August 24, 2016

「リオデジャネイロとはポルトガル語で『1月の川』という意味」というのを昨日知りました

リオオリンピックの閉会式で安倍首相がマリオのコスプレをして出てきたことが話題ですが、あれはリアルタイムで見たかったなあとうらやましくなりました。

今回のオリンピックは男子100メートルと、なぜかたまたまやっていたトライアスロンをぼっーっと見た以外はすべて終わってからの結果をニュースで知りました。
卓球が熱かったとか、吉田沙保里が負けたとか、メダルが40個取ったとか、いろいろ出てましたが全部リアルタイムで見たかったです。
もうちょっとオリンピック見ようと思いました。
4年後はいっぱい見ます。

リオオリンピック特集の「Number」増刊号は8月26日発売です。

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「Number」といえば、先ごろ出た「甲子園 最強打者伝説。」号の中の「打たれたライバル全員が語る 清原和博・13本のホームラン物語」は素晴らしかったです。

清原に甲子園でホームランを打たれた投手たちが「甲子園、高校野球、そのあとの人生」を語るわけですが、甲子園というのは彼らの長い人生の中で点でしかなく、「甲子園に来るまで」と「高校野球が終わったあと」に濃密な物語が詰まっています。
清原に打たれたことが今でも心残りの人。宿舎で素の清原と接した人。自分が打たれたのに、なぜかすがすがしい印象を残している人。仲間が打たれたことが心から悔しかった人。
中でも清原に打たれたことを人に聞かれるのが嫌だったという砂川北・辰橋投手の語る「自分と清原」の物語は本当に小説のようで、深く胸を打ちました。

この号は編集後記で松井編集長から「拝啓 清原和博様」と題された清原へのエールが掲載されています。
スポーツが人によっては自分の人生と深く根付いていくことを表している名文です。

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今年は北海道代表の北海高校が決勝進出を果たしましたが、あの10年前に同じ北海道代表の駒大苫小牧を2年連続優勝させ、3連覇まであと一歩まで進めた香田誉士史元監督の栄光と苦難を描いたノンフィクションも出ました。

○「勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇」中村計(集英社)

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無名だった駒大苫小牧を甲子園に進出させ、北海道に優勝をもたらした香田監督は、田中将大と斎藤佑樹が投げ合って国民的試合になったあの決勝戦からわずか2年後、ひっそりと学校を去ります。
そこにいったい何があったのか。
高校野球ノンフィクションの名著「甲子園が割れた日―松井秀喜5連続敬遠の真実」の中村計氏が描く骨太の人間ドラマです。

 

☆サイン本

先日山崎ナオコーラさんがご来店くださり、芥川賞候補作になった「美しい距離」にサインを入れてくださいました。
残りわずかですが店頭にございますのでお早めにお求めください。なくなり次第終了します。

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「美しい距離」は40代初めで病気になった妻を看る夫の話です。
しかしテーマは夫婦愛というより「他人との距離感」です。
「近いことが素晴らしく、遠いことが悲しいなんて、思い込みかもしれない」という一文が心に沁みます。
読み終わったあとの後味がとてもよい小説でした。

山崎ナオコーラさんが『美しい距離』で描く死生観 がんの父の看病経て...「気を遣わせてもいいじゃん」http://www.huffingtonpost.jp/2016/08/20/yamazaki-naocola_n_11625000.html

 

☆久しぶりにセールスランキング出します

(総合)7/24~8/24
1 コンビニ人間 村田 沙耶香 文藝春秋
2 日本会議の正体 青木 理 平凡社新書                      
3 さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ 永田 カビ  イ-スト・プレス           
4 海の見える理髪店 荻原 浩 集英社                      
5 99%の会社はいらない 堀江 貴文  ベストセラ-ズ新書               
6 『ベルサイユのばら』で読み解くフランス革命 池田 理代子 ベストセラ-ズ新書
7 君たちが知っておくべきこと: 未来のエリートとの対話 佐藤 優 新潮社
8 文藝別冊 高峰秀子  河出書房新社               
9 言ってはいけない 残酷すぎる真実 橘 玲 著 新潮新書
10 おおあたり 畠中 恵 新潮社
10 烈侠 加茂田 重政 サイゾ-

(文庫)7/24~8/24
1 村上海賊の娘   3 和田 竜 著 新潮社
2 ソードアート・オンライン  18 川原 礫 KADOKAWA 
3 村上海賊の娘   4 和田 竜 著 新潮社
4 あきない世傳金と銀 2 早瀬篇 高田 郁 角川春樹事務所                  
5 何者 朝井リョウ 新潮社
6 柳に風 新・酔いどれ小籐次   5 佐伯 泰英 著 文藝春秋 
7 村上海賊の娘   1 和田 竜 著 新潮社
8 小説 君の名は。 新海 誠 KADOKAWA
9 死神の浮力 伊坂 幸太郎 著 文藝春秋 
10 本屋さんのダイアナ 柚木 麻子 著 新潮社

 

☆今年も9/1~中井文庫をやります!
詳細は追って発表します。

(H)

August 07, 2016

8/13(土)~8/15(月)の間、営業時間が変わります。8/14(日)はお休みします。

8/13(土)~8/15(月)の間、営業時間が変わります。
8/14(日)はお休みします。
よろしくお願いいたします。

8/13(土) 11:00~20:00
8/14(日)  休み
8/15(月) 11:00~20:00

伊野尾書店

「普通」という線を引くことは「普通」なのか/「コンビニ人間」村田沙耶香

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○「コンビニ人間」村田沙耶香(文藝春秋)

※第155回(2016年)芥川賞受賞作

 

古倉恵子は36歳。独身。
18年間同じコンビニでアルバイトを続けている。
すべての行動規範はコンビニの仕事にあり、コンビニの仕事こそが彼女の人生を規定している。
そんな折、恵子の店に言動に社会性を欠いた男性・白羽が同じアルバイトとして入ってくる…。

村田沙耶香は常に「普通って何?」ということを小説に書く。
普通の恋愛って?
普通の結婚って、普通の家族って何?

今回はそれが「普通の人間って何?」に広がった。
友達のいない恵子が18歳の時にコンビニでアルバイトを始めると、家族は喜んでくれた。
しかしそのまま働き続けて36歳になった恵子を家族も友達も異物を見るように見ている。
普通、就職するんじゃないの?
普通、結婚するんじゃないの?
恵子自身は何も変わっていないのに、周りの視線は変わっている。

私たちは同質性に弱い。
同質圧力に弱い。
「みんながそうする」と聞けば「そうしないといけないのかな」と思ってしまうし、無意識に「そうしないといけない」と考えてしまうこと自体に疑問を挟まないし、なんだったら「みんな」の側に回ってそうじゃない人をこちら側に引き込む努力をしようとする。
下手をするとそれを「善意」と考えていたりする。

けれどそれは「普通」なのか。
自分と違った考えや生き方の人をこちら側に矯正しようとすることが「普通」という、その「普通」とはなんなのか。
それこそ「異常」ではないのか。
そもそも「普通」という線を引くことは「普通」なのか。

「コンビニ人間」は村田沙耶香作品のなかでたびたび使われる「わかりやすい異常な設定」は出てこない。
それがゆえにかえって「世界の普通/異常を分ける境界線」の曖昧さを、脆さを浮かび上がらせる。

コンビニの仕事のために24時間の使い方を規定する恵子を私は笑えない。
朝は同じ時間に起き、仕事のために時間内に食事や排泄をすませ、仕事のために時間を費やすことに違和感を覚えなくなった自分は恵子と何も違わない。

誰かを上に見たり、あるいは下に見たり、別の誰かと比較したり、あるいは無理に同じ価値観に入れようとする行為から自由になりたい。
自由になりたいと思っているのに、結局は人の輪から外れずに中に入りたいと思っている。

「異物を認めないこの社会に復讐する」といって結局はその「異物を認めない社会」の規範に引きずられる白羽の姿はそのまま自分の背中に重なる。

村田沙耶香は恐ろしい。
村田沙耶香の小説はいつも「普通って何なの?」という意識の土台を揺り動かしてくる。

(H)

July 17, 2016

選挙と本屋


先日の参議院選挙が終わって開票結果が出たときに、SNSを見てるとまわりで「こんな結果になるんだ」という声がちょこちょこ見られました。
その中でも

・こんなに自民党が勝つとは(そして野党が票を伸ばせないとは)思わなかった
・あれだけ演説動画が出回っていた(そして称賛されていた)三宅洋平が落選するとは思わなかった

という二点をよく見かけました。

この、自分がなんとなく思い描いてた「現実社会」と本当の現実社会にズレを感じて「あれ?」となることは、本屋をやってて非常に多いです。

一番感じたのは古くなりますが、2001年の9.11テロのときでした。
あのときはテレビを見て「大変だ!」となり、翌日から関連しそうな本を手配しました。
イスラム、アメリカと世界、グローバリゼーションといったテーマの本が多かったです。
それが店に届いて、「緊急!テロはなぜ起きたか」的なミニコーナーを作りました。

ところがそのコーナーが思ったほど売れていかない。
いや、見てたお客様は非常に多かったんです。
実際、ポツポツとは買われました。
でもこちらはもっとバーッとした売行きを想像していました。
多くの人は世界情勢に切迫感を持っていて、このテーマについて関連したなんでもいいから読みたい、くらいに思っていたのですが、蓋を開けてみればそこまででもなかった、という感じでした。

あのときが一番「あれ?」と思った瞬間です。

その後もいろいろな社会的な事件、情勢に応じて関連書を並べたミニコーナーを作ったりしました。(もちろん今もしていますが)

たとえば小泉首相が郵政民営化を唱えて総選挙になったときは「官と民」みたいな本を揃えたり、年金未納問題が発覚したときは社会保障の本を揃えたり、リーマンショックのときは経済や金融の本を増やしたり、3.11の時は地震関連本、そして原発関連の本を揃えたり。
このなかでいうと3.11の地震、放射能関連の本は少し売れたのですがあとはあまり売れませんでした。
そしてどんな大きな社会的な出来事が起きても、店頭ではやっぱり雑誌やコミックやビジネス書あたりが売れていくわけです。

そうするとだんだん「みんなテレビでさんざんやってるようなことは本を買ってまで読まないのだろうか?」という考えが浮かび上がってきます。
繰り返しますがゼロじゃないです。少しは売れる。けど、「世の中が大騒ぎになっている」ことを考えればあきらかに少ない。

そのうち、
「メディアで伝えるニュースを同じように見てても感じることや気になることは人によってまったく違う」
「そもそも同じニュースを見ていないかもしれない」
ということを思うようになりました。
言い換えると、自分とはまったく違う・自分には理解できない感覚を持った人が、世の中にはものすごくたくさんいる。
むしろそちらが多数派だったりする。

この15年くらい、ずっとそういう誤差みたいな感覚を感じながら仕事しています。

テレビを見てるとあまり感じませんが、ネットを見てると今の内閣の方針に危機感や警戒感を持ったニュースや意見を非常によく目にします。
そういうのを見てると「国民のほとんどが不安を持っているのでは」と思ってしまうのですが、選挙をやれば「現内閣を支持」が多数派です。
有権者の半数近くが選挙に行かないのも原因のひとつかもしれませんが、ともかく選挙をすると自分の感覚がこんなマイノリティーなんだ、ということを毎回否応なく感じさせられます。

その誤差のようなものをもう少し体系的につかめると、社会に一台変化があるときにでも本屋に来てくださるお客様が潜在的に何を欲してるか、こちらもつかめるんじゃないかなと思います。
今はまだぼんやりと“こんな感じなのかな”しかつかめてません。

とりあえず先日読んだ、ブロガー議員として有名な東京都北区区議会議員であるおときた駿さんが,4人のギャル男に政治を教える『ギャル男でもわかる政治の話』(ディスカバー21)はめちゃめちゃよい本でした。
「日本を三代目J Soul Brothersに例えるとアメリカはEXILE」で国際関係を説明しますから。
これタイミングが少し遅れてればイギリスのEU離脱問題はSMAP…なんでもないです。
日本の社会保障負担を「ドラえもんと未来のセワシにたよりまくるのび太」で例えるという豪快さに惚れました。

「むずかしいことをわかりやすく教える」というのは良い本を構成する上で最大の要素だと思うんですが、この本はよくできています。
もちろん細かく言えばはかなり強引なんでしょうが、最初にとっかかりとして読むにはすごくいい本です。
国政だけでなく自治体選挙編も読みたいです。

http://www.d21.co.jp/shop/isbn9784799319192

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☆夏、はじめました

夏の書店の風物詩、各社文庫夏フェアはじめました。

新潮文庫はキュンタ(ロボットだそうで)のしおり、
http://www.100satsu.com/

角川文庫はオリジナルのブックカバー、

http://www.kadokawa.co.jp/hakken/kadofes/summer/present.php

集英社文庫は「しおりにもなるぱっちんバンド」
http://natsuichi.shueisha.co.jp/present/index.html

をそれぞれお買い上げごとに差し上げてます。

しかし、集英社文庫ナツイチはずいぶん凝ったサイト作ってますね。
http://natsuichi.shueisha.co.jp/ 

このショートムービーといい、「あなたのナツイチ診断」といい。

ナツイチ診断やってみましたが中条あやみさんが私のために紹介してくれた一冊は「僕のつくった怪物」(乙一)でした。

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そして集英社夏のコミックまつり「ナツコミ」も始まりました。
http://natsucomi.shueisha.co.jp/

対象商品をお買い上げのお客様にワンピースのバッジさしあげています。

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☆サイン本

○雨宮まみさん「まじめに生きるって損ですか?」(ポット出版)

○田房永子さん「キレる私をやめたい」(竹書房)

ともにサイン本入りましたが残りわずかです。
(7/16現在「まじめに~」残り2冊、「キレる私を~」残り1冊)
お早めにどうぞー。

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☆最近読んだ本

○「脳が壊れた」鈴木大介 (新潮新書)

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「最貧困女子」などの著作があるライターの鈴木大介氏が脳梗塞で倒れるまでと倒れたあとを書いた手記。
鈴木さんは41歳で脳梗塞に倒れました。
病気の原因はいくつかあれ(詳しく書かれます)、自分と同年代の人間がこういう病に倒れることに「自分にもそういう可能性があるんだ」と重苦しく不安を突きつけられました。

脳梗塞に限らず脳の病気になると、認知症の高齢者や発達障害の人と同じような症状が現れるそうです。
病気と老化は違っていても「脳が壊れる」と出てくる現象は似るようです。

鈴木さんの奥さんの話が大変よいです。
病気は誰のせいでもなく、まして奥さんがどんなであれ、他人がとやかく言うことではありません。
現実に、この夫婦はお互いがお互いを必要としている関係であり、そこは無理に美しい物語にすることもなく、著者が言う「人は一人しか支えられない」をそのまま体現した結果、このような夫婦の物語ができたんだなーと沁みました。
そう、いろいろ沁みる話が出てきます。
(最終章のサプライズとか)

闘病の物語はお涙頂戴の要素の強い/弱いはあれど、結局似た結論にたどりつくのだな、と感じました。

結局、人は誰かに助けられるわけで、「人の支援は資産」なんだと思います。
非常に考えさせられる手記でした。

 

☆おまけ

○「NumberPLUS プロレス2016」のどこかにひっそりと出ました。けど探さなくていいです。

 「Number」は写真がホントすばらしいです。

 飯伏さんのと鈴木みのるの記事が特によかったです。

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http://number.bunshun.jp/articles/-/826016

※中邑真輔版の表紙と内藤哲也&オカダ・カズチカ版の表紙の2種類が出ていますが柳澤健さんが書いた記事が差し替わってるほかはすべて同じ内容です

July 04, 2016

心を安定させるための具体的な方法論 ~田房永子「キレる私をやめたい」

○「キレる私をやめたい ~夫をグーで殴る妻をやめるまで~」田房永子(竹書房)

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デビュー作「母がしんどい」で毒親問題を、「ママだって、人間」で現代の育児問題を、「男しか行けない場所に女が行ってきました」で社会に根深く刺さっている男女の性差を。
田房永子さんはこれまでずっと「社会の中でなんとなく“まあ、そんなもんなんじゃない?”とスルーされがちな、けど当事者は違和感や疑問や苦しさを覚えること」をテーマに書いてきました。

そんな田房さんの新作は「キレる私をやめたい」。
自身が抱えるそんな悩みと向き合った本です。

キレる…今回はちょっと遠いかな、と思いながら、読み進めました。
ですが、その思いは途中で猛烈に反転します。

この本こそ、みんな読んだ方がいいです。

今までの田房さんの本が読んでて「ハッ!」とさせられる本だとしたら、これは「ああああっ!」となる本です。

田房さんはこれまでダンナさんから言われる一言にキレて暴力を振るったり前後不覚になり、その後冷静になってから自己嫌悪に陥る、というサイクルをずっと繰り返してました。
ある時、部屋の片づけをめぐって(部屋の片づけ問題がいつも揉め事の原因になっていた)旦那さんと揉めた田房さんは怒りの勢いのあまり警察を呼び「旦那が暴力を振るいました」と訴えようとするも途中で冷静になり、警察を呼んだことを激しく後悔し(警察は話だけ聞いて帰った)、それをきっかけに「もうキレないようにしたい」といろんな本を読み、多くのカウンセラーやセラピストに会いに行きます。
無駄足を踏んだりしながら田房さんはゲシュタルトセラピーという心理療法にたどりつきます。

そこでの話が、本当に目からうろこが落ちる話で。

キレるというのは不安定になった感情が外にあふれ出ている状態です。
私たちは常にキレてはいなくても、「不安定な感情」をたくさん抱えながら日々を過ごしています。

明日までにやっておかなければいけない仕事なのに、どう見たって終わりそうにない。
自分が抱えてしまったトラブルがあって、それがこの先どう転がっていくかわからない。
今日もあの人に怒られるんじゃないか、という人が近くにいる。
高齢の親に認知症の兆候が出てきたかもしれない。

生きていればどんな人でも感情が不安定にならざるをえない案件が身の回りに出てきます。
余裕がある状態なら一つくらいは対処できても、気持ちに余裕がなくなってくればだんだんそうもいかなくなってきます。
がんばってがんばってがんばっているのに、またさらに上から「問題」が降ってくればパチーン!と感情がはじけてしまっても無理ありません。

田房さんが通ったゲシュタルトセラピーでは「今ここにいることだけを考える」という教えが出てきます。
言い換えると「未来」と「過去」は見るな、ということです。

ある日、田房さんは朝起きると声が出なくなってることに気が付きます。
前日ノドの調子が悪かったのに、久しぶりに会った友達との会食が大変楽しくガラガラ声でたくさんしゃべっていたら翌朝声が出なくなっていたそうです。
田房さんはこの3日後に大勢の人前でしゃべる仕事を入れており、その日声が出なかったら…と軽くパニックになります。

この場合、「未来」を見ること=「不安の増幅」になってます。

3日後、しゃべれなかったらどうしよう。
そのときはキャンセルしなきゃいけないだろう。
そうするとたくさんの人に迷惑がかかる。
キャンセルしたらもう仕事がこなくなるかもしれない。
もしキャンセルするんだったら早く連絡をしないと。
でも3日後になったら声が出ているかもしれない。
あああ…どうしたら…!

というサイクルです。

そして「未来の不安」は「過去の原因を責める」につながります。

昨日あんなに調子に乗ってしゃべられなければ。
でもあの状況でしゃべらないなんてありえない。
ガラガラ声だった時点で会うのをやめるべきだったのか…?

という感じで。

こうして「未来の不安」と「過去の後悔」を行ったり来たりして、精神を不安定にしていくという構図は自分もすごく覚えがあります。
これがあふれるとキレてしまう。

ではどうすればいいのか…?というと、そこでさっきの「今ここにいることだけを考える」が出てきます。

この場合、今できることというのは「それはおとなしく薬を飲んで寝ること」です。
3日後のことは考えたって答えが出ないんだから考えない。
昨日のことはもう変えようがないんだから考えない。
考えるのは、「今ここにいること=今できることをやること」。
今の自分の身体の調子を見ながら、治す努力を淡々とすること。

ここを読んだとき、私は目からウロコがボロボロと落ちました。
たしかにそのとおりだ。
悩むときって延々「わからない未来」と「変えられない過去」のあいだを行ったり来たりしてて、「今現在」を見ていない。
本当にそのとおりだ、と。

この話を読んだとき、思い出したのは松井秀喜のこの言葉でした。

「自分にコントロールできることと、できないことを分ける。コントロールできないことに関心を持ってはいけない」

(参照)
http://www.asahi.com/articles/ASJ2T5KNVJ2TULZU009.html

http://n-knuckles.com/serialization/pkashima/news002206.html

http://asahi.gakujo.ne.jp/common_sense/morning_paper/detail/id=555

これと近いんだと思います。

コントロールできないことは考えない。
自分がいまできることだけを考える。

それが精神を安定させる何よりの方法なのかな、と思いました。

「キレる私をやめたい」は田房さんが自分のことを書いてる話ですが、私たち全員の話でもあります。

「どうしてこんなにキレてしまうんだろう」と原因を追究し、その解決策を探った田房さんは不安定な感情に揺れ動いてしまう私たちの先を歩いてて、この本を読むことでその後ろをついていっている感覚が沸いてきます。

私たちは他人を通じてでしか自分のことはわからないんだな、と思います。

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«正解も不正解もない選択の果て  ~紫原明子著「家族無計画」