら事件に関わった者たちはその後このような人生を歩んだのではないか――。
この長い小説を使って示されるその説得力は圧倒的です。
実際の事件と、虚構の物語の壁が薄いんです。

そしてその中で示される、

「子供を犯罪に関わらせるな」

「事件は犯人が見つかったところが終着点ではなく、被害者にその後の未来が見えてこないと終わりではない」

という著者の強いメッセージが、読後胸に残ります。

同時に「犯罪事件は、人の一生をこんなにも翻弄してしまうのか…」という深い重さが、おなかにずっと異物感として残ってしまう。

ミステリーを通じて、人間とは何なのか、あらためて考える作品です。

 

February 12, 2017

地図共販の彼

神田村の日本地図共販の店売には二十代半ばくらいの顔立ちの整った男の子がいた。
彼を見ると「雑誌の『FINEBOYS』に出られそうだなー」といつも思った。
俳優の大東俊介が、当時の彼の面影に近い気がする。

地図共販の店売はそこまで広くないので、だいたいカウンターに社員が一人でいて対応することが多い。
それまでは特に特徴のないスーツの中年男性だったが、あるときからイケメンの彼に代わった。
彼はなぜか私服で働いており、白いシャツとブルージーンズをよく着ていた。

神田村というのは神保町の裏手にある中小の出版取次が集まった地域で、都内近郊の書店はそこに行けば現物を仕入れることができた。
その名の示す通り関係者だけが出入りする“村”で、顔を覚えられれば挨拶されるが、それまでは「誰?」といういぶかしげな視線を浴びることになる。
地図共販というのは地図、旅行ガイドに特化した特殊な取次だったので他の取次とは若干毛色が違っており、そういう閉鎖的な空気はあまりなかった。

ある日、地図共販の店売で持ち帰りの本を棚からピックアップしていると、イケメンの彼が「僕、代わりにやりましょうか?」と声をかけてきた。
よほど「あれはどこだ、これはどこだ…?」と右往左往していたのだろう。
当時の神田村の空気感で言えば「本は書店が持ち帰らせていただく」ものであって、取次側の人間が「書店のために本を探してピックアップしてくれる」というのは相当珍しい対応だった。
彼の前にいた前任者はそんなこと言うこともなかったので、おそらく彼自身の判断なのだろう。
ありがたくお願いすることにした。

それ以降、地図共販の店売に行くときは彼にピックアップをお願いすることが定番化した。
彼が店売の棚から本を抜いている間、私はヒマになってしまうのでよく棚を隅から隅まで眺めていた。

地図共販には他で見ない、いろいろな本が置いてあった。

引き出しのような平べったい棚に収納された、国土地理院発行の地形図。

東京都多摩地方に限定した街情報雑誌、「たまら・び」。

東南アジアの風俗情報誌、「Gダイアリー」。

日本各地の奇妙なものを集めた雑誌「八画文化会館」。

そういった雑誌を「こんなのもあるのかー」と眺めていると、彼が「お待たせしました」とピックアップを終えて、声をかけてくる。
そうすると読みかけの本を途中で置いていくのが忍びなくなり、「せっかくだから」とかなんとか言って一緒に仕入れて持って帰り、店で売ってみたりした。

けどその手の本はたいがい、たいして売れなかった。
あれはなんなのだろう。
店売ではすごく魅力的に見えるのに、自店に持ち帰ると途端に輝きを失う。
まるで旅先では「すごく良いもの」に見えたから買ってきたのに、家で開けてみるとそこまで魅力を感じないおみやげのような。
そういう空気が地図共販にはあった。

イケメンの彼は、あるとき部下らしき若い男性を紹介した。
「君、そんな若いのにもう部下ができたのね…」と心中思っていると、次の週からカウンターにいるのはその部下の男性になった。
部下の男性は、可もなく不可もない対応に終始していた。
「こないだまでここにいた彼は…?」と尋ねると、「ああ、営業に移りました」と言われた。

なんとなくつまんなくなったな、と思っているうちに、地図共販の店売は閉鎖されることになった。2012年3月のことだ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170210-00010002-teikokudb-ind

地図共販が破産したというニュースを聞いたとき、イケメンの彼はどうしただろうか、と思った。

彼は最後まで会社に残っていたのだろうか。それとももうとっくに辞めていて、今は別の仕事に就いているだろうか。

私は彼の名前を知らない。
我々はあくまで事務員と客みたいな関係で、名刺交換とかは一切しなかった。
夏休み明けには「帰省したんですか」と聞き、甲子園が盛り上がれば「ハンカチ王子すごいっすね」と話し、雪が降って寒い日には「今日書店さん全然来ないっすよ」とか話してたのに、私は彼の名前を知らない。
『ハリー・ポッター』が出ると「売れてますか?」と聞き、村上春樹の新刊が出れば「売れてますか?」と聞き、かならずそのあとに「まあ僕ら関係ないっすけどね」とつぶやき、時刻表と地図、旅行ガイドを出し、伝票を作っていた彼が今どうしているか、私は何も知らない。

『FINEBOYS』に出られそうだった彼も、もう三十代前半くらいになっただろう。
きっと今もイケメンなんだろうなと思っている。

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